このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。

アスベスト・リスクの管理
Interactive info

資料出所:The RoSPA Occupational Safety and Health Journal
2003年10月号 p.26
(仮訳 国際安全衛生センター)



2002年職場のアスベスト管理規則(Control of Asbestos at work Regulations 2002第4条の関連事項について、ニック・クックが解説する。

 前世紀のアスベストの評判は、魔法の鉱物から、隠れた殺人者まで、劇的に変化した。
 アスベストが死につながる物質であることは誰の目にも明らかである。英国では、過去の一定期間に空中に浮遊するアスベスト繊維を吸入して、肺がん、中皮腫(肺の内層のがん)、石綿症(肺の瘢痕化)に罹患したりすることで毎年3000人も亡くなっている。
 アスベストは本当に身を潜めていて見えないのだろうか。アスベストが用途が広いということでは感謝しなければならない。アスベストは使い勝手がよいため、今日ほぼどこにでも存在する。しかし、不幸なことにほとんど認識することができず、またうまく隠れている。たとえば、屋根のフェルト材のように内側に包み込まれて隠れている。また防火扉の両面の間に挟み込まれたり、塗装や壁紙で覆われたり、セメント、プラスチック、ビチューメン、ゴム、ニスなど他の素材と一緒に混ぜて使用される。装飾用仕上げ材、例えば、「アーテックス」の中に組み込まれる。
 このような状況が原因で、アスベストは危険物質となる。今日、アスベストへの暴露は、不慮の接触がほとんどである。
 作業員はアスベストを含んだ材料(asbestos containing materials: ACMs)の正体を知らずに穿孔し、のこぎりで切り、サンドペーパーで磨き、セメント石膏として使う。アスベストへの暴露で最も高いリスクを負う作業者は、配管工、電気技師、建具業者、大工などを含む建設業者、保全業者で、作業中にアスベストを拡散させることのある職種である。建設業者、保全業者だけで、アスベストによる年間死亡者数の25%を占めている。
 昨年11月、職場のアスベスト管理規則に追加された新しい責務は、上記の問題を解決するためであった。この責務の目的は、管理責任者が自ら保有する事業場以外の建造物において、アスベストへの不慮の暴露から労働者(暴露の可能性のあるそれ以外の人も含む。)を保護することであり、規則の第4条に正式に明記されている。当該規則では、アスベストの適切なリスク管理が義務付けられている。
 この第4条は2004年5月21日までは施行されないが、それ以前に何もしないというのは好ましくない。改正規定の内容を遵守するまでには多くの作業が、特に、多量のアスベストを含む古い大きな施設では必要である。施行日までに間に合うようにするためには今から作業を開始しなければならない。


有益なガイダンス

 幸いにも、イギリス安全衛生庁(Health and Safety Executive: HSE)から多くの有益なガイドラインが発行されている。そのひとつは、第4条を記載した公認実施準則(Approved Code of Practice: ACoP)である。このACoPには、要件が詳細に説明されている。さらに2つのガイダンスブックが加わり、ACoPを補完している。ひとつは、無料の図入り小冊子で「建物内のアスベストを管理するための簡易ガイド(A short guide to Managing asbestos in premises)」である。これはアスベスト管理に関する詳細なイラスト付き入門ガイドで、店舗、小規模自動車修理工場、農舎など小さく、簡易な事業場に十分なものと思われる。大規模で複雑な事業場に対しては、これも無料の「建物内のアスベストを管理するための包括的ガイド(A comprehensive guide to Managing asbestos in premises)」がさらに詳しい解説をしている。これら3つのガイドはすべて、事業場でのアスベスト管理責任者を対象としたものである。
 またこれとは別に、「危険物質特定方法(Methods for the Determination of Hazardous Substances: MDHS)」も出版されている。これは(必要と思われる場合実施される)事業場でのアスベスト調査に実際にあたっている担当者を対象とした詳細なガイドブックである。

責任者は誰か

 第4条では、施設の保全及び改修管理責任者にアスベスト管理の責任があると規定している。この責任者(duty holder)には建物所有者、地主、転貸者、建物管理者などが該当する。このような責任者が不在の場合は(たとえば、居住者がいない建物など)、誰であれ建物を管理する者が責任をもつ。
 施設によっては責任者が2名以上のところもある。たとえば、建物の所有者が屋根、壁、建物の共用領域の管理に責任を有し、また建物を使用する事業者は、占有部分の管理責任を持つ。このような場合は、それぞれの責任者の適用範囲は、各人の管理責任の程度によって決められる。
 責任者以外の人間は、責任者に協力しなければならない。
 責任者は職責の遂行に必要な業務を代理人に委任することができるが、責任は委任できない。たとえば、責任者は、業務を委任する人や組織が適任であるか否かを確認する義務は依然として負っている。

