このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。

有効に働く懲戒を適用しよう

スーザン・マイヤース

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2001年5月号 p.4)
(訳 国際安全衛生センター)


多くの管理者にとって、従業員に懲戒を執行することは一つの必要悪と見なされている。ほとんどの管理者にとって楽しいことではないが、会社の規則や安全規定を守らせるためには必要である。

効果的な懲戒プログラムが無ければ、企業は従業員を管理できないし、安全規定を執行することはできないだろう、とユニシー社(アラバマ州ダッチハーバー)の安全部長グレッグ・M・ビショップは言う。そうなれば、企業は不当な訴訟を起こされる危険がある。

「良い懲戒プログラムは安全規定執行のカギであり、作業中の傷害や、(手足などの)切断、死亡の防止にも役立つ。これらの事例はすべて、安全訓練を行わなかったり懲戒プログラムが整っていなかったりする企業で目にしてきた。」と、アラスカ・ナショナル・インシュランス(ワシントン州シアトル)の安全コンサルタント・マイク・ギャリソンは言う。「労働者補償の対象となる傷害や訴訟が起こされれば、事業者にとって長期的には安全・懲戒プログラムを実施するよりも大きな費用を必要とするだろう。」

プログラムを伝達しよう

効果的な懲戒プログラムは公正でなければならず、組織全体に首尾一貫して施行されなければならない、とビショップは言う。従業員に十分伝達されていることも必要である。安全規定はオリエンテーションで概説し、ハンドブックの形にして従業員が会社の方針を明確に理解できるようにする。ハンドブックには安全規定に違反する行為や不正な行為を可能な限り多く記載する。従業員が自分の行為の結果を理解するように、会社の懲戒措置プログラムを明示する。

従業員にハンドブックを読ませて、読んだことを認める声明書に署名してもらうようギャリソンは提言している。多くの企業が4段階のプロセスから成る累進的懲戒プログラムを採用している。すなわち、口頭の警告、文書による警告、停職、そして最後は解雇である。こうしたプロセスにより従業員は自分の行為の結果を知り、不適切な行為を正す十分な機会が与えられる、とビショップは言う。

「従業員に正しい道を歩ませることがわが社の懲戒プログラムの第一の目的だ。」と、オマハ・パブリック・パワー・ディストリクト(ネブラスカ州オマハ)の労使関係専門家カール・オルセンは言う。「わが社は従業員にたくさんの投資をしている。だから解雇という結果に至るのではなく、状況を是正して、雇用をつづけたいのだ。」

この考え方を強化するために、管理者たちは、従業員に彼等の行なっていることを正しいとみているか、正しくないとているかを常にフィードバックすべきであるとオルセンは言う。管理者は従業員を実際に懲戒する前に、可能な場合は必ずカウンセリングや指導を行うことを奨励されている。

プラスの行動を強化する

ギャリソンは指導とプラスの行動の強化を強力に提唱する。「従業員を叱るだけではなく、安全な行動をしたら認めてやらなければならない。」と言う。「これを同僚の面前で行えば、他の従業員にとっても学習の機会となる。」

「指導は会社の規則や規定の遵守を強化する効果的な方法でもある。管理者が安全違反に気づくたびに、指導と助言を行うことにより、従業員を成長させ学習させる機会を得ることになる。これは、懲戒するよりもずっと行いやすく、ハンドブックを読むよりも有効である。その方が従業員の心によく残るからである。」

敬意をもって懲戒を行う

どのように懲戒を行うかは、懲戒措置そのものと同じくらい重要である。ギャリソンは、ある管理者が従業員の間違った行為を見るたびになぐりつけるのを見た覚えがある。「暴力や、恐れ、威嚇を用いることは、望ましい反応を引き出す効果的な方法ではない。」とギャリソンは言う。

懲戒のために罰を用いるのもマイナスである。反感と敵意を生み、これらは修復困難である。

従業員に敬意を払う

問題を個人的に話し合うために従業員をわきに呼ぶのがより適切な対応である。従業員の気持ちを楽にさせるために、立ったり自分のデスクを隔てていすにかけたりするのでなく、従業員と向かい合って椅子にかけるようビショップは提案する。その行為がなぜ違反なのか、その行為の結果として起こること、状況の是正方法を説明して、事態を肯定的に処理するよう努力する。

