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NSC発行「Safety + Health」2005年9月号

ニュース


調査報告:労災補償費、給付総額を上回る増加ぶり

賃金100ドル当たりの労災補償と事業者負担(1993年〜2003年)  ワシントン − 全米社会保険学会(National Academy of Social Insurance)が7月21日に発表した新しい調査報告書によると,労災補償の事業者負担は、負傷労働者に対する現金給付や療養費といった支払い額の総和よりも早い勢いで増加している。
  「補償給付や療養費よりも早い事業者負担の伸びは、保険業界で広まりつつある傾向を映している」と、調査報告書の監修委員会の長を務めたジョン・F・バートン・ジュニア(John F. Burton Jr.)は述べた。「事業者負担は、将来の給付費用をカバーするために、保険会社が保険料を引き上げていることを反映している」と、同氏は説明する。「近年の事業者負担増は、保険市場の長期的な上下変動の一部をなすものであろう」。
  労災補償支払い額は、3.2%増の549億ドル、一方、事業者負担は、9.6%増の808億ドルであった。労働者の賃金総額と比較すると、労災補償支払い額は、2003年には、賃金100ドルあたり1セントの割合で、つまり1ドル15セントから1ドル16セントへと上昇した。
  労災補償の保険料を含む事業者負担は、2003年には、賃金100ドルあたり12%、1ドル71セントへと上昇した。
  賃金100ドルあたりの現金給付・療養費の支払い総額は、1ドル69セントと、1992年にピークを迎えたが、これは、2003年を52セント上回る数字である。賃金100ドルあたりの事業者負担は、2ドル16セントと、1993年にピークを記録したが、これは、2003年より45セント高かった。
  報告書によれば、2000年以降の労災補償支払い額の伸びは、大部分、療養費の増加に起因するものである。2000〜2003年間の支払い額は、賃金100ドルあたり12セント増加したが、このうち9セントは、療養費の増加によるもので、3セントは、休業補償給付の支払い増によるものであった。
  本報告書および州別情報は、学会のウェブサイト、www.nasi.org で閲覧できる。


事実チェック
ハイウェイと鉄道の踏切事故による死亡者数(1999〜2003年、アメリカ)
 
 
合計
 
自動車
 
歩行者
 
その他
 
1999
 
402
 
345
 
45
 
12
 
2000
 
425
 
361
 
51
 
13
 
2001
 
421
 
345
 
67
 
9
 

2002

 
357
 
310
 
35
 
12
 
2003
 
324
 
263
 
49
 
12
出典:アメリカ連邦鉄道管理局(Federal Railroad Administration (2005))


OSHA、電離放射線ばく露のコメント期間を延長

 ワシントン − 労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)は、電離放射線への職業性ばく露基準を更新するとすれば、どのような措置を取るべきか、その参考とするため、コメントを公募しているが、この期間を11月28日までに延期する。
  低水準の電離放射線ばく露による健康リスクに関する全米科学会(National Academy of Science)の「電離放射線ばく露の生物学的影響第7次(Biological Effects of Ionizing Radiation VII)」報告書は、6月29日になってようやく刊行されたが、これについてコメントするのに、十分な時間を利害関係者らに確保させようと、公募期間を延期したと、OSHAはいう。
  当局の5月3日付のリクエスト情報は、職場における電離放射線の現在の用途や、従業員のばく露水準、電離放射線ばく露による健康への影響、職場におけるばく露制御プログラムなどといった、電離放射線の利用に関わる諸問題である。
  OSHAは、寄せられた情報は、電離放射線基準の更新の是非や、更新内容を決定するのに用いると述べた。
  コメントは、書面で、11月28日を提出期限とする。書面は、10ページ以下であれば、OSHAの審理予定書類室(Docket Office、ファックス:(202)693-1648)まで、または、メールで http://ecomments.osha.gov まで送付のこと。コメントの提出について、詳細は、審理予定書類室(電話:(202)693-2350)に照会されたい


