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私達の安全代表を支援する
Looking after our safety reps

資料出所:The RoSPA Occupational Safety and Health Journal
2003年8月号 p.55
(仮訳 国際安全衛生センター)



 英国安全衛生委員会(Health ann Safety Committee: HSC)は、安全衛生管理における労働者の参加と労働者への協議を強化するための総合施策の検討を終えたところである。RoSPA(The Royal Society for the Prevention of Accidents:イギリス王立災害防止協会)の労働安全アドバイザーRoger Bibbingsが、その必要性を考察し、安全代表と労働者の参加に関する考えを大きく変えなければならないと呼びかける。

 労働組合代表を経由して労働者を職場の安全衛生問題に参加させることの重要性は、1974労働安全衛生法(1974 Health and Safety at Work Act)の基となったRobens委員会の報告書(Report of the Robens Committee)ですでにはっきりと認識されていた。尤も具体的な規則が出来たのは、やっと1977年になってであったが。これにより、労使関係が目的であると認識されていた労働組合は、一定の代表機能と検査機能をもつ安全代表を任命することができるようになった。この法律は、労働組合が行う教育訓練のために時間をとる権利、合同安全衛生委員会の設立を要求できる権利などによってバックアップされている。

 Robens委員会がこのことに熱心に取り組んだのは、石炭、電力、鉱山など当時国営化されていた産業、また化学や鋳造など他の産業でも安全問題に労働組合が参画していたということにかなり影響をうけている。

 しかしながら、報告書のインクが乾くか乾かないかのころに、中小企業へのシフト、外注契約、伝統的な業種の崩壊という形で英国の産業構造は変化しつつあったのである。1980年代を通じて労働組合とTUC (Trade Union Congress、イギリス労働組合会議)は、1977年の諸規則(これには、安全代表に対する効果的な教育訓練プログラムを公的資金で開発することも含まれているが)を確実に実施させるために非常に多くのことを行った。

 1990年代の最初に、労働者との協議に関するEU安全衛生枠組指令(European Health and Safety Framework Directive)の一般要件のもとで、英国の「組合オンリー」というアプローチが問題にされ、結局HSCは1996年の「労働者との協議」規則(1996 'Employee Consultation' regulations)の導入に同意した。これらは、非組合員の労働者に対して協議を行うことを要求するものである(その方法を決めるのは事業者であるが)。

 1999年11月に、HSCの「安全衛生再活性化」(Revitalising Health and Safety, RHS)のアンケート調査の準備段階で、HSCは労働者の参加をより促進する選択肢をさぐるための検討文書を出した。RoSPAは、多くの他団体とともにこれに対応し、既存の法的枠組の強化と合理化とを要求した。RoSPAは、特に小企業でもっと効果的に労働者の参加が確保されるようにするための実用的なアイデアを広い範囲にわたって提案した。

 組合と経営者が「パートナーとして」共通の目的に向かって努力すること(これは他の課題においてと同様に、TUCの安全衛生における現在のテーマである)は、ちょうど3年前スタートされた10項目からなるRHS戦略の第7項目にとりあげられた。

 それ以来HSEは、前進するためのイニシアチブと基礎固めに大忙しであった。この中には、安全代表が安全衛生成績に与える影響に関する調査と、労働者のための兼任「安全アドバイザー」という考えをテストするためのパイロットプロジェクトも含まれている。

 積極的な安全代表を持つ組織の災害発生率が低いというのは調査結果から明らかなようである。しかし、これが直接的な効果なのか、或いは単に安全衛生管理のよくできている企業は労働組合も積極的である傾向があるという事実を表しているに過ぎないのかは、もっと議論が必要である。

 しかしながら、トップダウンで規則や規制をおしつけることでは実際に安全衛生管理は成功しないということは認めているようである。トップのリーダーシップは最重要ではあるが、残った部分は本質的に「ボトムアップ」である必要がある。TUCの理事長としてOwen Tudorは「安全衛生は労働者とともにやって初めてできることで、労働者に対して行うものではない」と強調するのを常としている。管理者は何にもまして、労働者とその代表に「よし、わかった」といってもらうために、その知識を活用し、一緒に問題解決にあたる必要がある。

 実際HSEは、他の多くの団体と同様、カルチャーの変化を促進し支援することにおける安全代表のパワーを認識している。従って、安全代表のスキル開発の重要エリアとしては、自分が代表する構成員の安全衛生問題を管理者に上げて説明する能力に加え、同僚と前向きに対話することができるために重要な対人関係のスキルを改善することである。

 十分訓練を受け、積極的で、かつ問題解決に参加している安全代表は、安全衛生にとって有用であるということは広く合意されていることである。実際HSCは、RHSの構想である一段階上のレベルを確実にするためには、労働者の参加が非常に重要であるばかりではなく、必要不可欠なことであると考えている。

