このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
NSC発行「Safety + Health」2004年12月号

ニュース


労働死亡災害、2003年は微増

 ワシントン − 労働統計局(Bureau of Labor Statistics: BLS)の発表した最新の労働死亡災害調査(Census of Fatal Occupational Injuries)によると、米国の労働死亡災害は、2003年に微増した。
 2003年には、労働死亡災害は5,559件報告された。2002年には5,534件であった。増加したとはいえ、2002、2003年とも、労働死亡災害調査としてはこれまでの最低値を記録したとBLSはいう。当局は、1992年以来、毎年調査を実施している。
 幹線道路事故、墜落・転落、感電による死亡災害は、2003年には減少した。殺人、火災及び爆発、並びに激突されでは、死亡災害は増加した。
 2003年の労働死亡災害の発生率は、労働者10万人あたり4件で、2002年と同率であった。
 労働死亡災害調査の文中、労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)のジョン・ヘンショー長官(John Henshaw, administrator)は、2003年の労働死亡災害率に言及して、「アメリカの労働者は、数年前に比べ、安全になった」ことを示していると述べた。また、「ヒスパニック系労働者の死亡災害は減少し続けて」おり、当局は元気づけられていると付け加えた。ヒスパニック系労働者の死亡災害は、2年連続で減った。
 労働死亡災害調査のその他のハイライトは、以下のとおり。
  • 2003年の幹線道路事故による死亡災害は1,350件で、労働死亡災害の総件数のおよそ4分の1を占める。
  • 職場での殺人による死亡は、2000年以来初の増加に転じ、631件になったとはいえ、これまでの死亡災害調査の最高値、1,080件(1994年)を大きく下回る水準である。
  • 民間建設部門は、2003年には1,126件の労働死亡災害を記録した。専門請負業では、626件であった。
  • 運輸、倉庫業部門は、805件の労働死亡災害を記録したが、これは、2003年の死亡災害総件数の16%であった。
  • 農林水産業部門では、労働死亡災害は707件であった。
  • 人口統計学的特性では、542人のアフリカ系アメリカ人が業務上死亡したが、これは、2002年の10%増であった。
  • 65歳以上の労働者は、年齢階層別では、依然として死亡率がもっとも高く、65歳以上の労働者10万人あたり11.3件であった。
 報告書全文は、www.bls.gov/news.release/cfoi.nr0.htmで閲覧できる。



事実チェック
2003年には、
常勤労働者の10%を超える人々および
パートタイム労働者の10%を超える人々が
薬物・アルコール乱用または依存の特徴を示した。
出 所:保健社会福祉省(Department of Health and Human Services)、
全米薬物使用・衛生調査(National Survey on Drug Use and Health)、2003年



業務上傷病費用は、産業に直結

 イリノイ州アーリントンハイツ − 労働環境医学ジャーナル(Journal of Occupational and Environmental Medicine, Vol. 46, No. 10)に掲載された調査によれば、州の労働者一人あたりの傷病費用は、基本的には州の産業構成で説明できる。
 調査では、労働者一人あたりの費用は、最高1,979ドル(ウェストバージニア州)から最低650ドル(ニューハンプシャー州)の範囲に散らばっている。
 調査チームは、傷病費用が最も高い州の中に、南部と西部の州が不釣合いに多いことを指摘している。また、死亡災害のみの費用のパーセンテージを算出した。このパーセンテージは、アラスカ州が53.9%ともっとも高く、コネチカット州が9.2%ともっとも低かった。
 調査は、傷病率が、産業によりずいぶんと違ってくることは周知の事実であると記す。したがって、州内の産業人口構成で、「傷病率が高い州があれば、低い州もあることをいくぶん説明できる」。
 調査では、傷病費用の高さと農林水産業、鉱業、及び運輸・公益事業の3産業との間に、相関関係があることを見出した。卸売業、及び金融・保険・不動産業の2産業と、傷病費用の低さとの間にも、相関関係があった。