アスベスト管理の7つのステップ

 「建物内のアスベストを管理するための包括的ガイド」には、第4条の遵守に必要なステップが概説されている。
 新任された責任者が始めにするべきことは、緊急対応を要するアスベスト関連リスクの特定と、それに対するできるだけ迅速な処置である。下のステップ1から3に、リスクへの迅速な対応方法を記す。その後引き続き、長期管理プラン(ステップ4から7)を実施する必要がある。



ステップ1:現状の見直し
 施設のアスベストについてどの程度の知識を持ち合わせているか。またアスベストをどのように管理しているか。
 本ステップは、本来は机上の演習であるが、自分の施設でのアスベストにかかわる情報を掘り起こしていくうちに多くの面で調査を深めることになる。調査の糸口となる要点、たとえば建物の築年数や改装・大規模修繕の時期などを考慮に入れなければならない場合がある。こうした情報は、アスベストが使われている可能性の有無を知る手がかりとなる。1999年にはあらゆる種類のアスベストの使用が禁止されたため、この年以降に建てられた建物は、アスベストを使用している可能性が極めて低い。その他に考慮すべき時期は以下のとおりである。
1970年:青石綿はほぼ全面的に使用されなくなった。
1985年:アスベスト吹付けが法的に禁止された。
1985年:アスベストを含む断熱材の施工が中止された。
1985年:青石綿と茶石綿の使用が全面的に禁止された。
1992年:アスベストを含む装飾用石膏の使用が禁止された。
1999年:アスベスト・セメントの施工が禁止された。
1999年:白石綿の使用が禁止された(若干の除外項目もある)。
 建築家、建設業者、メンテナンススタッフから、建造物の建設、改装、関連する修繕(耐熱材の敷設など)の時期、詳細、計画、仕様を入手できるはずである。前述した調査で得たデータとともにこの情報を活用すると、アスベストがどの程度使われているかを知ることができる。
 しかし、注意を怠ってはならない。建設業者や販売業者の中には、ストックしていた古いアスベストを禁止された後も使い続けるところがあるため、調査には注意を要する。たとえば、人工の鉱物繊維製として見過ごされていた断熱材が、後になってアスベストを含んでいたことが明らかになったことが時折ある。
 アスベストを含んでいるものは建造物のアスベスト繊維に限られてはいない。施設内にあるもの全てに考察対象を広げるべきである。この中には事業場ごとのプラント(工場)、設備、車両(事業場を訪れる車両は含まれない)などが含まれる。たとえば、以下のようなものである。
ヘアドライヤ(研究室で熱源として使用する場合がある)
旧式の電気ヒーター
薪や石炭を燃料とするガスストーブ
以下などの機械類
アスベスト・ガスケット
アスベストを含む摩擦関連製品(ブレーキパッド、駆動ベルト、コンベヤベルト)
アスベストを含むケーブル類とスイッチ装置
 MDHS 100の別添1には、施設にあると思われるアスベストを含むものの包括的なリストがイラスト入りで記載されている。
 ステップ1の第2部は、現在のアスベストの管理手順を見直すことである。ここでの要点は、意図せずにアスベストを発散させてしまう作業員がひとりもいないようにすることである。つまり、以下の事柄を確実に実施できるシステムを確立することを意味する。
建築事業と保全事業が管理されていること。たとえば、意図せずにアスベストの断熱材を穿孔する者がいないようにすること。
保全、建設職人がアスベストの安全作業方法を周知していること。さらに大切なことは、どのような場合に許可をうけたアスベスト施工請負業者に任せるべきかを知っていること。。
アスベスト(またはアスベストと思われるもの)製品の状態を熟知しており、必要であれば修理、交換すること。
ACMs(アスベストを含んだ材料)の使用箇所と状態を記録すること。
アスベストのリスク管理に対し、全員が責任を理解していること。



ステップ2:リスクアセスメント実施前のアスベスト発散作業の禁止
  実際には、これは建造物に使われているアスベスト材への作業を早急に管理することを広く意味する。整備するべきシステムは以下のような事柄である。
作業実施前にアスベストを確認するシステム。どんなに小さい作業であれ、建造物の材料を扱う作業時は、すべて対象とすること。
存在を特定したら、そのアスベストを管理するシステム。
全担当者など、すべての関係者に対する訓練。



