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NSC発行「Safety + Health」2004年9月号

産業特集


 農業

ワシントン州の農業労働者、農薬に過剰暴露

 シアトル − ワシントン州厚生省(Department of Health)が実施した血液検査のデータをきっかけに、ワシントン州農政局(Washington Farm Bureau)は、同州の農業労働者の農薬暴露に関する勧告を農場経営者向けに発令した。血液検査では、農薬暴露が予想以上に高い割合であった。
 厚生省は、神経機能を調節する酵素、コリンエステラーゼの濃度を調べる血液検査を実施するよう、事業者に義務付けるプログラムを実施している。コリンエステラーゼの濃度が低いと、頭痛、めまい、かすみ目、下痢、呼吸障害や死を招く。
 農業労働者計568人が定期検査を受けたが、このうち114人は、コリンエステラーゼ濃度が各自の基準濃度より20%低かった。114人中23人は、コリンエステラーゼ濃度が著しく低いため、農薬作業から外さねばならなかった。
 この検査データを受けて、ワシントン州農政局は、農薬取り扱いの安全手順に関し、従業員を訓練し、防護服の着用を徹底するよう、農場経営者に警告した。当局は、検査結果を「気がかり」と称し、農場経営者に従業員訓練の実施を促すため、労働雇用セミナーを実施した。


EPA新規則、養魚場の水質改善をめざす

 ワシントン − 環境保護局(Environmental Protection Agency: EPA)はこのたび、水産養殖施設における集中水産物生産を規制する最終規則を発表した。この規則は、排水を出し、米国内の河川に直接放出するおよそ245ヶ所の養魚施設に適用される。規則は、おもに浮遊固形物といった従来型の汚染物質や、栄養分のような非従来型汚染物質の削減に資する。
 最終規則は、年間10万ポンド以上の魚類を生産し、年間30日以上放水する既存または新規の施設からの排水の直接放出や、網囲いや水中かごで年間10万ポンド以上の魚類を生産する施設に適用される。EPAのウェブサイト、www.epa.gov/guide/aquacultureでは、規則の詳細を閲覧できる。



事実チェック
サービス産業の死亡労働災害
2002年 2001年
680人 772人
 
サービス産業全体の死亡率は、常勤労働者10万人あたり1.7人である。

出 所:労働統計局(Bureau of Labor Statistics)、2004年



 建設業

ハーバード大調査、OSHAに建設監督の改善を勧告

 マサチューセッツ州ケンブリッジ − ハーバード大学(Harvard University)は、監督対象の建設現場を決定する労働安全衛生庁(OSHA)のシステムを調査した結果、当局に監督業務を改善する代替手法を開発するよう提案した。
 調査報告書の著者、ディビット・ワイル(David Weil)氏は、OSHAの現行システムは無作為で建設規模に基づいたものであると主張した。
 調査によると、OSHAの監督は、大手の建設業者や請負業者のモニタリングへ傾倒しがちである。ワイル氏は、当局は、手持ちのデータを用いて労働者が直面する最大のリスクを決定し、そのグループのなかから監督対象を無作為に選ぶよう、提案した。
 調査は、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の助成金を得た労働者権利擁護センター(Center to Protect Workers' Rights、メリーランド州シルバースプリング市)の資金協力を得たものである。報告書は、www.cpwr.com/krweil.pdfで閲覧できる。


クレーン・デリック改正基準案で、合意達成

 ワシントン − クレーン・デリック協議型規則作成委員会(Crane and Derrick Negotiated Rulemaking Committee)は、建設用クレーン・デリック改正基準の文言で、合意に達した。改正基準案は、労働安全衛生庁(OSHA)に提出され、引き続き、規則作成手続きに入る。
 「これは、クレーンの運転士やクレーン付近で作業する何千人もの労働者の保護をめざした、意義ある一歩である」と、OSHAのジョン・ヘンショー長官(John Henshaw, administrator)は述べた。「規則作成委員会は、1年でクレーン・デリックの改正基準を開発し、合意に達するという、大変困難な課題を背負い、この野心的な任務を達成した。われわれは、労働者保護とクレーンの安全改善をめざした彼らの骨折りと決意を称える」。


