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NSC発行「Safety + Health」2004年5月号

産業特集


 農業

フロリダ州法、農業労働者の酷使に照準

フロリダ州タラハシー(Tallahassee) − ジェブ・ブッシュ(Jeb Bush)知事(共和党)は、農業労働者をよりよく保護し、農場経営者と労働者の強固な関係を促進する目的で、この3月に法律を導入した。
 ブッシュ知事は、州政府が、酷使の申し立てについてよりよく調査し、労働条件を監視する委員会を創設するよう、望んでいる。
 「われわれの目標は、移民労働者の権利を守り、こうした労働者の適切な賃金を推進する農業ビジネスの風土を培うことにある」とブッシュ知事は述べた。「これを実行する最善策は、法律違反者に照準を絞り、悪質な行為に対し、刑罰を重くすることである」。
 この法律は、労働条件が労働者の安全衛生・福祉に脅威を与える場合、農業請負業者に第3級重罪を課すことを州政府に認める。酷使者への罰金の最高額は、千ドルから2千5百ドルに増額する。
 同法ではまた、請負業者が、彼らから食料・水・住居を購入するよう労働者に強要することを禁止する。



 建設業

調査で、移動式建設機器の接地作業を検討

メリーランド州ベセズダ(Bethesda) − 電気工事業基金(Electrical Contracting Foundation)が今春開始した調査プロジェクトは、高圧送電線・設備の建設・保守作業に用いられる移動式建設機器の接地作業について、もっとも安全かつ効果的な方法を見極めるのをめざす。
 現在、労働者を感電死やアークから保護するもっとも有効な接地技術については、業界基準はない。
 電気工事業基金は、調査の最終結果が、建設・保守プロジェクトで、移動式建設機器を効果的に接地するための業界推奨慣行となるであろうと述べた。最終結果は、全米架電基準(National Electrical Installation Standards)の一部として発表される。


事実チェック
休業を伴う非死亡の労働傷害件数(建設業、2001年)
出 所:National Safety Council(NSC), "Injury Facts" 2003年


NECA、ニューヨーク建築法の改正を提案

メリーランド州ベセズダ − 全米電気工事業者協会(National Electrical Contractors Association: NECA)は、ニューヨーク州建築法(building codes)を見直し中のニューヨーク州法規施行・行政課(New York Division of Code Enforcement and Administration)に対し、3ヶ所の法律改正案を提出した。
 NECA案は、ニューヨーク州建築法は、現行の2002年全米電気規約(National Electrical Code)を参考資料として引用し、国際住宅規約(International Residential Code)から引用した電気の章を削除するよう、勧告している。NECAは、国際住宅規約には、以下を含め、重大な欠陥があると主張した。
  • 国際住宅規約は、空調装置または電気暖房器のような一般家庭用電気設備に関し、配線規則を設けていない。
  • 国際住宅規約の電気に関する章を引用すると、混乱や遅延を招く。というのも、電気工、電気工事業者や監督官は、全米電気規約で訓練を受けているからである。
 「全米電気規約は、わが国の配線規則であり、恐らく世界でもっとも広く用いられている安全資料である」と、NECAのブルック・ストーファー基準・安全担当常務理事(Brooke Stauffer, executive director of standards and safety)は述べた。「一方、国際住宅規約は不完全で、関係者の合意を得ておらず、電気の専門ではない建築担当者協会が執筆した出版物である」。



