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NSC発行「Safety + Health」2004年10月号

ニュース


マスコミ、OSHAの規制撤退を批判、ヘンショー長官、当局の活動を弁護

 ワシントン − 労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)のジョン・ヘンショー長官(John Henshaw, administrator)は、8月18日のワシントンでの全米労働安全衛生諮問委員会(National Advisory Committee on Occupational Safety and Health: NACOSH)の会合で、当局の規制活動へのこのたびの批判は「不正確、不完全な記述と記載漏れ」だらけであると述べた。
 この発言は、8月15日付のワシントンポスト(Washington Post)紙の1面記事に対して発せられた。記事は、3部構成の第1部として、ヘンショー長官率いるOSHAは、規制プロセスを利用して政府の方針を変更しようとするブッシュ政権の戦略に沿って、いくつかの重要な安全衛生規制イニシアチブを台無しにしたと主張する。
 記事は、OSHAは、ブッシュ政権の指示で、クリントン政権時のエルゴノミクス基準など、いくつかの規制イニシアチブを削り落とし、長期にわたり練ってきた結核基準についても、最終的に規則作成を打ち切る前に故意にぐずついていると主張する。また、OSHAは、核兵器の製造に使われる有毒金属ベリリウムからの労働者の保護についても、動きが鈍いと述べている。
 このような動きは、OSHAを産業界の利害関係とより密な間柄に置き、労組を当局の主要なイニシアチブから排除している、と記事は続ける。記事によれば、ヘンショー長官によるOSHAの規則作成の「整理」で、ブッシュ政権の初年度末までに、労働規則案44件のうち18件が廃棄されるという結果となった。
 ヘンショー長官は、NACOSHの会合で、当局を擁護すると約束した。「私は、当局の規制活動を誇りに思う。当局の施行活動を誇りに思う」と、ヘンショー長官は、NACOSHの委員らに語った。
 ヘンショー長官は、当該記事のインタビューを受け、これが発表されることを知っていたと付け加えた。長官は、結核規則を廃棄する一方で、結核対策としての呼吸器保護を付け加えるなど、規則作成の焼き直しで当局の職員らが遂行した仕事を誇りに思うと述べた。

 編集付記:ヘンショーOSHA長官は、ワシントンポスト紙の記事に対し、8月23日付の編集長宛の書簡で反論した。書簡の抜粋をここに紹介する。

 貴紙の2004年8月15日付の労働安全衛生におけるブッシュ政権の実績に関する記事は、誤解を招きやすく、労働安全衛生庁(OSHA)の業績を歪曲するものです。
・・・・・単純明快な事実は、アメリカの労働力人口は絶え間なく増加している一方、業務上の傷病・死亡件数は、これまでで最低水準にあるということです。これこそ、われわれの成功の究極の尺度です。より多くの労働者が、毎就業日の終わりには、安全かつ健康、無傷で家庭に、家族のもとに帰るということです。
・・・・・私は、OSHAが成功を収めているアライアンスやパートナーシップのプログラムについて、記事が誤り伝えていることを指摘するのが肝要かと思います。われわれは現在、労組も含めて、500組以上ものパートナーシップを享受しています。アライアンス(alliance)は、2年ほど前から始めた新しい形のパートナーシップで、わが国の労働者の安全衛生を推進するため、220以上もの団体が参加しています。われわれは、労組も含めたあらゆる団体に対し、労働者のよりよい保護をめざして傘下の会員を支援するため、参加するよう奨励しています。
・・・・・OSHAは、強力かつ現実的な規制計画に取り組んでいます。われわれは、緊急避難経路、ベリリウム、六価クロム、建設業における閉塞空間、クレーン・デリック、造船所の防火その他、多数の労働安全衛生問題に積極的に取り組んでいます。
 生身の人間への実際的な成果に関心のある安全衛生専門家として、私は、過去4年間にわれわれが達成してきたことを誇りに思います。われわれは、もっと学び、もっと達成すべきでしょうか。もちろんです。しかし、成功の真の指標は、活動の評価ではなく、むしろ業務上傷病、死亡件数の減少です。