NIST、高層建築物の安全に取り組む

  メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg) −
全米基準技術協会(National Institute of Standards and Technology: NIST)は、この6月、建築物・火災安全法規や基準・慣行を開発・採択した団体や政府機関に対し、高層建築物やその入居者、緊急対応要員の安全を向上するために、具体的な修正を施すよう、要請した。
  NISTは、2001年9月11日のテロ攻撃による世界貿易センター(World Trade Center: WTC)の倒壊を調査したうえで、30の勧告を提案した。
  「われわれは、これらの勧告は、現実的で、妥当な期間内に達成可能であり、建築物、とくに高層建築物の設計、建設、維持、利用のありかたを大きく向上させるものと考えている」と、シャイアム・サンダーWTC首席調査官(Shyam Sunder, WTC lead investigator)は、ニューヨーク市の記者会見で述べた。「これらの勧告はまた、建築物からの避難や緊急対応の安全性や効果を高めるであろう。しかし、改善は、適切な団体が取り組んではじめて、実現するものである」。
  NISTの勧告は、8分野にわたる。

  • 構造健全性の向上
  • 構造物の耐火性の向上
  • 耐火性の新手法
  • 構造物の設計
  • 積極的防火
  • 建築物からの避難の改善
  • 手続き・慣行の改善
  • 教育と訓練
NISTは、これらの勧告を、諸団体が理解・実施するよう徹底することこそ、協会の最優先課題であるという。NISTは、勧告の実施状況を追跡できるようにしたウェブツールを開発中である。


感電死事故が、NIOSH、ガイダンスを促進

 ワシントン − バージニア州での全米スカウト集会で、成人のボーイスカウト指導員が架線に接触して、4人が感電死、3人が負傷した7月25日の事故を受けて、国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)は、活線作業関連のハザードについて、ガイダンスを発行した。
  ガイダンスは、オンライン、www.cdc.gov/niosh/updates/upd-07-26-05-b.html で閲覧できる。NIOSHは、非意図的な接触による感電は、そのハザードや適切な予防措置を啓蒙することで予防できると述べ、電線の下またはその周囲で作業する場合の潜在的リスクを見きわめる一助となるよう、さまざまな資料を提示した。死亡したボーイスカウト指導員らは、テントを組み立てていたところ、そのポールが架線に接触したらしい。
  NIOSHによれば、架線関連の労働災害で、年平均で128人が死亡している。


ランジ氏、NHTSAを退き、国土安全保障省に転身

 ワシントン − 全米幹線道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration: NHTSA)は、7月、ジェフリー・W・ランジ局長(Jeffrey W. Runge, administrator)が、局長職を退き、国土安全保障省(Department of Homeland Security)の首席医務官(chief medical officer)に着任すると発表した。
  ランジ氏は、新しいポストで、生物学的兵器による攻撃やその他の災害に対する国土安全保障省の対応を調整する。
  ランジ氏は、勤続4年で、運輸省を去る。
  「ジェフは、この4年間、自動車および幹線道路の安全向上をめざした豪胆かつ疲れ知らずの活動家であった。安全に対する氏の献身があって、われわれは、わずかながらも安全をよりよく享受するようになった」と、ノーマン・Y・ミネタ運輸長官(Norman Y. Mineta, Transportation Secretary)は述べた。
  ランジ氏の任期中、シートベルト着用率は、史上最高記録を達成した。


CDC、新任の4所長を発表

  アトランタ − 
疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)は、先日、センター下の国立センターの所長4名を任命した。
  国立傷害予防対策センター(National Center for Injury Prevention and Control)にはイリアナ・アリアス(Ileana Arias)氏、新設された国立衛生マーケティングセンター(National Center for Health Marketing)にはジェイ・バーンハート(Jay Bernhardt)氏、国立環境衛生センター(National Center for Environmental Health)にはハワード・フランキン(Howard Frumkin)氏、国立慢性疾患予防・健康増進センター(National Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion)にはジャネット・コリンズ(Janet Collins)氏の4所長(directors)が任命された。
  CDCによれば、国立センターは、2年前に始まったCDC再生プロセスの一環で設立された。


