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アスベスト調査

資料出所:The Royal Society for The Prevention of Accidents(ROSPA)発行
「OS&H」|2002年1月号 p.20,21
(訳 国際安全衛生センター)


事務所の窓からは、午前の中ごろの太陽が、テームズ川の水面のさざなみに浮かんでいるのが見える。はるか遠方から、「ロンドンの目」が、高層ビルが立ち並ぶ一角の頂上に鉄の光輪を向けていた。ニック・クック氏が、ボーホール橋に近いローズコートにある安全衛生庁の本部を訪問し、事業者にアスベスト調査の実施を求める新義務について聴取した。

アスベスト管理規則の修正案が、実施規則の新法案とともに、今年発行され、事業者によるアスベスト調査の実施が、新規則で要求される。

この新規則のもとでは、すべての事業者は、適切で十分な調査を行い、事業者が占有し、かつ、人がその中で働いている建物(自宅を除く)に、アスベストが使用されているのか、使用されている可能性があるのかどうかを調べなければならない(規則4.1)。

新規則には、アスベスト調査の際、建築当初の計画とその他関連情報も調べることが規定され、事業者は、合理的に考えてアクセスできる場所については、目視による検査を行うことが規定されている(規則4.(3)(a))。

アスベスト調査は、調査するだけにとどまらない。調査は、リスク査定と管理プロセスの一部であり、その目的は、アスベストで人が死亡するのを防ぐことにある。上記に述べた対策は、現在絶対に必要なものである。アスベストは、20世紀の時代における職業病の主原因であった。そして、青石綿は1985年に使用が禁止され、白石綿も1998年に使用が禁止された(除外項目もある)にもかかわらず、21世紀においても、いまだにアスベストは人々を殺し続けている。

これらの使用禁止の適用は、アスベストの原材料とアスベストを使った新製品の海外からの輸入やその使用にも及んでいる。しかし、使用禁止は、すでに建物や製品に使用されているアスベストには適用されない。アスベストを取り除くことが、恐らく有効だと思われるが、すでに使用されているアスベストを取り除くことは課されていない。1960年代と1970年代には、毎年15万トンのアスベストが英国に洪水のようにあふれたのです。このことは、英国には、アスベストが充満している建物が多く存在するということを意味している。アスベストをすべて取り除くためには、118億ポンドのお金がかかると見込まれる。これを一度にやることは、とてつもない廃棄物処理の問題を引き起こすことになる。大量にアスベストを取り除こうとすれば、またアスベストをまき散らすことになりかねないので、これは新しいアスベスト犠牲者を生むことになってしまう。

1995年ジュリアン・ペト教授が執筆した書物によれば、中皮腫だけが原因(他にアスベストに関連する疾病としては、肺ガンと石綿肺症の二つがある)で死亡する人の数は、21世紀の中頃までは、毎年約3000人のペースで続くと予想している。現在非常に有名なこの書物で、対アスベスト戦争の最前線にいる人が変化していることが明らかにされた。英国とEU諸国でアスベスト障害によって今後死亡する人の多くは、アスベストを作っている人達でもなく、建物にアスベストを取り付ける人達(両方とも、現在では、やる人が殆どいなくなっているので)でもなく、アスベストを取り除く作業者でもありません(現在では、この作業者達は、アスベストの危険性を十分認知しており、適切なリスク管理をしている)。

現在一番危険の大きいところにいる人は、一見ではアスベストと直接的には全く関係がない仕事をしている人達なのです。現在危険の最前線にいるのは、建物の建築と保守に携わっている人達なのです。その人達には、配管工、大工、電気技師、パイプ据付工と建物を壊す作業をしている人達が含まれる。彼らが仕事をしている時には、アスベストのことは恐らく、彼らの頭の中に全くないと思われる。問題なのは、彼らがそこにアスベストがあることを全く知らないで触れるアスベストから受ける偶発的といえる障害です。

そして、このことが本当のポイントなのです。アスベストは、殆どあらゆる所に存在している。アスベストは、パイプの廻りの断熱用に巻かれ、金属の梁材に吹き付けられ、断熱材として壁パネルに組み込まれている。天井や床のタイル、防火扉、ヒューズ盤、床支持材、ドレインパイプ、波型の屋根などすべてに、アスベストが組み込まれている可能性があるのです。

