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リスクウォッチ : 判例と法律関係情報 総括

資料出所:The Royal Society for The Prevention of Accidents(ROSPA)発行
「OS&H」|2001年11月号 p.10-13
(訳 国際安全衛生センター)




今月は、ロバート・マクマードが、最近、事業者の懐に打撃を与えた安全衛生に関する係争を知るため刑事および民事裁判所へ出向き警鐘を鳴らす。
これらの係争には、ロバート・マクマードが予言するところであるが、事業者に手痛い打撃を与え続けること間違いなしの職業上のストレスに対する補償も含まれる。


刑事事件として取り扱われたもの

オーブン死
レスターシャにあるベーカリーは、1998年5月16日、会社の工場のパン・オーブンでの作業中、熱に曝され二人の作業員が死亡したことに関し、628,000ポンドの支払いを命ぜられた。
ハーヴェスタイム社として商売を行っているフレシャ ベーカリーズ社および取締役2人と支配人1人は、安全衛生に関する8つの罪を認めた。
彼等は、合計373,000ポンドの罰金を課せられると共に255,000ポンドの費用の支払いを命ぜられた。
安全衛生庁長官チモシー・ウオーカーは、結審直後に発言し、「本件は、ぞっとする事案であり当然のことながら、我々は、遺族に痛く同情しています。本日の処罰は、従業員の健康と安全を守ることは、取締役および管理者にとって必要不可欠な責務であり、決して会社に不都合をもたらす仕事ではないことを全英の事業者に知らしめる強力なメッセージになるでしょう。」と語った。

公共安全保護義務違反
二つの会社が、工場から後進して来た大型運搬車両にひき殺された12歳のジェラード・バイアンの死亡に関し、合計5万ポンドの罰金刑に処せられた。
工場の所有者(オークス・ミラーズ社)と大型運搬車両の所有者(H・J・リー・オークス社)の双方は、労働安全衛生法第3(1)節の下での健康および安全の罪を犯したことを認め、更に合計1万ポンドの費用支払いを命ぜられた。但し、過失殺人の告訴は、却下された。
安全衛生庁の主席検査官サーラ・マーラーは、「本件に関わった両社とも自分達の敷地から道路へ恒常的に後進して出てくる重貨物車両から生ずる一般人への危険に対する配慮が欠けていた。作業時の車両絡みの全ての死亡件数のうち、そのほぼ四分の一が車両の後進時に起きている。
会社として、車両が会社敷地内において、また、会社敷地内への出入りに際し、後進させねばならない事態を最少限とする手立てを講ずることが重要なのです。
場内の配置や配車予定を工夫しても車両の後進が避けられない場合には、適切な訓練を受けた地上誘導員の監督下でのみ車両の後進を行うかあるいは歩行者が入れない制限地域でのみでこれを行うべきです。」と忠告した。

コステイン社罰金20万ポンド
コステイン社は、南ウエールズのブリッジエンド付近で新しい下水管を建設中に作業員が、圧死したことに関し、20万ポンドの罰金を課せられた。
ポール・デーヴィスは、コステイン社の地上誘導員をしていたが、1999年10月、13トンの掘削機とコンクリートとの間に挟まれた。
コステイン社は、労働安全衛生法違反の罪を認めた。

会社の重過失致死に有罪判決
ウイズベックに本社を置くイングリッシユ ブラザーズ(株)は、職長の死亡に関し、会社の重過失致死と労働安全衛生法違反という個別の罪を認めた。
会社は、3万ポンドの罰金を課せられ、また、12,500ポンドの費用支払いを命ぜられた。
ビル・ラークマンは、1999年6月屋根から8メートル下に転落し、死亡した。
安全衛生庁の主席建設検査官フィリップ・ポインターは、「この判決は、全ての建設会社とそれらの経営者達に、かかる作業、特に屋根の作業は、危険度が非常に高く、建設業での死亡災害が増える傾向にある中で、これを減らすには、厳格な管理が必要との警鐘を鳴らしている。
建設工事規模の大小を問わず、建設作業の全面的な管理を行う会社とその経営者は、請負業者が所定の正しい予防措置を有し、適切に監督していることを確認する厳密な法的義務がある。」と語った。

