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NSC発行「Safety + Health」2004年5月号

ニュース


ミシガン州、独自のエルゴノミクス基準を検討中

ミシガン州ランシング(Lansing) − ミシガン州は、独自のエルゴノミクス規則の制定をめぐり、その可能性を探っている。同州は、連邦エルゴ規則やワシントン州エルゴ規則の撤回、カリフォルニア州エルゴ基準への非難集中をめぐり、議論が白熱する中で、慎重にゆっくりと事を進めている。
 ミシガン州では、公労使の代表から成るエルゴノミクス基準諮問委員会(Ergonomics Standard Advisory Committee)が、2003年10月より会合を重ねてきた。2月現在、委員会は、エルゴノミクスの主要課題はなにか、基準の範囲はどうあるべきか、基準にはなにを盛り込むべきかについて、意見を収集した。
 ミシガン州労働安全衛生庁(MIOSHA)のダグ・カリノウスキー長官(Doug Kalinowski, director)は、基準作成プロセスはまだ準備段階にあると述べた。「委員会はまだ、規則のかたちでは一言も書き記してはいない」と長官。MIOSHAは、委員会を事務支援している。カリノウスキー長官によると、委員会の次の段階は、なにかを文書化するのはいったい可能なのかどうかを決定することである。
 委員会は、エルゴノミクス基準は異論の多い問題であるため、じっくりと周到なアプローチを採っている。
 「私の推測では、多くの人々は、成立後撤回された連邦基準によく似たものが、ミシガン州でも作成・提案されるのではと懸念しているのではないだろうか」とカリノウスキー長官。しかし長官は、連邦基準と似た基準がミシガン州で作成されるとは考えていない。「私の見解では、そうはならないだろう。というのも、(連邦基準に)似たものでは、コンセンサス(意見の一致)は得られないからである」。
 歴史的にミシガン州は、利害関係者から強い反対がある場合には、法規を成立させられなかった経緯があると、カリノウスキー長官はいう。したがって、利害関係者の意見の一致をみることは、委員会にとってきわめて重要なことだと、長官は述べた。
 委員会は慎重を期しているが、この問題をめぐっては強硬意見が不満をあおっている。米国独立企業連盟(National Federation of Independent Business)のミシガン州支部長、チャーリー・オーエンズ(Charlie Owens)氏は、州政府は、施行するのに経費が高くつくエルゴ基準を推し進めようとしていると非難し、抗議する意味で、2月17日、基準諮問委員会を辞任した。同連盟は、ミシガン州内のおよそ2万もの小企業を代表して、陳情活動を展開している。
 「われわれは、罰金や刑罰、遵法監督指導で盛りだくさんの州エルゴ基準を持つという点で、カリフォルニア州に次ぐ唯ニの州になるとは、信じがたい」と、オーエンズ氏は、辞表にこう書いた。
 カリノウスキー長官は、オーエンズ氏の辞職は「不満をあおった」と認めつつ、基準が必然であるとの推測は真実ではないと述べた。
 「確かに、エルゴノミクス障害は、ミシガン州や全米規模の問題である。しかし、この問題に取り組むのに、基準が適切であるかどうか、答えはまだ出ていない」と長官。
 諮問委員会が基準案を草案したとして、最終法規の作成には何年もかかるだろうと、カリノウスキー長官は予測する。長官は、連邦政府のプロセスよりも「委曲を尽くした」ミシガン州の長い法令発布プロセスに言及した。
 諮問委員会は、2003年9月、一般産業基準委員会(General Industry Standards Commissioners)および労働衛生基準委員会(Occupational Health Standards Commissioners)の合同運営委員会から、「目標達成型の単純な、ユーザー本位の」エルゴノミクス基準案を起草するよう、委託された。
 基準案には、事業者に対する予防義務、傷害発生後の義務を盛り込むべきであると、基準諮問委員会は記している。委員会は、2002年6月、ジョン・イングラー(John Engler)前知事が任命した。
本件の詳細は、ミシガン州労働安全衛生庁のウェブサイト、www.michigan.gov/cis/0,1607,7-154-11407---,00.htmlに掲載されている。「Ergonomics Standard Advisory Committee」を検索すること。