墜落・転落防止、巻上げ機・エレベーターで、新建設基準

 イリノイ州デプレーンズ −
米国安全技術者協会(America Society of Safety Engineers: ASSE)はこのたび、建設労働者の安全をめざした墜落・転落防止ガイドラインおよび従業員用エレベーターの要件を定めた米国規格協会(American National Standards Institute: ANSI)の新しい2基準が利用できると発表した。
 墜落・転落防止システム基準、A10.32‐2004は、墜落・転落防止装置の性能、検査手順や標記・ラベルに関する安全要件を含んでいる。A10.4‐2004基準は、エレベーターや人用巻上げ機の設計、建設、設置、操作、保守、検査に関する要件を記載している。ANSIは、5月に両基準を承認した。
 2基準の詳細は、www.asse.orgまたはwww.ansi.orgを開かれたい。



製造業


OSHA、鉄鋼メーカーと同盟締結

 ワシントン − 労働安全衛生庁(OSHA)と北米の一般鋼・特殊鋼メーカーを代表する三大鉄鋼業者団体との間で締結された新しい同盟関係(アライアンス)は、川下メーカーも含めた米国の鉄鋼産業の労働安全衛生の向上を主眼に据える。
 米国鉄鋼協会(American Iron and Steel Institute)、米国製鋼業者連盟(Steel Manufacturers Association)と北米特殊鋼業協会(Specialty Steel Industry of North America)は、ワシントンを拠点とする同業者団体で、まとめて鉄鋼グループ(The Steel Group)として知られている。
 同盟の目標は、労働安全衛生を促進するための情報やガイダンス、メンタリング(助言指導)を川下メーカーも含めた鉄鋼産業に提供することである。同盟の主眼は、鉄鋼産業向け産業安全衛生管理手順の参考資料の開発と、安全衛生問題に関する電子支援ツールの開発である。


化学流通排出量、5年連続低下

 バージニア州アーリントン − 環境保護局(EPA)発表のデータによれば、化学流通産業は、5年連続で、報告のあった他の産業のなかでは最少の有毒化学物質排出量を記録した。このデータはまた、化学薬品流通産業の総排出量が過去5年間の最少を記録したことを示している。
 詳細は、EPAのウェブサイト www.epa.govを閲覧されたい。



鉱業


鉱業労働者連盟、ベルトの入口規則で提訴

 バージニア州フェアファックス − 米国鉱業労働者連盟(United Mine Workers: UMW)は、5月27日、鉱山安全衛生庁(Mine Safety and Health Administration: MSHA)の換気目的でのベルトの入口の利用に関する最終規則に異議を申し立てるため、コロンビア特別区控訴裁判所(U.S. Court of Appeals for the District of Columbia)の再審理を求めて、訴状を提出した。
 4月2日に刊行された最終規則では、作業現場や機械装置の設置中あるいは撤去中の場所の換気を目的として、ベルトの入口を空気の取り入れ口として利用することを認めている。従来、鉱業者は、MSHAが承認した場合にのみ、ベルト通風を利用できた。
 UMWは、最終規則は、鉱業労働者の安全衛生を脅かすと述べた。採鉱現場の空気は、黒肺病を引き起こす爆発性かつ吸入性の粉じんを集めるとも主張した。また、ベルトの入口は、潜在的な火の元であると述べた。



 サービス業

調査:看護師の長時間シフトは、診療ミスを招く

 メリーランド州ベセズダ− ジャーナル「Health Affairs」(Vol. 23, No. 4)に掲載された調査によると、米国の看護師は長時間勤務しており、患者に間違った服用量の薬を与えるなど、医療ミスのリスクが増加している。
調査は、看護師の40%は12時間を越えるシフト(交替勤務時間)で勤務していること、また、12.5時間を越えるシフトの場合、医療ミスは3倍発生しやすいことを突き止めた。
 登録看護師の不足する現在では、シフト延長はごく一般的になってきており、看護師はしばしば、週40時間を越えて、または所定外の残業時間を勤務することが調査で判明した。これでは、医療ミスの増加を招きかねない。
 調査チームは、長時間シフトや残業を減らすよう要請している。「12時間シフトの常態化は減らすべきで、残業は、とくに12時間シフトと連結した残業は、なくすべきである」と記す。
 調査の詳細については、www.healthaffairs.orgを開かれたい



