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NSC発行「Safety + Health」2005年3月号
ワシントン − 産業界の利害関係者らが、労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health
Administration: OSHA)の六価クロム規則案の改正許容ばく露限界に懸念を抱いていることが、OSHAが受理したコメントによって明らかになった。
OSHAは、2004年10月4日付官報(Federal Register)で規則案を公表した。コメントは、1月3日を締め切りとして一般公募され、当局は、およそ370件のコメントを受理した。
産業界からのコメントの多くは、同規則のばく露限界案について寄せられた。ばく露限界は、建設業、造船業、一般産業の六価クロムおよびすべての六価クロム化合物について、8時間加重平均を一立方メートルあたり52マイクログラムから1マイクログラムへと引き下げることになっている。
このばく露限界案を「過酷」だというのは、全米製造業者協会(National Association of Manufacturers)で、新しいばく露限界は、「不可能で、不適切に正当化された」ばく露水準を設定していると述べた。同協会(在ワシントン市)は、OSHAは、法遵守の費用を過小評価しているのみならず、「実際的でない」遵守方法を提案していると付け加えた。
米国商工会議所(U.S. Chamber of Commerce)は、本ばく露限界は、「時代遅れの、当今の職場にそぐわない」データを下敷きにしていると述べた。商工会議所(本部、ワシントン市)は、改正ばく露限界の遵守で、廃業や海外へのアウトソーシングを余儀なくされる企業も出てくるだろうと警告した。
商工会議所はまた、ばく露限界の「大幅な」引き下げによって、これまで当該基準の影響を被ることのなかった多数の企業にも、本規則が適用されて、財政難を引き起こすだろうと述べた。
全米塗料被覆剤協会(National Paint and Coatings Association)も、遵守費用に関するOSHAの経済分析に文句をつけた。同協会(在ワシントン市)は、OSHAが「当該規則を施行する諸費用を過小評価する一方、影響を被る多数の産業については、その経済的健全性を過度に楽観視している」と述べた。
全米安全技術者協会(American Society of Safety Engineers)も論争に加わり、OSHAの基準更新を評価しつつも、当該ばく露基準については、十分な科学的根拠があるとは考えられないと付け加えた。
OSHAは、2003年の裁判所の裁定で、2004年10月4日までに規則案を、2006年1月18日までに最終規則を公布するよう命ぜられており、これに従って、当該規則を公布する。この訴訟事件は、パブリック・シティズン衛生調査部会(Public
Citizen Health Research Group)と国際製紙関連産業化学エネルギー労働者組合(Paper,
Allied-Industrial, Chemical and Energy Workers International Union)が、OSHAに六価クロム基準を更新させようと提起したものである。
六価クロム化合物は、化学産業で、顔料、板金や化学合成に、材料や触媒として幅広く使われている。六価クロムはまた、ステンレス鋼や六価クロム塗布面の溶接で生ずる。
OSHAは、本規則作成を協議するため、2月1〜17日、ワシントン市で公聴会を開いた。
事実チェック |
非意図的傷害による死亡災害件数のもっとも多い州(2001年)
出 所:全米安全評議会(National Safety Council: NSC)、2004年 |
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スペイン、ビルバオ(Bilbao) − 企業の労働安全衛生基準が高ければ、生産性も高く、その逆もまた然り。これは、欧州安全衛生機構(European
Agency for Safety and Health at Work)が出した新しい調査報告書の所見である。
報告書によると、高い安全基準が生産性の増加をもたらす要因は、下記のとおり。
- 企業の経営陣と従業員との間に、緊密な協力関係を構築する。
- 自主性ややりがいのある仕事を、職員へ大幅に委譲する。
- エルゴノミクス的作業方法や機材をもっと導入する。
- 質の高い労働環境を確立する。
いくつかの事例では、優良な安全記録から、将来の収益性を予見することができる、と当局は述べている。
逆にいえば、安全成績が悪いと、企業を競争劣位におとしめ、企業の立場は、利害関係者らの間で悪くなることを、調査チームは見いだした。
