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従業員を安全衛生活動に参加させる
(資料出所:NSC発行「Today's Supervisor」2002年1月号 p.12-13)
(訳 国際安全衛生センター)
ケイト・バートランドの報告:
企業の安全衛生プログラムが成功するには、従業員の参加は大変重要となる。当然のことだが、プログラムの実行に際して従業員を参加させる−続けさせる−ためには、現場第一線の監督者の行動がかぎとなる。「殆どの人は、従業員の参加というと、時間契約の人のことと考えている。しかし、我々が全米安全評議会(NSC)で"従業員の参加"について議論する時は、会社のロゴマークがついた給料支払いの小切手を会社から受け取る従業員のことを意味している」とイリノイ州アイタスカのNSC首席コンサルタントであり、認定安全専門家(CSP)の資格を持つジョー・ケルバス氏はいう。「安全衛生プログラムへの従業員の参加は、監督者と会社の上級経営幹部の参加なしではありえません」と付け加えた。
安全衛生プログラムに従業員を参加させるために使える方策には、経営幹部と従業員による共同委員会・会合、事故原因究明、緊急医療対応プログラムなどが含まれる。安全衛生指示書に従業員がいつでもアクセスできるようにすることや、事故統計と事故報告書を従業員に配布することも、従業員が安全衛生問題に関心を持つ手助けとなる。
例えば、カルフォルニア州にあるサン・マイクロシステムズ社のパロ・オルト氏は、エルゴノミクスといった話題についての情報を従業員に流すため、ウエブサイトを活用している。事務所での仕事に従事する従業員の約90%の人には、繰り返される過労障害、事務機器に関係する諸問題、業務上の悪習慣など従業員が陥る危険を少しでも減らすための情報を供給している。ウエブサイトを通じて、従業員は、質問状に答えるやり方で、エルゴノミクスに起因する障害にいかに自分達が陥りやすいかに気付くのである。「質問状は、従業員に、どんな危険があるのか、その解決方法を教えてくれる」と、地球環境安全衛生(EHS)プログラムと基準担当の部長であるデニス・マッテインソン氏はいう。質問状に全部回答するには、約30分かかる。
さらに、会社のウエブサイトから得られるものとしては、コンピュータを使う職場での基本的なエルゴノミクスに関する指示書がある。「我々は、全世界の従業員が理解できるように、これらの指示書を10ヶ国の言語に翻訳した」とマッテインソン氏はいう。
従業員と経営者の共同作業:
安全規則に従わない結果として、重大災害、場合によっては死亡災害が生じる製造業や加工産業では、会社経営者は、安全衛生プログラムに従業員の参加を促進するため、労働側の指導者と手を組むケースがある。過去3年の間に、ケロッグ社は、13の工場で安全プログラムに参加する従業員の数を増やすのに成功した。ミシガン州のバトルクレック工場で、事故予防プログラムチームのメンバーは、労働組合の指導者と工場の管理者で構成されている。「彼らは、全面的な協力関係を作り上げ、従業員の行動を変え、工場の安全を改善させることに成功した」と、ケロッグ社の北アメリカ安全担当部長であるグレッグ・スタッケル氏はいう。工場で安全に係る事故が起こると、事故予防プログラムチームのメンバーは、何が悪かったのかを究明するため、関係する従業員とひざを交えて議論する。
この事故予防プログラムチームは、その安全訓練中に、従業員が何をミスしたのか、何が事故につながったのか、何を理解していなかったのかを見つけ出す。この事故原因究明調査では、懲罰というものはありません。このチームのメンバーは、従業員とひざを交え、話し合い、どの過程が見過されたのかを見つけ出す。目的は、従業員に不安を与える要因を取り除き、事故の真の原因究明にたどり着くことだと、スタッケル氏は付け加えた。
ケロッグ社では、450人以上の従業員がいる工場には、工場の管理者と従業員の両方から構成される緊急対応チームを制度化している。このチームでは、「従業員と経営者との間に壁は一切ありません」とスタッケル氏はいう。「実際、ある時間契約の社員がこのチームをリードしています」。ケロッグ社で実行されている、これらのチーム編成とその他従業員を参加させる方策の成果には、大変勇気づけられる。1997年から2000年の間で、ケロッグ社が得た成果として:
- 労働災害補償請求件数は、25%減少。
- 政府安全衛生局(OSHA)に報告される災害件数は、33%減少。
- 労働災害補償費用は、22%減少。
- 災害損失日数は、29%減少。
- 休業災害発生率は、22%減少。
報奨金制度で従業員の参加を高める:
あらゆる産業の企業にとっても、報奨金プログラム制度は、従業員を刺激して安全プログラムに参加させ、参加を続けさせる手助けとなる。「経営者に安全衛生問題を報告する見返りとして、50ドルのボーナスや時間当り1ドルの昇給を従業員に与えることにより、会社は、従業員の参加を促し、参加を続けさせることが出来る」と、フロリダ州メルボルンにある企業リスクコンサルタント社の社長であるポール・ビオリス氏はいう。「この種の安全奨励プログラムのための予算資金投資が、会社がいままで予想もしなかった最高の見返りを生み出すことになる」という。衛生問題に関しても、監督者からの簡潔な激励で、従業員の参加に重大な変化が起きるのである。「会社の安全衛生プログラムに参加するよう、従業員に奨励することをやっていないケースが多い。何か事故が起きない限り、会社は、安全衛生などは考えもしない」とビオリス氏はいう。「監督者が手にしている道具箱の中で一番使われていない道具は、従業員援助プログラムだと思います。このプログラムは、従業員が精神的に又、肉体的に健康であるためのものです。その目的は、従業員をずっと健康で強い状態にいることを保持し、彼らの悩みを取り除くことで、彼らは、元気で、働くために会社に来て、生産的に働くことができるのである。しかし、従業員は、監督者の手助けがないと、安全衛生プログラムのことなどあまり考えないものです」。
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