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安全のために手を貸そう

資料出所:National Safety Council発行
「Today's Supervisor」 2001年4月号 p.10-11
(訳 国際安全衛生センター)

米国の労働者は手遅れになるまでは自分の手があることを当然と思っているであろう。毎年、切傷、火傷、擦過傷、反復運動により何千もの手の傷害が発生している。鋭利な切断機器を操作するため、大きな機械を操作するため、重い容器を持ち上げるため、腐蝕性化学物質を注ぐため、または紙を扱うためのいずれに手を使うとしても、傷害を負う危険に曝されることが多い。

労働安全衛生庁(OSHA)は、事業者が危険有害要因暴露に対して適当な手の保護具を選択し、労働者にその使用を義務づけることを規定している。ほとんどの場合、手袋が主な保護具となる。しかし、市場には多くの保護手袋があり、種類も多い。

バージニア州アーリントンにある国際安全防具協会(International Safety Equipment Association:ISEA)によれば、事業者がOSHAの規則に準じて適切な手袋を選択する際に、助けとなるガイドラインが必要である。これに答えて、安全用具基準を作成し、販売し、出版しているISEAは、新しい手の保護具選択のための米国内基準(American National Standard for Hand Protection Selection Criteria)を作成した。

「作業手袋の保護レベルを上中下で評価する過去の習慣は、手袋製造業者が自社の手袋の保護能力を評価する際に不一致の原因となっていました」と、ISEA技術部長であるジャニス・コマー・ブラッドリーは言う。「新しい基準ができたことによって、製造業者が自社製品を特定の汚染物質や暴露に対して評価するための一貫した数値尺度が利用できるようになりました。この尺度を基準に分類をすることで、利用者はどの仕事にはどの手袋が適しているか、詳しい情報に基づいて決定することができます。」

手袋を着用する時期

この基準は任意に作られたもので、多くの化学および工業に適用できるよう設計されている。適否基準は次のものについて設定されている。切る、突く、摩擦への耐性を持つ。熱および低温からの保護。化学物質の透過や分解など。ブラッドリーによれば、この基準は感電、放射線照射、極端な高低温や、溶接および消火活動への暴露には適用されない。この基準についての情報は非営利業界団体のホームページ(www.safetyequipment.org.)で入手できる。

「新しい基準は役に立つでしょう」と、フィラデルフィアにある工業労働者による適切な手袋の使用を推進する団体、米国工業手袋販売者協会(National Industrial Glove Distributors Association:NIGDA)の理事ジョン・D・マグリーヴィは言う。

「最良の手袋は最も安いものではないかもしれません」とマグリーヴィは言う。「労働者に最大限の保護を与える、最も耐久性のある手袋が必要です。それが長い目で見ればお金の節約になるのです。」

オレゴン州ポートランドの戦略的安全連合(Strategic Safety Associates)の安全顧問ロバート・ペイターによれば、ある状況では手袋が不可欠であり、又他の多くの場合には有用であるが、これらは恩恵とそうでないものが入り混じったものである。

「一方では、手袋はうまくデザインされ、ぴったり合って、人がそれを着用すれば、特定の傷害に対して非常に役に立ちます」とペイターは言う。「その一方、手袋が分厚くて感度が悪くなるか、または把握強度が低下するとの理由で、労働者は手袋を着用しないことがあります。実際のところ、人は手袋を使わない方法に流れてしまうのです。」

監督者はいたるところに同時にいることはできないため、労働者が手袋の使用を嫌っているのかどうかはわからないであろう。そのため、手袋の使用について労働者を「納得させる」ことが重要であるとペイターは言う。「事実を教えて下さい。リスクを示すのです」と彼は示唆する。「労働者のグループに市販の手袋を研究させましょう。おそらく、自分たちのニーズに特別にぴったりと合うものはないことがわかり、かつ又会社が手袋製造業者に自分たちのために何らかのデザインさせるということはわかるでしょう。」

手の安全に注意を払う

ペイターによれば、手の保護は手袋の推奨や用法を超えたものであり、ほとんどの手の傷害は次の3つに分類される。裂傷および擦過傷。高速移動する物体の間にはさまれた傷。および振動や反復運動による累積的な外傷。

ペイターによれば、機械の安全囲いやロックアウト/タグアウト、ワークステーションの再設計、手袋および「注意」を呼びかけるキャンペーンなどの、手指の安全性を増す従来の方法は究極の解決にはならない。石油、印刷、機械工場および製造業の顧客は、ペイターおよびその仲間に、彼らが1993年に行った手の傷害保護のための特別なプログラムを設計するよう依頼した。そのプログラムは、武道、運動学および産業心理学を組み合わせて、労働者がより多くの個人的責任と管理を維持するのを助けるものである。

「注意不足は手の傷害の大きな要因です」とペイターは言う。「そして、ただ注意するようにと人に言うだけでは役に立ちません。薬物に対して「ノー」とだけ言うように、いい考えではありますが、そこにはより複雑なプロセスが存在するのです。」

注意は継続的に必要なものであるため、ペイターは人々に自分自身と環境を監視すれば、自分の手がいつもどこにあるかわかるだろうと教えている。例えば、疲労から前部に転倒することがよくあり、すると体を支えるために手を危険な場所につくかもしれない。

「人々は年をとるにつれてより長時間、よりハードに働いています」とペイターは言う。「以前は年齢と共に少しずつゆっくりしたものですが、労働力が手薄になりつつあるため、労働力が高齢化しています。職場で疲労が決定的に増してきているのです。」

労働者を労働者自身で安全に管理することが重要であると彼は言う。なぜなら、最終的には労働者だからである。「誰でも、自分自身の人生の安全管理者です」と彼は言い、顧問としての彼の職業は、労働者がハイレベルの安全管理者となるよう導き、教育することであると付け加えている。

(シンディ・マーフィー・マクマホン)