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OSHAの違反項目トップテン(2004年度)
是正勧告件数は上昇したが、違反内容は依然として同じである

資料出所:National Safety Council (NSC)発行
「Safety+Health」2004年12月号p.36-42
(仮訳 国際安全衛生センター)



 「Safety+Health」誌が毎年発表している、違反件数が最も多いOSHA規則(スタンダード)トップテンリストによると、前年と比べてその内容にはほとんど違いがなかった。トップとなる不名誉は依然として建設業での足場規則違反が占め、再度これに危険・有害性の周知徹底違反が続いた。今年は、電気配線と機械防護の順位が入れ替わったが、たいした変化ではない。この2つは過去2年間、第6位と第7位を争っていた。
 しかし昨年トップテンの第9位で登場した血液由来病原体規則違反は、2004年はこのリストから姿を消した。そして機械式動力伝達装置規則違反が、2003年以前における定位置である第10位に復帰した。
 2004年度もOSHAは違反に対して、より多くの是正勧告書を出す傾向を続けた。今年は平均して前年に比べ、より多くの規則違反が見られ、全般的な違反件数も多く、上位10項目での合計が、2003年の43,466件に比べ、2004年度は44,718件となった。
 OSHA監督局長リチャード・フェアファックス(Richard Fairfax, director of OSHA's directorate of enforcement programs)は、違反者に対し積極的に是正勧告を発したことを誇りに思う、と述べている。「重大なハザードに関わる違反を発見することは本当に意義のあることである。というのは、それによって物事が是正されるからである」と、彼は語った。(フェアファックス氏によるトップテンの分析は後述)
 このリストは、2004年度(2003年10月1日から2004年9月30日まで)のものである。


第1位 足場(Scaffolding)
規則
1926.451
全違反件数
8,682件
2003年度ランキング:第1位(8,804件)
 この規則は、建設業、メンテナンス業及び足場使用に関する一般的安全基準を定めたものである。原則として、事業者は、高さ10フィート以上の足場の上または足場に近接する場所で作業している建設労働者を墜落・落下や落下物から保護しなければならない。

是正勧告件数が多かったセクション上位5項目
1926.451(g)(1)−墜落防止措置の不備(1,409件)
1926.451(e)(1)−適切な昇降設備の不備(1,152件)
1926.451(b)(1)−適切な足場板の確保の不備(1,031件)
1926.451(g)(1)(vii)− 墜落防止システムあるいは手すりの欠如(551件)
1926.451(c)(2)−適切な足場支持の不備(545件)


第2位 危険・有害性の周知徹底
(Hazard Communication)
規則
1910.1200
違反件数
7,318件
2003年度ランキング:第2位(6,800件)
 この規則は化学物質のハザードに対処するもので、職場で製造された化学物質及び職場に持ち込まれた化学物質を対象としている。労働者へのこれらのハザードの伝達についても規定している。

是正勧告件数が多かったセクション上位5項目
1910.1200(e)(1)− 書面による計画(プログラム)の作成・維持の不備(2,319件)
1910.1200(h)(1)− 教育訓練の維持の不備(1,044件)
1910.1200(h)− 労働者に対する教育訓練の欠如(768件)
1910.1200(g)(1)− 各危険有害化学物質のデータシート(MSDS)作成不備(707件)
1910.1200(f)(5)(i)− 容器への危険有害化学物質の表示不備(590件))


第3位 墜落・転落防止
(Fall Protection)
規則
1926.501
違反件数
5,680件
2003年度ランキング:第3位(5,544件)
 この規則は、労働者及び事業者に対し、墜落・転落防止措置が必要なのはどのような場合か、その場の状況に適した墜落・転落防止装置は何か、適切な安全システムの設置方法、および墜落・転落防止のための適切な労働者の管理監督方法を示すものである。この規則は、6フィート以上の高さで作業する建設労働者を保護するために作られている。

