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NSC発行「Safety + Health」2005年1月号
ワシントン − 一部の観測筋によると、11月のブッシュ大統領の再選で、今後4年間の安全衛生は、現状路線となりそうである。
2004年12月7日にはジョン・ヘンショーOSHA長官、11月12日にはデイビッド・ローリスキ鉱山安全衛生庁長官(David Lauriski, administrator, Mine Safety and Health Administration: MSHA)がそれぞれ辞任したが、ブッシュ政権のアプローチは変わらず、産業界とのパートナーシップや同盟に重きを置き、規制や基準作成は控えめという路線を引き継ぐと観測筋はみる。エレイン・チャオ労働長官は、ブッシュ大統領の要望で、現職にとどまる。
「私は、ブッシュ政権2期目に重大な変化がたくさん出るとは思わない。私は、たとえばパートナーシップの強調といった、定番プログラムの大半は引き継がれ、拡充路線をとるだろうと予想する」と、ワシントン市の労働弁護士ウィリス・ゴールドスミス(Willis Goldsmith)氏はいう。同氏は、全米エルゴノミクス諮問委員会(National Advisory Committee on Ergonmics)の委員であったが、エルゴノミクス政策でOSHAに助言する2年の任期は、2004年11月に切れた。
オレゴン州消費者商業サービス省(Oregon Department of Consumer & Business Services, Salem、セイラム市)のピーター・デルカ長官(Peter De Luca, administrator)は、州版OSHAプログラムを実施しており、自身は、全米労働安全衛生諮問委員会(National Advisory Council on Occupational Safety and Health)の委員長を務めているが、やはり、ブッシュ政権の2期目に大きな変化は見られないだろうと同意する。
全米安全評議会(NSC)理事会の元理事長で、法律事務所Constangy, Brooks and Smith LLC(アトランタ市)の業務執行社員(managing partner)を務め、労働雇用法を専門とするパトリック・R・タイソン(Patrick R. Tyson)氏は、ブッシュ政権が1期目で敷いた安全衛生路線は、実業界、産業界の幅広い支持を取り付けたと述べた。
「実業界は、今日、どのような問題についても動揺していないし、大規模な変化を引き出そうと政治資金を投入することもおそらくない」とタイソン氏。
実業界は、ブッシュ政権発足まもない2001年初め、論争の的となっていたクリントン政権のエルゴノミクス基準が、連邦議会再検討法(Congressional
Review Act)で廃止されたことで、勢いづいた。「実業界は、従来とは違う見方でものごとを見ている」とタイソン氏はいい、エルゴノミクス基準が否決される前は、産業界は「業界好みの」安全衛生規制にするよう、連邦議会の業界支持者に働きかけようと努めたものだと説明した。
「連邦議会再検討法がエルゴ基準を廃した今は、実業界はなんの規制もいらないと考えていると思う」とタイソン氏は付け加えた。
2期目を形づくる未知数は、2つある。まずは、反対派、とくに1期目で政策をめぐり、労働安全衛生庁(OSHA)と鉱山安全衛生庁(MSHA)と大きく袂をわかった労働組合の、闘争の度合いである。もう一つは、鍵となる政府機関が、プログラムの焦点を2期目に変更する度合いである。たとえばOSHAは、ヒスパニック系労働者の安全衛生やエルゴノミクス・ガイドライン、業務上運転のハザードといったアピール度の高いイニシアチブを展開してきた。
一方、組織労働者は、対決姿勢をとっている。1期目には、エルゴノミクス基準の廃止や残業手当に関する連邦規則の変更、新法規の延期や棄却など、数多くの痛手を受け、さらなる痛手も予想される。労組は、1期目は、規制より同盟を優先するヘンショー、ローリスキ両長官と論争が絶えなかった。
「安全衛生面では、かなり厳しい時期を迎えると思う」と、AFL-CIO(アメリカ労働総同盟産業別労働組合会議、ワシントン市)のペグ・セミナリオ労働安全衛生部長(Peg Seminario, director, Department of Occupational Safety and Health)はいう。「OSHAが、安全衛生で指導力を発揮するとは思えない」。
