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安全点検は、職場に刺激を与える
(資料出所:NSC発行「Today's Supervisor」2002年4月号 p.4-7)
(訳 国際安全衛生センター)
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スーザン・メイヤーズ記:
フォード自動車会社の目指すところは、すべての従業員が出勤して来た時と同じ状態で、安全に、怪我をすることなく、帰宅につくことだ。会社が二年ほど前から安全を強化して以来、災害率は、30%から40%の低下が見られた。フォード社が新たに採用した“自ら安全行動をとる運動”(Safety eadership Initiative)は、組織のあらゆるレベルでの安全に関し、すべての従業員に責任を持たせようというものである。ミシガン州デアーボーンのフォード社の安全部長クリス・パターソンは、「我々は、全ての不安全な行動や作業環境に対し、情状酌量しないことにして来た。」という。
“自ら安全行動をとる運動”の鍵というべき要素は、監督者の日々の職場点検であり、継続して、安全点検が常に行われている状態とすることである。全ての監督者は、実績評価の一部として算入される一定の安全目標を達成することに責任を負っているのである。
安全検査は、日常の責任事項
安全の専門家は、安全点検が全ての監督者の日常業務の責任事項の一部であるべきことに同意している。イリノイ州ローズモントの「安全と健康のコンサルタント会社」社長ジェフリー・キャンプリンは、「監督者は、定期的に、途絶えることなく、点検を行うことが必要である。」という。
安全点検は、会社全体の安全プログラムのほんの一部に過ぎない、としている限りは、一寸したことでも大きな違いを作り出すようなことになるのである。安全点検は、不安全な作業環境や行動が災害をもたらすこととなる前に、安全を確保する為に行うよう認められていることが本当に行われているかを監視し、不安全な作業環境や行動を見つけ出し、正すという品質管理機能の働きがある。部門レベルで、監督者は、安全の舞台を設定し、従業員の態度や行動を活性化し続けるのである。イリノイ州パーク・リッジの国際倉庫物流協会の社長兼COOジョエル・ホイランド氏は、「監督者が安全な職場を維持する上での鍵であり、もしも監督者が安全について定期的に話しをしたり、行動で示すことがなければ、安全は、レーダー・スクリーンから消えてしまうことになるかもしれない。」という。
点検実施の条件
安全点検を効果的に実施するために、監督者は、適切な道具と人材を持つ必要がある。これには、安全訓練、点検を実施するための時間、不安全作業環境を記録し、追跡するためのコンピューターやデータベースと不安全作業環境を正すための予算や人材が含まれる。メリーランド州アナポリスの安全コンサルタント会社、スター・コンサルタンツの認定産業衛生士、認定安全専門家で社長のポール・エスポシト氏は、「多くの点検過程の問題は、監督者がこうした資源の全てを必ずしも適所に持っていないが為に、同じ問題が繰り返し起こっていながら、適切な改善が決して行われることがないということである。」といっている。
一旦こうした実施諸条件が整ったならば、安全点検に取り掛かり得る。安全の専門家は、監督者が点検を実施する際には、以下の措置を取るよう勧告している。
- それぞれの職場環境に合わせた記録シートを作る。−−チェック・リストを展開する際の助けとなる労働安全衛生庁のウエッブサイトを参照することができる。このサイトは、いろいろな産業に固有な労働安全衛生庁遵守基準と災害を列挙している。不安全行動は、実際の作業手順書からも編集することができる。
- 所見をチェックリストに記録し、完全にノートに書き残す。−−あなたのデータを一層組織的なものとし、まとまりのあるものとする助けとなるソフトウェア・データベース・プログラムの使用を考慮すること。
- 問題解決のゆくえを追う。−−あなたが同意し得る解決に至ったならば、その解決方法を時期を失することなく実施しなければならない。解決策を実際に実施するのに要する時間を追跡し、その後に解決策の有効性を評価せねばならない。エスポシト氏は、「管理者の言葉は、それが行動を伴わない限り無意味である。」といっている。ピーターセン氏は、「行動を伴う追跡がない限り、管理者は、信頼を失い、安全に対するあなたの会社の取り組み姿勢であることを実証出来なくなってしまう。」と同意している。
監督者による日常の安全点検に加え、フォード社では、安全点検とバランス・システムを提供するために組織内の異なる部門からの者による定期点検も実施している。この点検には、安全専門家、工場長、更に、偏りのない評価が行えるよう工場外の外部安全委員会による点検が含まれる。成功裏に点検を実施する鍵の一つは、適当な研修を行うことであると、ピーターセン氏は、いっている。
全てのフォード社の監督者は、任命されたとき、40時間の安全研修を受けている。この研修は、会社組織上の手順、指導者としてのスキルと技術的な安全問題を網羅している。
より技術的分野で働くことになる監督者は、追加の安全指導を受ける。再教育コースは、毎年行われている。あなたの作業分野の従業員もまた安全研修を受けるべきである。
安全コンサルタント会社のキャンプリン氏は、「貴方は、従業員に安全の恩恵とそれが如何に違いをもたらすものなのかを示す必要がある。従業員は、また、安全手順を遵守しないことの結果を、実際の例を見て知る必要がある。」という。
安全は、チームで努力すべきもの
あなたの安全プログラムに対する従業員の支持を盛り上げるには、従業員の協力を求め、安全に対しても責任を持たせるべきである。例えば、従業員が事故やニアミスに関する書類作成を手助けすること、日常の環境測定と安全評価へ参加すること、安全方針と手順策定のための手助けをすること、また、安全委員会の一員となることを認めるべきである、とピーターセン氏はいう。
ホイランド氏は、「安全は、チームで努力すべきことであり、雇用主と従業員の双方で分かつべき責任である。職場安全の鍵は、監督者により日々補強されるべき雇用主の優先事項でなければならない。従業員もまた、安全で優秀な結果を残すためには自らの役割を果す必要がある。」という。
キャンプリン氏は、安全に対する取り組み姿勢の表明は、トップ・ダウンで始められるべきであるという。「安全は、経営陣が口火を切り、会社全体のカルチャーに具現されるといった趣のものでなければならない。従業員は、安全プログラムの背後には、経営陣がおり、問題点が明確になった安全手順が守られていないとなると必ず動き出すものであると認識すべきである。一旦従業員がこうした考えを信じ込み、経営陣が心底安全に留意していることを知るならば、率先してことに取り組み、貴方の安全プログラムの耳目となるのである。」とキャンプリン氏は主張している。キャンプリン氏は、また、一組織全体に対する安全の利益は、広大なものであり得るというのである。
良好な安全プログラムによって、事故や災害が減り、生産性が改善され、保険料率も低下することになるであろう。キャンプリン氏は、「安全は、採算に合うものである。良好な安全プログラムは、利益率を向上させるばかりでなく、従業員の士気をも改善することになろう。」といっている。
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