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NSC発行「Safety + Health」2004年3月号

ニュース

残業時間規則、反対派を抑え、上院通過

 1月22日、一括歳出予算案が上院を通過、これで、少なくとも現時点では、ブッシュ政権の残業労働時間規則(overtime work rule)改正に反対する勢力を封じた。
 組織労働者らが率いる改正反対派は、残業労働時間規則の改正予算を削除する修正案が予算案から取り下げられてからは、上院議員らへの陳情活動を不首尾に終わらせた。
 下院では、歳出予算案は、2003年12月の第108回議会第1セッションで可決された。残業労働時間規則改正反対派は、改正計画は、保健衛生、公共安全、小売業の労働者を含む全米8百万強の世帯の残業手当を奪うものであると主張していた。
 改正計画に対しては、民主、共和両党から懸念の声が上がった。労働・衛生・人的サービス・教育に関する歳出小委員会(Appropriations Subcommittee on Labor, Health, Human Services and Education)の委員長を務めるアーレン・スペクター上院議員(Arlen Specter、共和党、ペンシルバニア州)は、1月20日、エレイン・チャオ労働長官(Elaine Chao, Labor Secretary)らを参考人に招き、公聴会を開いた。エドワード・ケネディ上院議員(Edward Kennedy、民主党、マサチューセッツ州)は、1月22日、上院本会議に訴えたが、改正案阻止に失敗した。
 残業労働時間規則改正予算を阻む上院の修正案は、昨年12月、一括歳出予算案から外された。
 ブッシュ政権は、1938年来の古い規則は、今日の近代経済には通用しないため、規則を更新するために改正せねばならないという。改正計画は、低所得層のホワイトカラーおよそ130万人強の残業手当を保証するものであるという。チャオ長官は、残業労働規則の改正は、カーター政権時より労働省の規制計画表(regulatory agenda)に載っていたと述べた。残業労働時間規則は、公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)の一部で、主にホワイトカラーが関係する。
 チャオ長官は、上院委員会で証言するにあたり、ブッシュ政権は、警察官、消防士、救急救命士その他の救急隊員や看護師、および大工、電気工、機械工、配管工、肉体労働者、トラック運転手、建設労働者、及び生産ライン労働者といったブルーカラー労働者については、残業労働時間の保護をはずさないと述べた。
 労働省は、1月初め、最終改正規則を3月末までに公布すると発表した。反対派の一部は、引き続き議会活動を通じて、規則の公布を阻むと断言した。



事実チェック
2001年の産業別非死亡傷害
605,769件
機械の運転者・肉体労働者
281,027件
精密生産・修理
266,346件
サービス
1,537,567件
非死亡傷害合計
出 所:National Safety Council: NSC、"Injury Facts" 2003年



OSHA予算要求、遵法支援に照準

 ワシントン − 労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)の2005会計年度予算要求は、アウトリーチ・遵法支援活動の拡大を求めており、また、当局が連邦内部告発者法(federal whistleblower statutes)を遵守するための予算も計上している。
 ブッシュ大統領が2月2日、議会に提出した予算案2兆4千億ドルのうち、OSHAの予算要求額は4億6,160万ドルで、2004会計年度に比べ、410万ドル、1%弱の増額である。来年度予算では、遵法支援プログラムの拡大に追加660万ドル(このうち50万ドルは小企業枠)を要求。また、OSHAの連邦内部告発者法遵守に200万ドルを要求している。
 2005年度は、37,700の事業場の臨検を計画、予算案では、労働監督業務に増額はない。OSHAのジョン・ヘンショー長官(John Henshaw, administrator)は、予算案は、労働安全の向上に向け、労働監督と遵法支援を併用しようとする当局の試みの延長線にあると述べた。
 「強力、公正、効果的な監督業務と、遵法支援、アウトリーチ、教育、パートナーシップの組み合わせは、成功の秘訣である」と、ヘンショー長官は、準備してあったコメントを述べた。「われわれは、これまでの成功や効果のあった戦略をもとに進めていく」。
 「これは、バランスの取れたアプローチであり、うまくいく」とヘンショー長官は付け加えた。「今回の予算案は、労働安全衛生により大きな影響力を行使しようとする当局を支えるものである」。
 OSHAによれば、遵法支援プログラムには、自主的プログラムやパートナーシップ・プログラム、英語を話さない労働者への集中的アウトリーチ活動なども含まれており、追加予算で賄うこととなっている。



