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NSC発行「Safety + Health」2004年9月号
ワシントン − 疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)の再編計画は、国立労働安全衛生研究所(National
Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)にどう影響を及ぼすだろうか。5月13日にCDCが再編成を発表して以来、利害関係者らはこの疑問を抱き続けている。現在の再編計画では、NIOSHは、CDCの官僚組織により深く埋め込まれることとなる。
ごく最近、連邦政府機関の長経験者5名は、書簡で、NIOSHをCDCの官僚制度の下に位置づけるのは、労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)や鉱山安全衛生庁(Mine Safety and Health Administraion: MSHA)などといった政府機関の規則作成プロセスを支援するというNIOSHの役割を妨げることとなると主張した。
「NIOSHを役所の組織の下方へ位置づけ、その独特のアイデンティティと特別な任務をあいまいにするのは、NIOSHの効果を著しくおとしめるものである」と、書簡の主は述べる。そして、NIOSHと関連する部分については、再編計画を見合わせるよう要求した。書簡に署名したのは、元OSHA長官(administrator)のユーラ・ビンガム(Eula
Bingham)、ジョー・ディア(Joe Dear)ならびにジェリー・スキャネル(Gerry
Scannell)、元MSHA長官(administrator)のJ・ディビット・マカティア(J.
Davitt McAtteer)、元エネルギー長官補(環境安全衛生担当、Assistant Secretary
of Energy for Environment, Safety and Health)のディビッド・マイケルズ(David
Michaels)である。
CDCの新しい組織計画は、現行の事業単位を4つの調整センターに統合するというものである。目標は、公衆衛生への脅威や新種の課題、慢性的健康状態へより効率的に対応できるようCDCを支援する、と規定されている。NIOSHは、国立環境衛生センター(National
Center for Environmental Health)、有毒物質疾病登録局(Agency for Toxic
Substances and Disease Registry)、国立傷害予防管理センター(National Center
for Injury Prevention and Control)の3センターの傘下に置かれる。NIOSHの長は、CDCの長に直接ではなく、調整センターの長に直属することとなる。
先の書簡の主は、米国安全技術者協会(American Society of Safety Engineers: ASSE)、アメリカ産業衛生協会(American Industrial Hygiene Association: AIHA)などを含めた、多数の再編反対派に名を連ねる。
米国安全技術者協会(ASSE)は、保健社会福祉省(Department of Health and
Human Services)に宛てた6月17日付けの書簡で、CDC再編は、NIOSHの立場やその労働安全衛生への献身をCDCのなかで薄めてしまうとの懸念を示した。
「安全衛生分野における学界の蓄積は少なすぎる。民間産業は、この種の調査に独自で投資するだけの動機をほとんど持ち合わせていない。NIOSHがこの役割を主導しなければ、だれも担うものがいなくなる」とASSEの書簡は述べる。
ASSEはまた、議会は、NIOSHをCDCの所管から切り離し、労働省(Department
of Labor)へ移管すべき時機であるとも勧告している。
「この組織改革が、提案どおり進んだとすれば、保健社会福祉省やCDCの側に労働安全衛生に必要なだけ専心する能力がないことを示すことになろう」と、書簡は述べる。
アメリカ産業衛生協会(AIHA)は、ウェブサイトで、再編のいくつかの側面について、たとえばNIOSHとCDCの長との間の直属関係を失うこと、NIOSHへの予算損失の可能性、NIOSHと労働安全衛生庁(OSHA)との相互関係の縮小の可能性など、懸念を表明した。AIHAは、書簡をしたためる代わりに、舞台裏でこっそり議会の大物と通じている。
CDCは、新組織を10月1日までに発足させる計画。
事実チェック
非意図的傷害の種類別確定費用(2002年)(単位:10億ドル) |
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合 計* |
586.3 |
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自動車 |
