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NSC発行「Safety + Health」2005年9月号

産業特集


 建設業

新団体、建設業の墜落・転落事故に取り組む

 ボストン − 建設企業、労働組合、監督官庁、保安用品メーカーのグループは、このたび、リバティー・ミューチュアル安全調査研究所(Liberty Mutual Research Institute for Safety)に集い、商業ビルの建設現場における死亡災害の筆頭原因、墜落・転落に取り組んだ。
 グループは、建設労働者の保護をめざし、墜落・転落防止装置の改良と、労働現場の安全の維持・促進、この二つの方法を探る2チームを結成した。
 チームへの参加に興味のある方は、リバティー・ミューチュアルのジョン・ニール(John Neil)、電話(617) 654-3416まで連絡されたい。



製造業

化学物質卸売業者、安全保障法を支持

 バージニア州アーリントン − 全米化学物質卸売業協会(National Association of Chemical Distributors: NACD)は、7月27日、上院国土安全保障・政府問題委員会(Senate Committee on Homeland Security and Governmental Affairs)で証言し、連邦化学物質安全保障法(federal chemical security legislation)を支持すると発表した。同協会は、同法に下記の事項を含めるよう、勧告した。
  • 新法の適用を受ける、あるいは受けない企業を決定する手法の確立。
  • 施設のさまざまな規模や種類に対する適用の柔軟性と、すでに講じられている対策の承認。
  • リスクの種類の決定、安全保障基準の確立、脆弱性評価(vulnerability assessment)や事業場安全保障計画の収集と評価、および基準の施行に関する国土安全保障省(Department of Homeland Security)の権限。

事実チェック
卸売業における傷害のおもな原因

  傷害の種類  

非死亡傷害件数
2002年

 
死亡者数
1993〜2002年

 

  捻挫・筋挫傷  
81,884
 
11
 
  うずき・痛み  
16,144
 
0
 
  挫傷・打撲傷  
17,749
 
0
 
  骨 折  
10,456
 
24
 
  切創・裂傷・刺傷  
7,377
 
887
 

出 所:全米安全評議会(National Safety Council: NSC)


鉱業

MSHA、新しい安全衛生イニシアチブを開始

 バージニア州アーリントン − 7月13日、鉱山安全衛生庁(Mine Safety and Health Administration: MSHA)は、鉱山労働者や鉱業者が、意思決定などといった職場の人間的要素に注意するよう仕向けた安全衛生イニシアチブ、「正しい意思決定を下そう(Make the Right Decision)」を開始した。
  当局によれば、このキャンペーンは、鉱山労働者や鉱業管理者がともに安全衛生問題に取り組むよう、奨励するものである。このイニシアチブを通じて、鉱山労働者や鉱業管理者は、危険を認識し、リスクを是正あるいは回避するのに適切な措置を講ずるのに役立つツールを享受する。
  MSHA職員はまた、全米各地の鉱山で、労働者や鉱業者と安全対話を実施し、キャンペーンの趣意を掲げたポスター、ステッカーやチラシも配布する。
  キャンペーンでは、鉱業の下請け業者にも働きかけていく計画であると、当局は述べた。


 サービス業

NIOSH、トラス・システムについて、消防隊に警告

 ワシントン − 国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)は、火災時に、屋根や床のトラス・システムが突然崩れ落ちることがあると、消防隊に警告を発令した。NIOSHは、消防各署に対し、これを考慮して、安全手順を再検討するよう述べ、また、建物の所有者に対しては、消防隊に潜在的リスクを知らせるために、建物の構造の説明書を掲示するよう勧告している。
  NIOSHによると、1998年〜2003年までの間に、トラス・システムの建物内で、消防隊員20人が死亡、12人が負傷した。
  米国内の屋根の60%強は、トラス・システムで、これは、木材やスチールその他の材料でできた枠組である。トラス内の火災は、気づかれないまま長時間燃焼することがあり、すぐに拡がる。
  NIOSHは、消防署に対し、建物の屋根に排煙口を設け、隠れた空間を開けつつ、予防措置を講ずるよう、勧告した。
  消防隊員は、つねに火災の燃焼時間に留意し、現場指揮官にたえず火災状況の変化をアドバイスし、いまにも建物が崩壊しそうな場合には、その兆候を察知しなければならない。

OSHA、ハリケーン後の清掃・復旧作業の危険を警告

 ワシントン − 労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)は、事業者や労働者に対し、ハリケーン後の復旧・清掃活動関連の傷病を回避するため、適切な安全対策を講ずるよう要求した。
 当局は、電線による感電死事故や、清掃・復旧作業に絡む重傷事故が発生する可能性を憂慮し、清掃作業や公益設備の復旧作業の際は、適切な安全予防策を守るするよう、注意書きを刊行した。
 ハリケーン後の危険回避や清掃作業に関する情報は、OSHAの天災復旧ウェブページ(Natural Disaster Recovery Webpage)、www.osha.gov/OshDoc/hurricaneRecovery.html で閲覧できる。


