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配送車運転手の安全確保
Raising global OSH standards

資料出所:The RoSPA Occupational Safety & Health Journal
January 2006
(仮訳:国際安全衛生センター)

掲載日:2006.11.15

編注
運転手の安全確保のために必要な事項をまとめたものである。この問題については、各国とも種々の資料を作成している。(この資料の末尾にも情報源がある。)
右矢印 HSEの資料
新しいウィンドウに表示しますVehicles at work
新しいウィンドウに表示しますMoving goods safely
新しいウィンドウに表示しますWork related road safety
右矢印 アメリカのOSHAの指針、ANSIの規格
新しいウィンドウに表示しますMotor Vehicle Guide PDF[252KB]
新しいウィンドウに表示しますSafe Practices for Motor Vehicle Operations (ANSI/ASSE Z15.1-2006)

配送運転手の安全衛生を守るために職場、運転中、又は仕事中に行く可能性のある他の職場でチェックすべき項目に、ピーター・エリスが焦点を当てる。これらのチェック項目は、多くの場合、同乗の配送担当者にも適用できる。

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毎年、職場構内の車両事故で約70人が死亡し、約2千人が重傷を負っている。これらのうち、かなりの割合が配送中と集荷中に発生している。その上、業務中の交通事故で毎週20人が死亡し、250人が重傷を負っている。その中には配送運転手がかなりの割合で含まれている。

この記事では配送運転手の安全に関する一般的アドバイスを提供することしかできない。具体的な安全上のアドバイスを得るには、法的要求事項、公認実施基準(Approved Codes of Practice、ACoP)、指針、及び英国規格・EU規格を参照されることをお奨めする。また、この記事の「より詳細な情報」の部分も参照していただきたい。

法令

1974年労働安全衛生法は、事業者に対し、合理的に実行可能な範囲で、従業員及びその事業活動によって影響を受ける可能性のあるその他の者の、職場における安全衛生を確保する義務を課している。1999年労働安全衛生マネジメント規則は、事業者に対し、種々のハザードを特定するためにリスクアセスメントを行うこと、そしてそれらのハザードから生じるリスクを防ぐか、又は少なくともその対策をとることを要求している。

安全衛生法は道路上の業務にも適用されるので、それらのリスクは安全衛生マネジメントシステムの中で効果的に管理されなければならない。従って、配送運転手の雇用している事業者は、構内及び道路上で運転手の安全衛生に責任がある。しかし、配送運転手が別の職場へ出向いた場合は、運転手の安全衛生に責任を持つのはその現場を管理する、出先の事業者(受取人か供給者)である。

HSEの「業務上の運転(Driving at work)」指針(1NDG382)は、車両を運転するか、バイク又は自転車に乗る従業員をもつすべての事業者、管理者又は監督者に適用される。しかしながらトレーラー(large goods vehicles、LGV)又は旅客運送用車両(passenger service vehicles、PSV)を使用する企業は、この記事で紹介する一般的な指針に優先する、特定の法的要求事項に従わなければならない。

安全衛生法令による義務は、道路交通法(Road Traffic Act)及び道路・車両(構造と使用)規則(Road and Vehicle (Construction and Use) Regulations)に加えて課されるものである。これらは警察及び運輸省車両運行局(Vehicle Operator Services Agency)のような政府機関の所掌である。

リスクマネジメント

ここ数年、RoSPAは企業が先を見越したリスクマネジメントの手法を採用して、業務上の車両使用に伴うリスクを低減するよう運動している。これは事業者がすでに持っている安全衛生マネジメントの枠組みのなかで取り組むべきでものである。またRoSPAは、政府の「業務に関する交通安全作業部会(Work Related Road Safety Task Group)のメンバーである。この作業部会は「業務上の交通リスクマネジメント(Managing Occupational Road Risk)」という国家戦略策定を支援した。さらにRoSPAは新しいHSE指針である「運転業務(Driving at Work、INDG382))の原案作りに参加した。

