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職務設計と心臓疾患

資料出所:The Royal Society for The Prevention of Accidents(ROSPA)発行
「OS&H」|2002年6月号 p.6
(訳 国際安全衛生センター)



 安全衛生庁(HSE)の新しい委託調査によれば、劣悪な職務設計や職場編成は、心臓疾患の一因ともなりうる。本調査は、職務の要求水準の高さ、職務管理の低さ、業績応報の不均衡は、冠動脈性心疾患の発症の増加と関連性があると結論した。
 こうした影響は、喫煙、肥満、高血圧などといった従来のリスク要因では説明できそうにもない。しかも、作業量が変わって、要求水準が高くなり、直接的な管理が減って、支援体制が減ると、個人の精神衛生は、悪化する。
 英国の公務員1万人の健康状態を網羅した「英国政府第U」調査の報告書は、次の因子の身体的健康への影響を調べた。
  • 職務の要求
  • 職務の遂行のしかたについての発言権の度合い(「職務の管理」)
  • 管理職や同僚からの支援
  • 職務への努力の投入量とその見返りとの不均衡
しかし、結果は、公務員に限定されるものではなく、より広範囲の労働者群にあてはまるものとなった。
 これまでの報告書では、労働条件と自己申告による心疾患とを結びつけていたが、この調査では、被験者の自己申告による心疾患は、カルテとつき合わせて裏づけを取り、より鮮明で正確な状況把握を試みた。
 英国政府第II調査を担当したロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのサー・マイケル・マーモット教授は、「英国政府第U調査の結果は、人々の健康にとって、、職場のストレスが、いかに重要であるかを示している。強調すべき点は、二点。ひとつは、職場のストレスは、やることがありすぎるというだけの単純な話ではなく、仕事の管理力があまりにもないことや、努力への応報が不十分であることから引き起こされるということ。第二に、仕事の編成のしかたが、決定的な重要性を持つ。職場のストレスに対処するには、職場の組織をよく調べねばならない」と語った。
 HSEでストレスを担当するエリザベス・ジンゲル上席政策マネジャーは、「この調査は、業務関連のストレスを予防しないと、身体的な不健康という結果を招くことを、いままでにない鮮明なデータで示したものである。事業者は、業務関連ストレスの影響の大きさを認識し、予防に努めねばならない。これを支援するために、HSEは、詳細なガイダンスを発行した」と述べた。
 報告書はまた、休業災害へのアルコール摂取の影響を論じている。予想されるとおり、アルコール摂取量は、「飲みすぎ」やアルコール依存度同様に、傷害による病欠のリスクとも関係していた。
 「労働環境、アルコール摂取と不健康。英国政府第U調査」(J・ヘッド他著)は、HSE委託調査報告書422/2002、ISBN 0−7176−2314−9として刊行されている(価格は15ポンド)。注文は、www.hsebooks.co.ukまで。