大統領候補ら、OSHAの強化、エルゴ法規を支持

 ワシントン − 安全衛生となると、大統領候補らの立場はどのようなものだろうか。アメリカ労働総同盟産業別労働組合会議(AFL-CIO)は、この回答を得るため、主要な大統領候補らに質問状を送付した。質問状は、さまざまな問題に触れているが、労働安全については2つ、「労働者の職場での安全衛生をどう保護するか?」、「労働者をエルゴノミクス傷害から保護する新しい基準を支持するか、これに反対するか?」と設問している。
 現職のブッシュ大統領を除き、すべての大統領候補は回答した。本質的には、民主党候補は全員、予算や人員の増加、監督権限の強化による労働安全衛生庁(OSHA)の強化を支持すると述べた。エルゴノミクス問題については、大統領候補全員が、新しい基準を支持すると答えた。
 質問状全文は、www.aflcio.org/issuespolitics/politics/candidates_2004で閲覧できる。



OSHA、遵法支援で新しい2つのツールを提供

 ワシントン − 「労働安全衛生庁(OSHA)には何ができ、支援を要する人々をどう支援していけるのか、こういったことをアメリカの労働者や事業者が知ることが肝要である」と、OSHAのジョン・ヘンショー長官は、企業の安全衛生義務の遵守を支援する2つの新しいツールをOSHAのウェブサイトに立ち上げたことに触れて、こう述べた。
 「これらのツールは、とくに小企業や新興企業にとって、OSHAのウェブサイト上の遵法支援ツールへの入門書となる」とヘンショー長官。
 MyOSHAでは、ユーザーはOSHAのオンラインツールへ個人用のリンクを設定できる。手引きプログラムは、ツールについて手ほどきをし、セットアップ・プロセスに導いて、主要な機能を説明する。
 Quick Startは、主要なOSHA要件やOSHAの遵法支援(Compliance Assistance)ウェブページにある手引書をユーザーが特定するのを、段階的に支援する。Quick Startは、OSHAの一般産業基準(general industry standards)の適用対象となる事業場について、OSHAの記録保持、報告義務に関する情報を掲載したモジュールを掲載しており、遵法支援ツールや主要な基準へのリンクも提供する。
 Quick Startにはまた、書式集、データ表、刊行物、OSHAのウェブページやeツール、サンプルプログラムを掲載したライブラリーがある。



調査報告:腰痛に、休業は不要


 フィラデルフィア − オランダの調査チームの新しい調査によれば、腰痛をおして働くと、休業日数が減る。この6ヶ月間の調査では、オランダの航空会社の職員で腰痛を患う134人は、「段階的な運動(graded activity)」プログラムないし従来の治療のどちらかを受けた。
 段階的な運動は、週に2回、1時間の体操時間があり、参加者には、徐々に通常の職務を再開するよう奨励する。この段階的な運動プログラムへの参加者は、従来の治療を受けたものに比べ、休業日数が大幅に減った。前者の休業日数は58日、後者は87日であった。
 本調査は、オランダ健康保険審議会(Dutch Health Insurance Executive Council)の資金協力を得て、内科学紀要(Annals of Internal Medicine, Vol. 140, No. 2)に掲載された。これに関連して、ダートマス・ヒッチコック医学センター(Dartmouth-Hitchcock Medical Center、ニューハンプシャー州レバノン市)のジェームズ・ワインスタイン(James Weinstein)氏は、「これは、腰痛の経済的、社会的費用を軽減する治療を調査したものとして、重要である」と書いている。
 腰痛の理解を深めるには、医師はより多くの調査を待たねばならないが、ワインスタイン氏は、医師は「よけいな処置を控えて、患者には、『痛みは、あっても病気やけがというわけではない』と伝える」べきであると付け加えた。




あなたのご意見は?