実際問題として、事業者は「必要な能力のある」運転手を選ばなければならない。運転手が、特定の車両に関連して道路上で発生するリスクに対処できるようにするためには、査定と運転手の能力開発の仕組みがなければならない。これは、運転手が安全に運転したり職場で安全に働いたりするためには、十分な情報、教育訓練を受けなければならないということである。さらに事業者は、車両を適切に整備すること、道路上での速度オーバーをなくすなど、リスクの根源に対処しなければならない。この対処方法を行うにあたっては、現場の車両に関係するリスクが、適切かつ十分な輸送リスクアセスメントで特定されていなければならない。

配送及び集荷の際の災害では、当事者(義務者(duty holders))同士の協力がもっとよく行われていれば防げたものが多い。当事者とは、供給業者(品物を送り出す企業)、運搬者(運送業者又は品物を運搬する他の企業)及び受領者(品物を受け取る人又は企業)である。

チェックポイント:協力
  • 義務者は、配送と集荷についてリスクアセスメントを行い、合理的に実行可能な範囲で、それらのリスクを低減させなければならない。
  • 配送と集荷に関する安全情報を、配送ネットワークを通じて相手方に伝えることが望ましい。
  • また、配送と集荷に関する安全情報を、配送ネットワークを通じて相手から貰うことも行うべきである。
  • 当事者同士で安全な配送計画について合意すること。重要な安全問題の対処方法で合意に達しない場合は、配送や集荷を行うべきではない。
  • 配送又は集荷にかかわるすべての当事者は、合理的に実行可能な範囲で情報を交換し、合意することにより、品物の安全な配送又は集荷を確保すること。
  • 情報交換するべき実際的な情報とは次のようなものである:
    • その現場が安全に扱うことができる車両のサイズ及び形式についての制限
    • 品物を配送又は集荷するための時間的制限
    • 現場への最適ルート
    • 駐車場やサイト内ルートを示す地図
    • 到着時に駐車する場所、及び運転手が連絡するべき人
    • 出向いた運転手が守らなければならない手順、例えば、バックの際の条件(合図者か監視者の使用、オペレータの視野を改善する装置、警告音など)
    • 到着車両に対し、荷物の積み下ろしを行う担当者は誰か
    • 安全状態に納得できない場合は、運転手又は現場の従業員はどうするべきか
    • 荷物の積み下ろしの間、運転手はどこにいたらよいか。トイレや軽食施設へ安全に行くことができる、安全な区画が指定されていることが望ましい。
    • 車両の上にあがる必要が出てきた場合、墜落防止方法、墜落リスク低減の方法はどうなっているか
    • すべての当事者は、配送と集荷の間に発生した、車両による災害、事故、ヒヤリハット及びその他の安全上の懸念を報告できる分かりやすいシステムを作ること。これらの報告を受けた関係者は適切な措置をとること。
  • 義務者は運転手に対し、客先の現場に赴いた場合の全般的な安全上の注意について訓練することが望ましい。またその現場の安全状況について納得できない場合にどうすべきかを明確に指示しておくことが望ましい。
チェックポイント:構内のレイアウト
  • 職場の輸送問題は、あとから考えるのではなく、職場を設計する初期の段階で考慮に入れておかなければならない。
  • 職場は、車両がバックする必要が少なくなるように設計すべきである。
  • 次のような安全標識を設置すること:
    • 車両がバックする可能性を警告するもの
    • 配送運転手に速度を落とすよう指示するもの
    • バック前及びバック中に道路に障害物がないことを確認するもの
  • 構内のレイアウトは、一般的な道路規則「左側通行」が適用されるものであること。
  • 危険の可能性のあるところでは警笛を鳴らすこと。ただし警笛は優先通行権を確保するものではないことに留意すること。
  • 扉の前では一旦停止し、警笛を鳴らした上でゆっくり走行すること。
  • 路面の凹凸、穴、亀裂に注意すること。