事実チェック
2002年度、米国、業務中及び業務外の死亡災害
業務中

4,900


 業務外

44,700

出 所:National Safety Council(NSC), "Injury Facts" 2003年



OSHA、HazComイニシアチブを開始。エンジ議員、上院公聴会を開催

ワシントン − 労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)は、化学物質等安全データシート(MSDS)要件に改定が必要かどうか再検討し、3月16日、職場でのハザード・コミュニケーション(hazard communication: HazCom)の質を高めることを目指したイニシアチブを開始した。
 イニシアチブは、ガイダンス、教育および警戒、法の執行に照準を絞る。鍵となる柱は遵法支援であると、OSHAはいう。当局は、ウェブサイト上にHazCom情報源を整理統合したページを設け、サイト上の一点からアクセスできるようにした。
 ウェブサイトでは、コメントの一般公募に向け、HazCom問題に関する資料草案も閲覧できるようにした。このなかの一部を紹介する。
  • 危険・有害性決定ガイド(Hazard Determination Guidanceは、化学物質製造業者や輸入業者に対し、正しい情報を特定し、これを評価して、適切に危険・有害性を決定するのを支援する。
  • 模擬訓練プログラム(Model Training Programは、従業員訓練プログラム開発のためのガイダンスを示す。
  • MSDS作成のためのガイダンス(Guidance for Preparation of MSDSs)は、MSDSの正確さとわかりやすさを扱っており、包含すべき情報源を提案している。OSHAは、先の二資料のコメント期間終了後に、本ガイダンスを掲示する。
 OSHAは、マイク・エンジ上院議員(Mike Enzi、共和党、ワイオミング州)が、OSHAのMSDS規制を改善するよう求めて、議会公聴会を開いた1週間程前に、HazComイニシアチブを立ち上げた。エンジ議員は、OSHAを監督する上院雇用・安全・訓練小委員会(Senate Employment, Safety and Training Subcommittee)の委員長を務める。
 3月25日の公聴会は、化学物質の危険・有害性に対し、労働者が職場で享受している保護策や、危険状況への対処についてMSDSから得られる情報に関し、証言を引き出すのが狙い。化学メーカーは概して、「工場の現場ではなく、裁判所や研究所を意識して」MSDSを作成すると、エンジ議員はいう。緊急時には、労働者は、複雑な技術専門用語だらけのページをあちこちめくるだけのゆとりはないと、エンジ議員は述べた。



FBI、職場の暴力に関する報告書を発表

ワシントン − 先日発表された連邦捜査局(Federal Bureau of Investigation: FBI)の報告書によれば、事業者には、脅威や暴力のない職場を創る「法的、倫理的義務」がある。企業はまた、労働損失日数、従業員の勤労意欲や生産性の低下、労災補償費用の支払い増や医療費、訴訟といった形で、職場の暴力による経済的損失を被る。
 報告書は、職場の暴力の予防における事業者の役割を、次のとおり提案している。
  • 職場の暴力に関する方針と暴力予防プログラムを採用し、これらを従業員へ伝達する。
  • 新規および現職の従業員、監督者、管理職全員に対し、暴力予防対策に関する定期訓練を提供する。
  • 公正かつ一貫性のある懲戒規程を採用・実施する。
  • 従業員間、従業員‐管理職間の信頼と尊敬の社風を醸成する。
  • 必要に応じ、外部専門家の助言・支援を求める。
 報告書は、従業員、労働組合、規制当局、労働安全・刑事裁判所、医療・精神衛生・社会福祉機関や立法府議員に対する勧告を列挙している。
 FBIの報告書「職場の暴力:とりまく課題(Violence in the Workplace: Issues in Response)」は、www.fbi.gov/page2/march04/violence030104.htmで閲覧できる。




あなたのご意見は?