242.7 |
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職 場 |
146.6 |
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家 庭 |
126.7 |
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公共の場(自動車以外) |
88.3 |
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* 職場と自動車との重複分180億ドルは、合計金額から差し引いてある。 |
出 所:全米安全評議会(National Safety Council)、Injury Facts、2003年 |
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CSB、勧告プログラムおよびアウトリーチ活動を拡充 |
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ワシントン − 化学物質安全性調査委員会(Chemical Safety and Hazard Investigation Board: CSB)は、7月15日の公開会議で、勧告プログラムを拡充し、アウトリーチ活動でより大きな役割を担うよう計画していると発表した。
CSBの勧告プログラムの使命は、勧告が実行に移されるようにすることにある。CSBのアドバイスは、完了した化学事故調査から引き出される。新計画では、プログラムは、公開勧告を精力的に遂行し、情報の普及を改善し、新しい勧告追跡システムを実施する。
「CSBは、調査で原因を探り、産業化学事故の原因を解明して、企業や州・連邦政府機関、産業団体その他に対し、勧告を発令する」と、キャロリン・メリットCSB委員長(Carolyn Merritt, CSB chairman)は述べた。CSBは、勧告の実施で、類似の事故を予防したい考え。勧告をうまく実行に移すのは、CSBの使命の根幹をなす。
プログラムではまた、勧告の影響力を広めるため、アウトリーチの役割も担う。勧告プログラム部長(director)のマニュエル・ゴウメズ(Manuel Gomez)氏によれば、CSBは、同委員会の活動を然るべき団体に知らしめるため、関係者と協力する。
CSBの詳細については、www.chemsafety.govを参照のこと。
サンディエゴ −こと労災補償とくれば、諸州は、優良例としてアラバマ州などを見習うべきであると、休業データ研究所(Work Loss Data Institute)の最新報告書は述べる。
報告書では、2002年、2001年、2000年のOSHA書式300および200のデータを用いて、各州を1日以上の休業災害発生率、1日以上の休業労災件数、就業不能期間の中央値、31日以上の長期休業率、腰痛、手根管症候群の6つの尺度で格付けた。
全体評価で「もっとも改善が見られた」と先頭に立ったのは、アラバマ州であった。もう一州、インディアナ州も優秀で、とくに休業の縮小で改善がみられたと報告書は述べる。その他最優秀であったのは、アイオワ州、ジョージア州、ミネソタ州、バージニア州であった。
ニューメキシコ州の成績は、全体的にもっとも低下が見られ、2000年の「B+」から2002年には「D」へ落ちた。カリフォルニア州、デラウェア州、ニューヨーク州、ワイオミング州は、「F」の成績であった。
報告書はまた、ある種の管理医療プログラムと成果との連関について、管理医療のある州とない州とを比較することにより、分析した。労災保険基金のある州は、ない州に比べ、若干成績が悪く、医療費スケジュールや州の治療ガイドラインの活用も州政府の助けとはなっていなかった。報告書は、医療提供者の選択を限定させている州には、良好な結果を見出した。
「2004年労災補償の州別通信簿(2004 State Report Cards for Workers' Comp.)」の詳細は、www.disabilitydurations.comで閲覧できる。
出 所:Work Loss Data Insutitute、2004年
労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)とメキシコ大使館は、7月21日、メキシコその他のラテンアメリカ諸国からの移民労働者の労働安全衛生を確保する努力を継続する旨の協定書に調印した。協定書は、7月22日、フロリダ州オーランド市で開催されたOSHAのヒスパニック・サミットの前日に調印された。サミットでは、米国で働く1,750万人ものヒスパニック系労働者の安全問題を吟味した。エレイン・チャオ労働長官(Elaine Chao, Secretary of Labor)は、この協定は、労働省と米国内のメキシコ大使館、領事館との共同によるアウトリーチプログラムを下敷きにすると述べた。