  • 配送運転手、従業員、顧客、及び職場にいるその他の者のために安全な駐車場を提供すること
  • 車両通行のため、より広いスペースを割り当てて視界を確保し、かつ「歩行者専用」、「車両専用」のルートが取れるようにすること
  • 歩行者と車両を隔離するため、あらゆる手段を尽くすこと。例えば指定通路、歩行者が区域に入ったら適切に警告を出すなど。
  • 歩行者には目立つ衣服を提供すること。
チェックポイント:車両チェック
  • 配送運転手は、毎日、運転開始前に車両を一周し、欠陥がないかどうかチェックすること。
  • 車両が複数の運転手によって運転される可能性がある場合は、各運転手が運転前に車両点検を行うこと。
  • 簡易点検を支援するための効率的な欠陥対応システムがあること。
  • 車両の修理は認められた者だけが行うこと。
  • また、50時間走行後、週ごとのメンテナンス・チェックを行うこと。
  • すべての可動部分を少なくとも6カ月に一度徹底的に調べること。
  • タイヤの磨耗及びタイヤ圧は定期的に監視すること。
  • 適正タイヤ圧はホイールアーチ上に示しておくこと。またタイヤ圧ゲージを車両に備えておくこと。タイヤ圧が不適正な場合、操縦及び制動に悪影響を及ぼす可能性がある。
  • 車両重量と最大積載量を表示すること。
  • 職場に駐車する車両は、特に車両リフト上や傾斜した路面/床にある場合、ブレーキをかけるか輪止めをしておくこと。
チェックポイント:スピード違反
  • 配送運転手は、スピードを上げても早く到着するわけではないということをよく認識すること。
  • 公道で制限速度を超えることは犯罪であり、罰金、免許証に対する違反点数、最悪の場合は運転禁止という形で処罰を受ける。
  • 事業者は、安全速度の遵守という方針をつくり、それがすべての従業員に伝わっているようにしなければならない。
  • 事業者は、配送運転手が絶対に制限速度、又は状況から見て安全な限度を越えて運転しないことを期待しているということを明言すべきである。
  • 事業者は、運転手が制限速度を破ったことが判明した場合は、安全衛生対策に対する重大な違反と見なし、それに応じて運転手を懲戒するべきである。
  • 管理者は、自分たちがスピード違反をしないことを示して垂範すること。
  • 事業者は、出来高払い制度のために配送運転手が不適切なスピードで運転するという状況を作らないようにしなければならない。
  • 事業者は、車両の性能・特性が運転手の能力レベルに適したものであるようにすること
  • 事業者は、運転手が速度に関する方針を守っていることを確認するために、例えば、違反ポイントや確定ペナルティ通知がないかを運転免許証で確認するなど、運転手をモニターすること。
  • 事業者は、業務上の交通事故を調査し、それが速度の出し過ぎで起こったのか、又は他の道路交通法規を守らなかったために起こったのかを確認すること。
  • 事業者は、警察やその他の交通安全団体、例えばRoSPAと連携し、速度に関する方針の達成についての協力ができるかどうか検討し、協力の方法を確立すること。
チェックポイント:シートベルトと携帯電話の使用
  • 2005年3月1日からシートベルト着用に関する法律が改正になり、50メートルを越える移動を行って配送又は集荷するとき、配送運転手及び助手席にいる者はシートベルトを締めなければならないということが明確になった。
  • また事業者は、運転中に手持ちの携帯電話を使用することは違法であることを、すべての運転手が承知しているようにしなければならない。
  • 運転中に、手持ちの携帯電話を運転手に使用させる又はそれを許可することも違法である。従って個々の運転手に加えて事業者も責任を問われる立場にある。
  • 運転中にハンズフリーの電話を使用することも止めさせるべきである。なぜなら、運転手が「適切に車両を制御できなかった」として責任を問われるかも知れないからである。より重大な場合では、どのような形式であれ、携帯電話を使用することは不注意又は危険な運転として訴追されるかもしれない。運転中に携帯電話を使用することは、手持ちであろうがハンズフリーであろうが、相当程度に注意を散漫にさせ、衝突のリスクを大幅に増加させるということが、多くの研究機関によって支持されている。
