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薬物・アルコールテストには確固たる理由が必要
Solid Reasons Needed for Drug and Alcohol Tests

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2002年12月号 p.10-11)
(仮訳 国際安全衛生センター)



ハワード・テイラー(Howard Taylor)

 妥当な疑いに基づいて薬物・アルコールテストを実施しようとする監督者は、その判断が確たる根拠に基づいているかどうかを確認するとともに、適切な手順を踏んで会社の薬物・アルコールテストの実施方針を遵守する必要がある。

法律の文言
 監督者が妥当な疑いに基づくテスト(reasonable suspicion test)を従業員に受けさせることができるのは、安全に細心の注意を払うべき業務に従業員が従事している最中、もしくはその直前または直後である。連邦政府規則(CFRパート382.307)では、次のように定めている。「事業者が、薬物・アルコールテストを運転手に要求するに足るだけの妥当な疑いがあると判断した場合、その判断は、運転手の外見や行動、話し方、臭いに関する具体的、同時的、かつ明言可能な観察結果に基づくものでなければならない。かかる観察結果には、規制薬物による慢性症状および禁断症状も含まれる」
 この「具体的、同時的、かつ明言可能な観察結果」とは、どういう意味であろうか。「具体的」とは、間違いなく違反であることがわかるような、具体的な観察結果を提示しなければならないことを意味する。たとえば、従業員の吐く息がアルコール臭くて会話もきちんとできない状態であれば、これは客観的で具体的な観察結果になる。「彼はちょっと変だな」といった曖昧な観察結果では、条件を満たすことはできない。
 「同時的」とは、今この場で起きていること、すなわち今起きたばかりのことを意味する。逆に言えば、昨日の出来事に基づいてテストを実施することはできない、ということである。
 「明言可能」とは、書き記して文書化できること、すなわち書面にできることを意味する。昔から法廷で言われるように、記録なければ事実なし、ということである。
 次に、妥当な疑いに基づくアルコールまたは規制薬物のテストを要求する根拠となる観察結果の記録書類を、問題行動を目撃してから24時間以内か、またはテスト結果が判明するまでのどちらか早い方を期限として作成する。記録には、監督者または観察を行った会社の職員が署名する必要がある。
 薬物検査を実施すべきかどうかを判断するには、あらかじめそのための研修を受けておく必要がある。監督者の研修はCFR382.603に従って行う。この規則では監督者の義務を次のように定めている。
 「アルコールの乱用については最低60分の研修、規制薬物についてはさらに最低60分の研修を受けるものとする。研修では、アルコールの乱用や規制薬物の使用を疑うべき外見、行動、話し方の特徴、および作業能率の傾向について学ぶものとする」

行動を起こす
 妥当な疑いに基づくテストの根拠を確認したら、問題の従業員をほかに人のいない場所に移動させる。職場の同僚に対して対決姿勢で臨むのは気が重いが、大事なのは直接当人と話をすることである。他人の口から聞いたことを本人の言葉と混同してはならない。話の内容を秘密にしておくことができるという点でも、ほかに人がいない方が好都合である。
 次に、その従業員と面接をする。問題になっている状況について話し合い、判断を詰める。このとき、相手の話によく耳を傾けることが大切である。しかし、カウンセラーのようにふるまったり、相手を裁くような態度を取ったりしないよう注意する。仕事の能率や会社が期待していることについて話をするとよい。会社の方針と具体的な禁止事項についても再確認する。監督者として従業員の身の上を心配しているという態度を示すことも大切である。結局、すべては従業員の安全が目的なのである。
 判断が固まったら、従業員を検査機関に連れて行き、テストを受けさせた後、自宅まで送る。最後に顛末を記録にする。

筆者のハワード・テイラー博士は、ナッシュビルにある全米毒物専門家会社(National Toxicology Specialists Inc.)社長。

詳細については以下のサイトを参照のこと。
労働省
www.dol.gov/dol/workingpartners.htm

薬物のない職場を目指す会
(Institute for a Drug-Free Workplace)
www.drugfreeworkplace.org

薬物乱用・精神衛生管理庁
(Substance Abuse and Mental Health Services Administration)
http://workplace.samhsa.gov