組織労働者は、OSHAやMSHAといった政府機関は、労働安全規則の施行にもっと積極的な役割をはたすべきであると考える。セミナリオ氏は、1期目のOSHAの姿勢は「かなりおとなしかった」と特色づけた。
組織労働者の側からの闘争は、なんであれ、政権との予算攻防をたどる。セミナリオ氏は、過去数年間ほぼ横ばいの連邦安全衛生当局の予算は、ブッシュ政権の財政赤字削減の標的の一つになるだろうと考えている。昨今の予算サイクルでは、労組のリーダーらは、ブッシュ政権は、従来、職場の遵守プログラムに向けられていた予算を、自主的な、事業者寄りの分野に振ろうとしていると非難してきた。
新しいプログラムについて、OSHAやMSHAといった政府機関の長は、政権の政策の枠内で裁量を与えられていると観測筋はいう。新しいプログラムイニシアチブについては、OSHAや国立労働安全衛生研究所(National
Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)に助言する全米労働安全衛生諮問委員会(National
Advisory Committee on Occupational Safety and Health: NACOSH)などといった諮問委員会で、その兆しが現れるだろう。デルカ氏は、昨夏のヒスパニックサミットの企画を後押ししたNACOSHは、OSHA、NIOSHの長から方向性を与えられるだろうから、その方向性に変化がないか、見守ると言及した。
ヘンショー氏は、任期中、事業者が国の安全法規を遵守するよう、いわゆる「効果的な執行」を強調した。執行とは、教育、アウトリーチや自主的遵守と並び、OSHAのパラダイム(枠組み)の一部をなすとヘンショー氏は言った。ヘンショー氏は、監督件数を増やし続けて、批判をいくぶんかわす一方、悪質な違法件数は減っていったと、タイソン氏はいう。ヘンショー氏は、2004年11月18日の記者会見で、監督件数は、OSHAの2004年度の目標値を上回ったと述べた。
「われわれの目標監督件数は、これまでの水準と同じとなる」と、ヘンショー氏は、2004年度労働監督報告を発表するにあたり、こう述べた。「われわれは、結果をどう改善するか、これにエネルギーを収束させるのである。私は、同じ事業場へなんども戻るのは、資源の無駄づかいだと思う。われわれがやりたいのは、効果的に監督するということであり、つまり、ある事業場に行き、持続可能な変化をもたらして、今度は傷害率や危険度の高い別の事業場へ行くことができるようにするということである。私のいう『効果的』とは、こういうことである」。
ジョンズ・デイ(Jones Day)氏との共同経営者、ゴールドスミス氏は、OSHAは、「ここ数ヶ月内に始められた政策やプログラムに沿って」、監督行政で環境保護局(Environment Protection Agency: EPA)との協力関係を促進させて、費用を節約し、弱腰の監督行政という批判をよりいっそうかわす機会をつくるとよいと述べる。
安全衛生の利害関係者らは、向こう4年間で法改正があるかどうか、連邦議会に注意を向ける。マイク・エンジ上院議員(Mike Enzi、共和党、ワイオミング州)やチャーリー・ノーウッド下院議員(Charlie Norwood、共和党、ジョージア州)は、第108回連邦議会でOSHA関連法案を提出した。エンジ議員は、現在、OSHA、MSHAを所管する雇用安全訓練小委員会(Employment, Safety and Training Subcommittee)の委員長だが、次期議会で委員長交代があれば、衛生教育労働年金委員会(Health, Education, Labor and Pension Committee)の委員長を引き受けるという。エンジ議員は、同委員会の共和党員のなかでは、最年長から二人目である。
タイソン氏は、政府内で重要な法案が浮上するかどうか、ここでも懐疑的である。というのも、現政権内の事業者寄りの関係者らは、すでにことが有利に展開している以上、政治資金を投じようとは思わないだろうからである。
全米安全評議会(NSC)のボビー・ジャクソン全米プログラム担当上級副会長(Bobby Jackson, senior vice president, national program)は、NSCは引き続き、「米国の安全衛生関連の公共政策・計画に影響力を行使する」連邦議会やOSHA、MSHAといった政府機関のリーダーらと緊密な協力関係を築いていくと述べた。
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