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屋外作業

資料出所:The RoSPA Occupational Safety and Health Journal
2004年6月号 p.24
(仮訳 国際安全衛生センター)



 様々な作業現場でのリスクアセスメントの一例として、屋外で働く人々に対する典型的なリスクアセスメントについてピーター・エリス(Peter Ellis)が記述する。人々に影響を及ぼす主なハザードについて焦点を絞り、安全衛生リスク管理にどんな対策が取りうるかについて説明する。この他のハザードが特定されうる場合も、以下の本文で述べられている手順にしたがって、同様のリスクアセスメントを行わなければならない。

 1974年労働安全衛生法(Health and Safety at Work etc Act 1974)及び1999年労働安全衛生管理規則第3条の規定(Regulation 3 of the Management of Health and Safety at Work Regulations 1999 (MHSWR))により、事業者が順守実施すべきリスクアセスメントの法的要件が定められている。

  特定されたハザード:温度による不快感

不快感のある温度下での作業は、集中力の欠如、いらいらすること、疲れ、不快になることにより、災害リスクの増大につながりうる。
血液温度が38.5℃以上の場合、熱中症のリスクがある。
極端な寒冷作業は、疲労、しもやけ、凍傷、白ろう病のリスクが増大し、時には低体温症の原因となりうる。
手が冷えると、物を落とすリスクとそれによる傷害が増大する。

被災者は誰か?
 極端な温度下で作業する全屋外労働者

推奨する管理対策
多くの作業で、受容可能な温度範囲は16〜24℃である。しかし、英国での屋外労働者の場合、この範囲外、つまりずっと低いか、あるいはずっと高い温度下で時々働いていると思われる。
体をクールにするため、1日を通して定期的な休憩を取ることが必要である。
屋外労働者は、暑い日には、大量の脱水作用のない飲料を(最小限グラス8杯)取ることが必要である。コーヒー、紅茶、アルコール類は体への脱水作用があるので不適切である。
大変寒い状況下で働く人々は、体を温める保護衣が提供されることが必要となる。また、帽子をかぶらなければならない。足を暖めるために履物や厚い靴下を着用し、手を暖めるためには、手袋の着用が必要となる。
暖かい天候用の衣服を着用すれば、着用着の重ね着をなくし、風通しを良くし、過度の熱を逃がし、汗を発散させることを可能にするに違いない。このことは、寒い所で作業する場合でも、重大な問題となる過熱を避けることにもなる。
屋外現場で働く人々は、ウオーミングアップのため、定期的に休憩を取ることが必要である。屋外現場以外で働く人々は、車の中等に座ったまま、ウオーミングアップをすることができる。
体を暖かくするため、一日を通して良質の熱い飲食物の摂取が必要である。
全屋外労働者は、上述の管理対策に関し、適切な情報と指示が与えられ、教育訓練が実施されなければならない。

  特定されたハザード:太陽光線のばく露

 英国では、夏の間太陽光線に皮膚をばく露すると、日焼け、皮膚の老化、そして最終的には、皮膚がんとなる可能性がある。
 
被災者は誰か?
 太陽光線ばく露リスクの多い屋外労働者は、色白の皮膚を持つ人で、建築業者のように太陽に皮膚をばく露している人である。そして適切な日焼け止めクリームを使用しない人々である。

推奨する管理対策
ゆったりした白い木綿の衣服で体を覆い、太陽光線から体を保護することが必要である。
晴れた日には、体に身につけたシャツ、その他の衣服を脱がないようにする。
太陽光線から顔、首を保護するために帽子をかぶることが必要である。建築現場やこの他の高いリスクがある現場では、保護帽を着用することが大切で、太陽光線から頭を保護することにも保護帽は役立つのである。
太陽光線にばく露するおそれのある体の部分は、良質の日焼け止めローションやクリームにより保護することが必要である(SPF15以上)。
鼻、耳、肩といった日焼けし易い部分は、いつも日焼け止めローションやクリームを塗って保護しなければならない。
日焼け止めローションやクリームは、衣服でこすられたり、汗ではがれたりするので、しばしば塗ることが必要である。
全屋外労働者は、上述の管理対策に関し、適切な情報と指示が与えられ、教育訓練が実施されなければならない。

  特定されたハザード:マニュアル・ハンドリング

屋外作業を行う労働者は、作業工程の中で、作業用器材/工具のような重く、かつ扱いにくい物を持ち上げたり、運搬したりしなければならない場合がある。
主なハザードとしては、次のようなものがある。
重く、かさばり、つかみづらく、不安定な荷を取り扱うこと。
ぎこちない動作で、物を持ち上げたり、手を伸ばしたり、取り扱ったりすること。
物を押したり、引っ張ったりすること。
作業の間に十分な休憩時間を取らないで繰り返し荷を取り扱うこと。
体をねじったり、かがんだりすること。

