Swansea大学 身体リズム・交替制勤務センター(University of Swansea Body
Rhythms and Shiftwork Centre)のSimon Folkard教授は「人間は年中無休24時間営業が十分できるほどは進化していないのだ。」と語る。しかし、時には公衆や雇い主から、あたかもそれだけ十分進化しているように行動することが要求されるのだ。
Merseyside警察業務計画ユニット(Merseyside Police Work Scheduling Unit
: MPWSU)のヘッド、Carl Mason巡査部長が次のように説明する。「私も21年前にToxtethでそういう目にあったが、もし暴徒に囲まれているような状況だったら、ちょっと時計を見て『おや、これで週48時間勤務が終わった』ということで、楯と警棒をしまって家に帰るというわけにはいかない。」
しかし勤務当番表の設計が悪いと、死亡者を出すことさえあり、そのような場合に事業者はいくつかの訴因で起訴されることになる。例えば1974年労働安全衛生法(Health
and Safety at Work Act 1974)第1章第2条「労働者を保護する事業者の義務」や第3条「一般の人に対する事業者の義務」が発動されることもあるだろう。この点はその後の労働安全衛生或いは公衆に対する安全衛生の法令でさらに詳細に規定されている。例えば1997年EU労働時間指令(European
Union Working Time Directive 1997)を国内向けに制定した1998年英国労働時間規則(UK
Working Time Regulations 1998)などである。
通産省(DTI)によれば、労働時間規則(Working Time Regulations : WTR)はだれにでも適用される。しかし、これに対する1998年のガイダンスでは、特定のサービスとその規則の条文の間にどうしても避けられない矛盾が起こることを認めている。ガイダンスでは、これらのサービスに従事する者はいつそのようになるかを承知しておかなければならないとしている。
業界を問わず、勤務スケジュールに関するリスクアセスメントの最適な方法を推奨するための研究が数多く行われてきた。民間航空局(Civil
Aviation Authority)のために行われ、王立航空学会ヒューマンファクターグループ(Royal
Aeronautical Society Human Factors Group)のホームページで公表された航空機整備作業についての勧告の中で、Folkard教授は、西オーストラリアの商業用乗物ドライバーのリスク管理プログラムで採用された包括的なアプローチを引用している。これは業務のスケジューリングだけでなく、仕事に対する個人の適性、作業環境、教育訓練、文書化、事故の管理なども考慮するものである。同教授によれば、勤務スケジュールは、もっと広いリスクマネジメントプログラムの一部分を形作るというのが理想だということである。
Simon Folkardはその困難さを次のように説明している。「朝や昼の勤務に比較して夜勤はリスクが約30%増加する(ということが証拠で示されている)。少なくとも4日連続の夜勤とすると4日目の夜は1日目の夜に較べてリスクが45%高い。そして何日かの夜勤が終わった後で一晩寝ても、夜勤の間にたまった疲労は完全には消えないだろう。」
1999年に内務省警察研究賞金プログラム(Home Office Police Research Award
Scheme)が、Merseiside警察に対し新しい交替制勤務システムの影響の研究を行うための資金を提供した。そしてその報告書「健康的な夜(Healthy Nights)」の内容が公表され、これは今内務省のホームページで見ることが出来る。個人ごとに知覚-反応レベルをテストする技術を利用し、自己申告で得られた情報を使ったものであるが、これにより新しいシステムが警官たちに歓迎されていることが判明した。結果は次のようなものである:
応用心理学科を卒業したMason巡査部長が、一般論としてコメントする:「要は『統制の位置(locus
of control)』の問題だ。これが内的(internal)だと物事を受け入れるのがより容易である。しかしこれが外的(external)であって、統制を強いられると、不安、うつ、そして対処する方策が機能不全になることにより悪化した心理的結果につながることがある。」
Carl Masonによれば「勤務表を作るときに分署の管理者は、情報による警察活動をベースとして、どこにニーズがあるかを判断できなければならない。古い『サイコロと鉛筆』方式で勤務表を作るのは不適当だ。新しいアプローチとは、例えばMerseyside警察が発見したところによると、Liverpool北署すなわち市の中心では金曜・土曜の午前4時頃は、Liverpool南署すなわち住宅地よりも多くの夜勤人数が要るということだ。しかしLiverpool南署では盗難の多い午後1時頃により多くの警官が必要だ。」