あなたの職場の安全委員会は、どれだけ頻繁に会合しますか?

月に一回 68.1%
四半期に一回 13.0%
週に一回 5.0%
2週間に一回 4.3%
2ヶ月に一回 4.3%
委員会はない 5.0%

 「あなたのご意見は?(What's Your Opinion?)」欄では、読者の意見を定期的にサンプリング。質問は、2週間毎に更新します。www.nsc.orgで、「会員専用」ウェブサイトを開くと、最新の質問が載っています。結果は、本誌で毎月紹介します。



速 報

 上院は、労働省(Department of Labor)の主要ポスト2席への被指名者を確認した。次官(deputy secretary)には、スティーヴン・J・ロー(Steven J. Law)氏、法務官(solicitor)には、ハワード・M・ラズリー(Howard M. Radzely)氏。ロー氏は、2001年2月から、エレイン・チャオ労働長官の首席補佐官(chief of staff)を務め、議会では、上院首脳部の主席補佐官(top Senate leadership aide)を務め、上院倫理委員会(Senate Ethics Committee)委員長付きの顧問(counsel)も務めた。ラズリー氏は、2003年1月から、ユージーン・スカリア(Eugene Scalia)氏の後任として、労働省法務官代理(acting solicitor of Labor)を務めた。

 米国化学物質安全性調査委員会(U.S. Chemical Safety and Hazard Investigation Board: CSB)は、昨年起きたWest Pharmaceutical Servicesの工場(ノースカロライナ州キンストン市)で起きた粉じん爆発火災事故について、調査を拡大した。この事故で浮かび上がった安全問題を全米規模で再検討するためである。キャロリン・メリット委員長(Carolyn Merritt, chairman)は、1月28日の声明で、キンストン市の事故や、やはりケンタッキー州で起きた同種の事故は、「国家規模の重大性を帯びた安全問題を提起した。われわれ調査団は、2事故とも、可燃性の粉じんの蓄積が原因であったことを突き止めた」。

 ノーマン・ミネタ運輸長官(Norman Mineta, Secretary of Transportation)は、過去5年間で、飲酒運転による交通事故の死亡率は、32州では減ったものの、17州で増えたと発表した。この日、全米幹線道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration)は、1982〜2002年の飲酒運転による死亡事故の州別報告を発表した。

 ジョン・ピーター・スワレズ(John Peter Suarez)氏は、環境保護局(Environmental Protection Agency: EPA)監督・遵法推進室担当長官補(assistant administrator for the Office of Enforcement and Compliance Assurance)を辞任すると発表した。スワレズ氏は、ブッシュ大統領に辞任願を提出するにあたり、自身の「厳重取締り」イニシアチブ("Smart Enforcement" Initiative)を称え、EPAの監督プログラムは「妥当である」と特色づけた。監督・遵法推進室からは、このほか2名の高官が辞任した。ブルース・バックハイト大気保全監督課長(Bruce Buckheit, head of air enforcement division)およびリッチ・ビオンディ副課長(Rich Biondi, deputy)は、ブッシュ政権は監督活動を妨げるとの理由で、辞任すると述べた。

 ブッシュ大統領は、1月9日付メモを行政機関のすべての長に送付、2004〜2006会計年度で安全衛生職場復帰イニシアチブ(Safety, Health and Return-to-Employment Initiative)を創設したと伝えた。全省庁は、この3ヵ年プログラムに参加せねばならない。イニシアチブは、職場の傷病率の低減、休業傷病率の低減、時宜を得た傷病報告、労働災害(負傷及び疾病)による休業日数の削減という4本立てで、傷害者数の削減をめざす。

 米消防局(U.S. Fire Administration: USFA)は、1月7日、2003年の消防士の殉死者数を発表した。死者数は110人、2002年の100人より10人多い。このうち、30人は、消防局が雇う常勤の職業消防士で、80人はボランティア、季節労働またはパートタイム労働の消防士であった。消防局によれば、36州および米領グアムは、昨年最低1人の消防士を失った。昨年、荒地火災では29人の消防士が死亡、この類としては1994年以来最多の死者を出した。

