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有害な振動:手腕振動症候群(HAVS)について労働者が知っておくべきこと
Bad vibrations: What your workers should know about HAVS

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2004年2月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)



 ジャックハンマー注)によるコンクリートの破砕から、角取りグラインダーによる金属の切削まで、振動にさらされている労働者の数は250万人近くにのぼる。推定によれば、これらの労働者の半数が何らかの形で手腕振動症候群(HAVS: Hand-Arm Vibration Syndrome)と呼ばれる不可逆的な疾患に苦しんでいるという。
 米海軍労働安全衛生局(Occupational Safety and Health Department of the U.S. Navy)によると、手腕振動症候群は、空気、電気、水圧、またはガソリンを動力とする手持ち工具への過度の暴露が原因だという。指や手がチクチクするなどの症状に始まり、続いて麻痺や痛みが生じる。血管と神経が損傷される可能性があり、感覚のない状態が続くこともある。
 さらに暴露が続くと、暴露部分への血液の供給が滞って、指先から手のひらまでが白くなる。振動工具を使った作業を続けていると、壊疸が起こって指先を切断しなければならなくなることもある。
 生物医学工学者で振動コンサルタントのドン・ワッサーマンは、手腕振動症候群の診断は難しいという。ワッサーマンによれば、初期段階で手腕振動症候群と手根管症候群を区別することは困難である。手腕振動症候群と手根管症候群を同時に患っている場合には、事情はさらにこみ入ってくる。手腕振動症候群は早期に発見しないと治療は不可能である。
 平均的に言って、常に振動にさらされた状態が2〜3年続くと手腕振動症候群を発症する。しかし、ワッサーマンは6ヶ月で症状が現れたケースを見たことがあるという。手腕振動症候群の発症までの期間は、振動の強度と温度によって変わってくる。「低温が引き金になる病気です」、とワッサーマンはいう。
 手腕振動症候群を患っている場合には、痛みの発作にしばしば見舞われ、これが5〜15分間続く。
 ワッサーマンら専門家は、手腕振動症候群をなくすために、作業プロセスの再構成と「振動防止」工具および個人用保護具の使用を勧めている。保護具はエルゴノミクスと振動低減の両方を考慮したものである必要がある。
 ワッサーマンは工具をくるんでも効果がないと警告する。その一方で、アメリカ国家規格協会(ANSI)と国際標準化機構(ISO)が認定した手袋は振動の低減に大いに効果があるという。ワッサーマンによれば、これらの規格を満たす手袋は、工具の発する広範囲の振動周波数をカットするため、機械的に変化する材質で設計されているという。またワッサーマンは、手袋は指全体を覆うものでなければならないと強調する。
 労働者による正しい個人用保護具の使用を確実にするために、2002年に新しい手袋基準が公表された。このANSI S3.40-2002/ISO 10819(1996)は、米国における手袋による振動減衰について定めた初の包括的な基準である。
 ワッサーマンは言う。「振動問題を考慮して設計された防振用エルゴノミクス工具を使用し、認定防振手袋の着用と適切な作業慣行を心がければ、手腕振動症候群に罹患する確率は低くなります」

詳細については


(訳注)ジャックハンマー---空気(手)ハンマーとも言い、圧縮空気により衝撃的な打撃を与えるハンマー

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