重過失致死罪
父親とその息子の死亡に関し、重過失致死罪と労働安全衛生法違反である男性が告発された。
この死亡事故は、安全衛生庁とスタフォードシャー警察との合同で、調査が進められた。
ブライアン・ディーン・ビルダーズ・アンド・シビル・エンジニアーズの所有者デイーン氏は、昨年7月にトンネル・キルン取り壊しの契約を得た。
このキルンが、倒壊し、マイケル・レドゲートとその息子カールを死亡させた。
契約の発注者であるダニエル・プラット社もまた建設(設計と監理)規則の二つの違反により出廷せねばならないことになっている。

作業装置の欠陥で10万ポンドの罰金
スマフィット UK(株)は、ランカシャーの同社の製紙工場での作業員の死亡に関し、10万ポンドの罰金を課せられた。
事故は、29歳の犠牲者が電源を入れたままの製紙機械を清掃していた2000年1月29日に起こった。
防護装置は、取り付けられていなかった。
安全衛生委員会(HSC)の製紙および段ボール業諮問委員会(PABIAC)のA・ポーター会長は、「我が委員会の指導書 『紙を安全に製造する』に定める防護装置が問題の機械に取り付けられていたならば、誰も、危険な部分に立ち入ることは出来なかったであろう。」と主張している。

民事事件として取り扱われたもの

転落に対し30万ポンド
作業中に屋根から転落した、建設作業員が30万ポンドの補償金を得た。
R・アッシュレイは、30フィート落下し、両かかとを砕き、その結果、車椅子に乗り、歩行の際には補助の杖を必要としている。
建設請負業者FF&S ホワイツから補償金を受け取るまでに4年の年月を要した。
アッシュレイ氏は、法律上の義務不履行および違反があったとして会社訴えた。
昨年は、職場での重大事故と死亡災害が大幅に増えたが、建設業において特に顕著である。
結果として、建設会社に対する労災保険料が、増大する保険金支払い請求に合わせる為、今後の2年間に二倍となるような事態となっている。

荷扱い作業への補償金12万ポンド
ある製造会社の作業員は、以前の雇用主セントラックス社から損害賠償として12万ポンドを勝ち取った。
アリソン・ミーカーは、作業時に重い物を持ち上げるという彼女の職務の結果として胸部脊髄の椎間板がずれるという損傷を受けた。
彼女は、セントラックス社は、彼女の仕事が彼女に損傷をもたらす危険があるかどうかの然るべき評価を行わなかったと申し立てた。
セントラックス社は、ミーカーさんが受けた傷害に対する責任を拒否した。
1999年版マニュアル・ハンドリング作業に関する規則(the Manual Handling Regulations 1999)は、物品を取り扱う際に生ずる筋骨の障害発生の危険性を排除あるいはそれが不可能な場合には軽減するための評価を実施しなければならないこととしている。

膀胱ガンに17万ポンドの支払い
自動車工場作業員は、彼の作業条件と膀胱ガンとの関連を証明するため、7年間闘争し、その結果、法廷外での決着で、17万ポンドを勝ち取った。
ブライアン・オッデルは、バーミンガムのオースチン・ローヴァー工場で20年以上、彼が発ガン性ありと主張する鉱油を扱う作業をした。
これら鉱油と皮膚ガンとの結びつきは、1950年代に初めて確立されたのであるが、今回は、膀胱ガンに対し補償金が支払われた最初のケースである。
この結果、同じ鉱油を使用する会社に対し、少なくとも他に四つの未決事案がある。
鉱油使用に関する業界ガイドラインは、今日、はるかに厳しいものであり、鉱油の多くは、今では、合成代替品がとって代わっている。
有害物質管理規則(COSHH)の下で、事業者は、作業員が危険に身を曝されているかどうかの評価を絶え間なく実施することが要求されている。
このような危険があり、有害化学物質に曝される危険を排除し得ない場合、事業者は、従業員が曝される危険の度合いをモニターし、従業員が、その作業において適切に訓練されており、かつ監督されていることを確認することが要求されている。

