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定着率の悪さに背を向けてはならない

(NSC発行「Today's Supervisor」 2002年3月号 p.4-7)
(訳 国際安全衛生センター)


アン・フリーストン記:

もしも貴方が、従業員の入れ替わりが多い職場環境の監督者として働いているとしたら、恐らく、貴方が望むような安全な職場環境づくりは難しいでしょう。物流管理の装置とサービスを国際的に供給しているフローサーブ社の安全・衛生・環境事案の担当取締役スティ―ブ・ウィルソン氏は、パート従業員数が多く、従業員の入れ替わりが激しいことにより、事故が30−40パーセント増加するのを目のあたりにして来た。貴方は、こうした状況を「非常に注意深く」管理する必要がある、と同氏はいっている。全米安全評議会から過去10年間に亘り、36もの安全表彰を受けたウィルソン氏は、高離職率に対処するための対策を実施してきた。高離職率という獣を如何にして取り押さえたかをここに紹介する。


貴方自身を穴に閉じ込めるな

最初に、貴方は、高離職環境が存在する理由をよく調べる必要がある。オレゴン州ポートランドの安全対策協会の常任理事ロバート・ペイター氏は、成功の秘密は、もしも貴方が穴の中にいるのならば、穴掘りをやめよ、という格言を信じている。この忠告は、貴方が高離職率の職場環境で従業員の忠誠心を育てる職場環境に変えることの手助けになるかも知れない。もしも貴方が、新入り従業員を離職させるようなやりかたで彼等に接しているならば、貴方は、そうした接し方を変える必要がある。即ち、穴掘りをやめ、なにか別の方法をとる必要があるということである。

「高離職率の職場にある監督者は、効果のある方法はないと考えているので、更に穴を深くする。」とペイター氏はいう。例えば、会社のシステムは、その方針と実施手順に基づいており、安全向上のため、会社は、次々と方針と手順を打ち出すのである。同氏は、これではうまくいかないという。ペイター氏は、新入り従業員を他の従業員から切り離してしまう監督者が多いと、指摘する。同氏は、これまでにも、新しい従業員の名前を最初の一年間は憶えようとしたことがない、などという監督者に会って来たという。とにかく、これでは従業員は、離職することになるので、将に、時間、金、資源の無駄使い以外の何物でもない、ということである。

このような態度は、自分で自分を納得させているだけだ、とペイター氏はいい、また、彼は、この問題は、多くの組織内の一つの「病気」であると考えている。もしも会社が従業員に金をかけ、従業員に適当と感じさせるに足る必要な研修を与えるならば、従業員は、会社に留まるであろう。マクドナルドの例を考えて欲しい。ペイター氏によれば、この巨大企業は、大學奨学金制度といった長期的な利益の提供を開始するや従業員の定着率が如何に向上したかを示す好例となったのである。ペイター氏は、従業員を会社に留め置くための一つのシステムを説明している。「貴方が採用するとき、強い期待をかけよ。新入り従業員に貴方が安全を重要視していることを分からせよ。」という。このメッセージは、採用面接の過程で相手に伝えられなければならない。ペイター氏は、従業員は、作業が安全に、生産的に、効率的に行われることを知るべきであり、また同時に、仕事につき好感を持つべきであるという。「新入り従業員に仕事を可能な限り効果的、効率的に行う方法を示すために、しっかり監督すると共に仕事を覚えさせる訓練を行うことにより面倒を見ることである。」とペイター氏は、付け加えている。


始業時のミーティングから正規の研修へ

どの位の研修が必要なのか?それは、仕事による。ペイター氏は、「ハンバーガー焼きをする人より、油井現場にいる人の方に多くの安全研修を実施するであろう。」という。「研修で大切なことは、それを継続させることである。大方の監督者は、彼等のツールボックス・ミーティングや安全会議を効果的に利用していない。」

フローサーブ社は、研修の機会を最大化している会社である。正規の研修に加え、フローサーブ社では、ツールボックス・ミーティングで毎週、または毎日、10−20分間の安全会議を行うが、その内容は、防火、安全保護具、整理整頓といったテーマであったり、出先での危険や工事現場での安全についてである。ウィルソン氏が推奨するもう一つの道具は、パソコンである。同氏は、「任天堂世代という奴で、殆どの人がビデオ・ゲームで遊ぶことが出来るか、パソコンを使うことが出来る。」ウィルソン氏は、ロジャーズ教育システムなるパソコンプログラムを用いており、その成果を見てきた。パソコンによる研修のお陰で、ウィルソン氏は、米国内工場での休業災害事故が75パーセント減少したのを見ている。


