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窒素:吸い込んだ空気によって死に至る場合
Nitrogen : When the Air You Breathe Can Kill

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2003年11月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)



 米国化学物質安全性調査委員会(Chemical Safety and Hazard Investigation Board)によれば、窒素濃度の高い環境とは知らずに作業していて死亡または傷害を受けた人は1992年から2002年までで130人にのぼるという。犠牲者の60%は、閉塞空間またはその近辺で作業していた。多くのケースで労働者は空気が酸素不足の状態になっていることに気付かなかった。エアラインマスクに接続したり、作業区域の換気をしたりするときに、空気と窒素ガスを混同してしまった場合もあった。同僚を助けようとして命を落したケースもあった。
 なぜ未然に防げるはずの死者がこれほど多く出たのだろうか。調査委員会のスティーブン・ウォレス化学事故調査官は、窒素は「油断のならない危険物質」だという。色やにおいがないため、高濃度でも五感でその存在を感じとることはむずかしい。ほとんどの人は窒素が有害であるとは思っていないが、これは我々が呼吸する空気の78%が窒素であることを考えれば無理もない。窒素が引き起こす問題は、閉塞空間で作業するなど、労働者が無防備な状態に置かれたときにしばしば大きくなる。「閉塞空間では、問題発生時の出入りがむずかしくなります」、調査官は言う。
 調査委員会ではこうした点をうけ、この問題に関する安全速報を発行した。速報では、事故を防ぐために企業が以下に掲げる優良規範を実践するよう呼びかけている。
  • 警報システムを導入し、監視を実施する。空気の状態は時間とともに変わる可能性があることに注意し、窒素の流入が予期される囲われた区域を常時監視する。
  • 作業区域の換気を行って、新鮮な空気を取り入れる。窒素濃度の高い区域では作業前と作業中に空気を循環させる。
  • 作業員が吸入する空気を絶えず送るとともに、空気の質が損なわれないよう注意する。供給空気の酸素濃度を確認し、ホースやコンプレッサーなどの空気供給装置を日常的に検査(必要があれば交換)し、空気供給システムに汚染がないかどうか常時監視する。
  • 不注意から空気と窒素を混同しないよう防止手段を講じる。ボンベ、配管、および供給ラインにそれぞれ寸法の異なる取付具が使用され、はっきりとわかる表示がされているかチェックする。
  • 労働者を安全に救出するためのシステムを用意する。このシステムで実現すべきこととして、機械式救助システムとつながったハーネス型安全帯および命綱を作業員が身に付けること、閉塞空間の内部にいる作業員と常時連絡を取ることができる待機スタッフの用意、および救助者に対する適切な訓練と装備の用意がある。
  • 総合訓練プログラムを策定、導入する。このプログラムでは、換気システムの正しい使い方、閉塞空間への立ち入りや救助の際の安全心得、気体の種類によって異なるボンベの接続具や取付具の相違点、給気式呼吸用保護具の正しい使い方について取り上げる必要がある。
 こうした安全措置がきちんと機能しているかどうか確かめるのにうってつけの立場にいるのが監督者だ、とウォレス調査官は言う。監督者は「作業区域を監督し、作業プロセスが本来の目的どおり機能しているかどうか見届ける」ことができるからである。
 調査委員会では今回の安全速報のほかに、窒素による窒息状態(asphyxiation)に関するパワーポイント用プレゼンテーションも作成した。調査官によれば、監督者はこのプレゼンテーションを安全ミーティングやツールボックスミーティングで使用できるという。これらの資料はいずれもwww.csb.govでオンラインで入手可能である。