 しかし、安全衛生システムが直面している主要な問題は、主として雇用の構造と慣行が変わったことの結果ではあるが、実際の英国の職場の安全代表の数が減少したことである。HSEは、2200万人の労働者のうち1400万人が現時点で安全代表に接触できていないと推定している。現在、組合に所属しているのは約800万人程度であり、これらは公的セクタ及び大企業に集中している。現在、英国の360万の事業所の90パーセント以上は雇用労働者が10人未満であり、こういうところでは、事業所内で労働者を代表する仕組みが不適切になりがちである。

 HSCは、可能性として1977年規則と1996年規則を1989年洋上施設(安全代表及び安全委員会)規則(Offshore Installations (Safety Representatives and Safety Committees)Regulations 1989)に統合することを検討していると言われている。ここでキーとなる問題は、以下のとおり。
・組合及び非組合の代表の権利と機能を同じとするべきか(例えば非組合の代表は調査の権限を持っていない)
・すべての代表が選ばれることを可能にするために、労働者をある単位(洋上施設規則のように)に分割すべきか(これは、認定されていない組合が安全代表の候補者を立てる場合に、組合承認投票の代わりとなる)
・すべての安全代表が、有給で勤務時間中に自分が選んだ教育訓練を受ける権利を持つべきか;
・非組合の安全代表は、どうやって独立した第三者のサポートを受けられるか(組合所属の安全代表がしているように)
1つの選択肢は、安全代表がその地域の安全衛生団体、IOSH/RoSPA、BSC(British Safety Council、英国安全評議会)などから支援を求められるようにすることかもしれない。

 HSCが代表に関して、規模で線を引くことはあるかもしれない。即ち、労働者が20人未満の職場では、代表や委員会を置くことは要求しないが、非公式に協議するという一般的義務は残すということである。労働者が50人以上の事業所では最低2人の安全代表と安全代表にだけ接触して仲介機能をはたす委員会を設置することが必要となるかもしれない。

 この要求は、所属する事業所をカバーするために組合が兼任安全代表を任命する権利を拡大することで対処できるかもしれない(1977年規則の下におけるミュージシャン組合と芸術家組合(Equity)の事例のように)。もっともこれは明らかに多くの事業者にとって議論のある問題ではあるが。

 労働者の参加を拡大することについての議論が、諸規則で規定されている権利、機能及びプロセスについての詳細な検討の結果身動きできなくなるようなことがあると残念なことである。1999年のコメントでRoSPAが指摘したように、安全衛生管理は、企業が一般的に経営を管理する方法の核心部に入っているのであるから、安全衛生に労働者を効果的に参加させることについても同じとなるべきである。

 HSCは、「命令−管理」の経営スタイルを違法とするような法律を作ることはできない。できるとすれば、全体として労働者に影響する問題については、安全代表と協議するよう事業者に要求する法律を作ることである。実際問題としては、ライン管理者が、個々の労働者に影響する安全衛生問題については、話を聞いて協議する必要性を理解すれば、このようなことは起こらない。

 この意味で、安全衛生に関する代表制度がうまく行くためには、次のようなことがうまく行っていなければならない
・ 安全衛生に関するコミュニケーション(安全に関する状況説明及び「ツールボックスミーティング」を含む)
・個々の労働者や作業グループによる積極的なリスクアセスメント
・オープンで、「批判なし」の「ヒヤリハット」報告
・提案制度

 安全代表に関してよく考え抜かれた法的枠組は基準線にはなりうるが、さらに、ACoP(公認実施準則)や他のガイダンスに基づいて、安全衛生管理のためのより広い要件(例えば労働者代表を、事故災害調査や実施状況チェック、目標設定に参加させるなど)に密接につながっている必要がある。逆にHSCは、この「参加」と「パートナーシップ」の問題に対し、管理者、安全代表、安全衛生専門家がどのように取り組むかを理解できるよう、基準となるようなよい実践事例を数多く用意して使えるようにしなければならない。

 また、安全代表による顕著な功績に対して表彰制度を作った事例もあるし(実際、TUCは今年そのような制度を設立した)、協議/参加が管理者向けの教育訓練や独自の監査制度でどのように扱われているか(或いはいないか)を調べる事例もある。

 さらに重要なこととして、HSCが来年RHSの目標を見直すとき、HSCは、例えば教育訓練を受けた管理者のパーセンテージといった、他の「実施項目(input)」や「川上(upstream)」の目標と並んで、安全代表と委員会の拡大に関する何らかの目標を入れる必要がある。

 そしてこの他に最も重要なことであるが、根本的な挑戦として、安全代表のステータスを、低レベルの危険偵察者から、有意義なステータスを持つ職場の市民代表へ変えることがある。

 みなが安全代表になりたいと進んで申し出るように奨励する必要がある。安全代表には次のようなことを保証しなければならない:
・有給の休暇があり、仕事をするためのサポートも受けられる
・どんな種類の不利益も被らない
・必要なバックアップがある(組合から得られない場合は専門機関や安全団体から)

 私達は自分の安全代表を支援する必要がある。彼らは私達のサポートと激励を受ける資格がある。