ステップ3:初期点検の実施と問題点への迅速対応
 ここではスピードが大切である。初期点検ではアスベストの専門家である必要はない。建造物の損傷具合を確認できれば十分である。空中にアスベスト繊維を容易に撒き散らす可能性のあるものは、損傷し、または解き放たれたACMs(たとえば、天井の割れたタイル、仕切り壁の穴など)だけである。アスベストの含有の有無を問わず、良好な状態にある建材は脅威とはならない(建材が良好な状態にあり続ける限りにおいては)。点検で特定しなければならない損傷の例を以下に挙げる。
壁材の穴
パイプから垂れ下がった断熱材
梁や天井からはがれて垂れ下がった吹付け断熱材(注:アスベストを金属製梁に吹付ける際に、梁にうまく吹付けられずに天井から垂れ下がり、危険な状態に陥っていた場合がある)
床に破片や粉じんが散らばっている状態
 据え付けられたプラント、機器、車両なども考えなければならないかもしれないが、この初期点検段階では、これらの点検はさほど優先しなくともよい。最もリスクが高いものは、建造物に関連した建材にあると考えられるからである。
 点検の結果、対策を講じなければならない損傷箇所(損傷材)の一覧表ができる。この一覧表の点検事項で何を優先的に処理するべきかは、判断を要する。たとえば、床にアスベストの破片が山積みされている場合でも、そこが隔離されており、人の通りがない場合は、人通りが激しく、常に壁材が損傷する危険を抱えている場所の方がリスクは高い。
 潜在的にリスクが高い状況は迅速に処置されなければならない。処置には、以下のようなステップが必要となる。
壁材の穴リスクのある箇所を隔離する(たとえば、部屋の鍵を閉めたり、「立ち入り禁止」の標示を立てたりする)。
アスベストの存在を確認するための分析を行う。
アスベストを修理・交換する(この処置は、許可されたアスベスト施工請負業者が行なう必要がある)
 ステップ1、2、3は重大なリスクへの迅速な対処法を中心としているが、施設でのアスベストを適切に管理するためには確実で現実に即したシステムが必要となる。このシステムは常に見直され、更新され、改善されるべきものである。このようなシステムをステップ4、5、6、7で構築していく。



ステップ4:法遵守戦略の策定
 第4条では、施設内のACMsを特定するための点検実施が必然的に義務付けられているわけではない。実際には以下の3つの選択肢が用意されている。
a) 施設にアスベストが存在しない場合は、簡単にその旨を記録する。第4条の規定内と、さらに実質的には「職場のアスベスト管理規則」の規定全般における事業者の責任範囲はここまでである。ただし、絶対にアスベストが存在しないことを保証する必要がある。
b) 施設のすべての材料にアスベストが含まれていると単純に推定する(レンガやガラスなど、明らかな例外は除く)。この旨を管理記録簿に記録する。
c) アスベストの特定のために、できる限りサンプリングや分析を行って、さらに細かい点検を実施する。
 一見したところ、もっとも労力をかけずにすむので、b)が楽に見える。実際、簡単な施設(アスベスト・セメント波型屋根付き自動車修理工場など)にとってはb)が最善策であろうが、大規模で複雑な施設では、b)の対策はデメリットとなる。b)を選択しても、改装や修繕の実施前にはアスベストを特定しなければならないので、アスベストの存在が特定されていず記録もない場合は、作業が停滞する可能性がある。作業を停滞させないためには、もうひとつの選択肢として、これこれの材料はアスベストであるので、しかるべき処置をとると単純に前提してしまうことになる。この方法では(あるいは不要かもしれないが)予防措置も含まれるのでコストが高くつく。
 施設が大規模で複雑な作業を行う場合は、c)を選択するべきである。「MDHS 100」には、次の3種類の点検調査方法が記載されている。
調査タイプ1では、
合理的に可能な場合は、すべてのACMの特定が必要となる。調査タイプ1ではアスベストの含有が不明である箇所の材料のサンプリングや分析は不要である。このような材料は推定上のACMsとして記録する。同様に、合理的に近づけない場所(屋根の空間など)にはアスベストが含有されていると推定する。タイプ1の詳細は、「MDHS 100」に記載されている。調査タイプ1のメリット、デメリットは、先の選択肢b)と同様のものである。サンプリングが不要であるため、以下に説明するタイプ2に比べコストは低いが、改装や修繕に際しては有用な点検方法ではない。
調査タイプ1が最善策となるのは、ACMがほぼ存在しないとみなされる新しい建造物(1995年以降の建造)のような場合である。ただし、新しい建造物でも作業開始前にはサンプリングが必要である。さらに、古い建造物であってアスベストの存在がすでに特定できている物件もその対象となる。
調査タイプ2では、以下が必要となる。
合理的に可能な場合は、すべてのACMを特定する。
未特定の材料に対してはサンプリングを実施し、分析を行ってアスベストとACMの種類を判定する。
 調査タイプ2のメリットは、幅広くACMsが特定、確認できるということである。アスベストを発散する可能性のある作業前に必要となるリスクアセスメントでは、事前に必要な情報が入手できるのである。
 調査タイプ2のデメリットは、初期投資費用と人件費が高額なことである。
 調査タイプ2は、次の事業場に最適な対策である。
古く、大規模で、複雑な建造物で、ACMが大量に存在している可能性があるもの
ACM含有の仕切り壁の近辺をフォークリフトトラックが通るなど、頻繁に作業が行われ、かつアスベストを発散する可能性があるもの
改装、修繕の必要性が高いもの
調査タイプ3では、以下が必要となる。
事業場全体に立ち入れること。
十分なサンプリングを実施してACMsを特定し、その量や面積を見積もる。
 タイプ3は非常に厳格な調査で、通常は、解体や大規模修繕の前に限定されるものである。
上記3タイプのいずれの場合でも、次の事柄を記録する。
ACM(または推定されるACM)の存在箇所
アスベスト(または推定されるアスベスト)の種類(青、茶、白)。合理的に特定が不可能な場合は、最も危険な種類である青と想定する。
アスベスト耐熱材、吹付けアスベスト、アスベスト絶縁板、アスベスト・セメントなど、製品の種類
ACMや推定ACMの広がりの範囲(対象域の図面上に印を付けるのが理想的)
ACMや推定ACMの状態

