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死亡災害減少
Accidental deaths drop

(NSC:調査統計部長 アラン・ホスキン)

資料出所:National Safety Council (NSC)発行
「Safety+Health」2004年10月号p.24-30
(仮訳 国際安全衛生センター)



 2003年全米における死亡災害、特に労働災害による死亡者は減少した。
 NSCの調査統計部によりまとめられた“Safety Health”で報告された“Injury Facts ”の2004年版によると、2003年の労働災害による死亡者は、5%減少し、4,500人の死亡者となった。この4,500人の労働災害死亡者は、10万労働者あたり、3.2人の死亡者に該当し、2002年の3.4人から減少した。
 この最新の統計によると、10万労働者あたりの労働災害死亡者率は1994年の4.3から着実に減少してきている。
 この低下傾向のなかで、1つの例外は、石油及びガス採掘を含む鉱山、採石業である。この部門は、2003年の労働災害死亡者数が上昇した唯一の業種である。この部門での労働災害死亡者率は4%低下したが、鉱山、採石業は、引き続き、全産業中最も高い労働災害死亡者率を続けている。
 これとは対照的に、運送業及び電気、ガス、熱供給、水道業は労働災害死亡者率で大幅な減少を示した。この部門は死亡者数で9%の減少、災害死亡率で、5%の減少となった。

あらゆる場所で事故は減少している

 あらゆる場所−職場、家庭、公共の場、輸送車輌−で全体の死亡災害は2003年に2%低下し、101,500人であった。この数字を最近最も少なかった1992年の死亡者数と比べると、17%高くなっている。最も、死亡者数が多かった1969年の時と比べると、13%低くなっている。
 この結果、2003年には10万人あたりの災害死亡者率は3%低下した。この間、米国の人口は1%増加したので、災害死亡者率は実際には10万人あたり、34.9%減少したことになる。
 この低下傾向は、1つの大きな流れとなっている。1912年から2003年の間、10万人あたりの死亡者は、55%低下した。この間、全体の割合は低下し、人口は3倍になっている。このことにより、480万人もの命が救われたことになる。
 しかしこれの裏返しとして、災害は、心臓疾患、がん、脳卒中、慢性呼吸器疾患についで第5番目の死亡原因となっている。
 どういう人が災害で死亡しているのかというと、不幸なことに65歳以上の男性が多数、災害で死亡しているようである。事実、災害による死亡者の約3分の2は男性が占めている。年齢について見ると、最も高い死亡災害率は65歳以上となっている。災害死亡者率は2003年に65歳〜74歳及び75歳以上のグループで増加した。
 これとは対照的に災害死亡者率は全ての若年層グループで低下している。最も低い災害死亡者率は5歳から14歳の子供達であった。

業種別労働災害死亡者数
 業種
労働者数(千人)
2003年死亡者数
対前年比
 全産業 
138,988
4,500
-5%
 建設業
9,268
1,060
-3%
運輸交通/電気、ガス、熱供給、水道業
7,721
770
-9%
 農業
3,340
710
-6%
 サービス業
50,310
550
-3%
 製造業
17,708
490
-6%
 政府関係
20,862
420
-3%
 商業
29,240
380
0%
 鉱山/採石業
539
120
1%
出典:National Safety Council, "Injury Facts" 2004

運輸交通/電気、ガス、熱供給、水道業は他の記事では輸送・公益事業と訳している(Transportation/public utilities)

業種別労働災害死亡率

 業種

2003年労働災害死亡率
(
労働者10万人あたり)

対前年比
 鉱山/採石業 
22.3
-4%
 農業
20.9
-4%
 建設業
11.4
-4%
 運輸交通/電気、ガス、熱供給、水道業 
10.0
-5%
 製造業
2.8
-4%
 政府関係
2.0
-3%
 商業
1.3
-4%
 サービス業
1.1
-4%
 全産業
3.2
-5%
出典:National Safety Council, "Injury Facts" 2004

死亡危険性の高い場所

  2003年に災害死亡者が増加した場所は車輌関係であった。事実、車輌に関連する死亡災害は、2003年の全死亡者中、半数を占め、44,800件と2%上昇した。
 走行距離1億マイルあたりの車輌災害による死亡者は、2003年には1.56になった。この率は前年の1.54から上昇し、2001年の1.57からは減少した。
 車輌災害による死亡者は労働災害原因の上位4つに入っている。この4つとは、車輌災害の他、墜落・転落、中毒、酸欠によるものである。更にこれら4つの労働災害死亡原因は、2003年には全ての労働災害死亡者の4分の3以上を占めている。

 
出典:National Safety Council, "Injury Facts" 2004 

 災害関連経費を換算すると

  2003年の不慮の事故による死傷災害コストは、6,077億ドルと高額となっている。この額は国民1人当たり約2,100ドル、一家庭あたり約5,700ドルにもなる。これらのコストは各個々人及び各家庭が商品及びサービスの高い価格として、あるいは高い税金として直接支払っていることになる。この額を全額他に使用できるとしたら次のようになる。
全災害コスト
6,077億ドル:
車輌関連災害の
2,407億ドル:
労働災害費用の
1,562億ドル:
家庭での災害関連費用の
1,351億ドル
       
