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血液由来病原体からの自己防衛
(デビー・フェルドマン)

資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」2001年3月号p.10-11
(訳 国際安全衛生センター)


貴方は仕事で血液由来病原体に暴露しているだろうか? 職業上、血液や他の体液に暴露しているとすれば、そのリスクが高い。

血液由来病原体は血液、精液、膣分泌液、歯科処置中の血液が混じった唾液、脳脊髄液、羊水、尿など、血液を含み得るいかなる体液中にも見いだすことができる。媒介は通常、注射針による刺傷や切り傷から起こり、皮膚、目または粘膜を通じて感染することがある。罹りうる病気は、AIDSの原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)やB型およびC型肝炎ウイルスなどのウイルスによって引き起こされる。CDC(Centers for Disease Control and Prevention)によれば、1年間に病院内で針による刺傷が30万件を超えており、すべての医療状況を考慮に入れると毎年80万件も発生している。

あなたはリスクにさらされている?

毎年約9,000件の職業上の血液感染が起こっている。米国の急性C型肝炎感染の約2〜4パーセントは血液に暴露している医療従事者の間で発生している。国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は米国内に約1,000万人の医療従事者がいると推定している。血液由来病原体への暴露のほとんどは看護師や医師で起こっているが、他の職業における医療従事者もリスクに曝されている。検査室技師、看護助手、家事および保守職員、老人ホーム労働者、法の執行官、斎場労働者、救急対応係も高リスクである。

NIOSHによれば、米国においてはC型肝炎ウイルス(HCV)が最も多い血液由来病原体である。現在、有効なワクチンはない。B型肝炎ウイルス(HBV)にはワクチンがある。

血液由来病原体への暴露は容易に起こりうるため、すべての企業は血液由来病原体への暴露に対処するための適切な方針を持たなければならない。救急状況への反応に責任がある労働者(例えば対応係)は、他の労働者に救急処置を施さなければならない。体液への暴露を防止するために、救急処置キットはすべてラテックス手袋とフェイスシールドを備えているべきである。

法律を知る

1992年7月、OSHAは血液由来病原体基準法を可決した。OSHAの血液由来病原体基準、29 CFR 1910.1030は、血液または体液に接触することが当然予想されうる労働者者のいるすべての事業場はこの法を順守しなければならないとしている。この基準は2001年に改訂される予定である。

事業者は法により、仕事で血液または体液に接触することが当然予想される個人または職階を明らかにし、それらの労働者に暴露抑制計画、全般的注意、洗浄方法、個人用保護具を提供したり、労働者に危険有害要因について通知したり、暴露を低減させる方法について労働者に研修を実施することが求められている。

CDCは事業場での体液および血液の扱いに関する勧告を出している。CDCによれば、すべての体液および血液は汚染のおそれありとして扱うべきである。

計画を立てる

暴露抑制計画は、リスクにさらされる労働者を特定する方法を記載していなければならず、また、事業者がどのようにしてOSHA基準を順守するつもりかを述べていなければならない。事業場には、洗浄設備の位置と洗浄廃棄物の扱い方が明確に記載された、洗浄に関する書面によるガイドラインがなくてはならない。

労働者がB型肝炎ウイルスに暴露する可能性がある事業場では、事業者は労働者に、免許を有する医師または免許を有する保健医療専門職の監督の下、無料でワクチン接種を提供することが求められている。

また、事業者は労働者に、手袋(ラテックスに過敏な者に対しては低アレルギー性のものが提供されるべきである)、ガウン、ゴーグル、顔面マスク、およびマウスピースを含む、血液由来病原体に対する必要な個人用保護具(personal protective equipment : PPE)を供給しなければならない。

また事業場には、洗浄方法を説明した書面も備えていることが必要で、これには警告ラベル(バイオハザードのしるしのステッカーなど)の貼付、廃棄物用の赤い袋、注射針廃棄用の穴があかず、漏れない容器、制限区域の表示が含まれる。

事業場はまた、労働者教育の詳細な記録および労働者の医療記録を保存することにより、法を順守している証拠を示すことも求められる。

2000年10月、国会は医療従事者の注射針による刺傷を防止する助けとなる安全技術の進歩を斟酌し、OSHAの血液由来病原体基準を改定したH.R. 5178、注射針安全及び保護法(Needlestick Safety and Prevention Act)を可決した。より安全な注射針または注射針を使用しない技術を用いていたならば、年間80万件の傷害のうち62%から82%を防止できたことが、複数の研究により明らかにされている。OSHAのHealth Compliance Departmentの広報担当者は、注射針による刺傷の危険を最小にするよう設計されたシリンジなどの、より安全な注射針器具が現在入手可能であるとしている。

29 CFR 1910.1030の写しと、OSHAの血液由来病原体基準および新しい注射針安全および保護法に関する詳細は、OSHAのウェブサイト(www.osha.gov)で入手できる。