是正勧告件数が多かったセクション上位5項目
1926.501(b)(1)− 手すり、安全ネットあるいは個人用の墜落防止システムの使用不備(1,949件)
1926.501(b)(13)− 住宅建築時の墜落防止対策不備(1,534件)
1926.501(b)(10)− 傾斜のゆるい屋根作業時の墜落防止対策不備(581件)
1926.501(b)(11)− 傾斜の急な屋根作業時の墜落防止対策不備(324件)
1926.501(b)(4)(i)−開口部への墜落防止対策の不備(256件)


第4位 ロックアウト/タグアウト
(Lockout/Tagout)
規則
1910.147
違反件数
4,304件
2003年度ランキング:第4位(4,506件)
 この規則は、機械の保守・修理等の際に危険有害となるエネルギーをコントロールするために最低限実施しなければならない要件を定めている。この規則は、ロックアウト機能を持った機器の使用時には、ロックアウトを実施しなければならないと定めている。また、ロックアウト/タグアウト手順を守り、保守・修理作業中は電源が確実に"off"の位置にロックされなければならないと同時に、他の労働者が誤って機械の電源を入れないようにタグを掲示し、明確に分かるようにしなければならない。この規則にはまた、装置をロックアウトする効果的なプログラムを作成するための標準も入っている。

是正勧告件数が多かったセクション上位5項目
1910.147(c)(1)―プログラム作成不備(817件)
1910.147(c)(4)(i)―エネルギー管理手順作成不備(752件)
1910.147(c)(7)(i)―労働者の教育訓練の欠如(603件)
1910.147(c)(6)(i)―定期検査の不実施(538件)
1910.147(c)(4)(ii)―不適切な手順(313件)


第5位 呼吸用保護具
(Respiratory Protection)
規則
1910.134
違反件数
4,302件
2003年度ランキング:第5位(3,939件)
 この規則は、事業者が呼吸器保護プログラムを樹立・維持することにより、労働者保護を目指すものである。この規則に含まれる要件には、プログラムの管理、職場に応じた手順、呼吸用保護具の選択、労働者の教育訓練、気密テスト、医学的面からの評価、呼吸用保護具の使用、及び呼吸用保護具の清掃・メンテナンス及び修理がある。

是正勧告件数が多かったセクション上位5項目
1910.134(c)(1)− 書面によるプログラムの作成・実施の不備(696件)
1910.134(e)(1)− 医学的面からの評価の不実施(627件)
1910.134(c)(2)(i)− 自主的な使用が許可されている「補遺D(Appendix D)」の提供不備(375件)
注:1910.134補遺D −規則のもとで使用が必要とされていない場合に呼吸用保護具を使用する労働者のための情報
1910.134(f)(2)− 気密テストの不実施(319件)
1910.134(d)(1)(iii)− 適切な呼吸用保護具の選択と提供の不実施(211件)


第6位 電気配線
(Electrical - Wiring)
規則
1910.305
違反件数
3,337件
2003年度ランキング:第7位(3,112件)
 この規則には、電気機器の接地、配線及び絶縁が含まれる。臨時的な配線及び接続、照明器具取り付具類及びスイッチ類のような部品類、フレキシブルコード及びケーブルのような機器類も含まれる。

是正勧告件数が多かったセクション上位5項目
1910.305(b)(1)− 導体、引込箱、キャビネットあるいは付属品の保護不備(741件)
1910.305(b)(2)− カバーの欠如(607件)
1910.305(g)(2)(iii)− 付属品あるいはその他の装置にフレキシブルコードを接続する際の不備(449件)
1910.305(g)(1)(iii)− 使用禁止場所に置けるフレキシブルコードの使用(429件)
1910.305(g)(1)(iii)(A)− 構造物の固定配線の代わりにフレキシブルコードを使用している(183件)


第7位 機械防護
(Machine Guarding)
規則
1910.212
違反件数
3,245件
2003年度ランキング:第6位(3,400件)
 この規則は、機械防護の使用方法及び使用時の一般的安全要件を定めたものである。原則として、事業者は機械の可動部分の上部や前面にガードを設置しなければならない。