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調査報告:運動は、作業効率を改善


 イリノイ州アーリントンハイツ − 労働環境医学ジャーナル(Journal of Occupational and Environmental Medicine)(Vol. 46, No. 1) に掲載された最新の調査報告によると、少なくとも適度に体調が保たれ、活発に体を動かす労働者は、労働の質も高く、総じて良好な職務実績を修める。
 調査チームは、健康リスク評価を受けたさまざまな職業の683人について、健康・生活様式要素を分析した。運動レベル、健康状態の評価、肥満を、労働者の評定した職務実績と比較した。 
 調査では、運動と健康状態が、職務実績に大きく影響することが判明した。健康状態が向上すれば、仕事量も増えた。また、健康状態のよい労働者は、少ないエネルギーで仕事をこなした。
 逆に、肥満は、仕事に著しい負の影響を及ぼした。肥満度の高い労働者は、健康状態のよい同僚に比べ、休業日数が多いと調査チームは述べた。



キャンベル賞を後援するエクソン・モービル社では、安全が枢要

 エクソン・モービル社(Exxon Mobil Corp.)の社員は、石油産業における安全の重要性を認識し、安全文化を事業の骨組みとして作り上げている。
 「石油やガス、石油化学製品の生産には、非常に神経を使う」と、エクソン・モービル社(本社、ダラス市)のマイク・ヘンデリック安全プログラム部長(Mike Henderek, safety program manager)は言う。「責任ある法人市民として、また責任ある供給者としてのわれわれにとって最重要なものの一つは、安全に生産し、納品するということである」。
 「いろいろな理由から、われわれは、会社が成功を収めるには安全が不可欠であると考えている」とヘンデリック氏は付け加えた。優れた安全行動は、一流かつ完全無欠な操業への当社のコミットメントを、目に見える形で実践した表れである。
 これはまた、エクソン・モービル社が、全米安全評議会(NSC)や他の世界的企業と共にロバート・W・キャンベル賞(Robert W. Campbell Award)を設立し、安全衛生や環境問題を枢要な事業価値として掲げる企業を顕彰する理由の一つである。
 NSCの初代会長に因んだキャンベル賞は、この9月、ニューオーリンズ市で開催されるNSC会議&展示会(NSC Congress & Expo)で初めて授与される。キャンベル賞への参加同意書は、3月31日締め切りで、今年度のプログラムに参加するための、書類の提出は、5月31日までの消印が有効である。
 安全は、労働の現場から役員室に及ぶ価値であり、組み立てラインや収益報告の最下行の数字で測定可能であると、ヘンデリック氏は指摘した。エクソン・モービル社は、事業統合管理システム(Operations Integrity Management System)体制を採っており、ヘンデリック氏によれば、これは、「同社の事業の他の側面を引き締めている。われわれが、常に改善をめざすのを促す共通のテーマとなっている」。
 エクソン・モービル社がキャンベル賞を後援することになったのは、このように徹底的な安全衛生環境管理システムの採用で、成果を享受してきたからである。「安全衛生環境管理の体系的アプローチにコミットする企業は、われわれが享受したすべての成果を得るだろうと思う」とヘンデリック氏。
 「こうした成果は、社会における産業のアイデンティティや評判にとって大変重要であるから、このようなアプローチを採用し、従業員や生産性への成果を実際に証明できる企業を表彰したいと考えた」と同氏。
 キャンベル賞の影響は、受賞者への拍手喝さいが鳴り止んだ後も長く持続するとヘンデリック氏は述べた。「より高い次元で、キャンベル賞は、より大きな目標の達成手段である」と同氏。「最終的には、安全衛生環境管理をどう事業計画へ統合すべきか、深い理解を広めていきたい」。
 「われわれの目標は、キャンベル賞受賞者のケーススタディを工学や学士コースのカリキュラムに組み入れ、次世代の学生が、大学を出る時には、安全衛生環境管理を総合的な企業モデルに完全に組み入れることの重要性を理解していることである」とヘンデリック氏は述べた。
 ロバート・W・キャンベル賞についての詳細は、www.campbellaward.orgで閲覧できる。