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NSC発行「Safety + Health」2005年8月号

ニュース


報告書:高齢労働者、負傷後の職場復帰の可能性は低い

  マサチューセッツ州ケンブリッジ − 労災補償調査研究所(Workers Compensation Research Institute: WCRI) の新しい調査によると、55歳以上の高齢労働者は、25〜39歳の労働者にくらべ、負傷後の職場復帰が12〜35%少ない。同研究所は、高齢労働者の休業日数は、62〜276%長いとも指摘している。
  研究所によると、これは、問題である、なぜなら、向こう10年間で、55歳以上の労働者は、49%増えると予測されているからである。これは、米国の労働力人口の推定成長率の4倍であり、2012年には55歳以上の労働者は、1,100万人も増えることになる。
  調査はまた、労働者の教育水準は、職場復帰の可能性や休業期間を決める重要な要素であると指摘する。高卒労働者は、学歴の低い労働者より10〜60週間早く職場復帰している。
  調査は、カリフォルニア、マサチューセッツ、ペンシルバニア、テキサスの4州からおよそ750人ずつの負傷労働者のデータをまとめた。データは、負傷後の3.5年間に実質的に職場復帰した休業7日以上の労働者、または、おもに負傷を理由として、同期間中に実質的に職場復帰をしなかった労働者のものである。



ハーウッド助成金は存続。OSHAは、新規助成金を発表

 ワシントン − 労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)は、当局のスーザン・ハーウッド訓練助成金プログラム(Susan Harwood Training Grants programs)の枠で、安全衛生訓練・教育プログラムに携わる非営利団体を対象とした約690万ドルの新規助成金について、申請を受け付けている。さらに、2004年度の組織能力増進助成金の受給者に対して、更新助成金330万ドルを拠出すると発表した。
  この発表は、2006年度予算案から助成金プログラムを削減するブッシュ政権から、ハーウッド助成金が非難を浴びるなか、出てきた。これまでの予算編成では、政権は、ハーウッド助成金を削減しようと試みたが、議会が、辛うじてこれを復活させた。今回の発表で、ハーウッド助成金プログラムは、削減を免れる見込みで、職場での訓練の継続に向け、助成金は利用できそうである。
  OSHAによると、助成金は、ヒスパニック系やその他英語以外を母国語とする労働者、小企業事業者や、高危険度産業・高死亡率産業に従事する労働者を育成するため、訓練プログラムを実施する、あるいは、教材開発を計画する団体を対象としている。
  助成金および申請手続きの詳細は、6月21日付官報(Federal Register)に発表されている。
  2005年度のハーウッド助成金1,020万ドルは、昨年度予算をわずかに下回る金額である。


事実チェック
犬の噛み傷による死亡事故件数(1999〜2001年)
 2001年:    25件
 2000年:    26件
 1999年:    25件
出 所:全米安全評議会(NSC)、Injury Facts、2004年


呼吸できない? 調査で、業務起因と判明

 ニューヨーク − 新しい調査結果によると、ある特定の産業で働く労働者は、代表的な職業病である職業性ぜん息を発症するリスクが高い。
  国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)の調査チームは、ぜん息のリスク増に関連する産業を特定しようと、2001年の全米健康面接調査(National Health Interview)に応じた男女20,991人のデータを吟味した。これらの人々の回答を分析すると、印刷・出版業、家具・製材業、保健衛生業、娯楽・レクリエーション業で働く男女は、自動車販売業や給油所で働く人々と同様に、ぜん息と診断される可能性が高いことが判明した。
  総じて、回答者の6.5%は、ぜん息と診断されたと報告した。これは、労働者860万人に相当すると、調査は指摘した。ぜん息は、白人や女性の間で、また、自動車販売業、給油所、耐久消費財分野の労働者の間でもっとも多くみられた。
  調査は、アメリカ産業医学ジャーナル(American Journal of Industrial Medicine, Vol. 47, No. 6)に発表された。


運動で、作業効率が向上する可能性

 テニシー州ナッシュビル − 「仕事に圧倒されるように感じますか?」「では、散歩なさい。」調査チームは、日中運動をする多忙な職業人は、生産性が上がると感じ、些細なことには過剰反応しないことを突き止めた。
  英国の調査チームは、大学、コンピューター会社、生命保険会社の3箇所で、200人の労働者を調査した。労働者は、職場で運動した日や、しなかった日の各自の作業効率や気分に関するアンケ−ドに回答した。調査参加者は、昼食時の30〜60分間、ヨガやエアロビクスから、筋肉トレーニング、バスケットボールのピックアップゲームまで、すべて行なった。
  参加者10人中6人は、運動した日は、時間管理、知的効率や期限を守る能力が向上したと回答した。アメリカスポーツ医科大学(American College of Sports Medicine, テニシー州ナッシュビル、Nashville, TN) で6月に発表された本調査報告によると、全体的な作業効率は、およそ15%向上した。
  運動はまた、労働者の気分を改善した。運動したときには、午後の一連の疲労感にあまり悩まされないとの回答もあった。


報告:保険料上昇は、保険未加入者が原因

 ワシントン − 消費者団体、ファミリーズUSA(Families USA)が委託した新しい調査報告書によれば、保険未加入者に保健衛生サービスを提供すると、平均的労働者の年間保険料は、341ドル上昇する。
  家族単位では、保険料は922ドル上昇する。その結果、事業者の加入保険では、一家族の2005年の年間保険料は、平均10,979ドルとなる。個人単位では、年間保険料は、4,065ドルとなる。
  「米国の保険未加入者の多さや、その増加は、もはや未加入者のための単なる利他的な懸念ではなく、国民一人一人の利己的な問題である」と、ファミリーズUSAのロン・ポラック常務理事(Ron Pollack, executive director)は述べた。「健康保険に加入している事業者や労働者は、保険未加入者の費用負担という矢面に立たされているので、利害が大きく絡んでくる」。
  2005年には、およそ4,800万人のアメリカ人が健康保険に未加入であろうと、報告書は指摘する。未加入者の保健衛生費の約35%は、未加入者自身で支払われている。残りの一部は、連邦・州政府や地方自治体の財源で賄われている。残りは、健康保険加入者の保険料に転嫁されている。ファミリーズUSAによれば、この隠れた転嫁費用を、本報告書が初めて算出した。


「ニュース」欄は、キャレン・ガスパース編集次長が担当した。