是正勧告件数が多かったセクション上位5項目
1910.212(a)(1)−機械防護の不備(1,841件)
1910.212(a)(3)(ii)−操作点防護の不備(958件)
1910.212(b)−機械据付不備(178件)
1910.212(a)(5)−露出している刃の防護不備(171件)
1910.212(a)(2)−ガード設置不備(63件)


第8位 産業用動力駆動運搬車
(Powered Industrial Trucks)
規則
1910.178
違反件数
3,130件
2003年度ランキング:第8位(2,774件)
 この規則は、フォークリフトからモータ付台車までの、すべての産業用動力駆動運搬車の設計、メンテナンス及び運転に関するものである。

是正勧告件数が多かったセクション上位5項目
1910.178(l)(1)(i)−オペレーターの資格確認の不備(569件)
1910.178(l)(6)−オペレーターの資格証明書の欠如(431件)
1910.178(p)(1)−不安全な運搬機器の使用(347件)
1910.178(q)(7)−運搬機器の点検不備(243件)
1910.178(l)(4)(iii)−オペレーターの運転技能評価の不実施(223件)


第9位 電気システム
(Electrical Systems)
規則
1910.303
違反件数
2,399件
2003年度ランキング:第10位(2,233件)
 この規則は、電気システム設計時の一般的安全要件を定めている。

是正勧告件数が多かったセクション上位5項目
1910.303(b)(2)− 工場の取扱説明書に従わない電気機器の設置及び使用(483件)
1910.303(g)(2)(i)− 電気機器の防護対策の不備(460件)
1910.303(f)− 遮断方法及び回路の確認不備(432件)
1910.303(g)(1)(ii)− 作業場の整備不備(238件)
1910.303(b)(1)− ハザードが認識されている電気機器の使用(219件)


第10位 機械の動力伝導装置
(Mechanical Power)
規則
1910.219
違反件数
2,321件
2003年度ランキング:上位10項目に入っていない。
 この規則は、労働者が伝導装置に巻き込まれないように、歯車、チェーン、ベルト、プーリー及び駆動シャフトといった部品類を適切に防護することを求めるものである。

是正勧告件数が多かったセクション上位5項目
1910.219(d)(1)−プーリー防護の不備(641件)
1910.219(e)(3)(i)− 垂直及び傾斜ベルトの防護不備(415件)
1910.219(f)(3)− スプロケット及びチェーンの覆い不備(341件)
1910.219(e)(1)(i)− 水平ベルト及び水平ロープの防護不備(266件)
1910.219(c)(2)(i)−水平シャフトの防護不備(171件)


トップ10 故意の違反(Willful Violations)
OSHAでは、故意の違反を「労働安全衛生法規で定めた要件を作為的に無視し、あるいは明らかに無関心であったという違反」と定義づけられている。
規則 全違反件数
1. 1926.652       掘削箇所防護システム 69
2 1926.451 足場 59
3. 1926.501 墜落防止 48
4. 1910.147 ロックアウト/タグアウト 25
5. 1910.146 許可が必要な閉塞空間 22
6. 1926.760 墜落防止−鉄骨架設 21
7. 1910.95 騒音ばく露 20
8. 1926.651 掘削
1926.1101 アスベスト 19
9. 1910.134 呼吸器保護 16
1910.212 機械防護
1910.217 動力機械プレス
10. 1910.1200 危険・有害性の周知徹底 14


トップ10 重大な違反(Serious Violations)
OSHAは、重大な違反を「死亡あるいは重大な身体的傷害が発生する可能性が高く、かつ事業者がそのハザードについて知っていたか、知っていたはずである場合の違反」と定義している。
規則 全違反件数
1. 1926.451      足場 7,679
2. 1926.501 墜落・転落防止 4,961
3. 1910.1200 危険・有害性の周知徹底 3,707
4. 1910.147 ロックアウト/タグアウト 3,379
5. 1910.212 機械防護 2,889
6. 1910.305 電気配線 2,476
7. 1910.134 呼吸器保護 2,382
8. 1910.178 産業用動力駆動運搬車 2,171
9. 1910.219 機械動力伝導装置 2,138
10. 1926.1053 はしご類 1,804