まきこまれ受傷に40万ポンド
18歳の少女は、彼女が働く洗濯屋の機械に引っ張り込まれ、頭部にひどい怪我をし、40万ポンドの法廷外補償金を得た。
少女は、回転する機械にまきこまれ、頭皮、額、両耳に大きな怪我をしたもので、彼女の弁護士によれば、頭皮は、毛髪が再びもとのように生えてくることがないほどのひどい損傷状況であるとのこと。

アスベストに6桁の補償金
未亡人となった二人の子がいる母が、彼女の夫がアスベスト関連の肺ガンである中皮腫によるわが国で最も若い犠牲者の一人となり、補償金として、優に6桁となる金額を受け取った。
ロバート・カークは、1997年に39歳で死亡した。
彼は、熱加工技術者として働き、保温ラグ付きパイプとボイラーに用いられたアスベストに曝された。
補償金は、カーク氏の以前の雇用主ハーラムシャー・ヒーチィング(株)とその保険会社により支払われる。
未亡人ジュリー・カークの法的な闘争は、夫の死後、事業者が清算となったがために妨げられることとなった。
彼女の弁護士は、以前の会社の役員を訴えた上でその会社の保険会社を探し出したものである。

ストレスに対する補償金

職業病の恐れからくるストレス
読者の皆さんは、最近のリスクウオッチ(本誌10月号「この職業」(*))で取り上げた「恐怖からくるストレス」の記事を思い出すかもしれない。
以前に作業員であったある男性が、アスベスト肺に罹るかも知れないという恐怖からくるストレスの故に補償金を勝ち取ったのである。
この事案は、英国においては、この種のものとして初めてのケースと考えられており、我が国の保険会社の間に大きな警鐘を鳴らすものとなった。
元港湾労働者で現在68歳のロナルド・ライオンズは、実際には、この病気にかかったことなどなかったのであるが、彼の二人の兄弟や多くの同僚がアスベスト肺に罹っており、ライオンズ氏自身も、この病気に罹るとの恐怖からひどく落ち込んでしまったのである。
このストレスは、彼の生活を耐えがたいものにした。
彼の雇用主であるユニオン・キャスル・ライン社は、1万ポンドを法廷外の決着のために支払うこととなった。

(*)JICOSH註−−−9月号の「一週間分の仕事」の記事を指すと思われる。

ハラスメント(嫌がらせ)に10万ポンドの補償金
救急車サービス会社の部長は、担当役員に、自宅に繰り返し電話を掛けられ、105,000ポンドの補償金を支払われた。
アンソニー・コウリーは、副事業部長として、マージー地区救急車サービスに勤務していたが、何度となく彼のボスであるデーヴィド・トッドハンターと衝突し、二度にわたり精神状態がおかしくなってしまった。
デイリー・テレグラフ紙のレポートによれば、高等法廷は、トッドハンター氏は執念深い性質や激しやすい性質があり、コウリー氏に大声でわめき、どなりちらし、家にいる彼にさえ電話したと聴取していた。
最近の研究によれば、英国の事業者は、昨年、ストレス関連の病気や傷害に対する16万4千件もの記録的なクレームを受けており、これは、前年比で30%以上の増加となっている。
英国においては、毎日、27万人もの人が、ストレスを理由とする休暇を取っており、これによる生産の損失、疾病手当ての支払い、国民健康保険負担は、毎年70億ポンドにもなっている。

嫌がらせ(ハラスメント)


