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単純な工具から複雑な機械まで:工具の上手な使い方

ジャン・ボーン

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2001年6月号 p.10-11)
(訳 国際安全衛生センター)



ドライバー1本から複雑なロボットに至るまで、工具は日常の仕事に欠かせないものである。多くの場合、工具を使う習慣はすっかり身に付いている。あまりに工具を使い慣れているため、工具が危険な場合もあることを忘れがちである。労働者の負傷を避けるために、工具の安全性も作業上の必須事項とすべきである。

手抜きをしたり、ただ便利だから工具を使ったりすると、ケガをする危険がある。「作業によく合った工具を選ぶことだ」と言うのは、建設エンジニアリング会社ベクテルの環境安全衛生サービス部長アレン・マセンスキである。「たとえば、ドライバーにも多くの刃の種類、形、タイプがある。プラス型のドライバーが必要な場合に、マイナス型のドライバーを使ってはいけない。工具を取り出した時には、必ず傷がないかどうか、点検が必要だ。ドライバーがすり減っていたり、軸にみぞがあったり、ハンドルにヒビがある、または壊れている、といった時にそのまま使うと、危険な目にあう可能性がある。そういう時は、別の工具を探すことだ。チッパーやノコギリなどには、メーカーが付けた安全装置があるものだ。それを取り外しては行けない。マニュアルの指示を守って使うべきだ」

裂傷や擦過傷は労働者が工具を使うときに多いケガである。異物が傷口から入ることも珍しくない。「鋼鉄をグラインダーで削る場合、粒子が手や指にささることがある」と、ユニバーサル・オイル・プロダクツの医務部長カール・ゼンツ博士は言う。博士はアメリカ職業環境医大のメンバーでもある。「圧搾空気工具を使っていると、皮膚に小さな孔ができ、そこから塗料や溶剤が侵入して、ひどい化学的炎症を引き起こしたりする」


工具を安全に使うには

工場の監督者はリスク・アセスメントを行って工具の安全のための危険水準を決めるべきである。工具や器具は定期的に検査して、すべてが正常な作動状態にあることを確認すべきである。工具の安全性は次のような簡単な注意によって改善することができる。

  • ケガはすぐに報告する:勤務時間が終わるまで待ってはいけない。「手や指を負傷した場合、特に異物が入っている場合には、すぐに処置しなければならない。手に細菌が感染すると、腱鞘まで感染が及び、10時間から12時間以内に敗血症(細菌感染による腐敗症)を起こす恐れがある」とゼンツは警告する。

  • エルゴノミクスを考える:活動率、反復度、作業の間隔などを考えるべきである。手持ちの工具については、できるだけ使う筋肉の種類を変える方がいい。作業の種類も変えるべきである。スパナ、ボックススパナなどのトルク型工具の場合には、グリップを確かめる。「エアハンマー、エアドリル、エアレンチなどの場合、重量が大切なポイントだ。できれば、軽い工具を使うべきだ。そして特に反復度の高い作業では、工具を使う人の手や引き金を引く指と、工具の関係を安定させる」とゼンツは言っている。また振動防止手袋を使うと、手や関節への振動の影響を軽くすることができる。

複雑な機械の場合

労働者がサービスや保守作業をする場合には、OSHAのエネルギー制御規定を順守しなければならない。機械や機器を停止し、絶縁し、ブロックし、安定させるための手順書に従う必要がある。OSHAはそのウェブサイト(www.osha.gov)で、ロックアウト/タグアウトの「ハウツー」を決めている。監督者はすべてのエネルギー制御装置が特定されていることを知る必要がある。労働者と監督者は緊急停止ボタンのある場所を知っておくべきである。

ABBフレキシブル・オートメーションの上席エンジニア、ジル・ドミンゲスによると、ロボットや複雑な機械は工具の安全上、特殊な問題を持っている。彼はロボット産業協会のシンロボット安全基準(15.09-1999)小委員会のメンバーである。ロボットのプログラムを製作する場合、労働者は極めて慎重にならなければならない。ロボットはしばしば、「教示ペンダント」を使って教育される。これはオペレータがロボットにさせることを教え込む装置である。しかしロボットを訓練する労働者はロボットの作業範囲、すなわちロボット周辺の危険区域内で作業する。「こうした時には低速制御または<可能化>スイッチをペンダントにつけておく必要がある。そうすれば、機械の周辺にいて、電源が入った時にも安全に作業することができる。訓練が最も重要だ」とドミンゲスは言う。

「十分に訓練を受けていなければ、また安全装置を確認しなければ、機械を動かすべきではない。機械をよく知っておくべきだ。定期的に検査し、保護装置が正しく機能することを確認する。もし装置が動かない場合には、すぐに機械を止め、修理するまで待つのだ」とドミンゲスは注意する。


訓練の大切さ

簡単な手動工具でも複雑な機械でも、訓練は極めて重要である。

「ベクテルでは、安全訓練をプロジェクトごとに実施している」とアレンは言う。「われわれは手動工具の安全についての基本的知識を与えるために訓練用ビデオを使っている。ビデオを見せた後で、教室での先輩の工員から実地に訓練を受ける。労働者や監督者にジャックハンマーや電動ノコ等、各種の工具の安全な使い方を教える」

ベクテルでの活動は「ツールボックスミーティング」を通じて、プロジェクトごとに組織され、実施されている。このミーティングは安全についての作業グループの職場における定期的なミーティングである。誰かが新しいプロジェクトに配属された時は、労働者は工具の安全について再訓練を受ける。ひやり・はっとがあったり、工具を使っていて負傷したりした場合にも、再訓練を受ける。ベクテルは安全についての月報を出しており、特定の工具の使用を安全面から検討している。またインターネットでも「ベクテル大学」(www.bechtel.com)を通じて、訓練を受けることができる。