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NSC発行「Safety + Health」2004年6月号

ニュース


OSHA、2004年度特定事業場基準を変更

ワシントン − 労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)は、今年、特定事業場監督(site-specific targeting: SST)プログラムで監督対象として高危険度の職場を選ぶ際に用いる基準を変更した。
 当局は、この4月、4千の事業場の特定を開始した。ちなみに2003年の発表では、3,200の事業場であった。事業場の増加は、一部、老人ホームや介護施設の追加によるものである。過去2年間、老人ホーム等は、特定産業の危険性に取り組む別の国家重点プログラム(National Emphasis Program)で対応していたが、これは昨年で終了した。OSHAは、老人ホームを対象としたSSTプログラムでは引き続き、血液感染病原体・結核問題や、すべり・つまずき、墜落・転落のほか、入居者の移動等に関連したエルゴノミクス的ストレッサーに照準を絞ると述べた。
 2004年の計画の重要な変更は、対象リストの選択方法である。当局は従来、過去6年間の傷病データを下敷きに選んでいた。OSHAは今年、休業または就業制限を伴う傷病を計るシステム、いわゆるDART率を用いる。この基準をもとに、事業者がOSHAに提出する傷病記録で常用雇用100人あたり15件以上の傷病報告のあった事業場は、最優先対象先4,000の事業場に組み込まれている。
 最優先対象リストには、休業災害率(Days Away from Work Injury and Illness rate)が10以上の事業場も入っている。これらは、常用雇用100人あたり10件以上の休業災害があった事業場である。最優先リストからは漏れたものの、DART率が8.0〜15.0の間、または休業災害率4.0〜10.0の間を記録した事業者は、監督対象となりうる準優先事業場リストに列挙される。



事実チェック
腰痛は、予算も締めつける。
 腰痛の患者に対する一人あたりの年間支出額は、腰痛のない患者と比べると、3,498ドル対2,177ドルと、1.6倍も高い。
 この差は、全カテゴリーで見られる。
腰痛の患者 腰痛のない患者
入院費用 1,075ドル 774ドル
通院    910ドル 425ドル
医師の処方による薬剤    541ドル 340ドル
外来患者の看護     460ドル 248ドル
家庭での治療     105ドル   92ドル
緊急治療室     102ドル   61ドル

出 所:Duke University Medical Center、2004年



自営業者は、労働死亡災害のリスク大

ワシントン − 自営業者は、2001年の米国の労働力人口の7.4%に過ぎないが、この年の労災死亡者数のおよそ20%を占める。これは、労働統計局(Bureau of Labor Statistics: BLS)の刊行する月間労働概観(Monthly Labor Review2004年3月号で明らかとなった調査結果である。
 BLSのエコノミスト、スティーブン・ペグラ(Stephen Pegula)氏は、自営業者と賃金・俸給労働者との間の労災死亡者数の格差を分析した。2001年の賃金・俸給労働者の死亡者総数は10万人あたり3.9人、一方、自営業者は10万人あたり11.2人となっている。
 ペグラ氏は、自営業者は、死亡率の高い産業や職業で仕事をしている場合が多く、このため、死亡率が高いと結論した。しかし、同一の高危険度の職業のなかで自営業者と賃金・俸給労働者を比較すると、自営業者の死亡率が依然として高い。ペグラ氏は、この理由を自営業者に共通する特徴に帰した。自営業者は、長時間働く傾向があり、年齢が高い場合が多いため、業務上死亡するリスクも高くなるというのである。
 賃金・俸給労働者との比較で判明したその他の所見を挙げると、自営業者は、以下の可能性が高い。
  • 農林水産業に従事している。
  • 小売店舗の管理、農業用車両の運転・操作、樹木の伐採搬出・刈り込み・剪定、農業機械の操作、家畜の世話中に死亡する。
  • 殺人、非幹線道路・非衝突事故、物に激突される、自傷行為によるけがで死亡する。
 この記事は、www.bls.gov/opub/mlr/mlrhome.htmで閲覧できる。



カリフォルニア州、労災補償を全面見直し、医師ネットワークを創設

カリフォルニア州サクラメント(Sacramento) −  4月19日、カリフォルニア州のアーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger、共和党)知事は、新しい一組の労災補償規則に署名して法律を成立させ、この全面的な見直しは手間を省き、事業費を減らすと述べた。
 改革の主眼は、医師の選択方法を中心としたものである。旧来の制度では、従業員は、自分で医師を選んでいた。今後は、事業者や保険会社の創った医師ネットワークから選ぶことになる。また、ネットワークの医師は、国家公認の治療ガイドラインに従わねばならない。
 その他、一時的労働不能手当ての支給を5年ではなく2年を上限とする、職場復帰プログラムを奨励する、労働不能手当てを業務上傷害に限定する条項がある。
 ランド公民正義研究所(Rand Institute for Civil Justices、カリフォルニア州サンタモニカ市、Santa Monica)の2003年の調査によると、カリフォルニア州の労災補償制度は、賃金総額100ドルあたり5.23ドルと、全米で最も高い保険料率であえいでいた。今回の改革で、カリフォルニア州の事業者は、年間40億ドルを節約できると予想されている。