被災者は誰か?
 仕事中に、マニュアル・ハンドリングを行う全ての労働者

推奨する管理対策
物を持ち上げることが必要な場合、優良な作業技術がリスクを低減するために役立つ。
荷を持ち上げる時、できる限り体を近づけて荷を持つこと。
体をひねらないようにし、代わりに足を動かすこと。
かがまないようにするため、腰の高さに荷を置くこと。
上方に伸び上がらないようにするため、適切な脚立を使用すること。
人力で荷を遠くまで運ばないようにするため、手押し車を使用すること。
不安定な荷を取り扱わないようにするため、きちんと箱等で梱包すること。
反復作業を行わないようにして、反復的負荷傷害を避けるため、定期的に休憩を取り、できれば作業方法を改善すること。
取り扱いづらい箱は、箱に握りをつけること。
個々人の能力の限界、特に男女間の肉体的違いを知り、重すぎる物を持ち上げないこと。
庭でマニュアル・ハンドリングを実施する人々は、作業を実施する前に安全なマニュアル・ハンドリングに関する資料を確認すること。
全屋外労働者は、上述の管理対策に関し、適切な情報と指示が与えられ、教育訓練が実施されなければならない。

  特定されたハザード:工具と作業用機器

 屋外で作業する労働者は、種々の工具と作業用機器を使用するが、この中には、彼らが運転する車両等も含まれる。

被災者は誰か?
 屋外で作業する全ての労働者及びその近隣にいる人々。

推奨する管理対策
事業者は、屋外労働者が使用する作業用機器は、1998年作業用機器使用規則(Provision and Use of Work Equipment Regulations 1998 (PUWER))に適合しているものを供給するようにしなければならない。
事業者は、屋外労働者に提供する作業用機器がその仕事に適合していることを確認しなければならない。
作業用機器は、安全に操作できるように正しい制御装置を有していなければならない。例えば、制御装置の操作部分は、適切な場所に取り付け、分かりやすく標示しなければならない。
リスクアセスメントで必要と判断された場合は、必要な個人用保護具(PPE)が提供されなければならない。
車両の運転や乗車開始前に、毎日、車両をひとまわりして点検を実施し、欠陥のチェックを行わなければならない。
車両が2人以上のドライバーによって運転されるような場合には、それぞれのドライバーは、運転や乗車開始前に車両点検を実施しなければならない。
事業者は、労働者が移動式作業用機械に乗る場合、機械の転倒リスクを最小限となるようにしなければならない。
すべての工具と作業用機器は定期的な検査、保守及び交換が行われなければならない。
屋外労働者には、この機器が屋外労働者あるいはその他の人々に傷害をもたらさないように、作業用機器の使用及び定期点検方法の適切な情報を提供し、訓練を実施しなければならない。

  特定されたハザード:電気

 現場内外で働く屋外労働者は、作業実施時に電気機器を使用する可能性がある。

被災者は誰か?
 屋外労働者とその近くにいるその他の人々。

推奨する管理対策
全ての労働者が使用する全ての可搬型電気機器一覧表が作成されていなければならない。機器がチェックされ、検査された場合、その記録を保存すること。
機器使用前に、ボロボロになったケーブル、壊れたソケットやプラグ等を中心に定期的な目視検査が屋外労働者によって実施されなければならない。有資格電気技術者は、問題があれば、直ちに処置しなければならない。
企業が借り上げた移動式電気機器は、使用頻度に応じて有資格電気技術者により定期的な点検検査が実施されなければならない。
上記の全ての項目に関し、屋外労働者は、情報と指示を受け、教育訓練を実施されなければならない。

  特定されたハザード:走行車両

 屋外作業時に、走行車両に激突されることは重大な災害の原因となり、英国安全衛生庁(HSE)の優先対策分野の1つとなっている。

被災者は誰か?
 道路や線路上の車輌に激突されるリスクがある全ての屋外労働者及びその他の人々

推奨する管理対策
リスクがある屋外労働者は、CEマーク付きの目立つ衣服を着用すべきである。
特に線路のメンテナンス作業(とりわけ夜間作業)が実施される場合、事業者は、適切な作業許可システムが実施されていることを確認しなければならない。
事業者は、適切な可搬型道路標識を確実に準備し、高速道路メンテナンスや車両故障車を片付ける労働者によって作業開始前に設置しなければならない。
作業場内の車道及び駐車場では、走行車両から人々が物理的に隔離されていなければならない。
例えば建設現場や空港の滑走路上等の車両運行経路は事前に定め、屋外労働者が作業する場合には情報が伝達されるようにしなければならない。
できれば屋外労働者は、常時適切に監督されていなければならない。
作業環境付近の車両走行に関し、屋外労働者は適切な情報と指示が提供され、教育訓練が実施されなければならない。