米国安全技術者協会(American Society of Safety Engineers: ASSE、イリノイ州デプレーンズ市)の調査によると、職場の暴力は、依然として労働死亡災害の主要原因のひとつだが、この問題に対処している事業者はほとんどいない。2004年には、ASSEは、協会の会員4,560人を対象に1999年の調査の追跡調査を行った。この調査では、回答者の70%は、所属企業内では、暴力行為の可能性について正式なリスク評価を行っていないと回答した。
エレイン・チャオ労働長官は、先日の中国訪問の際、労働、雇用、労働安全の分野での米中間の協力を拡充する協定書4通に調印したと発表した。協定書は、中国労働社会保障部(Ministry
of Labor and Social Security)および国家安全生産監督管理局(State Administration
of Work Safety)の当局者との間で、6月21日に調印された。国家安全生産監督管理局のワン・シャンジャン長官(Wang
Xianzheng, administrator)は、今年5月、米国訪問の際、全米安全評議会(National
Safety Council: NSC)を訪れた。
州知事幹線道路安全協会(Governors Highway Safety Association、ワシントン市)は、ニュージャージー州およびコロンビア特別区で手持ち式携帯電話の禁止が7月1日に承認されたことを受けて、運転中に安全を心がけねばならないのは、携帯電話による不注意だけではないことをドライバーに呼びかけた。ノースカロライナ大学(University
of North Carolina)の調査は、読み書き、飲食、ラジオの調節、車内での他者との会話、身づくろいは、携帯電話の使用と同様、注意散漫の元となることを示している。
全米安全評議会(NSC)のアラン・C・マクミラン会長兼最高経営責任者(Alan C. McMillan, president and CEO)は、全米労働安全衛生諮問委員会(National Advisory Committee on Occupational Safety and Health: NACOSH)の5人の委員の一人として、労働省より任命された。NACOSHは、労働安全問題について、労働長官、保健社会福祉長官に助言する。マクミラン氏は、オレゴン州社会福祉省(Oregon Department of Human Services)のキャサリン・L・トムセン(Catherine L. Thomsen)氏とともに、公益代表として任命された。Northrop Grumman社の産業安全衛生マネジャー、エモリー・ノウルズ(Emory Knowles)氏は、安全代表。ウェインセイト大学(Wayne Sate University)の助教授、ジェイムズ・A・ブレスマン・ジュニア(James A. Blessman Jr)氏は、衛生代表。Delta Airlinesの法人安全・法令遵守ディレクター、ジム・スウォーツ(Jim Swartz)氏は、事業者代表として、委員を務める。
全米安全評議会(National Safety Council: NSC)の会員の皆様には、「速報」で、安全関連の重大ニュースを毎週お送りしています。ニュースは、本誌編集部が編集、会員の皆様に、毎週、eメールで最新情報をお知らせしています。会員の方でこの無料サービスをご希望の方、または会員資格をご希望の方は、www.nsc.orgをご覧ください。
ワシントン − マイケル・エンジ(Mchael Enzi)上院議員(共和党、ワイオミング州)は、7月22日、およそ135種類もの高度有害物質のモデル化学物質等安全データシート(MSDS)を開発するよう、労働安全衛生庁(OSHA)に義務付ける法案を提出した。2004年労働者安全促進法(Safety
Advancement for Employees Act: SAFE Act of 2004)は、高危険度有害化学物質の工程安全管理規則(Process
Safety Management of Highly Hazardous Chemicals)、29 CFR 1910.119の付表Aに掲載されている化学物質のMSDSを作成するよう、OSHAに義務付ける。「いっそうの明確化、一貫性、正確さ、ガイダンスを求める労働者や事業者の要望に留意する時機が来た」と、エンジ議員は、議会で法案を提出するにあたり、こう表明した。エンジ議員が初めて労働者安全促進(SAFE)法を提出したのは、1997年である。
労働者安全促進法案は、
- 国連の化学物質の分類・表示に関する世界調和システム(Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals)の米国内への採択を検討する委員会を設置する。
- 第3者による安全衛生相談サービスプログラムを実施する。
- 相談サービスに関する特別諮問委員会を設置する。