報告書はまた、安全対策は、企業収益にプラス効果があるものの、「こうした効果を見極め、数量化するのは、いつも簡単にはいかない」と記している。
報告書「労働環境の質と生産性(Quality of the working environment and productivity)」は、当局のウェブサイト、http://osha.europa.eu/publications/reports/211/en/index.htmで閲覧できる。
ワシントン − 安全管理者を対象とした最近の調査によると、安全衛生分野では、アウトソーシングが実際によく行われている。
BNA社(Bureau of National Affairs, Inc.)と全米環境管理協会(National
Association for Environment Management)は、さまざまな産業や企業の安全専門家や幹部と対話して、調査を実施した。それによると、調査対象企業のおよそ4分の3は、安全プログラムや安全関連業務の一部を外部の企業やコンサルタントに委託していた。また、75%は、12ヶ月の間、所属部署における外部委託計画に変更はないと回答する一方、同期間に外部委託を拡大するとの回答は、縮小するとの回答の倍であった。
調査のその他の所見は、次のとおり。
- 安全マネジャーのトップは、所属組織や安全分野で、豊富な職務経験を積んでいる。現職への在籍年数は、中央値7年で、所属組織での勤続年数は10年である。調査対象の職員のほぼ半数は、安全分野で20年以上の勤務経験がある。
- 安全部20部中3部は、2003〜2004年の間に新たなプログラム・活動を取り入れたが、10%は、何らかの職務を手放した。
- 安全部の職員数は、2003〜2004年の間は、ほとんど変化していない。約14%は、ポストを新設したが、13%は廃止した。調査対象の安全部10部中7部では、2004年の職員数は、2003年と同人数であった。
ワシントン − 国土安全保障省(Department of Homeland Security)は、1月6日、国家対応計画(National
Response Plan)を発表したが、これには、国家の有事の際の労働安全衛生支援機能の実施に関するガイドラインも含まれている。
ガイドライン「労働安全衛生補遺(Worker Safety and Health Annex)」は、「国家の重大事に関わるすべての組織に、高水準の保護を提供し続けることを目的とする」と、国家対応計画の支持を発表した労働安全衛生庁(OSHA)は、こう述べた。
安全衛生補遺は、
- すべての潜在的な危険について、先を見越した配慮を払うため、安全衛生関連の連邦資産の調整に備える。
- 緊急対応要員が必要とするすべての安全に関する資源を確保・管理するよう、徹底する。
- 緊急対応要員の安全関連情報を共有する。
- 国家の重大事への対応に関わる連邦政府機関、州政府、地方自治体、先住民自治体、民間団体の関係を調整する。
OSHAは、調整機関として、有事の間の連邦諸機関による労働安全衛生技術支援活動をまとめる責任を負う。OSHAは、とくに緊急対応要員の安全衛生に注意を払う。
国家対応計画は、国民の保護と国家の有事の管理に対し、政府内に統一・標準化したアプローチを確立する。本計画全文は、国家安全保障省のウェブサイト、www.dhs.gov/dhspublicで閲覧できる。
エネルギー業従事者への労災補償に関する新法規、5月に公表予定 |
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ワシントン − 労働省(Department of Labor)は、エネルギー業従事者の業務上疾病に対する補償プログラム法(Energy
Employee Occupational Illness Compensation Program Act)の新しいパートE(Part
E)につき、暫定最終規則を5月下旬に公表する予定であると発表した。
パートEは、エネルギー省の特定施設で働き、有害物質にばく露して業務上の疾病を患った請負業者、下請業者やその遺族に対し、連邦補償や医療給付を提供するよう定めており、2004年10月に法制化された。パートEは、労働省が管理することとなっており、エネルギー省が管理していた旧パートDにとって代わる。
労働省は、パートEの下、2月に予算を配分しはじめ、暫定最終規則を公布する前に、数百件の症例を追加承認する予定である。記者会見で、エレイン・L・チャオ労働長官は、これらの規則については、コメントを一般公募すると述べた。労働省は、補償申請者を支援するためのスタッフや手続きを、5月下旬までに配備する計画である。