  • 企業は、「従業員は運転中に手持ちであれ、ハンズフリーであれ、決して携帯電話を用いて電話をかけたり受けたりしてはならない」とする携帯電話ポリシーを持つべきである。
  • 携帯電話のボイスメールとして次のようなメッセージを残しておくとよい:「会社の方針として、運転中には電話に出ないようにしています。しかし伝言は本日中にチェックし、安全に駐車しているとき又は車から降りたときに運転手から折り返し電話します」
  • 運行計画には、休息・軽食のため及び伝言を受け取って折り返し電話をかけるための停車時間と停車場所を含めておくことが望ましい。
チェックポイント:疲労
  • 事業者は、配送運転手が出発時点から疲労しているということがないようにしなければならない。
  • 運行計画は、運転手が2時間ごとに少なくとも15分の休憩を取ることが可能となるよう、また、交通規則(Highway Code)を遵守できるよう、あらかじめ慎重に策定すること。
  • 運転及び他の業務を行う場合、運転手は通常1日に350マイルを越える運転を求められることはない。
  • 1日の間に(及びその前の数日間について)運転する時間、作業に費やされる時間を明確にルール化しておくことが重要である。
  • 運転手は、車を停止して、2杯のコーヒーを飲み、20-30分休憩を取ることのできる安全な場所を見つけるとよい。
  • 運行計画策定に当たっては、午前2時と午前6時の間及び午後2時と午後4時の間が、運転手が最も眠気を催しやすい時間帯であることを考慮に入れておくこと。
  • 事業者は、必要に応じタコグラフをチェックし、運転手が「近道行動」をとって自分や他人を危険にさらしていないことを確認すること。
  • 事業者は、可能な場合は、運転手が同日中に遠距離を戻ってこなくともすむように1泊させることも検討すべきである。
  • 事業者は運転手に、「非常に疲労を感じているときに車を運転して戻ってくることのリスク」についての情報を提供すること。
  • 運転手の疲労によるリスクを少なくするために、可能であれば長距離の移動をなくするか、できるだけ減らすこと
チェックポイント:持ち上げ作業
  • 配送運転手は、可能な場合は常に、補助機械を利用して持ち上げ作業を行うこと。
  • 他の人間の手を借りることができるなら、運転手は必要に応じ、荷物の持ち上げを手伝って貰うこと。
  • 運転手は荷物を持ち上げようとする前にその重さを調べること。
  • 荷物を持ち上げる際には正しいテクニックを使うこと、すなわちひざを曲げ、背中をまっすぐに伸ばし、顔を正面に向けた姿勢で行うこと。そして、経路に障害物がないことを確認する。
  • 荷物を持ち上げるときは、両手が足の幅より狭い状態で持つようにすること。
  • 荷物に持ち手がついていると、指をまっすぐにして持ち上げるよりも疲労が小さい。
  • 持ち上げの動作は、急な動きをせずにできるだけスムーズに行うこと。
  • 持ち上げ始めたら顎をあげること。それにより荷物のコントロールがしやすくなる。
  • 持ち上げているときは胴体を捻らず、進行方向に足を動かすこと。
  • できるだけ荷物を胴体に近づけて保持し、荷物の一番重い側を胴体側とすること。
  • 荷物に近づくことができない場合は、持ち上げようとする前に荷物を体の方向に滑らせること。
  • 荷物の正確な位置決めが必要な場合は、まず荷物を下に置いて、その後に所定の位置にスライドさせること。
  • 荷物が足の上に落ちた場合に備えて、配送運転手全員につま先に鋼の入った安全靴を支給すること。
  • 荷物の積み下ろし中に荷物が落下するリスクがある場合は、配送運転手の頭部を保護するために安全帽を支給すること。
より詳細な情報

与えられた紙数では配送運転手の安全に関する問題をすべてカバーすることは不可能である。従って、読者は以下のウェブサイトをご覧になるようお勧めする:


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