指導員制度

ペイター氏は、新入り従業員が職場に配属されたとき、監督者は、3つのやり方で接することが出来るといっている。その一つは、有無を言わせず研修に放り込むことであり、その二は、新入り従業員の中に入り込むことであり、その三は、新入り従業員の仕事振りを監督するために、より経験を積んだ従業員を相談相手あるいは監督者代理とすることである。

シンディ・フェルプス女史は、従業員の離職が生産環境にどれほど影響するものかを直に承知しているので、これら3つのことの全てを行っている。彼女は、ノースカロライナ州ラレイで無停電電源装置を製造している会社、インベンシス・パワー・システムズで安全と警備を担当している。フェルプス女史は、昨年、毎月12人の新規採用者が工場にやって来たが、それら新規採用者の全てがフルタイムの従業員となったわけではないことを知った。フェルプス女史は、「職場の従業員と毎日交流をしている。もしも、職場に多くの新入りがいるならば、こうした職場には、より長く顔を出すことにしている。そして何か拙いことがあれば、直接監督者のところへ行く。というのも、自分は、通報者を職務とする者として認知されているからだ。」という。

彼女はまた、新入り社員の指導者達を信頼している。インベンシス社は、永年勤続従業員が新入り従業員に3週間程の間、種々相談に乗る実地訓練、即ち、新入り社員に対する指導員制度を持っている。フェルプス女史は、「私達は、新入り従業員を、見もせずに、闇雲に生産ラインに縛り付けるようなことはせずに、すでに誰かが働いているその同じ生産ラインに新入りを入れるようにしている。」という。

ピーター氏は、「大方の職場でのオリエンテーションは、貧弱なものか、あるいは良くても一般的なもので、それ故、従業員がその作業につきキチンと訓練されることがないのである。理想的には、新入り従業員達は、長時間その場所にいて、その翼の元で彼等を庇護し、助け綱を出してくれるような人と共に過ごすべきである。」という。それ故、ベテラン従業員を巻き込み、彼等を利用するべきなのである。ピーター氏によれば、「パート従業員を対等な仲間として訓練するならば、信じられない程力を発揮する。彼等は、最初は、訓練者であるが、二度目には、コーチとなり、三度目には、推進要員となる。」という。「これはまた、定着率を高め、士気、安全に対する態度、安全に対する行動を高めることになる。彼等は、監督者に取って代わりはしないが、これまででも多くの事務を抱えている監督者を助けることになるのである。」

このやりかたは、新入り従業員とその指導員の双方にとって、成功あるいは成功といって良い状況を作り出すことになるので、あなたは、自身が行ったことを喜ぶことになるであろう。ピーター氏は、「新入り従業員は、元からいる人と人間関係が出来ると、それだけ首を切られる可能性が少なくなったと感じるものであり、自分の株が上がったと感じて、引き続き働こうと思うものなのである。」という。指導員の方はというと、このようなことで彼等の会社への責務を認識し、士気を高めるのである。一方、指導員制度がない場合には、新入り従業員は、しばしば自分達自身の相談相手を選ぶものだが、その場合、「選ばれた人物が好ましいかどうかは判らない。」とピーター氏は、説明している。


ベテラン従業員は、新入り従業員の失敗の矢面に立たなければならない

相談員制度が巧く機能していても、新入り従業員が絶えず職場に入ってくる場合、ベテラン従業員に不利となる側面がある。フェルプス女史によれば、新入り従業員を取り扱う仕事は、経験を積んだ従業員が行っていることからは離れているが、しかし、自分達の職場での新入り従業員に対して他の人より責任があると感じているのである。フェリプス女史は、「新入り従業員が生産ラインに現れると、ベテラン従業員が気に留めねばならない作業環境とは別のことにも注意しなければならない。」という。「私は、自分の工場の従業員にその例を見て来たが、ベテラン従業員は、新入り従業員にどうしても目が行き、彼等が、キチンとやっているかを確かめるのに気を取られるのであるが、それがベテラン従業員の更なるストレス要因となるのである。」という。

熟練従業員は、機械を正しく用いないことや安全装置を用いないといった怪我につながる品質上の失敗や過ちに注意を払っている。彼等は、また、馬鹿騒ぎや間抜けたことをやらないかと注意を払っている。それ故、全ての監督者が懸命に目指している到達点、即ち、高い定着率を生み出す職場環境をもたらし、より安全な職場環境を創造する為に、ここで述べたような手法を取って見てはどうでしょうか。

クリックすればすぐに役立つ研修プログラムは次の通り
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www.free-training.com
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