旧パートDで提出された25,000人分の補償申請については、チャオ長官は、「すみやかに」パートEへ移しかえねばならないと述べた。
ワシントン − 有害物質排出報告については、全米の産業・連邦施設の所有者や運営者およそ23,000人に毎年の提出を義務づけているが、これが簡単になるかもしれない。環境保護局(Environmental
Protection Agency: EPA)は、有害物質排出目録(Toxics Release Inventory)が規定する年次報告書の提出に要する時間や資源を減らす目的で、2つの規則案を発表した。
ひとつめは、2005年1月12日付官報(Federal Register)に掲載されたが、これは、いくつかの重複するデータ項目ないしはあまり使わないデータ項目を削除し、そのほかにも報告書式の報告要件をいくつか修正する。
具体的には、EPAは、報告義務のある諸施設に対し、ロケーションや個々の設備ごとの報告を求めなくなる。その代わり、こうしたデータは、すでにあるEPAのデータベースから引き出して、報告データのユーザーが利用できるようにする。規則案はまた、
- 廃棄物管理業務に関する報告につき、若干の変更をいくつか加える。
- 書式を変更して、公害予防対策に関する報告を簡略化するが、これについて、コメントを募る。
- いくつかの施設が着手している汚染源の削減や公害管理業務に関する情報について、一般市民のアクセスを改善する。
コメントの一般公募は、3月11日で締め切る。
ふたつめの規則案は、EPAが8月に公表する予定だが、これは、有毒物質の排出について、報告要件をさらに減らすオプションを提示する。EPAによると、規則案は、2002年11月〜2004年3月までの間に会合やオンラインで受理した利害関係者からの提言をもとに、作成した。
詳細は、有害物質排出目録のウェブサイト、http://epa.gov/tri/tridata/tier3/formsmodrule.html で閲覧できる。
コネチカット州ニューヘーブン − 2005年の環境の持続可能性指標(2005 index of environmental sustainability)では、大気の質、水質の維持・改善や、生物の多様性の最大化、環境問題をめぐる諸外国との協力といった活動の出来ぐあいで、146カ国を格付けたが、これによると、米国は第45位であった。
環境の持続可能性指標の上位を占めたのは、北欧、中欧、南米の国々で、上位3位をフィンランド、ノルウェー、ウルグアイが占めた。最下位には、ハイチ、台湾、イラク、北朝鮮が連なる。
米国は第45位で、日本や西欧諸国の大多数に遅れをとった。調査チームによると、この「中の上」の格付けには、水質や環境保護能力といった項目での好成績が反映している。しかし、「廃棄物の産出、温暖化ガスの排出などの項目で下位となっており、これが米国の総合順位を引き下げた」
本報告書は、エール、コロンビア両大学の調査チームが、世界経済フォーラム(World
Economic Forum)と協力して作成した。
ワシントン − 国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and
Health: NIOSH)のeニュース(eNews, Vol.2,No.9)によれば、NIOSHは、業務上の肺疾患を検知できる咳記録機(cough
recording machine)に取り組んでいる。
咳記録機に咳をすれば、その音圧波と気流パターンが記録される、とeニュースは説明する。これらの測定値をもとに、咳のいくつかのパラメーターを算出し、健常者と肺疾患のある被験者との間の差異を用いて、コンピュータ化システムを作り上げる。システムはつぎに、検査ははじめての健常者と肺疾患を患う被験者とを選り分けるのに用いられる。
報告書、交代勤務の高い労働移動率は、労働安全を損なうと警告 |
交代勤務の実態に関する新しい報告によると、交代制操業における労働移動率は、2005年に急増しつつあり、労働安全衛生に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。
経済は不況を脱し、財・サービスに対する需要増をつくり出しているが、産業界は、人員を補充せず、従業員により長時間働かせ、一週間あたり計6.5時間も時間外労働をさせている。この種の時間外労働は、労働者を極度に疲弊させ、退職させることにもなり、持続不可能であると、報告書は述べた。
全米安全評議会(National Safety Council: NSC)労働安全衛生訓練・コンサルティングサービス部長(director
of training and consulting services, occupational safety and health)のロン・ミラー(Ron