しかし、アスベストが組み込まれた製品が正常な状態にある間は、アスベストが、人に害を与えることはありません。アスベストの繊維が人を死に陥れるようになるのは、それらが空中に放出され、人の肺に吸い込まれてからです。通常の方法では、現在危険の最前線にいる人々がやっている作業以上にアスベスト繊維を空中に放出、浮遊させることはできません。彼らがやっていること、すなわち、アスベスト繊維をドリリングし、のこぎりで切り、細かく砕き、セメントを入れ、撤去することは、恐ろしいアスベスト繊維をすべて解き放つことです。安全衛生庁が別の問題解決のために、以前アスベストのいくつかの代表的暴露を予測したことがある。例えば、アスベストを使った絶縁盤の中までドリリングすることで、暴露を空気の1ml当り10繊維になる。さらに、細かい破片を含んだアスベストをきれいに吹き飛ばそうと思ったら、100繊維まで上がることになるでしょう。これらの暴露は、白石綿(暴露は1ml当り0.9繊維)や白石綿以外(暴露は1ミリリッター当り0.6繊維組織)に対して、最高10分間と決められている作業管理限度よりずっと高い数字である。

悲しいことではあるが、このような暴露は、国民が蒙った中皮腫の記録から得られるものと同じく、後世への資料となるデータに反映されることになる。中皮腫資料によれば、建物と建設業に携わる労働者は、中皮腫症による男性死亡者全体のうち、現在25%を占めている。そして、一番危険度の高い職種は、大工、配管工と電気工の人達なのです。

メッセージは、はっきりしているのです。職場の建物のどこにアスベストがあるのかを記録することは、単なる役所の活動ではありません。人の命を救うのです。

主なアスベスト
クロシドライト (「青石綿」)
アモサイト (「茶石綿」)
クリソタイル (「白石綿」)

質問:一体どんな所に、アスベストが使われているか?
回答:アスベストは実際のところ、あらゆる所に使用されている。

但し、このリストは、すべてを網羅したものでありません。


アスベスト断熱材絶縁材/防音材

  • 防火扉の両面の間にサンドイッチされている。

  • 電気ケーブルをカバーしている。

  • 床面の上下階防音材。

  • 蒸気配管をくるんでいる。

吹き付けアスベスト

  • 鋼製や補強コンクリート製の梁や支柱(過度の吹き付けに要注意)

  • 防音用の壁と天井

アスベスト断熱板(AIB)

  • 室内の仕切り壁と吊天井のタイル

  • 多層階ビルのエレベータ、階段室や配管、配管用の吹抜けの内張り

  • 防火扉の表面

  • 梁等の床支持材

表面がボール紙で出来たパネル(廉価で、柔らかく、軽い)

  • 通風ダクト

アスベスト紙、アスベストフェルト、アスベスト厚紙

  • パックスフェルトは、空調ダクトの裏張りに使用されている可能性がある。

  • アスベスト紙は、板、天井タイル、薄板材料の表面張りによく使用されていた。

アスベスト繊維

  • 断熱用のテープとロープ

  • 耐火用の毛布、カーテン、衣類

アスベストガスケット、ワッシャー、巻き付けひも

  • シール用パイプ、バルブの継手

  • 旧式ボイラー

アスベストセメント

  • 屋根(波型屋根材)、外部張付け材

  • アスベストセメント製品、例えば、下水管、冷水タンク、排水管、排ガスダクト、煙突帽

アスベスト繊維を使った上塗・塗装・石膏
  • 装飾用仕上げ材、例えば、「Artex」、「Newtex」、「Wondertex」

アスファルト製品

  • 屋根用フェルト、防湿走路

  • 壁や床のおおい

  • 埋め込み防火剤

その他製品

  • PVC床タイル、黒や茶色の加熱加塑性タイル

  • 窓敷居(アスベスト強化プラスチック・合成樹脂)

  • ジュラスチール壁パネル(スチール板にアスベスト紙を一層サンドイッチにしたもの)

  • 壁のジョイントテープ、充填材

  • 旧式の電気ストーブ、ガスストーブ、アイロン台

  • クラッチ、ブレーキパッド、駆動ベルト、コンベアベルト



(中略)

参照