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エルゴノミクスの新しい対策

(資料出所:NSC発行「Today's Supervisor」2002年9月号 p.12-13)
(仮訳:国際安全衛生センター)


著者 キャレン・ガスパース、アル・カー

OSHAは、いまのところエルゴノミクスの新しい基準を策定する予定はないが、今年はじめ、企業の自主的な対策を促すという策をとるとの計画を発表した。

この対策では、個別の業界に的を絞った指針、厳格な監督指導、事業場に出向いての教育・支援、高度な研究、ヒスパニック系をはじめとした移民労働者を保護するための努力といった活動を併せて行うことにしている。手始めに、個別の業界と業務に的を絞った指針の策定からはじめる。ジョン・ヘンショーOSHA長官が、新しい対策を発表した記者会見で述べた。

ヘンショー長官は、反復性ストレスによる傷害と疾病の発生率がきわめて高い業界に的を絞ることも明らかにした。OSHAが、エルゴノミクス的原因による傷害発生率がもっとも高い業種としてこれまで指摘してきたのは、ナーシングホーム(介護施設)、病院、食肉包装、鳥肉加工、建設作業の一部、手荷物取り扱い、飲料配送、縫製、コンピューター・ワークステーション、食料雑貨の倉庫作業などである。すでに鳥肉加工と食料雑貨については、2002年の年末までに指針が出されることになっている。ナーシングホームも最優先事業場のひとつになっている。

「労働省統計局(BLS)のデータによると、筋骨格系障害はすでに減少しつつある。今回の計画は、その流れをできる限り加速しようというものだ」とヘンショー長官は言う。「何千という事業者は、政府が義務化しなくても自主的にエルゴノミクス的リスク低減のために努力している。我々は、こうした事業者と協力し、引き続き事業場の安全衛生の改善に取り組みたい。そして労働者のことを考えない悪質な事業者を追及するつもりだ」

エルゴノミクスとはなにか

OSHAの新しい取り組みは自主的な性格のものだが、管理者はエルゴノミクスについて、いくつかの点を理解しておく必要がある。

エルゴノミクス的傷害としてしばしば取り上げられるのは、筋骨格系障害、 蓄積外傷性障害、反復性ストレス傷害である。OSHAによると、こうした傷害が発生するのは、特定の業務や作業に必要な動作と、人間の肉体にとって可能な動作との間に、ずれがある場合である。

多く見られる症状としては、腰痛、腱炎などがある。エルゴノミクス的傷害でもっとも多い例は、手根管症候群である。

傷害を根絶する

事業場で反復性ストレス傷害が発生していることを、どうすれば把握できるか。OSHAは、管理者に次のような方法を示している。

  • 作業内容を点検し、リスク要因の有無と発生状況を把握する。リスク要因には、反復動作、重量物の持ち上げ、力が必要な作業、接触圧、振動、不自然な姿勢、手と手首の急速な動作などがある。
  • 傷害記録を分析し、同一の作業や業務に関連して、または特定の部門で傷害が頻発していないかを確認する。
  • 業界共通の問題を把握する。業界他社がエルゴノミクス上の問題を抱えていれば、自社も同じ問題を抱えている可能性がある。
  • 労働者に対して作業について質問し、問題の有無を確認する。

解決策

管理者がエルゴノミクス的問題を防止または緩和するには、いくつかの方法がある。

  • 作業場や工具のデザインなどの工学的な面での対策を検証する。
  • 適切な荷の持ち上げ方など正しい作業手順を実行するとともに、作業区域を整頓する。
  • 交替制度の導入や休憩時間の延長など、管理面での対策をとる。
  • ニーパッドや防振手袋などの個人用保護具を使用する。

労働者を快適にし、事業場を安全にするための、より具体的な対策例を以下に示す。

コンピューター・ユーザー:

  • 高さが調節でき、腰を支える構造の椅子を使用する。
  • キーボードとマウスの位置を調節して、肘が身体に近づき、床に平行になるようにする。手首は、ほぼ真っ直ぐになるようにする。
  • 長時間、画面を見るような作業の場合は、モニターを身体と正対するように置く。文字列の最上部が目の高さになるようにする。
  • フォントサイズを大きくする。フォントが小さくなるほど、読むときに身体が前のめりになる。
  • マウスは軽く持ち、握り締めない。できるだけキーボードによる操作法を覚える。

製造、加工、保守管理:

  • 垂直面で使用するための柄が曲がったプライヤーなど、作業に適した工具を使用する。振動と重量を最小限に抑えた工具を選ぶ。
  • 作業場所には、カウンターバランスやアームサポートなど重量工具用のサポートを備え付け、精密な手作業の際に労働者の腕を支えるものを用意し、コードやホースが工具の動作の邪魔にならないようにする。