Miller)氏によると、高い労働移動率は、安全の見地から、安全指導や特定職能訓練をより頻繁に企業に繰り返させることとなり、これがミスを招くことになるという。
「安定した労働力は、技能を開発するにつれ、仕事をより上手に完遂させるようになり、安全や効率も改善していく。… 安全訓練の時間や費用は、膨大になってくる。これでは、訓練は効果のないものとなりがちで、傷害を増加させることになる」と、ミラー氏は述べた。
米国民の2,400万人は、「時間外労働」をしている。時間外労働とは、勤務時間の一部または全部を7a.m.〜7p.m.以外の時間帯でこなすことをいう。
出 所:Circadian Technologies、2005年 |
労働移動率は、製造工場から介護施設、大型スーパーにいたる24時間操業の企業で、交代勤務する従業員の間でとくに高い。2004年の移動率は、交代勤務労働者で10%、一方、日勤労働者では3.4%であった。報告書は、この高い労働移動率について、過労や安全衛生面での諸問題の増加といった問題を指摘した。2004年で移動率のもっとも高かったのは、保健衛生産業、運輸業、顧客サービス業で、採用・訓練の平均費用は、新規採用者一人あたり3万ドルに達した。
交代勤務制を取り入れる産業別労働移動率(%)
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出 所:Circadian Technologies、2005年 |
交代制操業で、中度から重度の疲労問題を報告する企業は、やはり高額の労働災害補償費用を報告していると、報告書は指摘する。このような問題を挙げる企業は、2003年の50%から、2004年には61%に増加した。
交代勤務労働者の高い労働移動率に対処するひとつの方法としては、既存の安全訓練に、交代勤務への対処をめぐる訓練を組み込むことであると、報告書の共著者、アレックス・ケリン(Alex
Kerin)氏は述べた。「安全基礎訓練は、たいていの場合、ロックアウト/タッグアウトその他の必須事項に『的を絞っている』が、交代勤務への対処法はない。慣れない者が、交代勤務に順応するのは、ほんとうに苦痛である」
訓練には、睡眠パターンに関する情報や、夜勤労働者が睡眠をとる必要があるときには、電話の電源を切るなどといったヒントを盛り込むべきである。
報告書によると、交代勤務への対処を訓練していない企業では、労働移動率は11%であったが、労働者を訓練した企業では8%、労働者とその家族を訓練した企業では3%であった。
交代勤務時間中、休憩の際などに仮眠をとるのは、疲労対策の強力な手段であるが、これを公然と認めているのは、報告書で扱った企業のわずか7%にすぎないと、ケリン氏は付言した。「ひとに、『疲れるな』というだけではだめだ」とケリン氏。「労働者の安全と工場の安全のためには、肩をとんと叩いてやり、『たいへん疲れているようだ、15分間休憩しなさい』というほうがよい」
報告書「2005年交代勤務の実態(Shiftwork Practices 2005)」は、マサチューセッツ州レキシントン市(Lexington,
MA)の調査・コンサルティング会社、サーカディアン・テクノロジーズ(Circadian
Technologies)社が編集した。同社は、24時間操業を行なう企業にサービスを提供している。今回の第6次年報は、すべての主要産業にわたる129,000人の交代勤務労働者を代理して会社経営陣から提出された回答400件を下敷きにしたものである。
労働移動1件あたりの産業別平均費用(ドル)
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ISTD(設計段階からの安全研究所)、閉所間近ながら影響力大 |
10年前、ISTD(Institute for Safety Through Design: 設計段階からの安全研究所)は、全米安全評議会(NSC)内に設立された。ISTDの設立許可状は、今年失効するが、「人間の使用に供するシステムの設計・開発に、安全衛生・環境配慮を組み入れる」未来をめざすと規定した目標へと、産業界を前進させたISTDの功績は、注目に値する。
ISTDは、設計段階からの安全(safety through design)を「ハザード分析やリスクアセスメント手法を設計・工学管理の初期段階に取り込んで、必要な対策を講じ、傷害や損害のリスクを許容水準に抑える」と定義した。
この概念は、施設、ハードウェア、機器、製品、工作機械器具、資材、エネルギー管理、レイアウトや配置を包含する。ISTDの任務は、「設計の全段階にわたり、安全衛生や環境に影響する判断を組みいれることにより、傷病や環境破壊のリスクを減らす」ことであった。
任務を達成するため、ISTDは、三つの戦略を採用した。
- 設計段階からの安全の知識や概念を拡充する。