「管理者はその場の主導権を握り、敵対的雰囲気を生み出してはならない。」とオルセンは言う。「管理者は決して叫んではならず、専門家らしい口調で話し合いを行うべきだ。もしも従業員が敵対的行動に出て協力を拒んだら、話し合いを終わらせるべきである。」

その他、管理者が対決的状況を避けるための秘訣

  • 従業員を呼び出す時や話し掛けている時に決して指差してはならない。
  • 同僚の面前で恥ずかしい思いをさせてはならない。
  • 断言してはならない。
  • 個人的問題を持ち出してはならない。
  • 嘲笑したり恩着せがましい口調で話してはならない。
  • 話し合いの前と後に握手する。

従業員ハンドブックにどんなに精通していてもあらゆる場合に適した懲戒プログラムを持つことはできない、とギャリソンは言う。不正な行為は一つ一つ状況が異なるので、個別に判断しなければならない。

違反行為の程度次第では、また、他の従業員が危険に曝された場合は、即刻解雇が正当である場合があるだろう。そうしたケースは従業員ハンドブックに詳述しておくべきであり、オリエンテーションで従業員に口頭で伝えておくべきである。違反者と関係者全員をわきへ呼んで、各人に違反行為を理解させ、安全規定遵守の重要性を理解させるのが有益な場合もあるかもしれない、とビショップは言う。

管理者は適切な懲戒措置を決めようとする際に、下記の要因を考慮する必要がある。

  • 違反行為の重大性
  • 懲戒の軽減に値する事情
  • 当該従業員の社内における地位
  • 勤続期間
  • 過去の懲戒措置
  • 利害の衝突の可能性

第三者に相談する

「取るべき適切な措置について確信が無い時は、組織内の第三者に相談することを強く勧める。」とビショップは言う。「それは個人的問題が入り込むのを避けるのにも役立つ。」

「お座なりな措置は取りたくはない。」とオルセンは言う。「状況を十分に調査し、必要な事実を全部把握し、適切な改善案を的確に決定したい。後日後悔するようなことはしたくはない。」公正さと一貫性を確保するために、オルセンの会社では文書による警告を超えた規律違反はすべて労使関係部で再調査することになっている、と言う。ユニシーでは、安全委員会が全ての文書による警告と停職を再調査する。従業員も、異議を申し立てたり、個人的事情を考慮してくれるよう役員会に申し出ることができる。

不正行為を文書化する

口頭であれ文書であれ懲戒措置が取られたら、詳細を文書化すべきである。ビショップは各不正行為の事例について下記の情報を記載することを提言する。当該不正行為について、日時、場所、関係あるいは目撃したかもしれない人などを簡潔に記載する。可能ならば彼らの陳述を文書にするか面談のメモを取っておく。取るべき懲戒措置を明示する。当該行為が繰り返された場合ありうる措置(例えば停職または解雇)を記載する。従業員が今後その行為をどのように改めていくかを書き込むスペースを設ける。そして、管理者と従業員の双方に署名させる。できれば証人を立てる。

「事例の99%は文書化をおそらく必要としないであろう。しかし1%については必要なのである。管理者が正当性を主張するのが非常に容易になる。」とビショップは言う。

口頭及び文書による警告を発した後も不正行為が無くならない場合は、停職が次の措置となる。この場合も、従業員に状況を詳細に説明しなければならず、状況を改めるためのタイムテーブルを与えなければならない。従業員に、なぜ問題を起こしているのか、解決するためにできること、いつ改めることができるかを記載した陳述書を作成するよう求める企業もある。問題が続くようであれば、解雇が適当となろう。

解雇が正当である状況が生じた場合のために、企業は踏むべき具体的な手順のリストを作っておくべきである。大抵は、従業員を少なくとも別の管理者1人と共にオフィスに呼び、起こっている問題についてもう一度話し、解雇の理由を述べる。

具体的に、そしてきっぱりとした態度を取る。保健手当てや就職相談など、解雇後の会社の援助について情報を提供する。

どのような懲戒プログラムを使っていても、最終目標は従業員の行動を正し、正しい道へ戻すことであることを忘れてはならない。