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ミスではなく事実を発見するために調査する

ダーシー・ルイス

資料出所:National Safety Council 発行「Today's Supervisor」2001年8月号 p.12-13
(訳 国際安全衛生センター)


手の負傷、フォークリフトの衝突、化学物質の流出、さらにはヒヤリ・ハットまで、業務災害でそうした事態を好んで発生させる者はいない。しかし問題が発生した場合、何が起きたのか、その理由は何かを正確に判定することは、あらゆる人にとっての最大の利益になる。「効果的な調査によって災害の真の理由を明らかにできるし、それと同じく重要なことですが、同種の災害が再発するのを防ぐことができます」と語るのは、全米安全評議会安全研修・コンサルテーション部長で、CSP(認定講演専門家)のロン・ミラー氏である。

しかし全員が公正な態度を保っていなければ、調査で真の原因が明らかにできない場合もある。「調査を成功させるためには、まず客観的でなければならず、その技術は教育すべきものです。その教育はオペレーターから工場長まで、組織のあらゆる段階に徹底しなければなりません」とミラー氏はいう。「そうでないと人々は事実ではなく失敗を見つけることに集中し、真の原因が明らかにならない場合があります」

真の原因は、自分あるいは他の人々が思うよりも複雑な場合がある。「ある労働者が規則に違反した結果、負傷する場合がありますが、その原因として労働者、事業者、装置、または環境が絡み合っているのが普通です」と指摘するのは、テキサス州ディアーパークにあるシェル石油の調査チームのコーディネーター、ボー・サンダー氏である。

自分が電気ドリルで感電したと仮定する。もっとも簡単で、しかも間違っている仮定は、この災害が純粋に自分のミスによるものと考えることである。しかし、もし自分が前日にこのドリルを使用して軽い感電をしたが、報告しなかったとしたらどうか。あるいは、自分は報告したが、監督者が結局は同じドリルを再び使用させようと決めたとしたらどうか。また、次にそのドリルを使用した労働者が、湿気のある環境で作業しなければならなかったとしたらどうか。事業者、労働者、装置、そして環境のすべてが絡み合って、この災害が起きたのである。

監督者ができること

監督者は、自分の区域でのあらゆる調査で重要な役割を担う。「わたしは調査の手続きは知っていますが、当の労働者や装置については監督者が知っているのです」とサンダース氏はいう。「効果的な調査は、われわれ全員が協力しないと不可能です」

当然、その内容は企業ごとに違うが、一般的な指針もある。「監督者が確実に調査の効果を得るためには、結論を先急ぎせず、文書による手続きにしたがい、適切な用紙を使用し、質問に対して誠実かつ完全に返答できるよう労働者を訓練することです」とミラー氏はいう。さらに「NSCの"Guide for Identifying Causal Factors & Corrective Actions(『原因把握と改善措置のための指針』)"など、根本原因を分析するためのツールも使用すべきです」と付け加えた。

最後の点は、真実を語れば同僚に迷惑がかかると労働者が感じている場合、微妙な問題となる。「最重要な作業のひとつは、労働者から懸念要因を取り除くことです」と、シェル石油のディアーパークのチームリーダー、ドン・ネテク氏は指摘する。

サンダース氏は、厳格な無過失主義が重要だと語る。「わが社では労働者が真実を語ってくれなくて困るということはありません。わが社の労働組合長とCEOが署名した公式文書で、労働者が負傷して懲戒の対象になることはありえないと定めているからです」

以下のステップをふむこと

調査での多くの措置は監督者の監督下に置かれるが、重要なのは労働者がその手続きを理解し、場合によってはこれに参加できるということである。全米安全評議会は、優良規範となる調査を実行するために、以下のステップをふむよう勧告している。

  • 「緊急事態に対応する」。すべての負傷者に対する治療を確保する。当該区域を保全する。バリケードまたはテープを使い、いかなる形でも現場に手を加えられないようにする。事故に関わった装置を、施錠または標識を付けるなどして停止する。
  • 「潜在的目撃者を把握する」。労働者が、災害の解明に役立つ可能性のある事象を見たり、聞いたり、または感づいていなかったか調査する。
  • 「証拠を収集しデータを記録する」。監督者と調査担当者は、カメラ、フィルム、懐中電灯、サンプリング用器具など、事前に用意した調査キットを使用する。会社の緊急備品の保管責任者を確認する。「適切な写真を選べば、災害の発生原因が解明でき、再発を防止できる場合が多いのです」と語るのは、ニューメキシコ州ベレンにあるサド・ケミー・パフォーマンス・パッケージングの安全担当者、ゲーリー・ミラー氏である。「ただし準備は欠かせません。災害の後でフィルムを買いに行かなければならないとしたら、その間にいろんなことが起きかねないからです」
  • 「面接を行う」。各労働者と個別に話し合い、災害に関して、誰が、何が、いつ、どこで、どのようにという点に焦点を絞る。回答に制限を加えないで質問し、それぞれの回答を書き留める。「わたしはいつも、労働者が退出する前にわたしが筆記したものを読んでもらいます。労働者はその内容を了承するか、または新しい情報を提供してくれます」とゲーリー・ミラー氏は語る。「いずれにしても、労働者は災害の再発防止に自分が貢献したと感じながら退出するのです」
  • 「すべてのデータを検証する」。装置の保守、整理・整頓、労働許可証、同種の災害に関係するあらゆる重要な報告書を検討する。「これらの報告書は情報の宝庫です」とゲリー・ミラー氏はいう。「たとえば、この装置は前の交替勤務者の時に調子が悪かったのではないかといったことです」
  • 「調査報告書を作成する」。自分の意見ではなく、事実のみを記す。
  • 「改善策を実行する」。自分の会社の規定にしたがい、災害の再発防止に必要な改善策をとる。
  • 「フォローアップを行う」。適切な改善策がとられ、計画どおりに機能しているかを確認する。

最後に、必ずしも自分の気に入る調査結果が出てくるとは限らない場合があると了解しておくこと。「事業者であるわれわれは、自分たちの行動を直視しなければなりません」とネテク氏はいう。「自分の行動を変える必要があるとの調査結果が出たことがありましたが、わたしはそれを受け入れました。誰であれ、自分のエゴのために安全強化を妨げてはならないのです」