ワシントン − 有毒金属、六価クロムへの業務上ばく露に関する労働安全衛生庁(Occupational
Safety and Health Administration: OSHA)の規則案は、公聴会が開かれた3週間、集中砲火を浴びつづけた。公聴会は、裁判所が義務づけた最終規則の完成に向けた重要な一歩である。2月1〜17日の間、ワシントン市内の労働省(Department
of Labor)本省で毎日開かれた公聴会では、広範囲にわたる産業界の利害関係者らが、一日あたり大抵15人以上の割合で、コメンター(論評者)として発言した。
労使代表らは、規則案が労使メンバーに及ぼす影響について、懐疑の念を表明した。公聴会前の書面によるコメントにもあったように、産業界はとくに、規則案の経済的影響に懸念を示した。
一方、労働側は、規則案は、たとえば健康診断の要件などで、建設業や造船業にとっては不十分であると述べた。労組その他は、本件が裁判所の命令による措置であるにもかかわらず、彼らにいわせれば、OSHAは最低限の措置を講じたに過ぎない、と批判した。
1990年、世界保健機関(World Health Organization)の一機関である国際ガン研究所(International
Agency for Research on Cancer)は、六価クロムを人間の発ガン物質と指定、また、国立労働安全衛生研究所(National
Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)も、すべてのクロム化合物を潜在的職業性発ガン物質に分類した。
1993年7月には、パブリック・シティズン(Public Citizen)が、六価クロムのばく露限界を引き下げる緊急暫定基準を要求して、請願書を提出した。OSHAは、この請願書を却下したため、同団体は、提訴した。その結果、フィラデルフィア第3巡回区連邦控訴裁判所(U.S. Court of Appeals for the 3
rd Circuit in Philadelphia)は、2006年1月18日までに最終規則を公布するよう、OSHAに命じたため、現在の規則作成の運びとなった。
OSHAは、コメントを調査の上、規則案の修正が必要かどうかを見極めると述べた。