欧州議会議員達は、職場での嫌がらせは、健康と安全上の問題と考えねばならないと言ってきた。
欧州議会の雇用と社会問題に関する委員会は、職場でのいじめの量的な指標が開発されるべきであるといっており、また、加盟各国が、「有効な予防策を取る」ことを勧めている。
欧州議会議員のジャン・アンダーソンにより草案された文書は、嫌がらせを克服するための「尊厳ある」アプローチであると云える。
この報告書が契機となって、職場でのいじめに対する強力な措置が速やかに取られることが望まれている。
2002年10月までに政府による報告書の発刊が期待されており、地域レベルでの対応策の行動規範を提供することになろう。

婦警のストレスに12万5千ポンドの支払い
1992年のウインブルドン・コモン殺人事件で、身分をかくし犯人の自白を聞き出した婦人警官が、ストレスを理由に、12万5千ポンドの補償金を法廷外の決着で得た。
この事案は、世の雇用主に広く関係するところがある。警視庁では、リッジー・ジェームズとして知られた婦警が業務からくるストレスに悩まされていることを知っていたが、手をうたなかった。
この事案はまた、英国における補償方式の性格と規模に関し、新聞紙上で問題を提起することとなった。
殺人事件の犠牲者、レイチェル・ニッケルの息子は、母親が49回刃物で刺されるのを見せつけられたのに、僅か2万2千ポンドの補償金を提示されただけである。
犯罪行為による損害補償金は、過失、或いは、他の事由による個人の損害に対する民事補償請求で支払われた、より現実的な損害賠償金の水準と同レベルのものにまで出来るだけはやく増額されねばならないであろう。

教師のストレスに10万ポンドの支払い
ある元教師が、仕事によるストレスのため、退職を余儀なくされ、10万ポンドを得た。
この事案は、官・民の人事・勤労部が、業務によるストレスを扱う政策を実施する上でのもう一つの重要事項に思い到らせるものとなっている。
本件の場合、バーバー氏は、病気の為、3週間の休養を取ることを余儀なくされた。
その後、職場に戻ったとき、彼には、何の援助も提供されず、本人は、1997年3月に退職した。
本件の鍵というべき点は、雇用主のサマーセット州議会は、本人が業務からくるストレスに悩まされていたことを知っていながら、こうした状況を救うための行動を何も取らなかったことである。
安全衛生庁は、昨年、業務上のストレスに対する実施要綱を導入することを決めた。
一方、事業者が、進んでリスク評価と取り組むよう、事業管理者の為の基準が2002年に公表されるだろう。

ストレスの評判はよくない

マンチェスター経営校の組織心理学教授ゲーリー・クーパーはいう。仕事からくる多くのストレスの犠牲者に多額な補償金が支払われていると評判になっていることから、実際に支払われた補償金額以上の懸念を抱く事業者が増えていると。
クーパー教授によれば、「世間でこうも評判が悪くなると、長期的にみて、よい従業員を手許に引き付け、手許に留め置くことが難しくなって来る。事業者は、こうした訴訟が、事業者の評判を落としてゆくのを手をこまねいて見ているのではなく、賢明に手を打つであろう。
例えば最近小学校の教師に与えられた30万ポンドの補償金とそれが引き起こした結果を見よ。」
「売り手市場の就職・採用戦線では、最高の才能ある人物を採用するとなると頂点での厳しい採用合戦があることを意味し、どの会社も欲しがる有望な従業員は、彼等が就職したいと思っている組織のタイプにつき益々選り好みをするようになっている。こうした今日の風潮の下では、事業者が評判を落とすのは、真に気になる問題なのである。」と教授は付け加えるのである。
クーパー教授は、また、「事業者は、事案が裁判沙汰になる事態を避けるための予防措置を試みると共にそれに注力するべきである。
組織は、従業員への法的な注意義務を満たすに必要な施策を実施したことを示すリスク評価にあるような行動をとることを必要としている。
起こりうる問題を診断し、危険な状態にあると思われる従業員を見つけ出すために、ストレスの調査を実施するのも良い考えである。」という。(今月の特集、「ストレス調査」を参照のこと。)

