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足場関係災害防止に安全訓練が有効
Scaffolding studies back need for better safety training

(NSC:調査統計部長 アラン・ホスキン)

資料出所:National Safety Council (NSC)発行
「Safety+Health」2004年9月号p.70-72
(仮訳 国際安全衛生センター)



 2002年の米国労働省統計局の死亡災害統計報告によると、714件の墜落死亡災害のうち、12%が足場及び作業構台関連災害だった。2002年の統計によると、足場関連災害により、休業災害を含め、多くの重大災害が発生している。足場関連のハザードは、主に建設業で労働者に影響を及ぼしている。労働省によると、200万人以上の建設労働者、あるいは建設業者の65%は、常時足場を使用した作業を実施しているとのことである。
 2003年会計年度中、OSHAは、建設基準---建設作業、保守作業、及び足場の使用に関する一般的な安全要件である29CFR 1926.451---違反で、9,598件の勧告書を発行した。2003年は、2002年の7,953件と比べると、足場の安全基準違反が20%増加し、建設業でのハザードでは足場に関する勧告書の交付が一番多かった。OSHAは不適切な足場使用により、いかに、ひどい結果につながっているかについて、以下に、いくつかの死亡災害事例を発表している:

  • 建物から石板取り外し準備中の労働者が、パイプが溶接された枠組み足場の3段目から墜落した。手すりは、この足場には設けられていなかった。更に足場板は、氷で覆われており滑りやすい状態となっていた。
  • 原子炉内部の手すりの無い足場で、計測中の労働者がバランスを失ったか、足を踏み外したかして、14.5フィート下に墜落し、死亡した。
  • 手すりの無い足場板(2インチ×10インチ サイズの2枚の板)上で、頭上にボード取り付け中の労働者が、バランスを失って7.5フィート下に墜落し、死亡した。
  • パイプが溶接された枠組み足場が氷、雪で覆われていて、その3段目で作業していた労働者が、滑って約20フィート下の舗装道路上に頭から墜落した。足場板は、次のように不適切な状態であった;手すりが無く、足場の各段には昇降用設備も無かった。

足場の安全評価

 建設工事での足場の使用安全状況及び安全な足場による作業実施に関連する要素を特定した調査研究結果が安全研究ジャーナル誌で最近発表された。
 研究者達は、2001年4月から2002年2月迄の間、全米の113箇所の建設現場を選びデータを集めた。研究者達は、150項目からなるチェックリストを使用し、足場の安全作業について評価を実施した。調査研究対象現場に選んだ基準は、次の2つである:サポートされた足場を使用している現場(例えば地面上に組み立てられた足場、あるいは地面以外の水平面上に組み立てられた足場)、足場が足場組立以外の建設作業で使用されている現場。
 データは、工場建築現場、商業ビル建築現場、及び住宅建築現場の他、当誌会員及び非会員から集められた。調査研究対象113箇所の足場のうち、92%はデータ収集時には、少なくても1人の労働者が足場上で作業していた。
 足場は、労働者が被る傷害リスクあるいは死亡災害リスクに基づき、許容できうるものと許容できないものに分類された。このリスクは、目に見えたハザード、あるいは重大なハザードによってもたらされうるものとした。データによると、足場の68%は受容可能なもので、32%は受容できないものとなっている。受容できない足場のおよそ75%に緊急のハザードがあった。
 113箇所の足場のうち27%は、少なくとも一箇所、構造上の欠陥があった。その主なものとしては次のようなものが見受けられた:敷板等が無かったり、不適切であったもの、建物への適切な壁つなぎが無かったもの、斜面の足場板が、でこぼこしていたもの(他の構造的欠陥と一緒になった時に問題となる恐れがある)、手すり等が無いもの、ジャッキを目一杯伸ばしたもの、過重な荷が置かれているもの、加えて中さんや手すりが無いもの、不適切な昇降用設備(例えば足場枠を昇降したり、この他昇降に関する重大問題等があるもの)、一部分だけに板が張られている作業床及び標準以外の足場板の使用。
 受容できないとされた36箇所の足場のうち、92%は手すりが無く、83%は構造的欠陥があり、78%は昇降用設備が不十分で、72%は不十分な足場板であった。
 OSHAの基準によると、各作業シフトの開始前及び足場の構造上の保全に何らかの問題が発生した後には、有資格者が全ての足場とその足場部品を目視で点検しなければならないとされている。
 労働者が作業していた足場のうち、79%は有資格者がいなければならない現場であった。72人の有資格者がインタビューに答えている。この人々の44%のみが、足場安全講習を受けていた。講習を受けた有資格者がいる現場は、全般的に足場安全の比率が優れていた。訓練受講有資格者のいる足場のうち78%は、受容できうるものとなっていて、この訓練受講有資格者が現場にいない足場では、39%のみが受容できうるものであるとなっていた。
 調査結果によると、足場組立に関する足場専門家を雇っている現場は、全般的に足場安全の比率改善に寄与しているようである。外部契約者によって組み立てられた10箇所の足場のうち、8箇所は受容できるものとなっていて、一方、自社で組み立てられた10箇所の足場では、6箇所のみが受容可能となっていた。
 枠組み足場(これは調査研究対象中、最も多く見受けられたものであるが)、その安全状況について、他のいくつかの組み合わされた足場と比べてみた。安全状況が、枠組みの無い足場はより確保されているようである。
 これらの結果から、特別な現場に適用されているような足場は、一般の枠組み足場と比べるとずっと安全な状態にあるということが判明した。
 150項目のチェックリストを使用して、調査研究者達は、最初の足場安全点検の基本となる4つの重要な要素を次のように特定した:足場板、手すり、昇降用通路及び壁つなぎ。
 これらの項目のいずれかに欠陥が見られるような現場では、より厳しい安全分析を実施することが推奨されている。