消防署にもっと多くの情報を
マーキサン・ネイソー(Markisan Naso)
(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2002年10月号
p.6-9)
(仮訳 国際安全衛生センター)
職場に効果的な緊急対策を策定するためには、消防署と連携した事前計画が鍵となる
9月11日の同時多発テロ事件を契機に、必要とされる緊急対策の種類と規模が拡大されたが、それよりずっと以前から、消防署は建物の災害への備えを支援する事前計画を作成していた。この事前計画は、消防士に管轄区域内の建物の配置、内容および業務について習熟させることで、より迅速かつ効果的な事件への対応を可能にするためのものである。
世界貿易センターへの攻撃以来、多くの企業が事前計画についてより強い関心を持つようになったが、ほとんどの消防署にとっては、建物の詳細を知ることは依然として変わらない重要な任務となっている。「消防署はどんな化学物質が、どこに、どのくらいの量保管されているのかを文書にして持っておけるように、事前計画を必要としています。」とファイアコン社社長、クレイグ・スクロール氏は述べている。同社はペンシルバニア州イーストアールにあり、顧客に緊急事態の予防・対策・管理の支援を行っている。「消防署は必要な場合に使用できるように、どこに防火壁や出入口、給水栓があるかを知りたいのです。これらは消防士が到着したとき大変重要な問題となります。これらの情報を持っていなければ、緊急事態への対応も遅れ、効果的な対処能力も十分に発揮することができません。」
計画をまとめる
ロードアイランド州ジョンストンにある損害保険およびリスクマネージメント会社であるFMグローバル社は、消防隊が建物の配置、内容、業務、既存の緊急事態対応策を知るための唯一の手段は、それらを見せてもらうことしかないと言う。消防署と建物側の担当者がチームを組むことにより初めて効果的な事前計画は作られる。その関係を深めるためには、現地視察が会社の緊急事態対応能力を評価するために必要となる。消防署が建物についてより多くの情報を持っていれば、緊急事態に対してより万全の措置をとることができる。FMグローバル社の「防火計画ポケットガイド」によると、現地視察は次のような事項を明確にする上で役に立っている。
進入経路− 消防士は緊急時に建物に入る最善の経路を決めるために、その建物に精通している必要がある。また消防士が火災現場を確認するために、そこへ誘導してもらうことも重要である。対応の遅れは大きな損失につながる。
差し迫った危険− 消防士は、建物に進入した際に直面する可能性のある危険について知っておく必要がある。さもなければ、不必要に自分たちの命を危険にさらすことになる。
給水設備− もし消防士がどこに給水設備があるのかを知らなければ、対応は遅れてしまう。これは建物の損害や人命の損失につながることになりかねない。
計画をテストする
現地視察により計画の土台が完成したら、企業はその事前計画をテストしてみることが重要である。テストすることで、実際に緊急事態が発生する前に、対策や方法についての問題点を検討し、変更することができる。防火計画によると、計画をテストすることで事前計画作成チームは以下についての最終的な判断を下すことができる。
対応のレベル− 建物、業務、職員の規模および現場の消火能力は、緊急事態への適切な対応を決定する上で重要な要素となる。
消防署の能力− 消火能力の限界や、必要とされる追加の設備を把握しておく必要がある。
各サイト特有の防火策の利用可能性− 企業が提供できる対応のレベルを把握するために、消防士はどんな防火策が利用可能かを知る必要がある。
社員の訓練− 消防士は建物を視察することで、緊急対策の訓練を必要とする社員の人数を把握することができる。また、各企業の具体的な状況に基づいて、どんな訓練が必要かについても決定することができる。
事前計画のテストが終了したら、再度視察を行うべきである。「一般的に、消防署は年に一度所轄の施設を回り、計画を更新する。彼らは施設内を巡察し、その年に何が変わったかを点検する。」とイリノイ州オーロラにある、オーロラ・パッキング社の緊急事態管理アドバイザーのマイク・ファゲル氏は言う。
再視察では通常、初回の視察時よりも短く、新しい建造物や改造、新しい作業工程、新しい装置、スタッフの交替、および消火設備の加除といった、危険性や業務の変更点に焦点が当てられる。各ロケーションで計画を維持していくためには、その業務の性質に従って視察を増やす必要があるだろう。
事前計画をどのように作り始めるか
事前計画は通常、消防署が作成に乗り出しているが、思うように計画を立てられない消防署もある。その場合には会社側が率先して行った方がよい。「防災に積極的に力を入れている消防署の管轄地域であれば、施設訪問は行われているはずです。もし管轄の消防署が何らかの理由で訪問する時間的余裕がない、あるいは人々は防災に関心がないと考えているならば、自分から地元の消防署に連絡をとっても構いません。」とスクロール氏は言う。「実際に、私は人々に消防署に自らを紹介し、話合いをするように勧めています。例え彼らが施設の視察を望まない場合でも、911に電話をかけたときにやって来る人々を事前に知っておくことで、緊急事態への対応に際しても行動し易くなるでしょう。」
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