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NSC発行「Safety + Health」2005年6月号

ニュース


GAO、CSB、化学工場の安全保障を問う

 ワシントン − 米会計検査員(Government Accountability Office: GAO)の4月27日付の報告書によれば、米国の化学工場の安全保障対策は、連邦政府、産業界で進められているものの、追加措置が必要である。
 GAOの報告書は、9月11日の対米テロ以来の国家防衛努力にもかかわらず、化学工場の安全保障面での備えについては、その程度はいまだに不明であると述べた。報告書は、15,000の施設のなかには、化学メーカー、上水道施設や肥料工場で用いられるもっとも危険な化学物質を大量に所有しているところもあると指摘した。
 専門家によると、化学工場は、テロリストの格好の標的であり、特定の化学物質の略取や流出は、地元経済を崩壊させ、化学物質に依存するその他の重要な社会基盤に影響を及ぼし、数百万人もの国民の安全衛生に影響するという。
 15,000の施設のおよそ6分の1は、危険な化学物質を大量に保有しており、連邦政府により安全保障義務が課されている。GAOは、2003年3月、環境保護局(Environmental Protection Agency: EPA)と国家安全保障省(Department of Homeland Security)に対し、包括的な化学安全保障戦略を開発するよう、勧告した。
 一方、米国化学物質安全性調査委員会(U.S. Chemical Safety and Hazard Investigation Board: CSB)のキャロリン・メリット委員長(Carolyn Merritt, chairman)は、4月27日、上院の国家安全保障委員会で、不慮の事故または攻撃による高危険度の化学物質の流出に対し、備えがひどく欠落しており、国民を無防備な状況にさらしていると証言した。
 メリット委員長は、上院国家安全保障・政府問題委員会(Senate Committee on Homeland Security and Governmental Affairs)に招かれて、「対米化学攻撃:われわれは、どれほど攻撃されやすいか(Chemical Attack on America: How Vulnerable Are We?)」と題したパネルに出席、生命や資産を守るために、化学メーカーや緊急援助隊、地域社会や連邦政府は、もっと対処すべきであると呼びかけた。
 「備えがこのように欠落していては、国民は、無防備なままである」と、メリット委員長は述べ、CSBによる大災害6件の調査で、地域社会における緊急事態への備えや、緊急対応の調整をめぐる不備が発覚したと言及した。調査では、爆発を防ぐ、あるいは、火災や有毒物質の流出を阻止・抑制する社内手順の不十分な例が、数件みられた。安全確保のための遮断システムが作動しなかった例も、数件あったと、同氏は述べた。


事実チェック
米国の職業性眼傷害(2002年)
 
産 業
傷害件数
 
 
民間産業
    42,286
 
 
製造業
    12,420
 
 
サービス業
    8,401
 
 
建設業
    6,281
 
 
小売業
    6,799
 
 
運輸・公益事業
    3,536
 
 
卸売業
    2,554
 
 
農 業
    1,556
 
 
金融・保険・不動産業
    465  
 
鉱 業
    274  

出 所:全米安全評議会(National Safety Council: NSC)、Injury Facts、2004年


2003年の休業労働災害、130万件

 ワシントン − 労働統計局(Bureau of Labor Statistics: BLS)安全衛生統計シリーズの2003年度第3次(最終)報告書によると、民間産業のおよそ130万件もの傷病は,傷病発生日の翌日以降、回復のために休業を余儀なくするものであった。
 休業災害のもっとも多かった職業の上位3位は、1)肉体労働者、運搬者、2)大型トラック、トレーラートラックの運転手、3)看護助手、病院掃除係、付添い人であった。
 捻挫・筋違いは、ほとんどの場合、腰痛を伴うが、これは、2003年の休業災害の43%を占めた。捻挫・筋違い、打撲傷・挫傷、切創・裂傷,骨折が複合したケースは、休業災害のおよそ3分の2を占めた。
 労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)のジョナサン・L・スネア局長代理(Jonathan L. Snare, acting administrator)は、データの発表に際し、本データは、「もっとも効果の出るところに、アウトリーチや監督資源の照準を合わせるというOSHAの政策を実証するものである。本データは、われわれの戦略的管理計画(Strategic Management Plan)が正しい軌道に乗っていることを示している」とコメントした。
 報告書全文は、オンライン、www.bls.gov/news.release/pdf/osh2.pdfで閲覧できる。


2003年度の業務上傷害でもっとも多かったのは、捻挫・筋違い
傷 害   パーセント
捻挫・筋違い
  42.9
打撲傷・挫傷
  9.0
切創・裂傷
  7.3
骨 折
  7.2
火 傷
  1.5
手根管症候群
  1.7
腱 炎
  0.6
薬 傷
  0.6
切 断
  0.6
複合外傷性傷害
  3.6
その他
  25.0

