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誰が運転するのか?
職場の輸送安全を大型トラックからコンパクトカーまで広げるには
Who's In the Driver's Seat?
Extend workplace transportation safety from the big rig to the compact car

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2003年8月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)



 保険被害査定員、ガス会社の検針員、長距離トラック運転手、建設現場をいくつもかけもちする現場監督。このうち、仕事で運転しているのは誰だろうか?
 答えは、全員、である。
 NSCのJames Solomon(ジェームズ・ソロモン)「事故防止運転講習」開発研修部長によれば、「仕事の一環として自動車を運転することを求められる人すべて」が職業ドライバーだという。問題は、そのことを認識している人が必ずしも多くないことである。
 「一般には職業運転手は大型トラックの運転手だけだと思われていますが、そうではありません」。NSCのレス・ソコロウスキ「輸送上の安全」グループ局長は言う。
 「商業用車両を運転していないからといって、仕事中に自動車事故にあわないわけではありません」、とソコロウスキ局長。
 実際に事故にあう可能性は高い。NSCによれば、2001年には米国内で2,200件の自動車関連労災死亡事故が発生しており、これが労災死亡の原因のトップを占めているという。しかもこの傾向は変わっていない。自動車事故による労災死亡は一貫して2,000件前後を占めており、常に労災死亡の原因のナンバーワンになっているのである。
 この数字が示しているのは、事業者が労働者のドライバーとしての側面を見落としがちであり、問題を必ずしも明確には認識していないということである。こう、ソロモン部長は指摘する。
 「企業はしばしば、セールス要員などの一定区分の労働者に対して訓練を実施しようとしますが、時に会社の車を使う管理スタッフを対象に訓練をすることは考えません」、とソロモン部長は言う。

審査の徹底

 では命を救うために監督者には何ができるのだろうか。
 ソロモン部長によれば、単純ながら効果の高いやり方として、雇用する段階でドライバーを審査する方法があるという。具体的には、ドライバーの運転記録と経歴、運転に慣れているのはどんな種類の車両か、運転歴はどれくらいか、などの事実をチェックするのである。ソロモン部長は、当該車両をどれだけうまく運転できるか見極めるために監督者が求職者に試験運転をさせるとよい、と言う。
 ただしこのステップは、文書化された企業方針の一部になっている必要がある。
 ソロモン部長によれば、文書としての乗務方針の中で、どの従業員に対して運転を許可するのか、どのような車両の運転が許可されるのかを定めておく必要があるという。また、付随的な運転についての判断も盛り込み、就業中に仕事の一部として自家用車または社用車を運転できるのはどのような場合かを示す必要がある。「このような運転は仕事の一環というわけではありませんが、従業員に課された作業であることに変わりありません」、とソロモン部長は言う。たとえば、仕事に必要なものを買うために従業員が自分の車で事務用品店へ行くような場合である。
 乗務方針は、論理的かつ合理的で、従業員が容易に理解できるものでなければならない。最後の点は特に重要である。仕事で運転するということについて明確な説明をしないと、「知らず知らず従業員、ひいては会社全体を混乱させることになります」、とソロモン部長は言う。
 企業はさらに、メッセージがあいまいなにならないように気を付ける必要がある。ソロモン部長によれば、運転中はポケベルや携帯電話の呼び出しに応じないようにという乗務方針も、なぜすぐに電話に出ないという監督者からの一言で、労働者からいとも簡単に無視されるようになるという。「だから従業員が規則を守りやすくすることが大事なのです」、ソロモン部長は言う。