調査実施者は誰か
 調査は事業場の部内担当者、あるいは外部の調査専門業者のどちらが実施してもよい。部内外にかかわらず、すべての調査実施者は調査に適切な能力を有していること(たとえば調査実施により生じる可能性のあるリスクを管理できるように調査者自らがリスクアセスメントを行う必要があるなど)を、責任者は確認しなければならない。
 調査機関は、ISO 170207認証を取得済みでなければならない。または調査実施者が個人の場合は、欧州規格EN450138に準拠した認証を受けていなければならない。
 
サンプルの分析
 「職場のアスベスト管理規則」第20条は2004年11月21日施行予定である。第20条では、石綿の含有確認を行うためにサンプル分析を行う機関または個人は、ISO 17025に従わなければならないと規定している。認定取得済みの研究機関についてさらに詳しくは、英国の適合性認定機関であるUKAS(United Kingdom Accreditation Service)に問い合わせるとよい。



ステップ5:対応策のリスク評価と優先順位
 リスクアセスメントは、特定した、または推定したすべてのACMに対して実施しなければならない。リスクアセスメントは次の3ステップで実施する。
a) 材料リスクアセスメント
材料リスクアセスメントは、アスベストの種類およびACMの状態に注目する。ACMが破壊された場合に飛散する繊維の散らばりやすさがこの2項目から求められる。「建物内のアスベストを管理するための包括的ガイド」付録2には、材料リスクを求めるための計算式が記載されている。
b) 優先順位付けのためのアセスメント
このアセスメントで材料リスクアセスメントを補完する。ここでは、ACMが壊される可能性を考慮する。「建物内のアスベストを管理するための包括的ガイド」付録3には、どのACMリスクに優先的に対応するべきか、対応優先順位を求めるための計算式が記載されている。
c) リスクアセスメント
材料リスクアセスメントと優先順位付けのためのアセスメントで求めた値を合算することで、包括的なリスクアセスメントを実施することになる。リスクアセスメントは記録し、この記録を基にリスクの対応策の優先順位付けをする。リスクアセスメントを実施することで、最優先すべき対策は何かを判断しやすくなる。