NIOSH、欧州安全衛生機構、共同ウェブサイトをスタート

 ワシントン − 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)と欧州労働安全衛生機構(European Agency for Safety and Health at Work, 在スペイン、ビルバオ、Bilbao)は、www.cdc.gov/niosh/usnetwork で、新しい共同ウェブサイトを発足させた。
  NIOSHによれば、米欧共同ウェブサイトは、労働安全衛生分野での米欧の膨大な量の経験や調査情報を、関係者らがよりよく入手・共有できるようにするものである。「今日のような世界規模の経済では、こうした協力やパートナーシップは、単に必要だというのではなく、絶対にあらねばならないものなのである」と、NIOSHのマックス・ラム衛生情報伝達室長(Max Lum, director, Office of Health Communication)は述べた。
  欧州機構のハンス-ホルスト・コンコルースキ所長(Hans-Horst Konkolewsky, director)は、「当局のオンライン網には、すでにオーストラリア、カナダ、米国、日本の安全衛生諸団体が加わっている。NIOSHが、新しい強力なパートナーとなって、オンライン網はさらに充実し、安全衛生情報の国際拠点として、トップクラスとなるであろう」と付け加えた。


NIOSH、職場の暴力の費用を算出

 ワシントン − 先日、アメリカ産業医学ジャーナル(American Journal of Industrial Medicine, Vol. 47, No. 6)に掲載された調査によると、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の調査チームは、1992〜2001年間の職場における殺人は、およそ65億ドル、年中央値80万ドルもの費用損失となったと見積もった。
  殺人のもっとも多かったのは小売業で、男性従業員の場合、同期間の費用損失は21億ドル、女性従業員の場合は556,000ドルであった。見積もりには、医療費、死亡年から生存して67歳まで働いた場合の逸失賃金、子供の養育といった家庭の損害を含む。


CDC:喫煙による死亡は、国全体で920億ドルの生産性損失

 アトランタ − 疫病対策予防センター(CDC)の発表した新しいデータによると、喫煙は、1997〜2001年間に、生産性の損失というかたちで約920億ドルもの負担を国に負わせており、これは、1995〜1999年間の死亡関連の年間生産性損失を10億ドル上回る。この新しく見積もられた生産性損失は、1998年には755億ドルと報告された喫煙関連の医療費をあわせると、米全体で、年間1,670億ドルを超える。
  報告書はまた、喫煙や受動喫煙の結果、1997〜2001年間には、年間438,000人が死亡していると見積もっている。一方、1995〜1999年間には、喫煙関連の死亡者数は、およそ440,000人と推定されている。
  詳細は、喫煙・健康室(Office of Smoking and Health)のウェブサイト、www.cdc.gov/tobacco を開かれたい。関連の情報源として、保健社会福祉省(Department of Health and Human Services)の(800)QUIT-NOWホットラインが挙げられているが、これは、全米喫煙停止・放棄ラインネットワーク(National Network of Tabacco Cessation Quitline)へのアクセスを提示している。


調査報告:肥満の人は、傷害率が高い

 オハイオ州コロンブス(Columbus) − 新しい調査結果は、極度に肥満の人々は、標準体重の人々に比べ、怪我しやすいことを示唆している。
  オハイオ州立大学(Ohio State University)の調査チームは、コロラド市(Colorado)に住む2,400人強の成人について、1年間の健康・傷害データを収集した。極度に肥満の男性参加者の26%強は、傷害事故を報告しており、極度に肥満の女性の21.7%強も、傷害を報告した。
  対照的に、標準体重の男性で傷害を報告したのは17%、標準体重の女性で傷害を報告したのは12%であったと、調査チームは述べた。
  この調査は、一般市民の傷害リスクを調べた初の調査であると、チームは述べた。調査結果は、アメリカ予防医学ジャーナル(American Journal of Preventive Medicine ,Vol. 29, No. 2) に掲載されている。


DOT、障害者向け防災ウェブサイトを発足

 ワシントン − 運輸省(Department of Transportation: DOT)は、先日、災害あるいは緊急事態の際、障害のある人々が安全輸送を確保できるよう、参考情報を掲載したウェブサイトを発足させた。
  www.dotcr.ost.dot.gov/asp/emergencyprep.asp に設けられたこのサイトには、緊急事態への備え、交通機関の利用の容易度、鉄道や公共旅客輸送などといった特定輸送手段からの避難方法に関する助言も含まれている。障害者は各自、大量旅客輸送システムから避難する場合や、暴風雪やハリケーンで車中に閉じこめられた場合にいたるまでの対応のしかたを学ぶことができると、運輸省は述べた。
  本サイトには、天災や、有害物質の流出のような人災など、特定の緊急事態への備え方に関する情報を提供する国土安全保障省(Department of Homeland Security)のウェブページへのリンクもある。


