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ヒスパニック系労働者の安全をむしばむ長い労働時間
Long work hours impact Hispanic worker safety

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2004年4月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)



 8時間労働が米国労働者の基本になって久しい。しかしこれは多くの労働者、とりわけヒスパニック系労働者の労働時間には必ずしもあてはまらない。
 ヒスパニック系労働者の場合、3分の1近くが副業で週5日働いているのに対し、非ヒスパニック系白人では、同じだけ働く労働者の割合はわずか17%にすぎない。また、ヒスパニック系労働者は、非ヒスパニック系労働者よりも夜間勤務を多くこなしており、労働時間も長い。マサチューセッツ州レキシントンにあるサーカディアン・テクノロジーズ(Circadian Technologies)社が発表した最近の研究によれば、こうした長時間労働は、ヒスパニック系労働者に対して心身両面における重大な犠牲と職場における安全に大きな悪影響を及ぼしているという。
 研究者らは、副業をしていると睡眠時間が減り、これが引き金となってしばしば仕事の能率が下がり、注意力が低下し、スレトスや重大な健康上の問題をかかえやすくなり、ミスが起こる可能性が高くなることを発見した。ヒスパニック系労働者が米国の全労働者数に占める割合はわずか12%であるにもかかわらず、2002年の労災死亡者数のうちヒスパニック系労働者の占める割合が15%と高いのも、そうしたことが原因の一つになっていると考えられる。
 しかも悪いことに、ヒスパニックは、健康保険に入っていない米国人4100万人のうち3分の1を占めている。「これは深刻な問題です。予防衛生を利用できないわけですから」。サーカディアン・テクノロジーズ(Circadian Technologies)社のAcacia Aguirre医療部長はいう。同部長は、「ヒスパニック系の長時間労働の労働者およびその使用者が直面する課題(Challenges Confronting Hispanic Extended Hours Employees and Their Employers)」と題された今回の研究の筆頭著者である。
 ヒスパニックがこうむる職業上のリスクは、言葉の壁によってさらに高まる。Aguirre部長はいう。「多くの場合、ヒスパニックは英語をうまく話せません。そのため、安全な手順を理解することすらできないのです」
 同部長は、自分の身を守るにはどうする必要があるか労働者が理解できるようにするために、安全と教育訓練に関する各種資料をスペイン語に翻訳することが短期的な解決策の一つになるという。また企業は、監督者がヒスパニック系労働者とよりスムーズに意思疏通をはかれるよう、監督者向けのスペイン語基礎講座を用意する必要があるという。「しかし長期的にみて望ましいのは、ヒスパニックが英語を学ぶことです」、とAguirre部長。
 ヒスパニックに対しては、重大な健康問題を予防するための支援も必要である。現在、従業員50人以上の職場の90%に何らかの形で健康増進プログラムが存在するが、そのほとんどは、使用できる言語が英語だけとなっている。Aguirre部長は、もっと多くの企業がスペイン語でのプログラムの提供に努める必要があるという。
 最後にAguirre部長は、あらゆる活動や教育訓練を通じて最も重要なのは、ヒスパニックの多様性を意識することだ、と指摘する。「いま自分が話しかけている相手がどういう人たちなのか、十分に気を付ける必要があります。ヒスパニックは均質な集団ではありません。もしそう思っているなら、まったくの間違いです。同じヒスパニックでも、メキシコ出身とプエルトリコ出身とでは全然違うのです」


職場のヒスパニック

ヒスパニック系 非ヒスパニック系
白人
失業:
失業者の割合
8.1% 5.1%
雇用:
常勤者
80% 70%
副業:
副業での週5日労働者の割合
30% 17%
労働衛生:
労災死亡率
5% 3.9%
所得:
世帯の平均所得
$33,103 $46,900
健康保険:
非加入者の割合
33% 11%

詳細についてはwww.circadian.comを参照のこと。