大声でどなる

エデン・ブラウン社の最近の研究によると、就業者の23%は、職場で大声でどなられたことがあると云う。
同社のイアン・ウオルトン社長は「就業者の4人に1人弱の者が、当事者として、又はその場に居合わせた者として、職場で、大声をあびせられたと云うことは職場での緊張やストレスが憂慮すべき状況にあるという証拠である。
職場での怒鳴りつけがはっきりと認められるほど発生しているのは、生活のすべての面でより競争的になって来た、とか仕事のやり方やその結果に対して強い圧力がかかるようになって来たことによる職場の変化を示している。これは現代の問題であるストレス、その治療の為に事業者は休暇を与えるべき病気であると認められているストレスと深く関連している。」と語った。

E―メールなしの日々

ストレス問題を解決し、職員がお互いに話し合うことを奨励する一つの試みとして、いくつかの会社において、毎金曜日がE-メールなしの日となって来ている。
多くの事務所職員は、一日100通ものE-メールを取り扱わねばならず、話すことよりも多くの時間をメール入力に費やしている。
上司達によれば、これにより、士気がなえ、創造性が抑えられているという。
キャメロット社は、E-メールなしデーを導入した会社である。
この会社のスポークスマンは、「もしも君が他の人達に話しかけねば、君にいろいろな考えは浮かんでこない。だから、それが絶対的にビジネス上の危急でもない限り、E-メールに頼らず、事務所を歩き回り、話しかけるか電話を使うようにいっている。
こうすることで、一層お互いに影響し合うことが奨励されている。」といっている。
産業協会(The Industrial Society)の最近の調査によれば、組織の90%は、過度なストレス・レベルによる影響を受けており、また、回答者の53%が、ストレスは、会社が前向きな姿勢で取り組み得る問題であると信じていることが判明したという。

他の諸問題

労働組合評議会(TUC)喘息予防法の要求
労働組合評議会(The Trade Union Congress)では、職場で増えている喘息を予防するために、事業者が、なにをしなければならないかにつき、事業者にガイドラインをあたえる公認実施準則(ACoP)の制定を要求している。
「ハザード」誌の新しい報告によれば、一日に20人におよぶ人々が仕事に起因する喘息になっているだろうと言う。
約1000人の労組安全代表者による調査で、殆どの事業者は、彼らの一般的な法的義務の全てを履行しているわけではいない。
現在、有害物質管理規則(Control of Substances Hazardous to Health : COSHH)の下で、事業者は、従業員達が健康有害物質に曝されることを防ぐことが求められており、あるいは、これが適度に実施できない場合には、これらのリスクを制御すべきことが求められている。
本年2月、安全衛生庁(HSE)は、職業に起因する喘息をなくすに公認実施準則(ACoP)を草案した。

喫煙の副煙流調査
ある新しい研究によると、煙の立ち込めた環境で働かねばならない非喫煙者達は、彼らの肺活量減退の症状が現れているという。
約300人の男女作業員を調べ、Occupational and Environmental Medicine誌が公表した調査によれば、職場での喫煙を、更に一層厳しく管理しなければならないとしている。

事故調査ガイドライン
安全衛生庁(HSE)の新しい調査で、多くの事業者の職場での事故調査手続きは、不適切であることが判明した。(10月号のOS&H Newsを参照のこと。)
この調査によると会社では、殆どなにもしていないところから明確な手順と分析技術をもっているところまで幅広いものがある。
報告書は、以下の事実を明らかにしている。
  • 殆どの会社では、事故調査をサポートしていないが、していたとしても最少レベルの支援に過ぎない。
  • 会社の規模が大きくなると、事故調査の方法はより総花的あるいは従来のやり方を踏襲したものが増え勝ちであった。
  • 調査を引っ張る特定個人がどのような調査方法を採用するかにつき大きな影響力を持っているが、その後は、調査をサポートする強固な組織がその影響力を弱める。