- 労働者を死亡に至らしめた故意の違反については、刑事罰を設定する。
- OSHAの労働監督官に、専門教育・訓練を義務付ける。
- 労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act)にアルコール・薬物乱用検査条項を付け加える。
「こうした措置を採らねば、時間がたつにつれ、回避できたはずの死傷災害が発生することになる」とエンジ議員は述べ、上院が「職場のいっそうの安全を確保するにあたり、なにが関わっているのか、有意義な議論をいま一度始めるよう」希望していると付け加えた。
法案全文およびエンジ議員のコメントは、http://enzi.senate.gov/safety2.htmで閲覧できる。
キャンベラ −オーストラリア商工会議所(Australian Chamber of Commerce and Industry)の新しい調査によると、同国の労働安全衛生法規は、事業者にとって重大な懸念事項である。
商工会議所は、選挙前の世論調査として、大中小規模企業1,685社を調査した。調査の結果を一部挙げる。
- 政府の規制を取り上げると、安全衛生基準、監督行政は、事業者にとって第4位、5位の懸念事項である。
- 調査対象の63.5%にとって、安全衛生規則の数は懸念事項である。
- 調査対象の50.8%は、労働安全衛生監督を主要な、または中程度の問題と捉えている。
- 労災補償は、事業者にとって主要な労働問題である。
- 組合による安全監督は、事業者にとって、争議行為よりも重大な懸念事項である。
「事業者の多くは、とくに中小の場合、(オーストラリアの)労働安全衛生法規体系は、理解するには複雑、官僚主義的で難解に過ぎ、履行するどころではない」と、会議所の最高経営責任者(CEO)、ピーター・ヘンディ(Peter Hendy)氏は述べた。
ロアノーク −ある製造業の工場では、従業員らが、練習していた緊急時の対応手段を実行に移した。その結果、Parsons
Manufacturing Co.の従業員150人は、7月13日、強度F-4のトルネード(大竜巻)がピオリア(Peoria)市近郊の225,000平方フィートの工場をなぎ倒した際、怪我ひとつなく避難した。
2:45p.m.のトルネード襲来の数分前、従業員らは、この建設・鉱業用部品の製造工場のなかにある3箇所のコンクリート強化シェルターに集まるよう指示された。トルネード後しばらくして、時速200マイルもの強風が工場を裂き、残骸にした。暴風は激しく、トイレから水が飛び出し、スチール製の梁が宙を舞うのを目撃した従業員もいた。
このような惨害にもかかわらず、重傷は報告されておらず、従業員は全員自力で工場を出ることができた。
工場の従業員や職員は、農場を突っ切ってくるトルネードを見つけ、直ちに従業員に緊急シェルターへ移動するよう警告したと述べた。
NIOSH:アスベスト、使用停止後も長期にわたり死者を出す |
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ワシントン −国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の最新の調査によると、じん肺(鉱物性粉じんの吸入により引き起こされる職業病)による死亡者総数は、過去30年間で大幅に減ったものの、その中の1つの類似の疾病である石綿症については、死亡者数が増加している。
調査では、1968〜2000年のじん肺による死亡者数を検証、1968〜1981年間と1982〜2000年間とで比較した。調査チームは、石綿症による死亡率は、男性の場合、1968年の77人から2000年の1,493人へと、400%増加したことを見いだした。アスベストは、第2次世界大戦中・戦後で大量に使用されたが、1980年代以降使用量は激減したにもかかわらず、死亡者数増が見られたと、調査は指摘する。
調査チームは、この増加の理由を、石綿症による死亡は、アスベストへの職業性暴露の初期から40〜45年後にピークを迎えるからだと説明した。この潜伏期間を考慮すると、「石綿症関連の死亡者数は、少なくとも向こう10年間は増えると予想される」と調査は記す。「いくつかの職場でまだ使われている、または建物内に残存するアスベスト含有製品は、潜在的なリスクを提示している」。
じん肺のその他の種類による死亡者数は、同時期に減少していると、調査は指摘する。男性の場合、石炭労働者のじん肺による死亡率は36%、珪肺および不特定・その他のじん肺による死亡率は約70%減少した。
調査チームは、じん肺の撲滅に向けて「かなり進展」が見られたものの、「こうした疾病を撲滅する努力は続けられねばならない」と結論した。
調査は、「週間罹患率・死亡率報告(Morbidity and Mortality Weekly Report, Vol. 53, No. 28)」に掲載された。
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