出 所:労働環境医学ジャーナル(Journal of Occupational and Environmental Medicine)、2004年



カイロプラクティック協会、「過酷な」仕事の上位職種リストを刊行

 バージニア州アーリントン − アメリカ・カイロプラクティック協会(American Chiropractic Association)によれば、腰痛や腰の傷害のリスクのもっとも高いのは、トラック運転手で、建設労働者がこれに次ぐ。この所見は、協会下院(House of Delegates)の非公式な調査に基づくもので、どの職業が背中の筋肉にもっとも負荷をかけるかをもとに、もっとも骨折りと考えられる職種を格付けた。
 大型トラック、トレーラートラックの運転手は、こうしたトラックが背中に与える不断の加圧や振動を理由に、また、長時間の着席で脊椎に加わる圧力は、椎間板の変性をもたらす場合もあり、過酷な職種の第1位に格付けされた。協会は、液体を積載するトラックは「とくに悪い」とみなしている。この種のトラックが急停止すると、タンクのなかの液体が前後に大揺れし、運転手にその衝撃が伝わるからである。
 第2位に格付けられた建設労働者は、仕事の一部に「非常にやりにくい姿勢」でのハンマー打ち、持ち上げ、製鋼、鉄工作があり、リスクにさらされていると、協会は述べる。
 背中への負荷を制限するには、適正な姿勢を保つ、足になじんだ、かかとの低い靴を履く、違う筋肉群を使う仕事を交互にする、定期的にストレッチ体操のための休憩を取る、持ち上げる際には膝を使い、持ち上げるものを体に密着させる(ひざ型)、持ち上げる際には体をひねらないこと、と協会は労働者に勧告する。

骨の折れる職種 上位10位
1. 大型トラック、トレーラートラックの運転手
2. 建設労働者
3. 庭師
4. 警察官
5. 農業従事者
6. 屋根職人
7. 消防士、救急医療隊員(EMT)
8. 配達運転手
9. 介護施設労働者
10 自動車整備士
出 所:アメリカ・カイロプラクティック協会(American Chiropractic Association)、2004年



調査報告:夜間の傷害は、疲労、職種とは無関係

 ワシントン − 労働統計局(BLS)の月間労働調査(Monthly Labor Review, Vol. 127, No. 9)に掲載された記事によると、労働者は、日中の勤務時間より深夜のほうが、業務上の傷害を被る可能性が高いが、これは、労働者の疲労や、夜勤労働者の従事する産業や職業の種類に起因するわけではない。
 調査の筆者、プリンストン大学経済学部(Department of Economics, Princeton University)の博士論文提出資格者、ケネス・N・フォーストン(Kenneth N. Forston)氏は、テキサス州の労災補償支払請求のデータを用いて傷害を評価し、傷害率は、正規の9〜5時シフト(交替時間)では低く、時間外の深夜では高いことを突き止めた。
 しかし、この傷害パターンの要因を突き止めるにあたり、フォーストン氏は、原因と考えられがちな疲労や、日中勤務者と夜勤労働者間の年齢、産業や職種の相違をしりぞけた。記事は、身体の注意力水準の日変動サイクルが、生化学的に制御されたプロセスで生じることを、概日リズムの調査が示していると言及する。この調査は、「労働者は、夜勤の間、最適な注意力に欠け、自分自身や同僚にとって危険な労働条件を助長している」証拠を示すものである。
 その結果、フォーストン氏は、「企業にとって、夜勤労働者を雇うのは、代償が要る」と警告する。企業は、日中の勤務時間に夜勤を補うことで、生産能力を増やすことはできるものの、夜勤は、疲労や長時間労働、産業や職業の種類にはまったく起因しない形で、傷害を増やす。フォーストン氏によれば、「これらすべての要因が、深夜の傷害の発生率の高さを説明できなかったということは、夜勤労働には、日中の労働に比べて危険性が高くなるという、夜勤自体に内在する特徴があると結論せざるを得ない」。