- 卒業して技術者となる学生の安全衛生や環境問題に関する知識を高めるため、工学課程コースの教材を開発する。
- 学校、社会、産業や労働組合との連携を確立して、啓発する。
ISTDは、任務をさらに追求しようと、これら対象グループ別のツール・教材開発に注力した。これらの分野を調査した結果、ISTDの所員らは、設計段階からの安全に関しては、もっと多くの情報を安全業界や工学業界と分かち合うべきであるとの意見で一致した。これを達成しようと、ISTDは、NSCと米国機械学会(American Society of Mechanical Engineers)が提案した「設計段階からの安全(Safety Through Design)」を著述した。この本は、設計段階からの安全について、一般的な概念や、これを事業プロセスにどう組み込めばいいか、また、これらの概念を実地にどう応用したか、6産業における設計段階からの安全の実践例を盛り込むなどして、紹介している。「設計段階からの安全」は、現在、NSCのwww.nsc.orgで入手できる。
ISTDはまた、NSCの年次会議&展示会や多数の企業の現場で、「設計段階からの安全の原理と実践」について一連のセミナ−を開き、知識を共有した。セミナ−では、次の事項に焦点をあてた。
- 設計段階からの安全の概念と手法
- 設計段階の初期に安全の概念を組み込む利点
- 設計段階からの安全について、基準点を設定する原則
- 職務別危険分析やリスクアセスメントプロセスの原則
- 設計段階からの安全計画の開発と実施
ISTDは、過去10年間、さまざまな方法で、産業、工学、教育、安全の各界に奉仕してきた。 ISTDは、多数の団体が、既存プロセスの「後づけ方式」から、安全衛生・環境配慮型の新しいプロセス設計へ移行するのを支援し、また、次世代の技術者らが、こうした安全・環境配慮は、各自の設計や各自が勤める企業全体や社会に「価値を付加する」のだと認識するよう、大学が指導していくのを支援した。
設計段階からの安全は、産業に重大な影響を与えている。実業家や産業界は、未来の競争課題に対応するため、設計段階からの安全をより良く、より効率的に活用している。これにより、製品やプロセスへの許容しがたく、割高な後づけ方式を排除していく。「迅速に、より良く、そして安く」をめざす産業界の要請に応えるには、無駄のない製造を設計しつつ、リスク軽減を図ることが、鍵となろう。
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今後のISTDの使命は? |
ISTDは閉所するが、主要メンバー、ブルース・W・メイン(Bruce W. Main)、ウェイン・C・クリステンセン(Wayne
C. Christensen)、フレッド・A・マニュエル(Fred A. Manuele)、マイケル・トービッツ(Michael
Taubitz)、とジム・ハウ(Jim Howe)は、ISTDが提起した課題に、どう光を当て続ければよいか、次のように提案した。
- ISTDは、過去の功績を生かし、主要な専門家団体や産業団体の合作の力を取り込んだイニシアチブを再編すべきである。関係者らは、ISTDの設置期間中に培われた勢いを増進せねばならない。産業界、労働界、専門家団体、官界、学界などの利害関係者らを協調させるよう、努力を払わねばならない。
- 設計段階からの安全について、米国規格協会(American National Standards Institute:
ANSI)基準化を検討すべきである。今後の活動の第一歩となるよう、近い将来にANSI基準を開発すべきである。これは、産学双方のニーズに資する大きな一歩となり、設計段階からの安全を支持する人々の間の意思疎通を存続させる。
- 活動はすでに始まってはいるとはいえ、工学課程に安全を組み入れることは、いまも、明日の技術者を成功させるための主要な優先課題である。
- 安全は、無駄のない製造の設計に組み入れられなければならない。安全が設計に十分組み込まれていないと、産業界は、無駄のない製造(廃棄物を最小化する)に到達することはない。後づけ方式の安全対策は、無駄を排す概念の対極に位置する。
- 得た教訓や、設計段階からの安全を推進する「ツール」は、このプロセスを前進させる一助とするために、また、本概念は初めてという人々と解決策を分かち合うためにも、伝達・拡散されねばならない。設計段階からの安全の概念については、現在、技術者や安全専門家を対象とした教育は行われていない。
- 設計段階からの安全の概念は、安全問題を設計段階で把握、分析して、これに対処できるよう、CADのような工学設計ツールに定着させる必要がある。
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