  • 連邦所得税1ドルあたり80セントの減少につながる。

  • 米国での食料に使用した1ドルあたりに付き、57セント増加となっている。
  • 米国の各自動車免許所有者に対し1,200ドルの小切手を送付するのに相当する。

  • 全米の各登録車輌に対し、630ガロンのガソリンを供給するのに相当する。
  • 株主配当の各1ドル36セントを追加できる。

  • 税引き前企業収益の各1ドルに対し18セントの増加に相当する。

  • フォーチュン誌500企業の上位25社の利益を合算した額に相当する。
  • 一軒の新築に対、97,500ドルの払戻しが可能。

  • 固定資産税に支払われた各1ドルに対し、44セントの減額可能。
出典:National Safety Council, "Injury Facts" 2004

2003年は災害関係で6,000億ドル以上の出費


  不慮の死傷災害で、歴史上初めて6,000億ドルにも上る出費が続いている。
  死傷災害コストは、2003年に6,077億ドルに増加したことが、NSCの2004年版“Injury Facts”で明らかにされた。このうち労働災害関係コストは1,562億ドルであった。家庭内事故関係コストは、1,351億ドルであった。公衆災害関係は954億ドルとなった。車輌関係災害コストは、全体の大部分を占め、2,407億ドルであった。

経費の分析

  事故発生場所別−車輌、家庭、公共の場所及び職場…にデータを検証することは、分析方法の1つである。これらのコストの出費を検証する別の方法もある。
  例えば2003年の死傷災害に費やされた6,077億ドルの大部分は、賃金及び生産に関係するものである。この出費は、事業者が直接関心を持っている部分で、全死傷災害中49.6%、3,015億ドルにも上っている。
  不慮の死傷災害に関連する管理コスト及び医療費は、2003年は最大となった。この不慮の死傷災害に伴う管理費は1,037億ドルに、医療費は1,187億ドルに夫々上昇した。

全体ではどのくらいか

  不慮の死傷災害に関する6,077億ドルの内訳計算は困難だが、計算可能なコストもある。人命損失コストは1兆3,670億ドルと見積もられている。
 2003年の、不慮の死傷災害による全コストは、1兆9,700億ドルと見積もられており、2005年の労働省予算の297倍以上となっている。

業務以外で労働災害の9倍以上の労働者が死亡している

 米国の労働者は、どこの場所よりも自分の職場がより安全なものとなっている旨、2004年NSC“Injury Facts”により明らかにされた。2003年米国人は、業務以外で5倍以上の死に到った。業務上では、家庭での傷害と同じ位の数字であった。

2,370万人…2002年、傷害により治療を受けた人
 270万人…2002年、傷害で入院した人
3,920万人…2002年、傷害で緊急入院した人
1,110万人…2001年の外来患者数
9,980万人…2001年、傷害で病院や診療所に来た人

出典:National Safety Council, "Injury Facts" 2004


 業務以外で死傷災害に遭遇した労働者数が減少したという良いニュースもある。業務以外で事故死した労働者数は5%減、42,300人であった。業務以外で傷害を被った労働者は8%減、650万人であった。

最も危険な場所

 多くの労働者はどこの場所よりも、業務以外での車輌事故により死亡している。そして不幸にもこの数字は、2002年から2003年の間、23,100人にとどまっている。一方労働者は、過去のいずれの時よりも、自分の家庭内でずっと安全に過ごした。家庭での労働者の業務以外での死亡事故は、13%減の12,000人であった。この他7,200人の労働者が車輌事故に関係の無い公共の場所で死に到っている。

業務上及び業務以外での労働者死傷者数
場所

死亡者数

傷害者数
業務上及び業務以外計

46,800人

0.011
990万人
2.4
 業務上 
 4,500人
0.003
340万人
 2.3
 業務以外
42,300人
0.016
650万人
 2.4
  車輌関係
23,100人
0.083
120万人
 4.3
  公道(除車輌関係)
 7,200人
0.017
240万人
 5.6
  家庭
12,000人
0.006
290万人
 1.5
出典:National Safety Council

※ 一律各場所で20万時間経過あたりの数字

労働損失日数

  業務以外での傷害で失った生産日数は、2003年は約1億6,000万日で、労働者が業務上傷害で失ったのは7,000万日であった。2003年業務以外傷害で失った将来の生産損失日数は、4億500万日と見積もられ、2003年の業務上傷害で失った将来の損失日数5,500万日の7倍以上となっている。業務以外傷害による労働者コストは、全国で少なくても2003年は2,053億ドルに達する。これは2002年に比べると100億ドル少なくなっている。