 製造業

半導体工業会、業界内の労働衛生を調査

ワシントン − 米国半導体工業会(Semiconductor Industry Association)は、米国チップ産業のウェーハ製造工が、業界内の他の労働者よりガン罹病率が高いかどうかを見極めるため、過去にさかのぼって調査する計画を発表した。
 1999年、同協会は、労働衛生の専門家からなる独立した調査員団に対し、半導体製造業の労働者は、ガンになる危険性が高いかどうか、評価を委託した。調査員団は、ガンの危険性については確証を得られなかったものの、チップ製造業での疫学的調査を検討するよう勧告した。協会は、熟考の末、調査を完結するのに充分な病歴データがそろったと判断し、現在、企画段階に進もうとしている。
 この調査計画は、半導体業界に蔓延する化学安全問題を企業が故意に看過したとして、従業員が企業を提訴する訴訟数件が進行するなか、発表された。
 ナショナル・セミコンダクター(株)(National Semiconductor Corp.)の元従業員らは、さまざまな疾病を理由に、カリフォルニア州裁判所で同社を提訴している。2月には、IBMが、カリフォルニア州のコンピューターハードディスク装置工場での雇用がガンを引き起こしたとして、元従業員2名が起こした訴訟に勝訴した。3月には、IBMは、ニューヨーク州のマイクロチップ工場での化学物質への暴露が、女児の先天性異常の原因であると訴えた元従業員と、法廷によらずに和解した。



 サービス業

保健社会福祉省、 世界貿易センター救助隊員らの健康診断に資金拠出

ワシントン − 保健社会福祉省(Department of Health and Human Services)は、世界貿易センター跡地で復旧、救助、復興作業に従事したニューヨーク市消防署員その他の労働者を対象とした5ヵ年健康診断プログラム(予算8千百万ドル)への資金協力として、8件の助成金を交付したと発表した。
 跡地で従事した4万人以上もの労働者やボランティアのうち、ニューヨーク市消防署員全員と約1万1千人の救助隊員は、初期の健康診断を受けている。5ヵ年健診プログラムは、追加で無償の健康診断を長期にわたり提供し、専門家が、症状、傷害や健康状態とグラウンド・ゼロ(爆心地)での作業は関連しているかどうかを見極め、介入方法を開発する。
 一方、環境保護局(EPA)は、「世界貿易センタービルの倒壊で影響を被った労働者や住民の健康被害の監視活動を現在実施しているが、これについてより多くの情報を得る目的で」、17名からなる技術検討委員会を構成したと述べた。
 委員会は、暴露の危険性をより良く追跡するため、健康登録簿を充実すべき地域を24ヶ月以内に特定すると、EPAは述べた。委員会はまた、他の公私団体が実施中の調査を「再検討・統合」する。
 技術検討委員会に関する詳細情報は、EPAのウェブサイト、www.epa.gov/wtc/panelで入手できる。


国土安全保障省、緊急対応要員の個人用保護具基準を採択

ワシントン − 国土安全保障省科学技術局(Science and Technology Division, Department of Homeland Security)は、化学、生物、放射線、および核事故に対応する緊急対応要員を守る個人用保護具に関し、初の基準を採択した。
 同省は、全国防火協会(National Fire Protection Association)および国立労働安全衛生研究所(NIOSH)と共同で、個人用保護具基準を開発した。当局によれば、基準は、緊急対応装具の購入を決定する際の州・地方当局担当者の手引きとして設計されている。基準はまた、メーカーが性能要件や検査手法を確立するのに役立つ。
 詳細は、国土安全保障省のウェブサイト、www.dhs.govを開かれたい。



 公益事業

控訴院:EPA規則は、小規模ごみ焼却施設に不適切と裁定

ワシントン − コロンビア特別区連邦巡回控訴院(U.S. Circuit Court of Appeals for the District of Columbia)はこのほど、環境保護局(EPA)は、ある種のごみ焼却炉に関する有害汚染物質の排出規制規則を書き直さなければならないと裁定した。
 裁判所は、EPAは、現在稼動中の汚染度のもっとも少ない焼却炉の性能にともかく見合った小規模の自治体のごみ焼却炉に関する規制を設けるという、大気浄化法(Clean Air Act)下の義務を満たしていないと指摘した。その結果、裁判所は、EPAに対し、新しく規則を設けるため、一からやり直すよう、命じた。
 規則は、一日あたり35 〜250トンのごみ焼却能力のある、推定90基の自治体の焼却炉に影響を及ぼす。