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睡眠障害:大切な眠りが奪われている

資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」2001年1月号 p.12-13
(訳 国際安全衛生センター)

マーク・カックリ(Mark Kakkuri)


さまざまな問題を処理し、意思決定し、身体的に激しく活動した一日が終われば、夜はぐっすりと眠れることを期待するのは当然だ。医師に尋ねてみよう。「人間には毎日睡眠が必要である。実際、人間は一生の3分の1を睡眠に費すのである。」

しかし、残念なことに、多くの人々が夜の十分な睡眠を得られないでいる。80種以上の明らかにされている睡眠障害が、多くの人々から体が必要とする健やかな睡眠を奪っている。


”睡眠障害症候群”

ニューヨークの聖ルカ病院睡眠障害研究所ディレクター、ガルク・ザミット医師によれば、もっとも多い障害は、不眠、睡眠無呼吸症、および不穏下肢症候群(レストレスレッグス症候群)や周期的四肢運動障害などの睡眠関連運動障害である。彼は、労働環境において興味深いのは交替制勤務から発生する問題であり、これが著しい睡眠障害の原因となる可能性があると言う。

「睡眠障害はしばしば昼間の疲労感、昼間の眠気、あるいは両方を併せた状態を引き起こし、作業能率を低下させます」と、ザミットが言う。たとえば、不眠症の人が何日も睡眠不足を経験した後には、作業の生産性や作業の質が著しく低下した(20%超)と報告している。また欠勤回数は不眠症に罹っていない人の9倍に上ると見られる。

ザミットは、睡眠障害を呈する症状には、知覚力の低下、情緒の不安定、社会性の低下、疲労による傷害発生率の増加、さらには医療サービス利用の回数増加などが伴うと言う。職場においては、睡眠障害が著しい支障をきたす原因となる。「やはり、同僚が影響を受けます。これは睡眠障害の人が職務を果たせなかったり欠勤したりする場合に、同僚がそのしわよせを受けて頑張らなければならないためです」と彼が言う。

ザミットによれば、睡眠の問題を引き起こしたり悪化させたりする職場の状況として、超過勤務、分割勤務、交替制勤務、および時差のある地域間を移動する仕事などがある。

交替制勤務者向けのニューズレターである『夜勤の日々(Working Nights)』の編集者であるスティーブ・マードンは、「交替制勤務者は皆十分な睡眠をどうやって取るかに四苦八苦しており、その上睡眠障害になると、仕事中や運転中に眠りに落ちる危険性が非常に高くなります」と述べている。マードンは、企業側でも睡眠障害に関連する問題を認識しつつあり、労働者がそれを明確に認識して解消するための支援に乗り出していると言う。多くの鉄道会社やその他の「24時間」営業企業は、現在、一般的な睡眠障害となっている睡眠無呼吸症のためのスクリーニングを実施しています」と、マードンは述べている。

「企業は労働者たちに健全な睡眠を取って欲しいと考えています。「こうした労働者の方が、そうでない労働者よりも生産的で能率良く働けることを認識しているためです」と、ザミットは言う。中には、疲労した労働者を回復させるために「昼寝タイム」を奨励したり、労働者が睡眠を取れる設備(たとえば仮眠室など)を用意する事業主もいる。「こうした解決策はコーヒーブレイクよりも適切です」とザミットは言っている。

”良い睡眠のためのガイド”

『体内時計を使って病気と闘い、最大の健康を得るための方法(The Body Clock Guide to Better Health: How to Use Your Body's Natural Clock to Fight Illness and Achieve Maximum Health)』の共著者、リン・ランバーグ(Lynne Lamberg)は、同書の13章で夜間労働者の睡眠の問題について述べている。以下、その一部を抜粋する。

「普通神経がもっとも鋭敏になる昼間に眠ろうとすると、睡眠と覚醒が軋轢を起こす。人は眠いときには眠ろうとするものだが、脳が覚醒している時には夜間ほど長くは眠れない。昼間に聞く騒音は、夜間に聞くときより眠りを妨げる。なぜなら昼間の眠りは浅いからである。勤務時間が夜間か、昼間か、夕方かによって、睡眠への影響は様相が異なる。」

「夜間労働者は、昼間勤務する場合に比べて平均2時間から4時間、睡眠時間が少ない。睡眠時間のうち、もっとも身体が休まると考えられる一番深い眠りの段階は同程度に確保されるが、一般に睡眠時間の大部分を占める浅い眠りの段階が削られ、また感情を制御するうえで重要とみられているREM睡眠も短くなる。夜間労働者には、勤務時間が終了してから約1時間以内に眠ろうとする人が多いが、これは通常勤務の後に余暇の時間をもち、その後に眠る昼間労働者とは対照的である。一方、就労直前に短い睡眠をとる夜間労働者も多いが、主要な睡眠時間の不足を補う上で正しいやり方と言える。」

「疲労にも影響が現れる。午前8時から午後1時まで眠り、昼寝の時間をとらない夜間労働者の場合、夜間勤務終了時点まで18時間起きていることになる。午前7時に起床する昼間労働者は、午後5時に勤務が終了した時点で、目が覚めてから10時間しか経っていないのである。」

睡眠障害は生活の多くの面で深刻な問題を引き起こす。ザミット(Zammit)は「睡眠障害を放置しておくと個人生活に破壊的な影響を及ぼしかねず、健康、仕事、そして社会関係や家族関係などに支障をきたす」と指摘する。さらに、この10年で睡眠障害が深刻な健康問題であることが認識されてきたとし、症状がでた場合は医者に相談すべきだと語っている。

ザミットによると、委員会が認定した専門家によって睡眠の問題を診断してもらえる場所が米国内の各地にある。新しい治療法もある。たとえば、ザミットによると不眠症患者向けのSonataという有効で安全な睡眠補助薬(医者の処方箋が必要)があり、副作用なしに不眠症を治療できる、という。