交通事故は2%上昇…高齢ドライバーは最も高いリスク

  NSC2004年版“Injury Facts”で、交通事故による死亡者数は、2003年は2%増の44,800人との最新の情報が発表された。
 2003年の傷害につながる交通災害は、240万件であった。しかし、良いニュースもある。交通事故によるコストは実際上2,407億ドルで、2002年より20億ドル減少している(このコストには賃金及び生産性の損失、医療費、管理諸費、車輌損失費用、事業者のコストが含まれている)。
  交通災害による死亡者数の増加は、2003年も続いている。2003年の交通事故は1993年の同死亡者数より7%高くなった。

死亡率

  交通災害で死亡した全人数は上昇したが、交通災害の死亡割合は実際上減少した。この交通災害死亡率は、次の点で調べられている。

  • 死亡者数と比べた走行距離あたり
  • 死亡者数と比べた登録車両数
  • 死亡者数と比べた人口総数

 例えば、交通災害で死亡した数は、1993年から2003年の間では7%増加したが、同期間中、走行距離、登録車輌、人口はそれぞれ7%増加している。この結果、走行距離、登録車輌、人口あたりの交通事故死亡率は、1993年に比べると2003年は急激に低下している。
  同様に、2003年は車での旅行者数は2002年に比べると1%増加しており、これが走行距離死亡者率を1%押し上げている。2003年は、1億マイル走行あたり、1.56人の死亡者率で、過去2番目に低い率となった。2002年の率は、1億マイルあたり、1.54人であった。
 登録車輌数は2002年から2003年の間に2%増加したが、登録車輌死亡者率は1%低下した。人口は2002年から2003年の間、1%増加し、人口死亡者率を1%押し上げている。振り返ってみると、1万登録車輌あたりの交通災害死亡者は1912年から2003年の間では94%減少し、つまり、1万登録車輌あたり33人の率が2人になったのである。1912年は95万登録車輌で、3,100人の死亡者がいた。2003年には44,800人の交通事故死亡者数で、登録車両数は2億4千万台と上昇した。


2003年交通災害の死亡者数と死亡者率(10万人当)

年齢

死亡者数

死亡者率
0〜4
700
3.5
 
5〜14
1,800
4.4
15〜24 
10,900
26.5
25〜44 
13,500
16.1
45〜64 
10,300
15.0
65〜74
3,100
16.9
75〜 
4,500
25.6
計 
44,800
15.4
出典:National Safety Council, "Injury Facts" 2004

高齢ドライバーはハイリスク

 このデータに影響を与えている多くの要因としては、安全車輌、優良運転習慣、悪い運転習慣、高齢化人口等がある。例えばシートベルト使用率は2003年には79%に増加している。一方、今後25年間、シニア人口は2030年には今日の3,600万人から7,000万人へと2倍になるものと見られている。この伸びと高齢化する人口は交通災害の死亡率に影響を及ぼし続ける可能性がある。

労働災害による死傷災害コストは、1,560億ドルで、労働損失日数で1億1,500万日にもなる。

 国、事業者及び個人関係する実勢の業務上の死傷コストは、労災補償保険よりも、ずっと大きい。事実、2003年の業務上の死傷の全コストは、1562憶ドルであることが2004年版のInjury Factsで明らかになった。次に掲げる数字は、業務上の死傷の経済的側面を示している。


2003年業務上死傷による全コスト:1,562億ドル


業務上傷害コストを埋めるために各々の労働者が生産する財、サービスの価値:労働者1人あたり1,120ド


業務上死亡者1人あたり:111万ドル


傷害1件あたり:38,000ドル


労働損失日数:1億1,500万日

  • 2003年に発生した傷害による2003年の労働損失日数:7,000万日
  • 前年に発生した傷害による2003年の労働損失日数:4,500万日


2003年に発生した傷害による今後の労働損失日数:5,500万日

出典:National Safety Council, "Injury Facts" 2004


 事実、交通事故による第2位及び第3位の死亡率は75歳以上と65歳から74歳迄のグループとなっている。最も高い交通災害死亡率は、15歳から24歳迄のグループである。
 しかしこれは、高齢者の次の要素が考慮されていない。

  • 若い人に比べ、1人当たりの旅行者としての旅行距離が長い。
  • 若い人に比べ、乗客用車輌の利用が高いものと思われる。
  • 若い人に比べ、重傷事故の場合、追突災害を受けやすい。

 道路上にいる時間はどうか。65歳以上の人は、短い旅行の10%を占め、50マイル以上の全旅行では8%を占めている。すぐにはこの傾向は変わりそうもない。
 ミシガン州の調査によると、65歳以上の人々の31%は今後5〜10年間、運転を続けるということである。さらにこの年齢の43%は、今後10年間運転を続けるということである。
 同じミシガン州の調査によると、年配者の60%は定期的には公共輸送機関を利用することはないということである。そしてこの人々の一部は、自分達が利用可能な公共輸送機関について知らないままとなっている。

シートベルト着用率
シートベルトの着用率(年別)
2000     
71%
2001 
75%
2002
79%

シートベルトの着用率(種別)
一般乗用車
81%
スポーツタイプ 
83%
小型トラック
69%

乗客別着用率
ドライバー 
80%
乗客者 
77%

出典:National Occupant Protection Use Survey, National Highway Traffic Safety Administration, 2003