このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
|
 |
 |
|
NSC発行「Safety + Health」2005年2月号
ジョージア州メイコン − 連邦地方裁判所は、2004年11月26日、米国産業衛生専門家会議(American Conference
of Governmental Industrial Hygienists: ACGIH)の作成するTLV(threshold
limit values)は、商業上ないし政府の言論ではなく、したがって憲法修正第1条(First
Amendment)で保障されると裁定した。
これは、四物質について、新しいTLVをACGIHが提案、採択、刊行することを禁ずる暫定差止命令の発令を却下する裁決のなかで言及された。四物質とは、n-プロフィル臭化物(1-ブロモプロパン)、銅、結晶性シリカ、ディーゼル粒子状物質である。
原告は、国際臭素化溶剤協会(International Brominated Solvents Association)、Aerosafe
Products Inc.、全米鉱業協会(National Mining Association)で、訴訟では、差止命令は、原告らの経済的利益を保護するのに必要であり、厳しいTLVは、科学的に立証されていないと主張した。また、ACGIHは、連邦諮問委員会であるから、行政訴訟法(Administrative
Procedures Act)の適用を受けると主張した。
ジョージア中央地方連邦地方裁判所(U.S. District Court for the Middle
District of Georgia)は、原告は、連邦諮問委員会法(Federal Advisory Committee
Act)の下では、訴訟を起こす原告適格を有しないと裁定し、TLVの刊行に対する差止命令は、「ACGIHの憲法修正第1条、言論の自由をはく奪するにひとしい」と付け加えた。
ACGIHのビッキー・L・ウェルズ理事長(Vickie L. Wells, board chair)は、訴訟に関し、「原告の主張は、信頼に足る、綿密な科学に立脚して、労働者を十分保護しようとする専門家の能力に対し、実質的な脅威を振りかざす性質のものである。道理を尽くした評価と判断に基づいて科学的な見解を表現するという組織や団体の権利が、危機にさらされている」とコメントした。
ACGIHは、規制目的の基準ではなく、専門的な実践ガイドラインとしてのTLVを開発、提案し、刊行していると述べた。
「われわれは、現在、変更予定通知(Notice of Intended Change)に1-ブロモプロパン、銅、シリカ、結晶性クリストバライトを載せている。ディーゼル排気ガスは、検討(Under
Study)リストに載っている」と、ACGIHのアンソニー・リズット常務理事(Anthony
Rizzuto, Executive Director)は、本誌締め切り時刻にこう述べた。
リズット氏は、これらの物質に関する変更はなんであれ、2005年1月に発行する2005年度年次報告に載せると付け加えた。
ACGIHによると、ある物質のTLVの開発または改定を検討すると決定した場合、当該物質はまず、「検討」リストに載せる。情報を収集し、TLV案が開発されると、変更予定通知に掲載する。この間、コメントを一般公募する。
ACGIHは、コメントを検討の上、TLVを採択し、変更予定通知に残すか、あるいは、変更予定通知から削除し、検討リストに戻すかどうか、決定する。
差止命令に関する裁定が言い渡された後、原告は、くだんの四物質に関するすべての資料・記録を提出するよう義務づける迅速開示命令を申請した。この申請は、12月1日、却下された。
本誌締め切り時刻では、国際臭素化溶剤協会・Aerosafe Products Inc.対ACGIH・労働省・保健社会福祉省の最初の公判日は設定されていなかった。
事実チェック
アメリカで2003年に職場内および職場外で発生した死傷災害
|
|
|
死亡 |
|
就労不能傷害 |
|
|
発生場所 |
|
件数 |
|
発生率* |
|
件数 |
|
発生率* |
|
|
職場内・職場外 |
|
46,800 |
|
0.011 |
|
990万人 |
|
2.4 |
|
|
職場内 |
|
4,500 |
|
0.003 |
|
340万人 |
|
2.3 |
|
|
業務外 |
|
42,300 |
|
0.016 |
|
650万人 |
|
2.4 |
|
*発生率は、発生場所で過ごした時間20万時間あたりの、死亡または傷害件数を示す。
出 所:National Safety Council、"Injury Facts"、2004 |
|
ワシントン − 2004年12月の労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)のジョン・ヘンショー長官(administrator)の辞任を受け、ジョナサン・L・スネア(Jonathan L. Snare)氏が長官を代行する。スネア氏は、ヘンショー氏の後任が選ばれるまで、長官代行(acting administrator)を務める。
