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製造ライン作業者の安全

(資料出所:NSC発行「Today's Supervisor」2002年2月号 p.12-13)
(訳 国際安全衛生センター)


ロー・ポスマンの報告:

製造ライン作業中の作業者の安全を維持するためには、意思疎通と知識がそのかぎとなると、職場安全の専門家はいう。

もし、あなたが管理している製造ラインで作業者がけがをするとか、苦痛を感じ始めたら、彼らの心配事を真剣に取り上げましょう。何か問題が起これば、その解決には必ず製造ラインの作業者を関与させる。いつ起こっても不思議でないような問題を探し出すため、定期的な安全点検を日程に組み入れる。当然身につけなければならない保護メガネ、聴力保護用耳栓などを身につけることによって良い模範をつくりあげる。そして最後に、製造ラインで発生した傷害の形態、事故発生の頻度をよく知り、さらに最も重要なのは、製造ラインの事故率と傷害率が、会社内の他部門や同じ産業内の事故率・傷害率と比べてどうなのかをよく知ることである。

「これは何も不思議なことではありません」とエルゴノミクスと摩擦工学(滑りと墜落・転落に関する)の専門家で、リバティ・ミューチュアル・グループの生産担当役員であるウエイン・メイナード氏はいう。メイナード氏は、マサチューセッツ州ポップキントンにあるリバティ・グループの安全研究センターにある安全チームのメンバーであり、そこでは、職場、家庭、高速道路でのけがと病気を防ぐための方策を開発している。「もし、あなたの部門の安全面での実績が他部門と比べて落ちているなら、その原因を見つけ出し、成果を上げている他部門からよく学ぶ必要がある」。


傷害の傾向:

恐らく、製造ラインがそこに存在している限りは、製造に起因した傷害が全くなくなることはないでしょう。今日の製造ラインが持つ反復する物理的な特性から、筋骨格系障害(MSI)は、製造ラインで働く作業者がかかる病気の中で最も多いものである。"職場の安全衛生"誌の報告によれば、1999年、背中、上腕、手首、手などに生じた筋骨格系障害は、全ての休業災害の29.5%を占めている。製造者の中には、50%以上を占めているというところもある。

製造ラインでは、これまで一種類の製品を単一生産するのが普通であった。そこでは、背の高い人は少し背をかがめ、背の低い人は苦痛を感じる程高いところで無理な作業をこなしてきた。このような製造ラインはいまだに残っているが、事業者の多くは、主として作業台を工夫することにより、筋肉痛、捻挫、背中等の傷害を減少させるといった大幅な改良をこれまでに実施している。


事故ゼロをめざして

事務用複写、プリンター、生産用印刷機械メーカーのゼロックス社は、例えば、床をリフトさせる装置を装備し、製造工程中は機械を上方に持ち上げることによって、従業員が機械の下にもぐりこんでやる作業をなくすようにしている。筋骨格系障害によるけがや病気は、ゼロックス社の職場での傷害の約半分を占めていると、職場安全部長のウェンデイ・ラトコ博士はいう。ゼロックス社は、1997年傷害ゼロ運動を開始したが、それ以来現在までに全体傷害件数を45%減少させた。監督者の働きがこの成功の一番大きな要因であると、ラトコ博士は述べ、「監督者は、安全問題のどれひとつに対しても焦点の中心にいるのです」と付け加えた。「我々の会社には、仕事を行う従業員のために安全な作業場所を設計する生産技術者がおります。監督者は会社と作業者の中間に位置し、問題の本質を見きわめる目と耳なのです」。

ゼロックス社は、傷害率を減少させるため、生産技術、訓練、定期的な安全パトロールを組み合わせている。毎週一度行われる安全パトロールには、組合の代表(製造ラインの作業者)、経営側(通常監督者)と安全専門家が参加する。どのパトロールでも、安全問題に直接関係する作業現場の詳細について、製造ラインの作業者との話し合いを行っている。この安全パトロールは、「監督者は、いつも作業者の安全に注意を払い、関心を持っているというメッセージを従業員に送っている」とラトコ博士はいう。


模範を示してリードする


監督者は、作業者の安全を維持するために重要な役割を果たしている。監督者はリードする役目である。監督者が適切な個人用保護具を身につけると、製造ラインの作業者は、まずそれにならうことになる。作業者の心配事を監督者が確認することで、作業者は自分達が大切にされていると感じ、このことが会社との結びつきをより強くするのである。この結びつきは、病気やけがからの回復途中で監督者が作業者に様子を聞くことで、さらに強化される。

リバティ・ミューチュアル社は、作業者が受ける苦痛に対する不満と経営者の対応の相関関係を現在調査している。調査結果はまだ出ていないが、調査研究者によれば、病気やけがからの回復速度は、経営者が従業員の抱えている問題を認識し、そこから抜け出すよう従業員を元気づけると、さらに早くなる。「監督者は作業者に最も近いところにおり、作業者が出来るだけ早く仕事に復帰させる役目を負っている」と、リバティ・ミューチュアル社の生産担当役員で、職場の安全衛生と生産技術をよく知るスタン・ブルベーカー氏はいう。従業員が職場から離れる期間が長いほど、彼らが職場に復帰する割合が少なくなっている。

「従業員は、会社との心理的な結びつきを失うのです」と、ブルベーカー氏は、付け加え、一年間会社を休んだ後、同じ会社に復帰する率はたった50%であることを示す産業統計数字を指摘した。「復帰率は、2年間休むとほぼゼロになる」。

さらに追加情報をほしい方は;
www.cdc.gov/od/ohs/Ergonomics/Ergohome.htm
疾病対策予防センターのこのサイトでは、エルゴノミクス(人間工学)の問題を解決するためのいろいろな方策が示されている。

www.ergonomics.com
エルゴノミクス(人間工学)に関する包括的情報

www.libertymutual.com
リバティ・ミューチュアル社の職場安全の項を開いて下さい。