出 所:労働統計局(BLS)、2005年6月17日


下院委、OSHA改革法案を承認

 ワシントン − 4月13日、労働安全衛生庁(OSHA)改革4法案が、下院教育労働力委員会(House Education and the Workforce Committee)を通過した。法案の発起人、チャーリー・ノーウッド(Charlie Norwood、共和党、ジョージア州)下院議員も含めた同委員会の法案支持派は、4法案は、企業が、自主的かつ先を見越したやり方で、OSHAと協同しやすくすると述べた。反対派らは、法案は、労働安全を後退させると述べた。
 4法案はいずれも、前回の議会で提出され、下院を通過したが、上院で棄却された。
 「私は、これらの法案ができるだけ早く下院を通過するよう、全力を尽くし、上院も同様に対応するよう、期する」と、ノーウッド議員は述べた。同氏が楽観しているのは、氏とは長年、下院議員同士として面識のあるジョニー・アイザクソン氏(Johnny Isakson、共和党、ジョージア州)が、現在、上院議員として、上院の要、雇用労働安全小委員会(Senate Employment and Workplace Safety Subcommittee)の長を務めているからである。ノーウッド議員のウェブサイトによれば、アイザクソン議員は、法案の委員会通過を進めるとみられており、法案が両院を通過する勝算は、かなり大きくなった。
 (法案の詳細は、本誌2005年4月号「ニュース」欄(p.14)を参照のこと。)



CDC改革、懸念のなか、進展

 アトランタ − 疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)の組織改革計画は、4月21日付で発効した。この改革は、国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)への影響もあって、安全衛生関係者らの関心を惹いているが、改組計画には、CDCによれば、科学分野の専門知識を結合する手だてとなる新しい4つの調整センター構想が含まれている。
 4月5日付で議会の承認を得たこの改組計画は、「新しい、想定外の健康への脅威に備え、米国に住まうすべての人々の健康と生活の質を、生涯を通して守るという、当局の使命を追求する」ことを可能ならしめると、CDCは述べた。
 CDCは、管理費を8,300万ドル削減して、その分を調査研究費へ再配分し、また、管理部門の空席600人分を、研究員、技師その他の第一線の労働者へと移した。
 CDCの改革については、www.cdc.gov/od/oc/media/pressrel/r050421a.htmで詳細を閲覧できる。



家族医療休暇法の利用増で、事業者負担210億ドル


 ワシントン − 事業者団体の調査によれば、家族医療休暇法(Family Medical Leave Act: FMLA)による計画外の断続的休暇が増えており、2004年に取得された休暇のかなりの部分を占めている。
 雇用政策基金(Employment Policy Foundation)の実施したこの調査によれば、2004年に取得された休暇の30%は、5日未満で、20%は、1日以下であった。断続的休暇は、一般には、時間単位で取得されるもので、たいていは、単一の疾病、慢性的症状または傷害を理由とするものである。断続的休暇は、1時間から1日以上と、さまざまである。
 従業員は、これまでの調査結果に比べ、FMLA休暇を複数回取得する傾向が、かなり増えた。平均すると、従業員の14.5%は、昨年、FMLA休暇を取得しており、このうちの35%は、2回以上取得している。保健衛生産業、製造業、公益事業、電気通信業の事業者は、その他の産業に比べ、従業員のFMLA休暇の取得に寛容であると、調査は指摘した。
 FMLAの規定では、「できるだけ早く」休暇を届け出るよう、従業員に義務づけているが、30%のケースでは、休暇開始後に届出があった。これでは、従業員の欠勤を補うよう、事業者がスケジュールを調整するのは難しいと、雇用政策基金はいう。
 企業負担について、雇用政策基金は、2004年の直接費用を、交代要員費用や団体健康保険給付の継続、生産性の損失をひっくるめて、210億ドルと見積もっている。電気通信業、製造業、運輸業が、この費用の大半を担っている。
 報告書は、オンライン、www.epf.org/pubs/newsletters/2005/ib20050419.pdfで閲覧できる。



報告書:裁量労働で、欠勤を抑制

 ロンドン − どうやら、アメリカのビジネスは、イギリスのビジネスに知恵を拝借することができそうだ。多くのイギリス企業では、欠勤が減少しているが、これは、いくぶん、労働と私生活の均衡をめぐる諸問題に対処しようとした企業側の意欲の賜物であると、新しい報告書は、結論した。
 調査チームは、イギリスの企業52社の平社員の欠勤率を調査した。企業の75%は、過去2年間、欠勤率は減少、または横ばいであったと報告した。欠勤率のもっとも低かったのは、中小規模の企業であった。
 調査は、欠勤率の減少は、労働と私生活の問題が従業員にどう影響を及ぼすのか、企業側の理解が深まったからであるとし、「労働と私生活の均衡は、ストレス関連および仮病による欠勤の主要原因であり、この問題を解く鍵である」と指摘した。
 この逆説に対処するには、裁量労働のオプションは、欠勤率を減らすのにもっとも効果的であると、企業側はいう。また、ライン管理職の関与や、長期欠勤後の職場復帰の際の面接が、効果的であると述べた。
 報告書「病気と健康(In Sickness and in Health)」は、イギリスの従業員諮問サービス(Employee Advisory Service)の委託で、働く家族(Working Families)が作成した。報告書は、www.workingfamilies.org.uk/asp/employer_zone/reports/WFAbsenceReport.pdfで閲覧できる。