  特定されたハザード:すべり、つまずき、墜落・転落

 すべり、つまずき、墜落・転落は、すべての屋外労働者にとってハザードとなり、そしてまた、HSEの優先対策分野の1つとなっている。

被災者は誰か?
 全屋外労働者

推奨する管理対策
作業現場区域は、整理整頓をしておくこと。もし障害物が除去できない場合、安全標識や安全柵を使用して、人々に警告すること。
油や水のこぼれは、人々が滑らないように直ちに清掃しておくこと。直ちにできない場合、安全標識の設置によってハザードを警告すること。
屋外労働者は、実施する作業に適した履物を着用すること。あらゆる場合に、履物は地面や床に十分に密着できなければならない。
氷面及び雪面でのすべりリスクを低減するために、現場気象状況を確実にモニターし、必要に応じて地面に適切に砂がまかれているようにすること。
できれば、現場の低い柵や壁は、つまずきの原因となりかねないので、回避するようにすること。それが不可能な場合、安全標識の設置により、このような柵や壁の存在を全労働者及びその他の人々に警告すること。
現場及び現場以外での屋外労働者は、ケーブルやホースが職場内のつまずきハザードとならないようにすること。
転落リスクを低減するため、訓練された労働者だけが、車高の高い商業用車両の上に乗ることができること。 
窓ガラス清掃労働者及び屋根のタイル張り労働者といった、極めて高い所で働く屋外労働者は、墜落リスクを低減するため、はしご、作業床、PPEといった、作業に適した設備を使用しなければならない。補助者も時に応じて利用できなければならない。
はしご類は、安全に使用できるよう、定期的な点検が実施されていること。
はしごは、使用前に適切に固定しなければならない。
墜落・転落のおそれがある現場の穴や構造物は、安全に覆われるか、囲われるかしなければならない。
人々は、落下物や、墜落する人々から、十分な強度を持った障壁等によって守られなければならない。
落下物や墜落する人々がぶつかるおそれのある人々は、状況に応じ、保護帽等、適切なPPEを着用すること。
上記の全ての項目に関し、屋外労働者は、情報と指示を受け、教育訓練を実施されなければならない。


  特定されたハザード:身体の傷害

 屋外労働者は、種々の傷害をこうむるおそれがある

被災者は誰か?
 屋外労働者及び近くにいるその他の人々

推奨する管理対策
現行のガイダンスでは、作業現場事務所での救急施設は、事務所から離れて作業する屋外労働者を収容するのに十分なものでなければならないとしている。
屋外労働者は隔離された場所や、緊急施設へのアクセスが困難な場所、あるいは危険な工具や機械類を使用している場所等で作業する場合、携帯用救急キットを支給されていなければならない。
単独屋外労働者の状況を確認するために、定期的に電話をかけること。これは、単独で作業している屋外労働者に対する1つのリスク低減法の例である。
全ての傷害は、災害記録簿に記録すること。そして、事務所に保管すること。救急箱のそばに保管するのは良い考えである。
傷害発生時に災害記録簿に記載するという1979年社会保障(請求及び支払い)規則(Social Security (Claims and Payments) Regulations 1979)の法的要件について、労働者は知らされなければならない。
2003年12月以降、この災害記録簿が、労働年金局(Department of Work and Pensions)で見直されている。新しい災害記録簿は、HSEブックスで入手可能である。(以下 ブックナンバーや価格等省略)
種々の職場災害を報告、記録し、災害調査を実施するという特別の法的要件がある。これらを簡単に下記に記すこととする。
1995年負傷・疾病・危険事態報告規則(Reporting of Injuries, Diseases and Dangerous Occurrences Regulations 1995 (RIDDOR))では、職場で発生した特定の災害を報告することが責任者に要求されている。
ごく一般的には、この規則によると、報告すべき災害は、関係監督機関に最も早い方法で通知することが要求されている。通常は電話で通知し、その後10日以内に様式F2508かF2508Aで書面により報告することになっている。これはまた、e-mail:www.hse.gov.ukでも可能である。
救急担当者は、HSE認可の訓練コース修了証を保持していなければならない。修了証保持者は1981年安全衛生(救急)規則(Health and Safety (First-Aid) Regulations 1981)で定義されている救急員 (First-Aider)あるいは、指名された担当者(Appointed Person)の職務を遂行することができる。
この指名された担当者は、緊急時の応急手当及び手順について特別に訓練されている場合を除いて、救急処置を行ってはならない。この指名された担当者は、基礎的救急コースに参加しなければならない。
指名された担当者は、救急員の不在等の期間をカバーするだけで、十分な資格ある救急員の代わりとなることはできない。
全屋外労働者は、上記の全ての管理対策について通知と指示がなされ、教育訓練されなければならない。

  特定されたハザード:その他の人々

 事業者は、自分の所有する作業現場に出入りする他の人々の安全衛生を守る法的義務を負う。従ってこのリスクアセスメントで掲げられた管理対策を屋外労働者と遭遇する可能性のあるその他の人々に適用することを推奨するものである。