NIOSH、ウェブ会報で調査の進展状況を報告

 ワシントン − 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、ナノテクノロジーに関する戦略的調査プログラムの進捗状況について、情報を提供するよう企図された「ナノテクノロジーに照準を合わせる:労働安全衛生への応用と意味合いに関するNIOSHの調査(Focus on Nanotechnology: Occupational Safety and Health Applications and Implications Research at NIOSH)」と題するウェブ会報をこのたび導入した。
  このウェブ会報は、www.cdc.gov/niosh/topics/nanotech/focus.html で閲覧できる。
  NIOSHは、国家ナノテクノロジー・イニシアチブ(National Nanotechnology Initiative)のもと、さまざまなパートナーとともに学際的な調査プログラムを実施する。
  本イニシアチブによると、この共同調査の結果は、安全専門家が、ナノ物質の絡む職業性ばく露に対し、労働安全衛生の原理を適用するのに役立てる。


NSC、全米規模で傷害費用を集計

 イリノイ州イタスカ(Itasca) − 全米安全評議会(National Safety Council: NSC)によると、毎年、予防可能であった傷害で、およそ2,700万人が病院の緊急治療室に、また、10万人が早死にしている。
  労働不能傷害や傷害関連の死亡による人的損害は、年間6千億ドル強、または1世帯あたり約5,700ドルの費用で示談されている。
  「予防可能な傷害関連の費用は、個人、家族、ビジネスや保健衛生システムに支障をきたしている」と、アラン・C・マクミランNSC会長兼CEO(Alan C. McMillan, president and CEO)は述べた。「全米安全評議会は、このような傷害がもたらす苦悩や経済的損失を予防、軽減することを約束する」。
  NSCが毎年発表するInjury Fact(統計データ)によると、突発的な傷害による死亡は、1992年から17%増加している。突発的な傷害は、いまでは、1〜 39歳の死亡原因の第1位であり、全年齢の死亡原因の第5位である。傷害関連死の54%は、家庭や地域社会で発生しており、労働災害によるものは、ほんの8%である。

JICOSH 訳注)2002年の労働災害による死亡者は5,524人というデーターあり。(アメリカ、労働省統計局 参照)


OSHA戦略的パートナシップ・プログラムのパンフレット完成

 ワシントン − 労働安全衛生庁(OSHA)は、戦略的パートナシップ・プログラム(Strategic Partnership Program)について、そのしくみや、労働安全衛生の向上に果たす役割について、情報を特集した新しいパンフレットを刊行した。パンフレットは、www.osha.gov/Pubilications/osha3251.pdf でダウンロードするか、電話(202)693-1888で注文できる。


10代若者のもっとも不安全な職業:
上位5位

 
1.
  農業、実習、加工業 
 
2.
  建設業および高所での作業
 
3.
  造園業、公園等土地の整備
 
4.
  フォークリフト、トラクター、全地形型車両(ATV)の運転
 
5.
  外交員
出 所:全米消費者連盟(National Consumers League)、2005年   


GAO:廃棄された電子機器に、環境リスクが潜在

 ワシントン − 7月26日に発表された政府説明責任局(Government Accountability Office: GAO)の調査報告書は、使用済み電子機器は大量で、増加傾向にあり、不適切に管理すると、環境や人間の健康を害すると指摘している。
  報告書は、オンライン、www.gao.gov/cgi-bin/getrpt?GAO-05-937T で閲覧できるが、これによると、データや調査に限りがあるものの、あるデータは、毎年1億台以上ものコンピュータ、モニターやテレビが時代遅れとなり、その数量はさらに伸びていると指摘する。
  報告書はまた、標準規制検査で、埋立て地に廃棄される電子機器は、鉛などといった、健康被害の知られている有害物質を浸出させる可能性が認められたと指摘している。 


「ニュース」欄は、オードリー・アームズ編集次長が担当した。