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安全対策がゆきわたり、静かな印刷工場
−5分間安全ミーティング用−

(資料出所:NSC発行「Today's Supervisor」2001年11月号 p.12-13)
(訳 国際安全衛生センター)


ダルシー・ルイスの報告:

数十年前は、印刷工は、鉛の粉やベンゼン、トルエン、キシレンなどの多くの有害物質に囲まれて仕事をやっていた。しかし、最大の危険は、印刷機械そのものから産まれていたといえる。昔の言い伝えによれば、その人がベテランの印刷工であるかどうかは、騒音で聴力がやられ、指を最低一本はなくしていることで判定されていたらしい。

そのような古い型の印刷工は、印刷工場の安全面での大きな改善のおかげで、現在は殆どいません。鉛は現在使用されておらず、以前よりもずっと安全な溶剤の使用と防音保護具の使用が現在の標準となっており、印刷工場は以前よりずっと静かで安全になっている。ウィスコンシン州ロミラの雑誌印刷会社であるクオッド・グラフィックス社の最終仕上げ部のエド・アルビン部長によれば、従業員の態度もまた大きく改善されたという。「私は、我々印刷業界の人々の安全意識は、15年前と比べれば、はるかに向上していると確信しています」。


防護柵と整理・整頓が鍵:

安全への努力は、多くの古い危険物に今でも傾注されている。「危険物から身を護ることは、引き続き印刷業界にとって、最も重要な安全課題である。何故なら、事故が多発すれば、我々の業界は破滅的な状態に追い込まれる可能性があるからです」と、コロンバス・デスパッチ社の安全担当部長のジョン・ブローニング氏は述べ、「幸いにも、我が社の従業員は自分の身を護る防護柵に対して非常に高い関心を払っている」という。

従業員の中には、印刷機のガードが従業員の動きをスロウダウンさせているとの考えがあるのかもしれない。「印刷機メーカーが付けてくるガードは、必ず我々の機械のそばに備え付けておく必要があり、監督者はその必要性を従業員に伝えるという大きな役目を負っている」と、オーランド・センチネル社の環境・安全衛生部長のマーク・アンダーセン氏はいう。「我が社の従業員は、ガードがあっても、予定通りに仕事を完成させることができることを学んだ」。整理・整頓も、最優先のひとつである。「印刷機のそばで働くことに危険が伴うのは明白ですが、実際に我々の職場で発生する事故は滑ったり、転んだりによるものが多いのです」と、アンダーセン氏はいう。「我々は、職場のいたるところをすっきりさせ、清潔に保持している自分達に対して誇りを持っています。しかし、どの印刷機からも、インクと油があちこちでしたたり落ちています。さらに、滑りやすい油ふきとり洗剤が床の上に落ちているが、人の目にはよく見えない」。これに対するオーランド・センチネル社がとった解決策は、コンクリートの床に砂を混ぜて、靴底の密着性を増やすことである。「我々の床は、掃除するには少々困難を伴うが、人にはより安全である」とアンダーセン氏はいう。


OSHAはPPE(個人用保護具)を強調:


アメリカ新聞協会の産業衛生専門家であるアレン・クーリー氏は、労働安全衛生庁(OSHA) が協会会員の新聞社に出した安全衛生法違反の指摘を追っている。「過去10年間では、ガードの設置、危険通知、立入禁止とその標示違反に関する指摘がほとんどであった」と彼はいう。「しかしながら、2000年には、OSHA監督者は、印刷工場での個人用防護具の着用に重点をおいている」。

印刷工場で要求される重要な聴力保護対策は、個人用保護具である。印刷機の騒音レベルは、通常OSHAの許容範囲を超えているので、殆どの印刷工場の従業員は、聴力保護プログラムに参加している。このことは、会社は、従業員に適切な聴力保護具を供給する義務があり、すべての従業員に対して聴力テストを実施し、さらに定期的に職場の騒音レベルを計測しなければならないことを示している。

「聴力を失う過程では、従業員には特に苦痛はなく、ゆっくり進行していく。だから、従業員は、手遅れになるまで、自分が障害を蒙っていることに気がつかない。聴力を護る良い制度が、我々の業界に必要なのです」とクーリー氏はいう。「我々は、従業員の意識向上のために、各種の聴力保護具を示すよう提案している」。

アルビン氏によれば、クオド・グラフィック社が特に強調していることは、聴力保護具の重要性である。「新人の従業員が工場に初めて入ったその日から、我々は彼らに、聴力保護を重要視していることを教え込む」と彼はいう。「我々は、従業員にいくつかの異なった聴力保護具から自分で選択させている」。

聴力保護は、印刷業界では最も重要なPPE問題であるかもしれないが、他にも重要な問題がある。例えば、いくつかの製造部では、鉄板で足の指先を保護している靴を必ずはくよう、義務付けされている。「我々のところでは、1トンの新聞用紙ロールを印刷機械室に運び入れる荷車を使っているので、従業員は必ず保護靴をはく必要があります。我々のところには、足先をけがする危険性がたくさんあるからです」と前述のアンダーセン氏はいう。

印刷機械室内の空気の清浄度は、多くの会社が大豆と水をベースとしたインクにとり換えたため、画期的に改善されている。これらの新しいインクを使用することで、空気をきれいにすることは、大変やさしくなっている。それ故、多くの危険な溶剤は、現在、野菜油成分に取って代わられつつある。しかし、インクと溶剤を取り扱う際には、保護手袋とメガネの着用は、必ず必要となる。

従業員の安全を改善させる努力においては、印刷産業は他の業界と多くの共通点がある。しかし、どの産業であれ、安全意識の高い会社にとって一番良い方法は、安全を勝ち取る過程に、全てのレベルの従業員を参加させることである。「あなたの会社の従業員には、安全対策を決定するチームの一員となり、彼らに自分達が考える対策を提案するよう要求しなさい」と前述のアルビン氏は薦める。「時間を十分とって、従業員に、会社の安全方針とその決定の裏にある理由を説明するのが良い」。

クオド・グラフィック社のロミラ工場では、従業員の提案に基づいて、二つの重要な安全改善策がスタートした。第一に、旧式のパレットジャッキに代わって、高さを調整できる電動リフトが採用された。そのため、全ての材料は現在、腰の高さのところにおかれ、人が腰をかがめる必要がなくなった。第二に、ポリエステル包装場所で電動クレーンを装備したことで、二人の人間が、ロールの間に軸を通して重いロールを持ち上げる必要がなくなった。アルビン氏は、「我々がいつも従業員に言っていることは、もしあなた達が今よりももっと良い安全対策をみつけたら、我々はそれらを十分検討します。従業員災害の減少という大きな成果を手に入れることができるからです」。