休業災害
140万件
2002年の休業1日以上の傷病件数。
トラック運転手
2002年の傷病による休業災害がもっとも多かった職種。この年は、112,200人の運転手が休業した。トラック運転手の次には、看護助手・病棟勤務員・付き添い(79,000人)、非建設作業員(76,600人)がくる。
617,200件
2002年の傷害原因の首位である捻挫・筋挫傷(ほとんどは腰痛)による休業災害件数。このほか、挫傷・打撲傷(127,000件)、切創・裂傷(110,200件)、骨折(99,200件)も合わせると、これらの傷害は、休業災害総件数の三分の二を占める。

出 所:「Lost-Work Time Injuries and Illness: Characteristics and Resulting Days Away From Work, 2002」、Bureau of Labor Statistics、2004年



速 報

 労働省(Department of Labor)は、4月20日、公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)の下、「ホワイトカラー」労働者の残業手当資格を規制する最終規則を公布した。規則は、50年以上もの間、実質的に更新されたことはなかった。新規則については、労働組合が反対しているが、エレイン・L・チャオ労働長官(Elaine L. Chao, Secretary of Labor)は、本規則は、「より多くのアメリカの労働者の残業の権利を今まで以上に保証・強化するものである」と述べた。

 労働安全衛生庁(OSHA)は、港湾基準および海運ターミナル基準(Longshoring and Marine Terminals Standards)の垂直タンデムリフトをめぐる改正案について、7月29日よりワシントン市で非公式の公聴会の開催を予定している。公聴会は、あらゆる人々に開かれており、労働省Frances Perkins Building(200 Constitution Ave., N.W., Washington, DC)で、7月29日午前10時より開催する。

 疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)は、2005会計年度に労働安全衛生教育助成金として650万ドルを確保すると、4月8日付け官報(Federal Register)で発表した。助成金には、労働安全衛生教育・調査センター訓練助成金と、訓練プロジェクト助成金がある。申し込み期限は、7月1日。

 国土安全保障省(Department of Homeland Security)は、先日、同省の対テロコンピューター情報伝達システムを50州、5テリトリー、コロンビア特別区および50の主要都市部に拡げ、連邦、州、自治体の緊急対応担当者間の情報の流れを強化すると発表した。同省は3月、自治体の救急隊を対象とした連邦政府助成金の最低要件について見直すようにとの議会の要請に対し、同意したばかりである。この見直しでは、助成金を州政府経由で自治体に交付していたのを、直接交付することも検討する。

 環境保護局監督・遵法確保室担当長官補佐代理(acting assistant administrator for Office of Enforcement and Compliance Assurance, Environment Protection Agency: EPA)に、トーマス・V・スキナー(Thomas V. Skinner)氏が指名された。スキナー氏は以前、EPA第5地域の地域行政官(regional administrator)を務めていた。EPAに2001年に入局する前は、イリノイ州EPAの局長(director)であった。

 報道機関の報告によると、ミシガン州下院は、5月5日、故意の労働安全違反を法律上定義する法案を承認した。法案は、同州のエルゴ基準の必要性を検討する知事任命の諮問委員会を阻止するための立法措置の一部をなす。法案は、故意の行為とは、事業者が知るところの、あるいは故意の法律無視による有害状況と定義する。類似の法案は、3月18日、上院で可決された。法案は、下院により修正され、上院に差し戻された。

 全米安全評議会(National Safety Council: NSC)は、NSCの刊行する救急・心肺蘇生法(CPR)関連の全教材を含む新しい応急手当訓練プログラムの特約出版社として、McGraw-Hill Higher Education を指定したと発表した。

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EPA大気浄化法、州際汚染に取り組む

ワシントン − 環境保護局(EPA)のマイク・リービット長官(Mike Leavitt, administrator)は、4月14日、2004年大気浄化規則(Clean Air Rules of 2004)を発表した。この一連の措置は、米国史上大気保全のもっとも進展する時期を拓くと、当局はいう。
 「これは、大気が汚くなるという話ではない」とリービット長官。「大気は、きれいになる。この一連の新規則は、健康への脅威に関する新たな理解、より厳しい基準、これらの基準の達成へ向けた国としての決意を盛り込んでいる」。
 発表された主要3規則は、州境を超えた大気汚染の移動を取り上げている。これらは、以下のとおり。
  • 州際大気規則(Interstate Air Rule)。発電所の排出物質の漂流を規制。規制対象の汚染物質を70%削減する上限・取引(cap-and-trade)システムを採用。リービット長官は、今年後半に本規則を完成させると述べた。
  • 水銀規則(Mercury Rule)。発電所から排出される水銀を規制。EPAによると、発電所の水銀排出を規制するのは、これが初めて。リービット長官は、本規則を今年末までに完成させると述べた。
  • ノンロードディーゼル規則(Nonroad Diesel Rule)。排気物質を除去するディーゼルエンジンへと製造方法を転換し、硫黄を除去したディーゼル燃料の精製方法へと転換する。リービット長官は、本規則は5月に完成すると述べた。


労働安全重視の労働者、増加

バージニア州アレクサンドリア(Alexandria, VA) − 4月29日に発表された調査によると、労働者の多くは、職場で安全を実感するのは、仕事の満足度にとって重要だと述べている。 
 人的資源管理協会(Society for Human Resource Management)およびCNNfnの実施したこの調査では、調査対象の労働者の62%は、労働安全は「かなり重要な」問題であると考えている。2002年は、36%であった。また男女とも、労働安全を上位5位内に格付けたが、女性は、男性よりも高い優先順位を付けた。
調査は、米国内の1千名を超える人的資源専門家および労働者にeメールで質問した結果に基づいたものである。