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職場における喘息の拡大を防ぐ
Don't Let Asthma Thrive in the Workplace

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2002年11月号 p.12-13)
(仮訳 国際安全衛生センター)



メリッサ・J・ルミンスキー(Melissa J. Ruminski)

 職場の監督者は、労働者の安全衛生に常に注意を払う必要がある。しかし労働者の健康を監視することは、多くの場合困難である。職場の中に健康に悪影響を及ぼす要素があったとしても、それが問題として顕在化するまでに何年もかかる場合があるからである。
 職場の健康問題の一つに喘息がある。アトランタにある疾病対策予防センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)によると、米国全体で約1,700万人が喘息を患っているという。そして年間の入院患者は約50万人で、死者は毎年5,000人にのぼる。
 喘息患者の数は残念ながら増えつつある。CDCによれば、1980年から1994年までの間に子供の喘息関連の疾病は75%増加したという。13人に1人の子供が喘息に苦しんでいることになり、喘息はこの年齢層における主要な慢性疾患になっている。
 こうした子供の多くは、今まさに職場に入りつつあるか、または今後数年の間に職場に入ると予想される。職場の監督者が喘息の労働者を受け持つケースも増えるわけである。

喘息とは
 喘息は、気道(気管支)が特定の刺激物に敏感になる慢性呼吸器疾患である。喘息の人が刺激物と接触すると、気管支周囲の平滑筋が収縮して炎症を起こす。気管支は狭くなって粘液が過剰に分泌され、これが呼吸を困難にし、血液中の酸素濃度が下がる。喘息患者は、このときに受ける感じをおぼれたときの感覚にたとえている。
 職場が喘息の原因になっているかどうかは、いくつかのヒントから判断することができる。労働者が仕事中または勤務の終了近くに普段より息苦しさを感じるかどうかも、そうしたヒントの一つである。

職業性喘息
 労働者の気道が職場に存在する粉じん、蒸気、ガス、またはヒュームに敏感に反応するようになると、職業性喘息が起こる。症状として一般的なのは、胸部圧迫感、咳、息切れである。米国肺協会(American Lung Association)は、必ずしもこれらの症状がすべて揃うわけではないとしている。症状は職場を離れてから何時間も経過した後に現れたり、翌日仕事に戻る前に症状がおさまることもある。職業性喘息の初期段階では、しばしば週末や休暇中には症状が緩和または消滅し、仕事の再開とともに症状が戻る。症状が具体的に現れるまでに何年も経過していることもある。

職業性喘息の一般的症状
  • 胸部圧迫感
  • 息切れ
  • 喘鳴
データソース:米国肺協会 2002年

危険にさらされるのは誰か
 OSHAの推定によれば、喘息になりやすい人を危険にさらす粉じん、微落片(dander)、蒸気と職場で潜在的に接している労働者は1,100万人にのぼる。OSHAが職業性喘息と関連のある物質としてリストアップしている物質は少なくとも250種ある。これらの物質に敏感な反応を示す可能性が高い労働者では、喘息またはアレルギーの家族歴がある。喘息と関係の深い業界には、製パン、ヘルスケア、動物を扱う業界、粒状物加工、繊維業があり、塗料、プラスチック、接着剤、金属産業の施設も喘息と関連が高い。
 喘息について正しい診断を下せるのは医師だけである。イリノイ州アーリントンハイツにある米国アレルギー・喘息・免疫学会(American College of Allergy, Asthma and Immunology)では、医師の適切な診断を助けるために、以下の質問に対する答えをあらかじめ用意しておくようアドバイスしている。
  • 症状が出るようになったのは仕事を変えてからか。
  • 職場を離れると症状が改善するか。
  • 職場の何かが原因で症状が出たと考えているか。もしそうなら、それは何か。
 同学会ではさらに、喘息を疑って医師に診てもらうときは、ヒュームや粉じん等への暴露も含め、職場の労働条件を正確に医師に説明できるようにしておくことを推奨している。また、労働者が知っておくべきこととして、暑さや寒さ、乾燥といった環境条件も原因になることがある点をあげている。
 職業性喘息が疑われる場合には、非職業性喘息の可能性を除外するために、医師が職場での検査と職場を離れた環境での検査の両方を命じる必要がある。

治療
 職業性喘息の最良の治療法は、刺激物への暴露をやめることである。防じんマスクを正しく着用することが有益な場合もある。こうした保護具は監督者が用意する必要がある。管理者と労働者は、暴露を減らすためにも、職場で定められている整理整頓や衛生上の手順を注意深く守る必要がある。
 退職は、喘息を持つ労働者にとって最後の手段であるべきである。労働者、医師、および事業者は、退職という事態に至る前に、施設の別の部門に移すことで刺激物への暴露を減らし、呼吸をラクにすることができないかどうか検討するべきである。

喘息に関するオンライン情報

米国肺協会
(American Lung Association)
www.lungusa.org

米国アレルギー・喘息・免疫学会
(American College of Allergy, Asthma and Immunology)
www.aaaai.org

カナダ労働安全衛生センター
(Canadian Center for Occupational Health and Safety : CCOHS)
www.ccohs.ca