スネア氏は、2003年6月に労働省(Department of Labor)に入省、労働法務官の上級顧問(senior advisor to the Solicitor of Labor)を務めた。この役職で、同氏は、OSHA、鉱山安全衛生庁(Mine Safety and Health Administration: MSHA)、賃金・労働時間課(Wage and Hour Division)の問題に取り組んだ。
労働省入省前は、スネア氏は、テキサス州で弁護士として開業していた。
また、R・デイビス・レイン(R. Davis Layne)氏は、2004年12月31日付で、37年間以上勤めた連邦政府を退任した。レイン氏は、直近ではOSHA担当労働副次官補(deputy
assistant secretary of OSHA)を務めた。
この1月、レイン氏は、自主的保護プログラム参加者協会(Voluntary Protection
Programs Participants' Association: VPPPA)の常務理事(executive director)に就いた。労働副次官補代行には、スティーブ・ウィット(Steve
Witt)氏が就任した。ウィット氏は、1983年にOSHA入庁、直近では基準・ガイダンス部長(director,
Directorate of Standards and Guidance)を務めた。
調査で、多くの企業が健康問題を重視 |
ニューヨーク − アメリカ経営者協会(American Management Association)の調査によれば、アメリカの企業は、これまで以上に健康増進に努めている。
2004年10月、協会は、会員企業211社を対象に、従業員の健康プログラムについて調査した。その結果、禁煙、運動・フィットネス、コレステロール管理などといった7つの調査分野すべてで、プログラムを提供する企業数が増えていた。
また、幹部の80%は、"アメリカ"という企業は健康増進の責任を有すると考えており、これは、昨年の71%を上回った。
「企業の衛生・健康プログラムに関する2004年度調査(2004 Survey on Corporate Health and Wellness Programs)」は、 www.amanet.org/press/amanews/wellness04.htmで閲覧できる。
|
出 所:American Management Association、2004年
|
ワシントン − 労働統計局(Bureau of Labor Statistics: BLS)は、2003年に事業者から報告のあった死亡災害を除く傷病件数は計440万件で、これは、常勤労働者100人あたり5件に相当すると発表した。これは、2002年の5.3件を下回る率である。
BLSによると、この減少は、報告のあった傷病件数の7.1%減と、実労働時間数の0.7%減の結果である。
のべ10万件以上の傷病件数を記録した産業は、14部門にのぼり、およそ200万件、全体の47%を占める。このうち、最高率を記録したのは、100人あたり10.1件の看護・在宅看護業、9.3件の運輸機器製造業、8.7件の病院であった。
このほか、食品製造業は100人あたり8.6件、組み立て金属製品製造業は100人あたり8.5件であった。
事業規模で分析すると、従業員1〜10人の小企業は100人あたり2件、従業員50〜249人の中企業では6.2件であった。
BLSは、産業分類を標準産業分類システム(Standard Industrial Classification System)から北米産業分類システム(North American Industry Classification System)に変更したため、過去のデータとの比較はできないと警告する。
今回のデータは、2003年度統計発表3回シリーズの第2回である。第1回は、2004年9月に発表したもので、労働死亡災害を扱った。第3回は、2005年3月に発表予定で、重傷・重病災害を扱う。
報告書全文は、www.bls.gov/news.release/pdf/osh.pdfで閲覧できる。
シカゴ − リバティ・ミューチュアル(Liberty Mutual)社の「2004年労働安全指数(Workplace Safety Index 2004)によると、重度労働傷害費用は、この種の災害件数が減少しているにもかかわらず、増加の傾向にある。労働安全指数では、重度労働傷害(serious workplace injury)とは、従業員の休業6日以上の傷害をいう。
リバティ・ミューチュアル社によると、1998〜2002年間の労働傷害費用12.1%増のうち、半分以上は2002年の増加分であるが、これは、同4年間の重度傷害件数の減少と逆の傾向である。2002年には、重度労働傷害は、全米で496億ドルの費用損失となった。