安全専門家の労働市場をどのように見ますか?
成長する 37.1%
収縮する 35.8%
変わらない 27.1%
 「あなたのご意見は?(What's Your Opinion?)」欄では、読者の意見を定期的に集め、質問は2週間毎に更新します。www.nsc.orgで、「会員専用」ウェブサイトを開くと、最新の質問が載っています。結果は、本誌で毎月紹介します。




速 報

 米国連合通信社 (Associated Press: AP)の調査によると、より良い賃金を求めて米国に入国したメキシコ人労働者は、一日一人の割合で業務上死亡している。1990年代半ば、メキシコ人労働者は、米国生まれの労働者より30%も高い確率で死亡したとAP社は報じた。現在では、80%高い確率で死亡している。

 州幹線道路安全連合(State Highway Safety Alliance)およびNationwide Mutual Insurance Co.が実施した全米世論調査では、米国民は圧倒的多数で、幹線道路の安全改善に対する公的予算の利用を支持している。世論調査では、国民の87%が連邦予算の投入を支持している。回答者の77%は、常に安全運転をしていると考えている一方、85%は、時々または頻繁に、時速5マイル以上の制限速度超過をしていると認めている。

 マドリード市(Madrid)で乗客201人が死亡した3月11日の列車テロの余波を受けて、米国の国会議員数名は、米国内の通勤列車網、とくに連邦政府が補助金を投入している全米鉄道旅客輸送公社(アムトラック、Amtrack)の鉄道網を網羅する安全保障システムの欠如について、疑問を呈した。オリンピア・J. スノー(Olympia J. Snowe)上院議員(共和党、メイン州)およびマイク・キャスル(Mike Castle) 下院議員(共和党、デラウェア州)は、トム・リッジ国土安全保障長官(Tom Ridge, Secretary of Homeland Security)に宛てた3月12日付けの書簡で、空港や海港の新しい安全保障技術に割り当てられた国土安全保障省予算の数十億ドルと、鉄道保護の1億1,500万ドルとの間の不均衡について、説明を求めた。

 環境保護局(Environmental Protection Agency: EPA)は、3月8日、有害産業廃棄物除去基金国家最優先リスト(Superfund National Priorities List)に新たに11ヶ所の高危険度有害廃棄地域を追加した。追加されたのは、次の11ヶ所。(以下略)

 労働安全衛生庁(OSHA)からの新しい安全衛生ガイダンスは、労働者や事業者に、鳥インフルエンザの危険性について警告し、感染の防ぎ方について実践的な勧告を提案している。OSHAは、新興の感染病を非常に懸念している。鳥インフルエンザは主に鳥にうつるが、アジアでの最近の事例では、人に感染する場合もあり、懸念される」と、ジョン・ヘンショーOSHA長官は述べた。

 米国疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)の調査によると、運動不足で食べ過ぎて命を落とす米国人は、本来予防可能な死亡原因の首位である喫煙に急迫する勢いである。2000年には、肥満や運動不足とを含めて不健康な食生活が原因で、40万人の米国人が死亡したが、これは、死者総数の16%強を占め、死亡原因の第2位である。喫煙では、43万5千人が死亡、死者総数の18%を占める。

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NIOSHアラート、有害医薬品への暴露による危険を警告

ワシントン − 国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)の新しい「アラート(Alert 警告)」によると、有害な医薬品を調合・投与する、または有害な医薬品が使用される現場で働く保健衛生労働者は、健康上の危険にさらされている。
 NIOSHのアラートは、保健衛生労働者およびその雇用主に対し、抗新生物薬その他の有害な医薬品への暴露による潜在的危険性について警告し、こうした労働者の健康を守る適切な対策を採るよう、注意を喚起した。
 アラートによると、暴露の可能性がある人は、出荷・荷受け担当、薬剤師・薬剤テクニシャン、看護師、医師、手術室スタッフ、環境整備担当、および有害医薬品を用いる家畜病院のスタッフ。アラートでは、医薬品製造部門の労働者については対象としていない。
 暴露は、吸入、皮膚からの吸収、摂取や注射を経由するが、吸入および皮膚からの吸収がもっとも多い経路である。
 NIOSHのアラートは、オンライン、www.cdc.gov/NIOSHで閲覧できる。印刷バージョンの順番待ち名簿へ登録する場合は、電話(800)356-4674、またはeメールpubstaft@cdc.govに連絡されたい。