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結核:予防可能で治療可能

資料出所:National Safety Council発行
「Today's Supervisor」 2001年4月号 p.12-13
(訳 国際安全衛生センター)

世界保健機関(WHO)によれば、結核(TB)は世界中で毎年約200万人の命を奪っている。WHOは2001年から2020年の間に10億人近い人々が新たにTBに感染し、2億人が発病し、3500万人が死亡するであろうと推定している。

米国では幸運なことに、1985年から1992年までに症例が一時増大し危機感を抱かせたが、その後TBの総数は確実に減少している。しかし、減少しているにも関わらず、アトランタにあるCDC(Centers for Disease Control and Prevention)のTB根絶部門(Division of TB Elimination)のレニー・リッゾン博士(Dr. Renee Ridzon)などの医療専門家は、結核に対していまだに国民が注意を払い、資源を振り向けることが必要であると言っている。「労働者がTBの予防と治療について知ることが重要です」とRidzonは言う。「私たちが防護を怠るか、TBについての意識レベルが低ければ、新たな症例の数が再び劇的に増えることになるでしょう。」

TBとは何か?

結核菌と呼ばれる細菌がTB症を引き起こす。これらの細菌は通常は肺を攻撃するが、喉、腎臓、脳、骨または皮膚に波及することもある。未治療のまま放置すると、細菌が増殖し、罹患臓器を破壊して、重篤な疾病または死亡の原因となる。肺に活動性TB症を有する人は、咳をする、くしゃみをする、話す、笑う、または歌う時でさえ、空気を通じて細菌をまき散らすことがある。しかし、自分がTBに感染している可能性があっても、結核の保菌者であって、必ずしも発病しないことを理解することが重要であると医療専門家は言う。「感染した人は体内にTB菌を持っていますが、免疫系が防御しているため、具合が悪くはならず、非常に長い期間発病しないこともあります」とリッゾンは言う。「このような人はTB菌を他人にまき散らすこともあり得ないのです。」

活動性結核症患者は通常、具合が悪く、疾病を他人にうつすことがあり、できるだけ早く医者にかかり治療を受けなければならない。症状としては、長期間持続する咳(通常は2週間以上)、疲労、体重減少、出血を伴う咳、発熱および/または寝汗がある。感染後に発症するリスクが高い群には、AIDSや糖尿病などの他の疾患を有する人、薬物またはアルコール乱用者、ならびに高齢者や貧しい国からの移民が含まれる。

米国肺学会(American Lung Association:ALA)によれば、TB感染源への短時間暴露で人に感染することはあまりない。ベッドシーツ、本、家具、または食器を触っても感染することはあり得ない。TB菌感染源に毎日密接に接触してはじめて、感染の重大なリスクが生じるのである。

治療の選択肢

医療専門家によれば、TB感染症に対し、予防的治療法としては約6ヵ月から1年間、安価なTB治療薬を毎日投与する方法がある。活動性の症例の場合は、治療として短期入院と6〜9ヵ月間数種の薬物を組み合わせて投与する。

より危険な多剤耐性結核(MDR TB)は、患者が処方された全ての薬物を全期間にわたって服用し終わらない場合に発生する。TB菌が完全に死滅しないため、再度出現してMDR TBを引き起こすが、このTBは菌がより強力で、一般的な薬剤に耐性を有するため、治療が困難である。

サンフランシスコ総合病院のTB管理プログラム責任者である川村・L・マサエ博士によれば、MDR TBの大発生は最近開発された治療基準のおかげでうまく抑制されている。「1日1回観察療法(DOT)基準により、医療従事者は患者を詳細に監視し、毎日薬を服用するのを確かめ、治療の全クールを確実に完了させるようにします」と川村は言う。

TBに対する職場戦略

咳やくしゃみをする際にティッシュペーパーでおさえることは、TBのような空気感染する疾患を職場の他の人々にうつさないようにするための、単純であるが重要な方法であると、医療専門家は言う。病院、ホームレス収容所、長期療養施設、および刑務所などの高リスク環境で、OSHAはTBの伝染および蔓延を管理するための厳密なガイドラインを作成するため、CDCから情報を得て作業を続けてきた。その中には感染管理計画書、TBが疑われる患者を識別して治療する方法、および労働者の研修・教育が含まれる。

TB感染患者をできるだけ早く識別して治療することは、大発生を抑制する上で非常に重要であると、ALAの前会長であり、ニュージャージー州ニューアークにあるニュージャージー・メディカルスクールの国立結核センター理事リー・ライヒマン博士は言う。「TBは診断されないまま放置されるときが、もっとも危険なのです」と彼は言う。「いったん診断がついたら、薬を適切に服用すれば治療できる疾病で、他人への感染を止めるために適当な注意を払えば予防できる疾病なのです。」

(ティナ・D・タパス)