速 報

上院に9月23日に提出された法案は、経済的に重要な基準を小企業が遵守できるよう支援するため、労働安全衛生庁(OSHA)など連邦政府機関が提供するガイダンスを改善するものである。オリンピア・スノウ上院議員(Olympia Snowe、共和党、メイン州)は、もともとの法律、小企業規制推進公正法(Small Business Regulatory Enhancement Fairness Act)の抜け穴をふさぐ意図で、法案を発起した。

 カリフォルニア州労働統計調査課(Division of Labor Statistics and Research)が9月27日発表したデータによると、同州では、2003年、労働者数は増加したにもかかわらず、労働死亡災害が減り続けている。昨年の労働災害による死亡者数は、カリフォルニア州の労働者16,283,000人中456人であったが、これは、2002年の労働者16,215,000人中478人を下回った。

 環境保護局(Environmental Protection Agency: EPA)は、9月13日付けの官報(Federal Register)で、工業用、商業用、公共用ボイラーや工程加熱器からの有害な大気汚染物質の排出を減らす目的で、最大達成可能抑制技術(maximum achievable control technology: MACT)基準を設けた最終規則を発行した。新しい産業用ボイラーMACT規則(Industrial Boiler MACT rule)は、数千もの施設に影響を及ぼし、年間50,600〜58,000トンもの排出量を削減すると期待されている。同規則が規制対象としている汚染物質は、砒素、カドミウム、クロム、塩化水素、フッ化水素、鉛、マンガン、水銀、ニッケルその他の有機物である。

 アメリカ合衆国、カナダ、メキシコは、労働分野における協力に関する北米協定(North American Agreement on Labor Cooperation)が制定した労働協定のもと、翌年度の労働安全衛生の推進をめざした協力活動の自発的プログラムに調印したと、労働安全衛生庁(OSHA)は9月27日に発表した。2005年度プログラムは、今月初め、3ヵ国労働安全衛生作業部会(Trinational Occupational Safety and Health Working Group)の会合(ニューオーリンズ市)で設定された。米国代表団は、OSHAのジョン・ヘンショー長官が率いた。

 欧州労働安全衛生機関(European Agency for Safety and Health at Work)の最新の報告書によれば、業務上の事故や疾病を減らすには、安全衛生を教育に組み込むのが肝要である。報告書は、先進諸国では、18〜24歳の労働者は、平均的な労働者に比べ、50%も高い確率で事故を起こしやすいことを見いだした。報告書の著者らは、この主な理由の一つは、若年者は、職業上のリスクや予防対策に関する知識が限られたまま就職するためであるとして、この問題への対処は、学校制度に鍵があると主張する。

 職場の病原菌となると、労働者は「レスピラトリー・エチケット」注)を明らかにあてにしている。これは、全米の成人を対象に、風邪・流感問題や、予防対策について聞いた最近の調査結果である。3人に一人は、インフルエンザワクチンの不足を心配してはいないと述べているが、回答者のなかでも被雇用者は、職場の同僚は予防すべきであると述べている。被雇用者の4分の3は、病気の同僚がマスクなしでくしゃみをしたり、咳をしたりするのを、また、くしゃみをしたり、咳をした後、共有物を触るのを気にすると回答している。被雇用者はまた、事業者にとって職場の病原菌のまん延を防ぐ最善の方法は、病気の労働者を帰宅させることであるとも述べている。

 全米安全評議会(National Safety Council: NSC)の会員の皆様には、「速報」で、安全関連の重大ニュースを毎週お送りしています。ニュースは、本誌編集部が編集、会員の皆様に、毎週、eメールで最新情報をお知らせしています。会員の方でこの無料サービスをご希望の方、または会員資格をご希望の方は、www.nsc.orgをご覧ください。



注)レスピラトリー・エチケット−−−マスクをしたり、咳やくしゃみをする際に、鼻と口の周りをティッシュやハンカチで覆うことをいう。