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NSC発行「Safety + Health」2005年4月号
カリフォルニア州、2004年の労災補償法改正で先鞭をつける |
ワシントン − 月間労働概観(Monthly Labor Review, Vol. 128, No. 1)に掲載された労災補償法の改正情報によると、2004年、カリフォルニア州は、大規模な労災補償改革一括法案を採択し、その他の24州も、労災補償の適用範囲やサービスを改正した。
カリフォルニア州の主な改正事項には、追徴金の形で、労災補償プログラムの運営費総額を事業者団体の双肩に担わせることも含まれている。その代わり、事業者らは、2005年に、独自の医療機関ネットワークを構築してよい。また今後は、永久労働不能に対する責任分担は、因果関係に基づくものとし、事業者は、傷害を直接原因とする労働不能のみに責任を負えばよい。
カリフォルニア州はさておき、ほとんどの州は、現行法規を微調整したにすぎない。たとえば、ニュージャージー州では、死亡給付金の算定方法を、スライディングスケールから一人以上の扶養家族につき、賃金の70%と一律化した。ジョージア州は、2008年6月30日以降に発生した二次傷害の支払い請求については、自家保険をかけた事業者や保険会社に補償するのをやめる。ウィスコンシン州では、労働者の労災補償保険を審査する認定医療専門家リストに、医師助手、上級看護師(advanced
practice nurse)を加える。
労働統計局(Bureau of Labor Statistics)が刊行する月間労働概観は、10年以上にわたり、毎年1回、労災補償法の改正を摘要している。25州全部の摘要は、www.bls.gov/opub/mlr/mlrhome.htmで閲覧できる。
2005年の予定は?
2004年は過ぎたものの、州レベルでの労災補償改革の試みに終止符が打たれたわけではない。本誌印刷開始時点で、改革法案の法制化は、カンザス、オハイオ、オクラホマ、サウスカロライナ、テキサスの各州で漸進していた。ウェストバージニア州の1月の特別議会では、保険料を削減し、州労災基金を民営化する労災補償法が成立した。
一方、ニューヨーク州は、本誌印刷開始時点で、3月末までの支払い請求の支払いが困難になると予測されている労災基金と悪戦苦闘している。 |
事実チェック |
出 所:国立労働安全衛生研究所(NIOSH)、「Worker Health Chartbook, 2004」 |
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石綿肺でない労働者でも、アスベストで肺ガンのリスクが高まる |
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ボルティモア − アメリカ疫学ジャーナル(American Journal of Epidemiology, Vol. 161, No.
3)に掲載された新しい調査によると、アスベストへの過度の業務上ばく露は、「石綿肺を発病していない場合でさえ、肺ガンのリスクが著しい」
調査チームによると、アスベストに業務上ばく露している男性、とりわけ石綿肺の症状のない男性が、肺ガンを発病するリスクについては、数多くの調査があるにもかかわらず、依然として論争が絶えない。
本調査は、大量にばく露した米国の男性労働者4,600人を、9〜17年間追跡調査し、1989〜2002年間の肺ガン発病率を分析した。調査は、「X線撮影で石綿肺と診断された男性の肺ガン発病率は、きわめて高い」ことを確認した。しかし、石綿肺の症状がみられない男性についても、発病のリスクは高まることを突き止めた。肺組織が正常な男性からなる大人数のサブグループでは、ばく露関連のガンのリスクは明らかであった。高リスク職業で40年以上ばく露した男性は、5〜10年ばく露した男性のおよそ5倍ものリスクがあった。
調査チームは、考えられるその他の要因、たとえば労働者間の喫煙率の高さなどは、「これらの観察結果を、アスベストの発ガン効果よりうまく説明できそうにはない」と述べた。
ワシントン − 有毒金属、六価クロムへの業務上ばく露に関する労働安全衛生庁(Occupational
Safety and Health Administration: OSHA)の規則案は、公聴会が開かれた3週間、集中砲火を浴びつづけた。公聴会は、裁判所が義務づけた最終規則の完成に向けた重要な一歩である。2月1〜17日の間、ワシントン市内の労働省(Department
of Labor)本省で毎日開かれた公聴会では、広範囲にわたる産業界の利害関係者らが、一日あたり大抵15人以上の割合で、コメンター(論評者)として発言した。
労使代表らは、規則案が労使メンバーに及ぼす影響について、懐疑の念を表明した。公聴会前の書面によるコメントにもあったように、産業界はとくに、規則案の経済的影響に懸念を示した。
一方、労働側は、規則案は、たとえば健康診断の要件などで、建設業や造船業にとっては不十分であると述べた。労組その他は、本件が裁判所の命令による措置であるにもかかわらず、彼らにいわせれば、OSHAは最低限の措置を講じたに過ぎない、と批判した。
1990年、世界保健機関(World Health Organization)の一機関である国際ガン研究所(International
Agency for Research on Cancer)は、六価クロムを人間の発ガン物質と指定、また、国立労働安全衛生研究所(National
Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)も、すべてのクロム化合物を潜在的職業性発ガン物質に分類した。
1993年7月には、パブリック・シティズン(Public Citizen)が、六価クロムのばく露限界を引き下げる緊急暫定基準を要求して、請願書を提出した。OSHAは、この請願書を却下したため、同団体は、提訴した。その結果、フィラデルフィア第3巡回区連邦控訴裁判所(U.S. Court of Appeals for the 3rd Circuit in Philadelphia)は、2006年1月18日までに最終規則を公布するよう、OSHAに命じたため、現在の規則作成の運びとなった。
OSHAは、コメントを調査の上、規則案の修正が必要かどうかを見極めると述べた。
ワシントン − 2月10日、チャーリー・ノーウッド下院議員(Charlie Norwood、共和党、ジョージア州)は、職場の安全を改善し、小企業の遵守負担を減らすという四つのOSHA改革法案を再提出した。これらの法案は、昨年、議会に提出されたが、下院は通過したものの、上院で却下された。
法案は、OSHAの通告に対し、事業者が、労働安全衛生再検討委員会(Occupational Safety and Health Review Commission)に提訴できる期日を延長し、また、同委員会の定員を3人から5人に増やす。法案はまた、委員会が、OSHAの通告を再検討するにあたり、追加の権限を付与する。
今年の法案提出は、上院で見込み薄とみられている。
カリフォルニア州バークリー − 北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement: NAFTA)は、労働分野における協力に関する北米協定(North
American Agreement on Labor Cooperation)と共に、国際貿易における労働者の権利を保護しようとの初の試みで先例を打ち立てたが、失敗の象徴となった。
これは、マキラドーラ安全衛生支援ネットワーク(Maquiladora Health and Safety Support Network)のギャレット・ブラウン(Garret Brown)氏の新しい報告書の結論である。
両協定は、とくにメキシコで失敗したとブラウン氏は記し、その理由として、労働協力における生来の脆弱性や、実施を妨げた政治的・外交的配慮、経済事情やその政治的意義への取り組みの挫折を挙げた。
ブラウン氏はまた、両協定は、欠点はあるものの、経済のグローバル化における労働安全衛生を実際に保護するには何が必要か、道しるべとなると記す。将来の協定に必要な要素としては、国内法規の効果的な施行や、施行プロセスへの事業者の取り込みが挙げられる。
本報告書「NAFTAはなぜ失敗したか、国際貿易協定で労働安全衛生を保護するには、何が必要か(Why NAFTA Failed and What's Needed to Protect Workers' Health and Safety in International Trade Treaties)」は、http://mhssn.igc.org/trade_2004.pdfでPDF書式でダウンロードできる。
ワシントン − ジョン・E・スウィー二ー下院議員(John E. Sweeney、共和党、ニューヨーク州)は、2月、小企業が法定義務を果たすのを支援する法案を再提出した。全米小企業法令遵守支援法(National
Small Business Regulatory Assistance Act of 2005)(下院230)は、小企業を対象に、法令遵守支援プログラムを提供することを目的とする。
同法は、既存の小企業開発センター(Small Business Development Center)を通じて、小企業の経営者、運営者に対し、連邦および州の法令遵守に関する詳しいカウンセリングを非公開、無料で提供する。本プログラムはまた、小企業開発センターに、小企業をめぐる規制環境について、連邦機関へ偏見のないフィードバックをする仕組みとしての役目を果たすよう、求めている。
米国産業衛生協会(American Industrial Hygiene Association, 在バージニア州フェアファクス市、Fairfax, VA)は、同法案は「労働安全衛生を改善する低コストのプロセス」と称し、法案支持を発表した。
ニューヨーク − アメリカ産業医学ジャーナル(American Journal of Industrial Medicine,
Vol. 47, No. 2)に発表された予備調査報告によると、金属加工溶液を取り扱う職業に従事する女性は、乳ガンにかかる危険性が高い。
マサチューセッツ州公衆衛生省(Massachusetts Department of Public Health)の調査チームは、米国の3大自動車製造工場のひとつで、少なくとも3年間勤務した女性4,680人を調査した。このうち、乳ガンの症例は、99件であった。乳ガンを発病するリスクは、可溶性の、油を主原料とした金属加工溶液へのばく露に関連して増加したが、その他の種類の溶液では増加しなかった。一般に、乳ガンにかかった女性は、発病していない女性に比べ、可溶性の金属加工溶液へのばく露が多かった。
金属加工溶液は、以前から健康問題と関連づけられており、呼吸器疾患や、肺、咽喉、すい臓・胃・直腸のガンのリスクを高めると指摘する調査がある。
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