最後の指令
ある新しい報告書によれば、事業者は、従業員の飲酒や薬物濫用を取締ることを考慮しており、抜き打ち検査の導入を計画しているという。
Alcohol Concern, Drugscope and Personnel Todayむけに行われた調査によれば、組織の3分の1が来年にはこうした検査の導入を望んでいるとのこと。
アルコール絡みのいろいろな問題で毎年1400万日もの労働損失日数があり、英国産業に28億ポンドもの費用を負わせているものと考えられている。
問合せをした会社の73%が、昼食時の飲酒を禁止したいとし、10%が、就業時間外の泥酔に対しても職員を懲罰に処したいとしている。
しかしながら、この報告の中では、約4分の1の会社は、飲酒や薬物問題への対応方針を持っていないことを明らかにしている。
薬物検査の主席幹部ロジャー・ハワードは、経営者が飲酒や薬物検査を導入するについては、「薬物検査は、担当スタッフと十分に相談の上、かつ、陽性反応が出たときにはどうするべきかについての明確かつ人道的な方針を持った上でのみ導入されるべきものである。」が故に慎重を期すべきであると主張した。

RSI 反復性疲労傷害に対する補償
労働組合評議会(TUC)の主張するところによれば、毎年、15万人以上の人達が反復性疲労傷害に罹っているが、昨年は、そのうち僅か3000人がうまく復帰出来たに過ぎないという。
一番危険度が高い作業員は、急速包装や食品加工を行う小さな組み立てラインにいる人達であり、また、タイピスト、ジャーナリスト、事務員といったキーボードやマウスを使用している人達である。
全労働者の三分の一(約800万人)が、自分達の作業条件は、「常時」あるいは「殆ど常時」同じ周期の動作の繰り返しが要求されるものであるといっている。
収入の喪失、将来的な治療費に加え、補償金額約2,500ポンドから7,500ポンドというのが典型的なものである。
労働組合評議会の上級安全衛生政策員のオーエン・チューダーは、「反復性疲労傷害は、ひどく痛く、患者をすい弱させる職業病であり、職業生活を終わらせ、人生を台無しにさえしてしまうものである。
反復性疲労傷害の故に補償金を受けている労働者の数は、実際にこの病気に悩まされている人達の数と比べれば、将に、氷山の一角に過ぎない。」と語った。

会社の過失殺人
政府は、法人組織の殺人に関する新法を導入する意向であることを確認した。
上程される法案は、死亡させたり、重大な傷害を与える意図がないのに結果的に殺人をしてしまった者の刑事責任に関するものである。
最近の会議で、内務大臣ケイス・ブラドレーは、「これを行うことに反対する強力な理由がない限り、大きな企業は、過失致死に対する告訴に一私人あるいは一従業員よりも少なからざる責任があると考えるのは、いたって理に適ったことである。」と主張し、更に「政府は、事業がうまく継続することも必要であることは認めるが、法人組織は、責任をもって運営されねばならないし、殺人を起こすが如き過失や無謀さに対する然るべき処罰は、法人組織が責任ある運営を確実に行う上で重要な部分である。」としている。

事業体役員に対する安全衛生委員会の指導
安全衛生委員会(HSC)では、会社役員、公共部門および任意団体役員のための健康と安全に関する責任を概観した新指導書を発刊した。(OS&H 10月号を参照のこと。)
事業体役員は、法人組織の過失殺人が法制化に向け上程されている現状に鑑み、特に、健康と安全問題に関心を払うべきである。
この指導書は、事業体役員が、健康と安全上のリスクを適切に管理し、また、彼等の従業員、請負業者の従業員および公共の一般人保護のため適切な対策を確実に実施する上で役立つものである。
この指導書は、それぞれの役員会は、それぞれの組織内に健康と安全上のリーダーシップを取る為に総括的役割を負うべきであると忠告している。
役員一名を、労働安全衛生問題のチャンピオンに任命し、安全衛生への取り組み、実施を、定期的に見直し、また、労働者の健康と安全への参画も奨励されなければならない。