しかし、リバティ社は、同期間中、労働傷害の主要原因の格付けは変わらなかったことを指摘、安全専門家は「もっとも費用のかかる傷害を予防するのに、明瞭なロードマップを持っている」と主張する。
労働安全指数では、無理な動作、転倒、動作の反動が引き続き、重度労働傷害の三大原因として格付けられた。動作の反動・無理な動作は、かがむ、登る、および転落・墜落に至らないすべり・つまずきから被る傷害を指す。
「もし、労災補償費用を大幅に減らしたければ、記事の見出しではなく、数値に従おう」と、リバティ・ミューチュアル安全調査研究所(Liberty Mutual Research Institute for Safety)のトム・リーマン所長(Tom Leamon, director)はいう。「安全対策の最新流行を追うのではなく、従業員がなぜ負傷するのか理解し、負傷原因に取り組むこと。労働安全指数の三大原因は、1面記事を飾るものではないかもしれないが、経費を膨らませているだろう」。
労働安全指数は、リバティ・ミューチュアル安全調査研究所が毎年作成しているもので、リバティ・ミューチュアル社、労働統計局、全米社会保険学会(National Academy of Social Insurance)の2002年度データを下敷きにしている。報告書全文は、www.libertymutual.comで閲覧できる。
|
労働傷害の十大原因(2002年) |
以下の原因による傷害は、重度労働傷害に要した費用496億ドルの88パーセントを占める。
|
無理な動作 |
|
132億ドル |
|
|
|
|
|
|
|
すべり・つまずき
|
|
62億ドル |
|
|
|
|
|
|
|
動作の反動 |
|
53億ドル |
|
|
|
|
|
|
|
墜落・転落
|
|
46億ドル |
|
|
|
|
|
|
|
激突され |
|
44億ドル |
|
|
|
|
|
|
|
動作の反復
|
|
28億ドル |
|
|
|
|
|
|
|
交通事故 |
|
26億ドル |
|
|
|
|
|
|
|
激突 |
|
23億ドル |
|
|
|
|
|
|
|
はさまれ・巻き込まれ |
|
19億ドル |
|
|
|
|
|
|
|
暴力・暴行 |
|
4億ドル |
|
|
|
|
|
|
資料出所:出所:Liberty Mutual, "Workplace Safety Index"
|
|
ワシントン − 中国の工場労働者を対象にした最近の調査によると、工業用溶剤であるベンゼンへの職業性ばく露は、連邦ばく露限界値未満の水準であっても、病原体と闘う白血球数を著しく減らす可能性がある。
調査では、天津の靴工場労働者250人を対象とした。109人のグループは、平均0.57ppmのベンゼンにばく露したが、この値は、労働安全衛生庁(OSHA)がアメリカの職場向けに設定した1ppmより低いにもかかわらず、白血球数が大幅に減少したことをつきとめた。
この後に続く試験を経て、ベンゼンへのばく露は、血球となる骨髄細胞の成長・増殖を阻害することが推察されると、調査チームは述べた。
ベンゼンは、プラスチック、樹脂、接着剤や合成繊維の材料である。製靴、船積み、自動車修理や、石油・ガソリンの精製・輸送に日常的に用いられている。
調査は、国立ガン研究所(National Cancer Institute)のチング・ラン氏(Qing Lan)とナサニール・ロスマン氏(Nathaniel Rothman)、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のマーティン・スミス氏(Martyn Smith)が指揮をとった。調査は、サイエンス誌 (Science, Vol. 306, No. 5702)に掲載された。
BLS発表:休業災害の大半は、始業4時間以内に発生 |
|
ワシントン − 労働統計局(BLS)の初の傷害発生時刻のデータによると、災害発生時間のデータがある2002年の延110万労働時間の休業傷害・疾病のうち、およそ半分は、始業4時間以内に発生していた。
休業災害が頻発するもう一つの時間帯は、始業後4〜8時間で、全体の1/3以上の傷病が発生した。残りの7%は、長時間のシフト(交替勤務時間)全体に分散していることを、BLSは見いだした。
BLSはまた、傷病の過半数は日中に発生していることに気づいた。しかし、発生時刻のパターンは、職種特有の性質を反映していた。たとえば、看護師補助、病院掃除係や付添人の場合、真夜中から朝8時までに全傷病の21%が発生しているが、これは、こうした職種の特性を反映している。
傷病件数は、月曜日から金曜日まで平均的に分布していた。傷病発生率の高い職業のなかで、トラック運転手、用務員、清掃員、大工の場合、傷病の発生は月曜日に多かった。
全労働者について、傷病の回復に要した労働損失日数の中央値は、7日であった。
B LSは、OSHAが記録保持規則を最近変更し、労働傷害の日時や、被災はシフト何時間目であったか、などといった情報の提供を事業者に義務づけたため、新しいデータを獲得できたと述べた。
|
|