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鉛は死を招く危険がある

ジャン・ボーン

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2001年6月号 p.12-13)
(訳 国際安全衛生センター)



鉛は危険な物質である。人の気分を悪くし、吐き気を催させ、骨髄の赤血球を作る機能を阻害する。また鉛のために疲れやすく、苛立ちやすくなることもある。これらは鉛との接触が引き起こす副作用の一部でしかない。鉛は労働者が障害を受けるのを防ぐために、慎重に取り扱う必要がある、危険な物質である。

OSHAによると、鉛は人にさまざまな被害を与える。鉛は中枢神経系、心臓血管系、生殖系、血液系、腎臓などを冒す。心臓発作や脳卒中(死亡の場合も、そうでない場合も)腎臓病も引き起こす。アメリカ職業環境医大のメンバー、メドランティックLLC医療部長、コロンビア医科大学助教授のマーク・ウィルケンフェルト博士はこう言う。「鉛中毒で死亡する人も多い。衣服に鉛の粉末をつけたまま家に帰ると、子どもの発育を阻害し、家族全体の健康に害がある。労働者や監督者は鉛が死を招く危険な物質であることを理解する必要がある。しかし、慎重に防止策を講じれば、危険なことはない。だれも鉛中毒にならないで済むはずだ」

労働者は、鉛を原料とする塗料を橋、タンク、高速道路の高架橋、または住宅都市開発(HUD)プロジェクトで公共住宅、その他の建造物から取り除く時などに、鉛に接触することが多い。労働者は塗料を酸素アセチレン・トーチで切断し、燃やすこともある。また動力グラインダーで削り取ったりする。時には鋼鉄や木造の建造物から塗料を手作業ではがし、または建造物を爆破することもある。こうした方法はすべて危険な鉛の粉末を生み出す。


労働者の除染

ジェトコ社は労働者や監督者に鉛の危険性についての訓練(再訓練も)を実施している企業の一つである。同社はイリノイ州にあって、35年にわたって米国中西部で水タンク、水タワー、下水処理施設、水道処理施設などの塗装を行ってきた。労働者は古い塗料をサンドブラストで取り除くため、鉛の粉末が身体に付着する危険性がある。「しかし従業員はすべて、鉛塗料の除去作業について訓練を受けている」と、ジェトコ社のスチーブ・ブレンド・ジュニア社長は言う。「従業員は定期的に検査を受けている。それで血中の鉛のレベルを調べ、肺機能検査も受け、防護マスクを着用できるかどうか、調べている。鉛塗料に関係する仕事をする場合、その現場には除染トレーラーを持っていき、その中で労働者は身体を洗い、シャワーを使うことができる」

「労働者は毎朝出勤すると、除染トレーラーに保管してある特別の作業衣に着替え、その上からタイベック・スーツを着る。何かの理由で職場を離れるときは、まずシャワーを浴び、それから作業衣、作業靴をトレーラーに残して出る。鉛の粉末を自分の車、家庭に持ち帰らないようにするためだ」とブレンド社長は言う。「休憩時間には、トレーラーに入る前にHEPAフィルター付の掃除機で粉末を吸い取る。鉛の粉末は毛穴からだけでなく、呼吸からも体内にはいる。食事をしたり、一服する前には十分に手を洗う必要がある」

OSHAは鉛の危険性を防ぐために、3本柱の対策を取ることを推奨している。第一は安全な作業慣行(ジェトコ社が行っているような除染法など)、第二に技術的規制(機械的および局所排気、カバー付の工具、鉛粉末が空気中に飛散しないようにする加湿剤など)、第三は個人用保護具(補助的なマスクの使用など)である。


鉛に関する訓練は不可欠

鉛の危険性に対応するために、労働者は十分な訓練を受けるべきである。鉛軽減作業についての訓練を推進している団体に、国際北米労働組合(LIUNA)がある。そのプログラムは「連邦および州の法規に合致しているだけでなく、それを超えている」と鉛・石綿・シリカ担当プログラム・コーディネータのトム・ナンジアタは言う。

<労働者の訓練:AGC教育研修財団>も、労働者に鉛の危険性を教える努力を続けている。同財団は1999年に、8時間の労働者意識向上課程で158人の労働者を、また40時間の鉛軽減労働者課程で1,085人を、8時間の鉛軽減労働者再訓練課程で1,191人を訓練した。40時間の鉛軽減監督者課程には40人が参加し、さらに鉛軽減監督者再訓練課程にも10人が加わった。


監督者の責任

「監督者は労働者がすることのすべてを、さらに超えたところまで知っていなければならない」とLIUNAのスタッフ主任ビル・バーグフェルドは言う。「監督者はマスクを分解して中を掃除する方法以上のことを知っている必要がある。労働者は監督者に頼っており、自分たちが指示されたことは安全だと考えている。監督者は規定を守らなかった場合にどうなるかを、十分に心得ておく必要がある」

ナンジアタも言う。「監督者はリスク・アセスメント報告書を解釈し、作業員の保護プランを立案する能力を持っていなければならない。すべての連邦、州、地方の鉛に関する法規を知っているべきだ。青写真を読み、州、郡、市町村の当局者と協力しなければならない。必要な医学的監視、記録保存、血液検査、許可された血液中の鉛暴露レベルも知っておく必要がある」

「作業が行われている場所を隔離し、封じ込めること、それに空気汚染に注意することが大切だ。労働者も監督者も鉛の健康への影響、安全な作業方法、手順を知り、それに従うべきだ。そうでないと、鉛は声を立てない殺人者になる」

鉛の意識向上コースについての詳細な情報は下記のホームページを参照。
www.liuna.org または www.laborers-agc.org.