消防士の死亡事故は、衝突事故や心臓発作が原因

 マサチューセッツ州クインシー― −  全米防火協会(National Fire Protection Association: NFPA)の新しいデータによると、消防士は、消火活動より火災現場への往復中に死亡しやすく、車の方が火炎より大きな危険となっている。2003年には、消防士105人が業務上死亡、2002年の97人を上回ったが、これはおもに、昨年のひどい原野火災シーズンが原因であった。
 昨年、消防士37人は、警報で出動途上または帰路に死亡した。37人中24人は、衝突または転覆事故に巻き込まれた。このうち8人はシートベルトを着用しておらず、少なくとも6人は速度超過であった。残る29人は、火災が発生した土地または建物、いわゆる「火災現場」で死亡した。火災現場での死亡者数は、NFPAが1977年からデータを収集し始めて以来の最低値であり、またこの値が死亡者総数の30%を下回ったのは初めてである。
 NFPAの消防士の業務上死亡に関する年次調査では、2003年には33人が衝突事故で亡くなっており、1977年以来の最多であったことを指摘している。
 調査ではまた、2003年に心臓発作による死亡が増えたことが判明した。NFPAによると、2003年の消防士のこの種の死亡の筆頭原因はストレスと過労で、発生件数は2002年の37人から47人に増えた。2003年の数値は、過去10年間の平均よりおよそ10%高いと、NFPAは付け加えた。
 NFPAによると、2003年の死亡者のうち11人は、心臓の持病を抱えていたことがわかっており、心臓発作による死亡者の約半数は、以前に心臓発作を患った、あるいはバイパス手術を受けていた事実が、NFPAの調査で相次いで判明した。別の3分の1は、動脈にひどい狭窄があったと、NFPAは付け加えた。



 運輸業

FMCSA、労働時間規則禁止の裁定に対応

 ワシントン − 大型トラックの運転手に休憩時間までの連続運転時間の延長を認める新しい労働時間規則は、7月16日、米国控訴裁判所により無効とされた。
 この裁定により、連邦自動車運輸安全局(Federal Motor Carrier Safety Administration: FMCSA)は、1月1日に発効した同規則を改正しなければならない。米コロンビア特別区控訴裁判所(U.S. Court of Appeals for the District of Columbia)は、政府は、新規則がトラック運転手の健康に及ぼす影響を考えておらず、論法は「恣意的で気紛れ」であると指摘した。控訴裁は、FMCSAは裁判所の見解に沿うよう規則を改正せねばならないと述べた。
 異議を申し立てていたのは、ワシントンを拠点とする幾つかの利益団体、信頼できる安全な幹線道路をめざす市民の会(Citizens for Reliable and Safe Highways)、疲労したトラック運転手に反対する親の会(Parents Against Tired Truckers)やパブリック・シティズン(Public Citizen)などである。
 FMCSAのアネット・M・サンドバーグ長官(Annette M. Sandberg, administrator)は、当局は裁定を検討し、次の行動を決定すると述べた。検討期間中は、2003年4月に発表された現行労働時間規則が有効である。


大学の調査、サイド・エアバッグに救命効果を見いだす

 ワシントン −  救急医療専門家によると、米国内のすべての自動車にサイド(側面)エアバッグを装備すると、2千人以上もの死亡や重度の脳傷害を予防できる。
 ロチェスター大学医学部(University of Rochester School of Medicine)の調査チームは、全米幹線道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration: NHTSA)が2000年に収集したデータを用いて、側面を衝突された車の人は、前方または後方から衝突された人に比べ、二倍以上の確率で外傷性脳傷害を被りやすいことをつきとめた。調査チームはまた、特殊なサイド・エアバッグを加えるなど、頭部保護を強化するよう自動車を改良すれば、脳傷害の程度を最大61%軽減できると算出した。調査は、サイド・エアバッグで、毎年2,230人もの死亡あるいは致命的な脳傷害を防止できると結論した。
 NHTSAは、サイド・エアバッグを義務付けると、年間7百〜1千人の人命が救われ、自動車産業には約10億ドルの負担になると試算している。