調査報告:中高年労働者の障害は、業務に起因

 ミシガン州アナーバー − 新しい調査によれば、50歳代の障害者の3分の1、障害者総数の半数は、業務で障害を被った。
 調査は、ランド社市民正義研究所(RAND Corp. Institute for Civil Justice)およびミシガン大学社会調査研究所(University of Michigan Institute for Social Research)のエコノミストらが実施した。 調査チームは、米国の51歳以上の人口を標本にしたミシガン大学の健康・退職調査(Health and Retirement Study)と、米国勢調査局(U.S. Census Bureau)の所得プログラム参加調査(Survey of Income and Program Participation)のデータを吟味した。
 調査チームは、51〜61歳の一般人口のうち、20.5%は、仕事量または職種が限定される健康問題を抱えており、これは、男女とも同率であることを突き止めた。この率は、ヒスパニック系や非ヒスパニック系の黒人でかなり高く、およそ28%が、労働能力が限定した状態を報告していた。
 障害者の17%が、抱えている障害は、業務上災害によるものであると報告しており、そのほか14.7%は、障害は、業務上災害によるものではなく、業務の性質に起因するものであると報告している。
 「過去数十年間、肉体を酷使する職種に従事する労働者の割合は、減ってきた」と、著者らは述べる。「しかし、新種の職業は、これまでとは違う一連の健康状態、たとえば、反復性ストレス傷害、肥満、ストレス性精神疾患などと関連しているようだ」。
 調査報告書の著者らは、労働安全へのさらなる投資や、労災補償と社会保障障害保険(Social Security Disability Insurance)とのより緊密な調整が、有益であろうと勧告する。



調査:処方薬費用、労災補償に打撃

 コネチカット州マディソン − 労災補償に占める処方薬費用が、事業者の目を引いている。彼らは、目にしたものに不満である。
 健康戦略アソシエイツ(Health Strategy Associates)が4月12日発表した調査によると、労災補償支払人は、労災補償の支払い請求に回された処方薬の総額が、重大な懸念であると述べた。これは、無理もないことで、アソシエイツによれば、2004年の薬剤費は、およそ35億ドル、2003年の12%増であった。調査ではまた、事業者らは、1年前よりも、薬剤費問題をよく認識していると指摘した。
 調査の被験者らは、この増加の第一の理由として、医師をあげた。医師らは、以前よりも多くの薬剤を処方しているというのである。被験者らは、処方箋作成パターンや、医師の処方行動の変化を扱うプログラムを要請した。
 しかし、問題は単に、医師が処方箋を多く作成するというだけでは解決されず、何を処方するかにあるだろう。
 ハートフォード投資情報サービスグループ社(Hartford Financial Services Group Inc.)は、2004年に労災補償支払い請求のあった処方薬の上位25品目リストを作成しているが、これにより、未承認薬剤の使用が、薬剤費の増加に一役かっていることが分かった。未承認薬剤の使用は、食品医薬局(Food and Drug Administration: FDA)が承認していない方法で処方薬を使用することと定義される。
 セレブレックス(Celebrex、リスト第3位)、バイオックス(Vioxx、2004年に入って9ヶ月間、市場から回収されたにもかかわらず、リストの第7位)やベクストラ(Bextra、第6位)のようなCOX-2阻害薬は、アスピリンやイブプロフェン(ibuprofen)といった薬の代わりに、頻繁に用いられていた。後者二者やその他の非ステロイド系消炎薬は、高価なブランド名の競合品と薬効はほぼ同じであると、ハートフォード社(本社、コネチカット州)は述べた。
 「リストの上位25位で優勢なのは、鎮痛薬であり、多くの業務上疾患を治療するという意味では、確かに道理にかなうものである」と、ハートフォード社のロバート・E・ボナ−医療部長(Robert E. Bonner, medical director)は述べた。しかし、「新しい方がよい」という考えは、「患者に強力で高リスクの薬剤を投与する。評価の確立した薬剤は、たいていリスクも少なく、安価であるのにもかかわらず、である」と、ボナー氏は、懸念を示した。
 上位25品目の薬剤は、労災補償向けに処方された全薬剤の61%を占める。リストの大半は、鎮痛剤、抗うつ薬、睡眠薬や筋肉弛緩剤である。

「ニュース("In the News")」欄は、キャレン・ガスパース編集次長が編集した。