ステップ6:長期管理計画の策定
長期管理計画には以下の項目を含める。
既知の、または推定したACMsすべての所在と状態の詳細。計画には、これらの記録方法を明記する。アスベストは、単純に紙に記録することで登録していくことは可能である。一方で、イントラネット上にアスベストの詳細を登録しておくと、特定の場所におけるアスベストの情報を迅速に得ることができるようになる。特にネット登録したアスベスト情報に、ACMの写真やACMの所在位置を示すマーク付きの図面を読み込んでおくと、改装工事前に実施するリスクアセスメントには大変有用な情報となる。
調査により明らかにした、措置の優先順位を記した一覧表。リスクアセスメントの優先順位を算出していれば、その計算結果(点数)も加味する。是正措置を講じる際には、この表が予定表となる。
危険度の高い(または中程度の危険度の)リスクで、迅速には是正策を講じられないものに対する手順を策定する。この手順には、以下のステップを含める。
リスクの高い場所への立ち入りの制限
その区域に作業許可(permit to work)システムを導入し、作業管理を行う。
囲い
空中浮遊しているアスベスト繊維の量が、制限値を超えていないことを確認する、
大気監視。大気監視は、必ず認定取得済みの研究機関が実施する。
調査と、アクションプランそのものの段取りの監視と見直し(ステップ7参照)。
従業員の責任の明示
外部の請負業者の管理プラン
リスク管理情報を知るべき関係者への、ACM情報の通知方法の詳細

是正措置実施者は誰か
 アスベスト耐熱材、吹付けアスベスト、アスベスト絶縁板の施工ができるのは、認定取得済みのアスベスト作業請負業者に限られる。ただし例外として、事業者が直接雇用している従業員にさせる一寸した作業がある。上記以外のACM、たとえばアスベスト・セメントなどの作業は、認定業者でなくとも実施できる。
 いずれの作業者も、適切な作業技能を有し、安全に作業できなければならない。「建物内のアスベストを管理するための包括的ガイド」付録6には、請負業者の管理法に関する有益なチェックリストが記載されている。HSE発行の手引き書2冊、「アスベスト必須マニュアル(Asbestos Essentials Task Manuall)」、「アスベスト必須事項の手引き(Introduction to Asbestos essentials)」には、アスベストを扱う作業にかかわる従業員に対するアドバイスと安全方策の一覧が記載されている。



ステップ7  管理計画の監視と見直し
 管理計画を実施し、保全する際にとる行動は以下の事柄である。
低リスクと特定されたACMsや推定ACMsの状態に老朽化が起きていないかの監視。推奨する監視頻度は半年に1回である。
対応策が実施されるまでに要する進度の監視。
アスベスト調査記録のサンプリング(品質および精度を比較する意味でのサンプリング)
何らかの対応策を講じた後の、調査記録の更新手順。
アスベスト・リスクについての従業員の周知度の監視。
アスベストに関連する事故から学んだことの復習
 管理計画は6月毎に見直さねばならない。この見直し時には以下の事柄に計画が生かされているかどうか、確認しなければならない。
作業手順の安全システム
入札仕様書(必要に応じて)
緊急対応時の計画と不測の事態に対する行動手順
地域の緊急医療サービスへの情報
 現代のアスベスト関連の疾患による死亡率は、過去、アスベストのリスクに無知であったことと直接の因果関係がある。今日では、HSEから発表される豊富な情報のおかげで、「リスクについては無知でした」という言い訳はもはや効かない。2004年5月に第4条が施行された後はなおさら、HSEはどんな言い訳も受け付けないことであろう。


詳細情報
Continuing increase in mesothelioma mortality in Britain, Peto et al, The Lancet 345, March 1995.
Control of Asbestos at work Regulations 2002, ISBB 0 11 042918 4, HMSO
The Management of Asbestos in non-domestic premises. Regulation 4 of the Control of Asbestos at Work Regulations 2002, approved code of practice and guidance L127, ISBN 0 7176 2382 3.
A short guide to Managing asbestos in premises, INDG223 (rev3), HSE
A comprehensive guide to Managing asbestos in premises, HSG227, ISBN 0 7176 2381 5, HSE
Methods for the Determination of Hazardous Substances 100: Asbestos Building Survey, HSE
ISO 17020:1998 General criteria for the operation of various types of bodies performing inspection
BS 7153:1989, EN 45013:1989 General criteria for certification bodies operating certification of personnel
BS EN ISO/IEC 17025:2000 General requirements for the competence of testing and calibration laboratories
United Kingdom Accreditation Service, UKAS, 21-47 High Street, Feltham, Middlesex, TW13 4UN.
Asbestos essentials Task Manual, HSE
Introduction to Asbestos essentials, HSE



訳注)アーテックス(Artex)−−−英国Artex社製のペイント製造用ディステンバー(distember)および壁・天井塗装用の塗料・粗面仕上げ剤

*アスベスト詳細情報についてはHSEホームページのこちらでご覧いただけます。