調査報告:看護師の傷害は、人員水準と関連

 ワシントン − 調査チームは、介護施設の人手が多ければ多いほど、従業員の負傷は少ないことを突き止めた。トロント大学(University of Toronto)とメリーランド大学(University of Maryland)が共同であたったこの調査は、メリーランド州、ウェストバージニア州、オハイオ州の傷害および施設の人員のデータを調査した。
 看護師・看護助手の傷害率は、介護サービスの提供追加1時間あたり約16%低下した。また、職場の傷害が少なければ少ないほど、良質の介護につながることを、調査チームは指摘した。調査は、アメリカ公衆衛生ジャーナル(American Journal of Public Health, Vol. 95, No. 7)に掲載された。


消防隊殉死者基金、安全ウェブサイトを開始

 メリーランド州エミッツバーグ − 全米消防隊殉死者基金(National Fallen Firefighters Foundation)は、消防署を対象に、労働安全衛生ウェブサイト(www.everyonegoeshome.com)を開始した。
  このサイトは、消防隊員の殉死事故を減らそうと、専門家が集い、協議した2004年の生命安全サミット(Life Safety Summit)で提唱された、16の生命安全イニシアチブ(Life Safety Initiatives)を下敷きにした。ウェブサイトは、消防署が、手持ちの訓練プログラムに加えるなどして利用できる情報や、16の生命安全イニシアチブの背景説明、第1回生命安全サミットの報告書をまとめたものである。


 運輸業

DOT、3件の指名を発表

 ワシントン − 7月1日、ノーマン・Y・ミネタ運輸長官(Norman Y. Mineta, Transportation Secretary)は、3人の人事を発表した。
  • 連邦自動車運輸安全局(Federal Motor Carrier Safety Administration)首席弁護士(chief counsel)に、スーザン・M・ティ・ボー(Suzanne M. Te Beau)が指名された。
  • パイプラインおよび危険・有害物質安全庁(Pipeline and Hazardous Materials Safety Adminstration)の新ポスト、副長官(deputy adminstrator)に、ブリガム・マクコウン(Brigham McCown)が就任した。
  • アショク・G・カベシュワール(Ashok G. Kaveeshwar)は、上院の承認を経次第、運輸省(Deparmtne of Transportation: DOT)が新設した調査・革新技術庁(Research and Innovative Technology Administration)の長官(administrator)に就任する予定である。

NTSB、踏切事故の多さは「重大な懸念」

 ワシントン − 全米運輸安全委員会 (National Transportation Safety Board)のマーク・ローゼンカー委員長代理(Mark Rosenker, Acting Chairman)は、7月22日、上院運輸・社会基盤委員会(Senate Committee on Transportation and Infrastructure)鉄道小委員会(Subcommittee on Railroads)で、全米各地の踏切で、事故や死亡事故が依然として容認しがたい水準で発生している事実を、「最大の懸念」であると強調した。
  ローゼンカー委員長代理は、列車の警笛の可聴性や、警報装置・遮断機のない踏切の安全に関する委員会の調査結果や勧告について論じた。
  同氏の証言は、オンラインwww.ntsb.gov/speeches/rosenker/mvr050721.htmで閲覧できる。


 公益事業

原子力発電労働者、ガンのリスク大か


 ロンドン − 健康保護局放射線保護課(Radiological Protection Division, Health Protection Agency)の研究員を含む国際調査チームは、原子力産業従事者の調査を実施したが、これによると、原子力発電所の労働者は、ガンを発症するリスクがやや高いようである。
 調査チームは、低線量の放射線に絶えずばく露している人は、ガンによる死亡のリスク(白血病のリスクを除く)は10%高く、白血病によるリスクは19%高いとの調査結果が出たと述べた。これらの推定値に基づき、原子力産業の労働者の死亡者数の1〜2%は、放射線ばく露に起因すると考えられると、調査チームは述べた。
  しかし、今回の調査に参加した労働者の大半は、原子力産業の揺籃期に働いており、現在の基準をかなり上回る放射線量にばく露したと、チームは述べた。
  この調査結果は、7月29日付けのオンライン版英国医療ジャーナル(British Medical Journal)、 http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/abstract/bmj.38499.599861.E0v1に発表された。



     「産業特集」は、マーキサン・ネイソー編集次長が担当した。