FEMAとNIOSH、自動車衝突事故を共同調査

 ワシントン −  連邦緊急事態管理局(Federal Emergency Management Agency: FEMA)と国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、救急車や非常用車両の衝突事故に関し継続中の調査で、共同作業を計画している。
 「自動車衝突事故が消防士の死亡原因の第二位であることにかんがみ、消防士その他の緊急要員の安全を改善し、悲惨な殉職を予防するためには、NIOSHとの共同作業は、重要である」と、マイケル・D・ブラウン国土安全保障次官(緊急事態準備・対応担当)(Michael D. Brown, under secretary of Homeland Security for emergency preparedness and response)は述べた。
 全米安全評議会(NSC)によると、データのある最直近年、2002年には、救急車3,878台、消防装置・車両2,610台、警察車両35,613台が、衝突事故に遭った。これらの衝突事故では、計179人が死亡、20,400人が廃疾傷害を被った。
 NIOSHの緊急サービス車両乗務員安全評価プロジェクト(Evaluation of Emergency Services Vehicle Occupant Safety Project)は、救急車衝突事故統計データの吟味や危険の特定および職務分析、適切な衝突試験方法の決定、乗務員の拘束システムの開発、救急車衝突シナリオのモデル化を含む。NIOSHは、2004年秋までに分析を完了したいと述べた。


NATRB報告書、エネルギーパイプラインの安全を検証

 ワシントン −  全米アカデミー運輸調査委員会(National Academies' Transportation Research Board)の新刊報告書は、全米の事実上すべての天然ガスと3分2の石油を毎年輸送するエネルギー輸送管路をめぐる安全問題を検証している。
  報告書は、公衆、パイプライン労働者や、既存あるいは将来のパイプライン周辺の環境へおよぼすリスクを最小限にくい止めるため、土地利用の決定に関するガイドラインを策定するよう、連邦政府に勧告している。www.national-academies.org/topnewsで、詳細を閲覧できる。


 公益事業

6州、水質保全法をめぐり、EPAを提訴

 ワシントン − 北東6州は、発電所の水の利用を規制する新しい水質保全法について、同法は州の水資源や水産業を保護していないと、環境保護局(EPA)を提訴している。
 ロード・アイランド州は、7月26日、米国第一ボストン巡回裁判所(1st U.S. Circuit Court of Boston)に提訴した主原告である。訴訟では、EPAが、電力発電所は水路からの取水量に関し、最高の技術を設備せねばならないという規制を緩和したと主張している。この変更は、水質を悪化させ、環境を害すると、原告の諸州は述べた。原告は、7月9日付けの官報(Federal Register)で発表された第二段階規則(Phase II rules)を見直すよう、裁判所に要求しており、またEPAに対しては、訴訟が解決するまで同規則の施行を停止するよう求めている。
 原告側のその他の州は、コネチッカト、デラウェア、マサチューセッツ、ニュ−ジャージー、ニューヨークである。


州際大気浄化規則案を見すえて、汚染評価を改良

 ワシントン − 環境保護局(EPA)は、ばい煙やスモッグの原因となる汚染物質を大幅に削減する発電所規則を援護する立場から、大気の質への影響を評価するのに最新のデータや手法を組み込んだ。
 EPAは、州際大気浄化規則(Clean Air Interstate Rule: CAIR)案に向けて、データ活用通知(Notice of Data Availability)を刊行、これで、大気質モデリングにEPAが加えた改良点や、汚染レベルの予測に用いる最新情報を説明した。2004年の大気保全規則の一つであるCAIRは、米国東部における微粒子レベルや地表のオゾンを削減するEPAプログラムの重要な構成要素である、と当局は述べた。同規則は、酸性雨プログラム(Acid Rain program)を下敷きにしている。
 大気質モデリングシステム改良版は、コンピューターモデル、成長率、排出量一覧、大気質データ、予報、科学的革新や大気圏化学の最新研究への技術的調整や、これらの最新情報を反映したものである。改良の大半は、規則案に対する一般からのコメントで提供された情報に直接対応したものである。