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NSC発行「Safety + Health」2004年11月号
ワシントン − 新しい二つの政府報告書は、世界貿易センター(World Trade Center:
WTC)のテロによる短期的、長期的な身体的、精神的健康障害について、多数の人々が懸念を抱いていることを強調している。 9月8日に発表された報告書で、政府説明責任局(Government
Accountability Office:
GAO)は、テロ後の救急隊員、現場労働者その他の人々が被ったさまざまな健康被害を要約している。GAOは、おもに公表され、専門家によるチェックの入った記事や政府報告書のデータをもとに、呼吸器疾患や生殖機能障害、精神衛生への影響などといった多種多様な問題が報告・観察されていることを見いだした。このなかでも呼吸器疾患は、もっとも多くみられる身体症状で、息切れからぜん息の範囲に及び、深刻な呼吸器障害を伴うしつこい咳、名づけて「WTC咳」という新しい症候群も登場した。 報告書によると、「テロに対応した消防士のほとんど全員が呼吸器障害を抱えており、数百人は、WTC関連の呼吸器疾患を理由に辞職せねばならなかった」。 報告書は、下院国家安全保障・新興脅威・国際関係小委員会(House
Subcommittee on National Security, Emerging Threats and International
Relations)におけるGAOのジャネット・ハインリック保健衛生・公衆衛生問題担当部長(Janet Heinrich, director of health
care and public health
issues)の証言を下敷きにしたものである。小委員会は、GAOに対し、労働者の健康被害を説明し、こうした被害のモニター・把握状況を報告するよう、要請していた。報告書は、www.gao.gov/cgi-in/getrpt?GAO-04-1068Tで閲覧できる。 一方、疾病対策予防センター(Centers
for Disease Control and Prevention:
CDC)は、9月9日、世界貿易センター跡地で救助・復旧作業に従事した労働者、ボランティア1千人強を調査した結果、このうちの半分近くが新しい持続性の呼吸器障害を患っており、半分を超える人が持続性の精神的症状を有していると発表した。この暫定データは、CDC(アトランタ市)の予算で、マウント・サイナイ医療センター(Mount
Sinai Medical
Center、ニューヨーク市)が実施した医学的健診プログラムから得たものである。 CDCによれば、報告書は、世界貿易センター労働者・ボランティア医学的健診プログラム(World
Trade Center Worker and Volunteer Medical Screening
Program)に任意参加した1,138人(このうち91%は男性、年齢の中央値は41歳)のデータの評価を下敷きにしたものである。2004年8月いっぱい、医学的健診プログラムは、環境汚染物質、心理学的ストレッサーや物理的障害に暴露したおよそ12,000人の労働者やボランティアに対し、無料の標準健康診断や臨床医の紹介、労働衛生教育を施した。プログラム参加者らは、呼吸器、精神衛生への影響のほか、腰痛、上肢・下肢の痛み、胸焼け、眼球の炎症や頻繁な頭痛を報告した。 CDCはまた、医学的健診を受けた労働者やボランティアの21%は、大半が警察官や公益施設・建設労働者であったが、2001年9月11〜14日の間、適切な呼吸用保護具を身につけていたと指摘した。この期間は、粉じん、ディーゼル排ガス、セメント粉、グラスファイバー、アスベストその他の浮遊性汚染物質への暴露がもっとも多かったとされる。 労働者、ボランティア1,138人の回答を分析したところ、51%は、精神衛生障害のリスクとあらかじめ決めていた基準を満たした。回答結果はまた、外傷後ストレス障害(post-traumatic
stress disorder:
PTSD)のリスクが、参加者の場合、一般男性集団の4倍にもなることを示している。 「WTC医学的健診プログラムのこれらの暫定結果は、多数の労働者やボランティアが、救助・復旧作業に従事した結果、呼吸器や精神衛生に持続性のある、かなりの影響を被ったことを示している」と、医学的健診プログラムのスティーブン・レビン共同ディレクター(Stephen
Levin,
co-director)は述べた。 CDCは、プログラム参加者の医学的健診を5年間継続するため、8,100万ドルを確保したと語った。 報告書は、CDCの週間罹病率・死亡率報告(Morbidity
and Mortality Weekly Report, Vol. 53, No. 35)に掲載されており、www.cdc.gov/mmwrで閲覧できる。 GAOとCDCが、世界貿易センターの救助・復旧作業に従事した多数が身体的、精神的に患っていることを確認した折も折、ニューヨーク市の法律事務所は、これらの労働者を代表して訴訟を起こしたと発表した。 9月10日、Worby,
Groner, Edelman and Napoli, Bertn
LLPは、グラウンド・ゼロの清掃労働者800人強を代表して、世界貿易センター複合施設の管理職、所有者、管理者、貸主を相手に、初の大規模訴訟を起こした。 「痛ましいのは、労をいとわず滅私の精神で働いた勇敢なヒーローの多くが、対米テロの犠牲者の第二波となりつつあるという現実であり、われわれは、3年を経た現在、犠牲者数や疾病の種類、程度という点では、氷山の一角を見ているに過ぎないのである」と、法律事務所のデイビッド・E・ウォービー上席パートナー(David
E. Worby, senior
partner)は述べた。 訴訟では、被害者への補償と「暴露した全員を対象とする医学的健診の大規模な、数十年単位の計画案」へ向けた予算の確立をめざすと、事務所はいう。 事務所はまた、世界貿易センター跡地やフレッシュキルズごみ埋立地(Fresh
Kills Landfill)から発散する有毒物質への暴露に関し、環境保護局(Environmental Protection Agency:
EPA)や労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration:
OSHA)など政府機関を相手に、数千件の個人訴訟や、権利請求通知その他、個人から依頼のあった申請手続きを起こしている。
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